―――― 「偽装請負、違法派遣、労働者供給、出向」関連 ――――
海野和夫
◎ 派遣と請負の区分基準に関する自主点検項目(厚生労働省パンフ)と労働者性
(以下は、「派遣と請負の区分基準に関する自主点検項目(厚生労働省パンフ)」です。これは、「請負とは」の基準を示しています。示された基準を全て満たす場合のみ請負です。逆に言うと、一つでも欠落していれば請負ではない、ということです。これを工夫して使えば、形式上「一人親方」、「事業主」の労働者性の証明に活用できる可能性があります。一つでも欠けていれば「請負」ではないということは、逆に言うと「労働者」だということにつなげていく、少なくとも可能性、展望は存在します。何しろ一つでも欠けていればいいわけですから、「請負」否定の点では――海野)
「派遣と請負の区分基準に関する自主点検項目(厚生労働省パンフ)」
T 自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用すること
1 業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うこと
@ 労働者に対する仕事の割り付け、順序、緩急の調整等を自ら行っている
A 業務の遂行に関する技術的な指導、勤惰点検、出来高査定等について、自ら行っている
2 労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うこと
@ 労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等について事前に注文主と打ち合わせている
A 業務中に注文主から直接指示を受けることのないよう書面が作成されている
B 業務時間の把握を自ら行っている
C 労働者の時間外、休日労働は業務の進捗状況をみて自ら決定している
D 業務量の増減がある場合には、事前に注文主から連絡を受ける体制としている
3 企業秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うこと
@ 事業所への入退場に関する規律の決定及び管理を自ら行っている
A 服装、職場秩序の保持、風紀維持のための規律の決定及び管理を自ら行っている
B 勤務場所や直接指揮命令する者の決定、変更を自ら行っている
U 請負業務を自己の業務として契約の相手方から独立して処理すること
@ 事業運転資金等をすべて自らの責任の下に調達・支弁(支払)している
A 業務の処理に関して、民法、商法その他の法律に規定された事業主としての全ての責任を負っている
B 業務の処理のための機械、設備、器材、材料、資材を自らの責任と負担で準備している又は自らの企画又は専門的技術、経験により処理している
C 業務処理に必要な機械、資材等を相手方から借り入れ又は購入した場合には、別個の双務契約(有償)が締結されている
◎ ――― 建設業での派遣問題、偽装請負問題などについて ―――
(先日、千葉土建一般労組の三楠正広氏から「建設における『違法派遣』・『偽装請負』問題 実情と対策、トラブル解決のポイント」と題して講演を聞く機会がありました。その一部を以下に紹介します――海野)
○ 1985年 26業種に限定し、労働者派遣法を制定し、派遣を認めた。
○ 1999年 建設・港湾・警備・製造・医療業務の5業務以外は全て派遣を認める。但し、「建設業務」を「建設工事の現場において直接これらの作業に従事するものに限られる」とし、「建設現場の施工管理業務、事務員」を「建設業務」から除外し、派遣を認めた。
○ 2004年 製造業務を解禁、医療の一部も認める。
○ 2005年 「建設業務労働者就業機会確保事業」の「送出労働者」に該当する場合は認めた。
「送出労働者」とは、「事業主が自己の常時雇用する建設業務労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他の事業主の指揮命令を受けて、当該他の事業主のために建設業務に従事させる労働者」
○ 労働者派遣の仕組み
労働者派遣とは、派遣元事業主の雇用する労働者を派遣先の指揮命令を受けて、この派遣先のために労働に従事させること。
派遣元と派遣労働者の間に雇用関係があり、派遣元と派遣先の間に労働者派遣契約が締結され、この契約に基づき、派遣元が派遣先に労働者を派遣し、派遣先は派遣労働者を指揮命令する。
労働者派遣事業には、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の2種類がある。
特定労働者派遣事業とは、常用雇用労働者(派遣元が常用雇用している労働者)を派遣する事業であり、厚生労働大臣に届出する。(人材派遣を特定の派遣先に派遣する「専ら派遣」は認められていない)
一般労働者派遣事業とは、登録型(派遣元に登録しておき、派遣先に派遣する際に派遣元が雇用する)や臨時・日雇の労働者を派遣する事業であり、厚生労働大臣の許可を受ける。
○ 出向
出向の場合、利益を求めてはならない。業として行えば、派遣法違反となる。
ゼネコン:「出向」扱いで下請から元請へ派遣させていた。これが「違法行為」と行政から指導され、一斉に下請に「特定労働者派遣事業の届出」を出させている。
○ 労働者供給事業
労働者供給とは「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣に該当する者は含まない」(職安法第4条第6項)
供給元と労働者の間に雇用関係がないもの、供給元と労働者の間に雇用関係がある場合でも供給先に労働者を雇用させることを約して行われるものは、職安法第44条に基づき「労働者供給事業」として禁止。労働者を継続的に支配下に置いて他人に使用させる点で、労働者の強制、中間搾取、使用者責任の不明確化などの弊害があり、職安法44条により禁止されている。例外は、労働組合が厚生労働大臣の許可を受けて無料で行う場合だけである。
○ 職業紹介
職業紹介とは、求人及び求職の申し込みを受け、求人者と求職者の間の雇用関係の成立を斡旋(あっせん)すること。
改正建設労働者雇用改善法により、建設業で有料職業紹介事業が行えることとなった。
○ 請負と労働者派遣の区分をめぐる問題
@ 請負とは
注文者と請負業者との間で業務の遂行とそれに対する対価の支払いを約する契約をすること。注文者が請負業者の従業員に指揮命令することは偽装請負(請負契約名目で実質派遣を行うこと)となり、派遣法に反する違法派遣となる。
A 「偽装請負」とは
派遣法に基づいて、許可・届出がある派遣元事業者が行わなければならない労働者派遣事業を、請負・業務委託契約の名目を利用して法の規制を受けずに行う契約形態。派遣か請負かの区分は、契約の名目ではなく、実態で判断する。
B 請負と派遣との区分の基準(昭和61年4月17日 労働省告示37号)
(この告示は、請負形式、請負名目であっても派遣に該当する場合を明らかにする基準です。告示に示された基準を全て満たす場合のみ請負です。違反があれば派遣に該当し、違法派遣となります。告示の内容は「請負とは」を示しています)
(以下は、厚生労働省パンフ、東京労働局パンフからの抜粋です。前述のように、「請負とは」の基準を示しています。示された基準を全て満たす場合のみ請負です)
1 自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用する者であること。
・ 業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
・ 労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
・ 企業での秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うこと。
2 請負契約で請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。
・ 業務の処理に要する資金につき、全て自らの責任の下に調達し、かつ、支弁(金銭を支払うこと)すること。
・ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としての全ての責任を負うこと。
・ 単に肉体的な労働力を提供するものではないこと。
・ 業務の処理のための機械、設備、材料、資材を自らの責任と負担で準備している、又は処理すべき業務を自らの企画又は専門的技術、経験により処理していること。
・ 業務処理に必要な機械、資材等を相手方から借り入れ又は購入した場合には、別個の双務契約(有償)が締結されていること。
○ 二重、多重派遣
二重労働者派遣とは、派遣先に労働者派遣するために、第三者から労働者派遣を受け入れ、それを派遣先に再派遣することを言う。
二重派遣は、雇用していない労働者を派遣することから、労働者供給に該当し、業として行えば、職安法の労働者供給事業違反となります。
◎ ―――労働者の「派遣」とは何か 少しまとめてみました―――
いま、「偽装請負」問題をマスメディアが大きく取り上げています。「請負」、「雇用」、「派遣」とよく出てくる言葉ですが、その意味とか相違を考えると、そう簡単ではありません。一番わかりにくいと思われる「派遣」について、今回少しまとめさせていただき、「請負」、「雇用」、「派遣」の相互の区別を少しでも明らかにできればと考えます。
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Wikipediaのサイトを見ると、以下のように解説されています。
偽装請負とは、契約上(形式上)は業務請負であっても実態が人材派遣に該当するものを指す。
業務請負の場合、本来はメーカーなどの顧客から仕事の発注のみが行われ、請負側は作業責任者を置き、配下に人員がいる場合は作業指示を行うのは請負側である。偽装請負となるのは、請負側が人の派遣のみを行って責任者がいないか実質的に機能しておらず、顧客の正社員が作業指示を行っている状態を指す。
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「派遣」とは何かについて、『疑問・トラブルにこの1冊! 派遣労働法便利事典』(著者 小見山敏郎氏 発行所 こう書房)を参考にして、それに基づいて、以下に書かせていただきました。
「労働者派遣は、募集・面接・選考から労働保険・社会保険の手続き、給与計算に至るまでの事務手続きを自ら行う必要がないため、総務部門に人員を配置する余裕のない中小企業や、起業間もないベンチャー企業などにも、大きなメリットのある制度」と言われています。
派遣とは、派遣元が、派遣元と雇用関係のある派遣労働者を、派遣先との契約に基づいて、派遣先の指示のもとで就労させる形態をいいます。つまり、実際に労働が行われている派遣先と派遣労働者のあいだに雇用関係はありません。
派遣とは、自己の雇用する労働者を、他人の指揮命令を受けて、その他人のために労働に従事させることです。
派遣元事業主と派遣労働者には雇用関係があり、派遣元は事業主としてさまざまな責任を負っています。
労働者派遣契約では、雇用する事業主(派遣元事業主)は、賃金は支払いますが、自ら使用することも、指揮命令することもありません。
派遣が禁止されている業務は、@港湾運送業務、A建設業務、B警備業務、C派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務(医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、弁護士、公認会計士、弁理士、税理士、司法書士、土地家屋調査士、社会保険労務士、行政書士、等々)
許可や届け出を行っている派遣事業者でも、他の派遣事業者から派遣された者をさらに第三者へ派遣する「二重派遣」行為は違法です。
ストライキ対策としての派遣労働者の導入は、禁止されています。(派遣法24条)
派遣先事業所と派遣労働者の間には雇用関係が存在しないため、派遣先で労働・社会保険に加入させることはできません。
社会保険料の納付義務は、雇用主である派遣元にあります。
派遣労働者が派遣先で労働災害にあった場合は、派遣元の労災保険を使って補償を行うこととされています。しかし、その労働災害の原因が、派遣先の施設に欠陥があったとか、派遣先の不適切な命令で危険な作業を行わせたような場合には、派遣先は、労働安全衛生法違反に問われる場合があります。また、労災で補償されるのは労働基準法上の補償部分ですから、それを超える補償や慰謝料などの民事上の責任を、労働災害にあった派遣労働者が訴えた場合は、その部分について派遣先への追及がなされることもあり得ます。
派遣先と派遣労働者の間には、雇用関係がありません。派遣労働者に対し賃金支払いの義務を負っているのは派遣元であり、派遣先に必要なのは派遣元への派遣料金の支払いだけです。
派遣事業には、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の二種類があります。
「一般労働者派遣事業」 派遣労働者として働くことを希望する者をあらかじめ登録しておき、具体的な派遣先が決まり、実際に労働者派遣が行われる期間だけ、雇用するという形態です。
「特定労働者派遣事業」 常時雇用する者だけを派遣する形態です。
「一般労働者派遣事業」では、派遣労働者としての登録をしても、常に派遣労働者としての仕事があるわけではありません。仕事がない間は雇用関係もなく、実際に派遣されることになってはじめて、その期間だけ派遣元と雇用契約を結んで雇用され、賃金が支払われるわけです。このような形態は、「特定労働者派遣事業」に働く者と比べると、雇用が不安定な状態になることは明らかです。
コスト削減などの面から、自社で労働者を直接雇用するのではなく、子会社として派遣会社をつくり派遣労働者を受け入れることは、雇用によって生じるさまざまな責任を回避しようとすることに他ならず、本来の派遣のあり方とは言えず、原則として認められません。
派遣労働者にも、労働基準法や労働安全衛生法などの労働者保護規定は適用されます。
◎ 請負労働、偽装請負、労働者派遣
1、はじめに
「請負を偽装した労働者派遣が建設現場に横行している」、「建設現場事務所に暴力団が常駐している」と今、言われています。このような事態がさらに広がっていくのではないかと懸念されています。
是正の一助になればと願い、請負、偽装請負、労働者派遣の問題を少しまとめてみました。
2、請負、偽装請負、労働者派遣の違い、区別
(1)労働者派遣事業
派遣元=労働者を派遣する側、派遣先=労働者を派遣される側。
労働者派遣事業とは、派遣元事業主が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、この派遣先のために労働させることを業として行うことを言います。労働者派遣事業は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(略称「労働者派遣法」)の適用を受けます。
派遣元と労働者の間に雇用関係のないもの、及び派遣元と労働者との間に雇用関係がある場合であっても、派遣先に労働者を雇用させることを約して行われるものについては、法律で禁止されています。
派遣元と労働者の間に雇用関係があり、派遣先と労働者との間に指揮命令関係しか生じさせないような形態についてだけ労働者派遣事業として、「労働者派遣法」による規制の下に行うことができるようになっています。
(2)請負と労働者派遣
請負と労働者派遣との違いは、請負には、注文主と労働者との間に指揮命令関係を生じないという点にあります。請負の場合、注文主と請負業者との間に請負契約が成立し、請負業者と労働者との間には雇用関係が存在しますが、注文主と労働者との間には雇用関係も指揮命令関係も生じません。
(3)労働者派遣事業を行うことができない業務
@港湾運送業務、A建設業務、B警備業務、C病院等での医療関係の業務等々の業務については、労働者派遣事業を行うことはできません。
(4)偽装請負
前述のように、注文者(注文主)と請負事業者との間に請負契約が成立し、請負事業者と労働者との間に雇用関係、指揮命令関係の両方が存在し、注文者と労働者との間には雇用関係も指揮命令関係も存在せず、労働者は注文者との関係ではただ業務を遂行するだけという場合、適法な請負事業になります。
そして、注文者(注文主)と請負事業者との間に請負契約が成立し、請負事業者と労働者との間に雇用関係が存在していても、注文者と労働者との間に指揮命令関係が存在する場合は、「偽装請負」となり、要するに労働者派遣となります。
注文者(注文主)と請負事業者との間に請負契約が成立し、請負事業者と労働者との間に雇用関係が存在していても、注文者従業員が請負人従業員を指揮命令している場合も、同様に「偽装請負」となり、労働者派遣となります。
3、「赤旗」記事から
2006年3月23日「赤旗」記事によると、日本共産党の小池晃参院議員が2006年3月22日、参院厚生労働委員会で請負労働、偽装請負の問題を質問、追及しています。記事全文を下記に載せておきます。
―――正規求人増というが
4分の1が請負労働(製造業)
小池氏追及 違法横行、是正求める
求人の4人に1人が請負の仕事。日本共産党の小池晃参院議員が追及した(2006年3月)22日の厚生労働委員会で、そんな雇用実態が明らかになりました。小池氏の質問に厚生労働省が答えたものです。
小池氏は、(2006年3月)3日に発表された労働力統計をもとに、けた違いに正規雇用が減り、非正規雇用が増えている状況をただしました。この4年間に正規労働者数は計115万人減る一方、非正規労働者数は計182万人増加し、過去最多になっています。
小池氏は、厚労大臣が増えたといっている正規労働者の就職数には作業現場が別会社になって転々と移動する業務請負の求人が含まれているとして、同省が今年1月に調査した製造業における新規求人数に占める業務請負の割合を明らかにするよう求めました。
同省が明らかにした数字によると、全国平均は24.7%と4人に1人が請負の求人になっていました。地域別では一番高いのが九州地域の33.9%です。次いで東北31.1%、東海29.5%と軒並み3割前後に達しています。
小池氏は、確かに求人全体では求人倍率は1倍を超え、正社員も増える変化はあるとはいえ、依然として0.67倍にとどまり、厳しい状況に変わりないとのべました。
しかも、正社員の枠で募集されている請負労働者は、労働基準法や派遣法違反が常態化し、とても正社員の雇用と呼べない職場環境で働かされていると指摘しました。
小池氏は「請負求人の高い地域も含め全国調査を実施し、全容を明らかにし、法違反を是正することが必要ではないか」とただしました。
鈴木直和・職業安定局長は「今後、大都市部以外も調査したい」と答えました。
(「赤旗」の解説)「業務請負」=メーカーなどの製造ラインや営業業務を一括して受託し、自社で業務遂行責任を負うアウトソーシング(外部委託)型のビジネス。しかし、業務請負とは名ばかりで実態は派遣法逃れの偽装請負(実態は派遣)が多く労働者は無権利状態に置かれています―――
◎ ――――― 労働者供給、労働者派遣、労働者送出 ―――――
「労働者供給」というのは、一言で言うと、自分が雇用していない労働者を他人に提供(供給)して利益を得ることです。「労働者供給」は、職業安定法44条によって、原則、禁止されています。例外は、労働組合が厚生労働大臣の許可を受けて無料でおこなう場合だけです。
「労働者派遣」は、自分の雇用している労働者を他人に提供(派遣)して利益を得ることです。原則、解禁されていますが、労働者派遣法59条によって、建設業務と港湾運送業務への「労働者派遣」は禁止されています。
「労働者供給、労働者派遣、労働者送出」の中で、建設業務で唯一認められているのが、「労働者送出」です。
「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」(建設労働法)第31条によって、建設業務への労働者送出が認められています。自分が雇用する労働者を他人に提供(送出)して利益を得るという点で「労働者派遣」と似ていますが、以下のように「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」(建設労働法)第31条に書かれているように、いろいろな条件を満たす必要があり、使いづらいということで現実には、「労働者送出」は広がりを見せていないようです。
建設労働法第31条第1項 建設業務労働者就業機会確保事業(労働者送出事業)を行おうとする事業主は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
同第2項 前項の許可を受けようとする事業主は、次に掲げる事項を記載した申請書を厚生労働大臣に提出しなければならない。
1 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
2 法人にあっては、その役員の氏名及び住所
3 建設業務労働者就業機会確保事業(労働者送出事業)を行う事業所の名称及び所在地
4 雇用管理責任者の氏名及び住所
同第3項 前項の申請書には、建設業務労働者就業機会確保事業(労働者送出事業)を行う事業所ごとの当該事業に係る事業計画書、当該事業に係る実施計画について認定があったことを証する書面その他厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。
同第4項 前項の事業計画書には、厚生労働省令で定めるところにより、建設業務労働者就業機会確保事業(労働者送出事業)を行う事業所ごとの当該事業に係る送出労働者の数、建設業務労働者の就業機会確保(労働者送出)に関する料金の額その他建設業務労働者の就業機会確保(労働者送出)に関する事項を記載しなければならない。
同第5項 厚生労働大臣は、第1項の許可をしようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。
また、建設労働法第45条には、次のようにさだめられています。
建設労働法第45条 受入事業主がその指揮命令の下に労働させる送出労働者の当該建設業務労働者の就業機会確保(労働者送出)に係る就業に関しては、当該送出事業主を当該受入事業主の請負人とみなして、労働保険の保険料の徴収等に関する法律の規定(同法第3条に規定する労災保険に係る労働保険の保険関係に係るものに限る。)を適用する。(アンダーラインは海野)
アンダーラインの箇所の意味するものは、送出された労働者の、受入事業主と送出事業主の関係を請負契約の関係とみなすということです。これにより、受入事業主が元請であれば、受入事業主の労災保険が適用になるし、また受入事業主の上に元請がいる場合は、その元請の労災が適用になる、そういうことになるわけです。この部分は、元請責任を明確にすべきだという全建総連の要求にもとづいてそうなったものです。
◎ 大手企業交渉での「偽装請負、派遣、労働者供給」関係の要求について
全建総連関東地協の大手企業交渉での「偽装請負、派遣、労働者供給」関係の要求として、次のような趣旨のものが、かかげられています。
@ 「元請と雇用関係にない労働者の賃金や元請と請負関係にない労務費を、『応援手間』として元請が赤伝で差し引く行為は、『労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させる行為』(職業安定法第44条違反)のおそれがあります。ただちにやめてください」
A 「建設現場では、下請の労働者を元請が、自社の作業員として名簿登録し作業指揮を直接行ったり、下請の労働者に自社のヘルメットを提供し自社の作業員と同様に作業指揮を行ったり、あるいは単なる肉体的な労働力の提供だけであったり、請負といえる基準に該当しない事例が見られます。これらは『労働者供給事業』、『偽装請負』のおそれがあります。『労働者供給事業』、『偽装請負』と判断された場合の元請責任を明確にしてください」
@、Aともわかりづらいとの指摘を受けています。
少しかじって、食べてみて、少しでもわかりやすく説明できたらと思い、以下を記述します。
@ 「元請と雇用関係にない労働者の賃金や元請と請負関係にない労務費を、『応援手間』として元請が赤伝で差し引く行為は、『労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させる行為』(職業安定法第44条違反)のおそれがあります。ただちにやめてください」
元請と雇用関係にある労働者を元請の指揮命令の下に労働させる行為は、言うまでもなく適法な行為です。この労働者を「応援」に入れたのだとすれば、その賃金を「応援手間」として赤伝で差し引く行為が、ただちに違法行為になるわけではありません。国土交通省『建設業法令遵守ガイドライン』によれば、元請が赤伝で一方的に差し引く行為は建設業法違反のおそれがあります。
元請と請負関係にある労務費であれば、言い換えると、別の下請と請負契約を結び、その下請を「応援」に入れたということであれば、その分を「応援手間」として赤伝で差し引く行為が、ただちに違法行為になるわけではありません。前述のように、国土交通省『建設業法令遵守ガイドライン』によれば、元請が赤伝で一方的に差し引く行為は建設業法違反のおそれがあります。
自らと雇用関係にない労働者を供給する行為は、「労働者供給」として職業安定法44条によって禁止されています。同様に「『労働者供給』として供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させる行為」も、職業安定法44条によって禁止されています。
(禁止の例外は、労働組合が厚生労働大臣の許可を受けて無料でおこなう「労働者供給」だけです)
別の業者等が自分と雇用関係にない労働者を供給し、供給されたその労働者を元請が自らの指揮命令の下に労働させ、その分を『応援手間』として元請が赤伝で差し引く行為は、『労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させる行為』(職業安定法第44条違反)のおそれがあります。
なお、別の業者等が自分と雇用関係にある労働者を提供し、提供されたその労働者を元請が自らの指揮命令の下に労働させたとすれば、それは、労働者派遣法59条が禁止する建設業務への労働者派遣となり、違法派遣となります。
@の要求については、次のように、「元請と雇用関係にない労働者の賃金や元請と請負関係にない労務費を、『応援手間』として元請が赤伝で差し引く行為は、『労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させる行為』(職業安定法44条違反)のおそれがあります。また、労働者派遣法59条が禁止する建設業務への労働者派遣(違法派遣)のおそれがあります。ただちにやめてください」とアンダーラインの部分を追加したほうがわかりやすいでしょう。
A 「建設現場では、下請の労働者を元請が、自社の作業員として名簿登録し作業指揮を直接行ったり、下請の労働者に自社のヘルメットを提供し自社の作業員と同様に作業指揮を行ったり、あるいは単なる肉体的な労働力の提供だけであったり、請負といえる基準に該当しない事例が見られます。これらは『労働者供給事業』、『偽装請負』のおそれがあります。『労働者供給事業』、『偽装請負』と判断された場合の元請責任を明確にしてください」
Aについては、以下のように「建設業務への違法派遣」を追加するとわかりやすくなります。(@の場合もそうでしたが)
「建設現場では、下請の労働者を元請が、自社の作業員として名簿登録し作業指揮を直接行ったり、下請の労働者に自社のヘルメットを提供し自社の作業員と同様に作業指揮を行ったり、あるいは単なる肉体的な労働力の提供だけであったり、請負といえる基準に該当しない事例が見られます。これらは『労働者供給事業』、『偽装請負』、『建設業務への違法派遣』のおそれがあります。『労働者供給事業』、『偽装請負』、『建設業務への違法派遣』と判断された場合の元請責任を明確にしてください」
厚生労働省の示す基準によれば、「単に肉体的な労働力を提供する」場合は請負に該当しません。
◎ ――――― 労働者派遣 労働者供給 職業安定法 ―――――
職業安定法第64条は、「職業安定法第44条の規定に違反した者は、これを1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する」とさだめています。
それでは、職業安定法44条の規定とは何か?
職業安定法第44条 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。
職業安定法第45条 労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。
上記の職業安定法64条、44条、そして45条を総合してとらえると、次のようになるのがわかります。
労働者供給事業をおこなったり、労働者供給事業をおこなう者から供給される労働者を自らの指揮命令のもとに労働させたりすると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金になる、ということです。ただし、労働組合等が厚生労働大臣の許可を受け、かつ無料でおこなう場合は、労働者供給事業をおこなうことができる、ということです。
労働組合が許可を受けて無料でおこなう場合を除いて、労働者供給事業をおこなうことは、懲役刑をもって罰せられるような犯罪だということです。職業安定法はこのように厳しく、労働者供給事業を禁止しています。
「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(労働者派遣法)も違反行為に対して、同様の罰則を設けています。
労働者派遣法第59条は、以下の者を1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する、とさだめています。
○ 港湾運送業務や建設業務で労働者派遣事業をおこなった者
○ 厚生労働大臣の許可を受けないで一般労働者派遣事業をおこなった者
また労働者派遣法第60条は、以下の者を6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する、と定めています。
○ 厚生労働大臣に届出をしないで特定労働者派遣事業をおこなった者
それでは、労働者供給と労働者派遣との違いは何か? 一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業との違いは何か? 次に説明します。
三楠正広氏の説明を参考にさせていただくと、以下のようになります。
@ 労働者派遣
労働者派遣とは、派遣元事業主の雇用する労働者を派遣先の指揮命令を受けて、この派遣先のために労働に従事させること。
派遣元と派遣労働者の間に雇用関係があり、派遣元と派遣先の間に労働者派遣契約が締結され、この契約に基づき、派遣元が派遣先に労働者を派遣し、派遣先は派遣労働者を指揮命令する。
労働者派遣事業には、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の2種類がある。
A 特定労働者派遣事業
特定労働者派遣事業とは、常用雇用労働者(派遣元が常用雇用している労働者)を派遣する事業であり、厚生労働大臣に届出する。
B 一般労働者派遣事業
一般労働者派遣事業とは、登録型(派遣元に登録しておき、派遣先に派遣する際に派遣元が雇用する)や臨時・日雇の労働者を派遣する事業であり、厚生労働大臣の許可を受ける。
C 労働者供給
労働者供給とは「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣に該当する者は含まない」(職業安定法第4条第6項)
職業安定法第4条第6項 この法律において「労働者供給」とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(労働者派遣法)第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする。
供給元と労働者の間に雇用関係がないもの、供給元と労働者の間に雇用関係がある場合でも供給先に労働者を雇用させることを約して行われるものは、職業安定法第44条に基づき「労働者供給事業」として禁止。強制労働、中間搾取、使用者責任の不明確化などの弊害があり、職業安定法44条により禁止されている。例外は、労働組合が厚生労働大臣の許可を受けて無料で行う場合だけである。
◎ ────── 労働者供給、派遣、出向の区別、相違は? ──────
「労働者供給」というのは、自分が雇用していない労働者を他人に提供(供給)して利益を得ることです。「労働者供給」は、職業安定法44条によって、原則、禁止されています。例外は、労働組合が厚生労働大臣の許可を受けて無料でおこなう場合だけです。
「労働者派遣」は、自分の雇用している労働者を他人に提供(派遣)して利益を得ることです。原則、解禁されていますが、労働者派遣法59条によって、建設業務と港湾運送業務への「労働者派遣」は禁止されています。
出向には2種類あり、もとの会社に籍を置いたままの出向(在籍型出向)と出向先の会社に籍を移した出向(移籍型出向)があります。「移籍型出向」は要するに、移籍先(出向先)に雇用されるということです。
どちらの会社にも籍がない「出向」は、労働者供給であり、偽装出向になります。また、もとの会社に籍を置いたまま「出向」先の会社の指揮命令下で建設業務に従事することは、建設業務への違法派遣となり、偽装出向になります。
ここで出てくる疑問は、もとの会社に籍を置いたまま「出向」先の会社の指揮命令下で働くことが「派遣」だとすれば、もとの会社に籍を置いたままの出向(在籍型出向)と派遣とが同一になってしまい、どこが違うのか? ということです。
インタネットで出向を検索してみました。
「民主法律協会派遣労働研究会 派遣労働者の悩み110番相談」HP
<http://www.asahi-net.or.jp/~RB1s-WKT/110.htm>
に、「出向と派遣とはどう違う?」が載っていました。
要約すると、同HPでは、次のように説明されています。
(以下の「出向」は全て、「在籍型出向」のことです――海野)
在籍出向と派遣は、きわめて類似しています。実際にも、また、法的にも出向と派遣を区別するのが難しい事例も少なくありません。
その会社では「出向」という用語を用いていたとしても、実際には、「派遣」と考えられる場合も出てきます。
労働省(旧労働省のことだと思います――海野)の解釈では、「出向」とは出向元と出向先の両方で二重の雇用契約が成立するものであるとされています。
労働者にとっては、「出向元との間の雇用契約」と「出向先との間の雇用契約」の二重の雇用契約が成立することになります。出向元と出向先の間に出向契約が結ばれることが前提になります。
この出向契約にもとづいて、出向労働者の労働条件や業務内容などの大枠が決まることになります。「出向先」が労働者を指揮命令して労働させる使用者であると同時に労働契約上の相手当事者として雇用関係が存在することになります。つまり、出向では、従来の直接雇用と同様に、「雇用関係」と「使用関係」は分離されていないのです。
これに対して、「派遣」は、派遣元との間にのみ「雇用関係」が存在し、派遣先との間には指揮命令を受けるだけの「使用関係」のみが生ずることになる、というのが労働省の解釈です。
この「雇用関係と使用関係の分離」こそ、労働者派遣の最大の特徴であり、労働者にとっては、使用者責任があいまいになる=労働者の権利保障があいまいになる、という点で大きな問題を生む根源なのです。
◎ ─── 「労働者供給」「派遣」「出向」の区別、相違(2) ───
○ 「労働者供給」というのは、自分が雇用していない労働者を他人に提供(供給)して利益を得ることです。「労働者供給」は、職業安定法44条によって、原則、禁止されています。例外は、労働組合が厚生労働大臣の許可を受けて無料でおこなう場合だけです。
○ 「労働者派遣」は、自分の雇用している労働者を他人に提供(派遣)して利益を得ることです。原則、解禁されていますが、労働者派遣法59条によって、建設業務と港湾運送業務への「労働者派遣」は禁止されています。
○ 「出向」には2種類あり、もとの会社に籍を置いたままの出向(在籍型出向)と出向先の会社に籍を移した出向(移籍型出向)があります。「移籍型出向」は要するに、移籍先に雇用される、ということです。
○ どちらの会社にも籍がない「出向」は、労働者供給であり、偽装出向になります。また、もとの会社に籍を置いたまま「出向」先の会社の指揮命令下で建設業務に従事することは、建設業務への違法派遣となり、偽装出向になります。
○ ここで出てくる疑問は、もとの会社に籍を置いたまま「出向」先の会社の指揮命令下で働くことが「派遣」だとすれば、もとの会社に籍を置いたままの出向(在籍型出向)と派遣とが同一になってしまい、どこが違うのか? ということです。
○ 「出向」(在籍出向)とは、労働者から見て、「出向元との間の雇用契約」と「出向先との間の雇用契約」の二重の雇用契約が成立することです。言い換えると、出向労働者は出向元と出向先の両方に籍がある、ということです。出向元と出向先の間に出向契約が結ばれることが前提になります。「出向先」が労働者を指揮命令して労働させる使用者であると同時に労働者との間に雇用関係がある雇用主になります。出向(在籍出向)では、「雇用」と「使用」は分離していないのです。これに対して、「派遣」は、派遣元との間にだけ「雇用関係」があり、派遣先との間には指揮命令を受ける「使用関係」だけが生まれることになるわけです。
○ 従って、出向(在籍出向)の場合、労働基準法107条(労働者名簿)、108条(賃金台帳)にもとづき、出向労働者の労働者名簿、賃金台帳は、出向元、出向先の両方で作成、備え付けなければならないということになるわけです。
「労働基準法第107条」 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。
「労働基準法第108条」 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。
◎ 国土交通省中部地方整備局「請負、労働者派遣、労働者供給の違い」
国土交通省中部地方整備局建政部建設産業課が2003年3月に出した「続『公共工事の発注者等のための建設業法』 施工体制点検時のチェックポイントと留意点」の中に、「『請負』と『労働者派遣事業』、『労働者供給事業』との違い」があります。
国土交通省の見方を知る上で参考になると思い、以下に要旨を紹介しておきます。
1 請負
「請負」とは、仕事の完成を目的とするもので、注文者と労働者の間には指揮命令関係を生じません。(注文者から受注した請負業者が、労働者を指揮命令する、ということです。発注者と元請との関係では発注者が注文者であり、元請と1次下請との関係では元請が注文者、以下、1次と2次の関係では1次が注文者、等々と連鎖していきます──海野)
2 労働者派遣
「労働者派遣事業」とは、派遣元事業主が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、この派遣先のために労働に従事させることを業として行うことをいいます。労働者派遣事業は、許可要件等を満たしたものが、許可等を受けた場合に行うことができるものです。(港湾運送業務、建設業務、警備業務、医療関係業務は、労働者派遣が禁止されています──海野)
3 労働者供給
労働者派遣事業は、1986年の労働者派遣法の施行に伴い改定される前の職業安定法44条によって、労働組合が労働大臣の許可を受けて無料で行う場合を除き全面的に禁止されていた労働者供給事業の中から、供給元と労働者との間に雇用関係があり、供給先と労働者との間に指揮命令関係しか生じさせないような形態を取り出し、種々の規制の下に適法に行えるようにしたものです。そのため、現在、職業安定法44条に基づき労働者供給事業として(労働組合が労働大臣の許可を受けて無料で行う場合を除き)全面的に禁止されているのは、以下の2形態に該当するものです。
@ 供給元と労働者の間に雇用関係がないもの
供給元が雇用関係にはないが親分子分的な封建的支配関係を有する労働者について供給先に労働者を雇用させること(又は指揮命令して使用すること)を約して行われるもの。(「親分子分的な封建的支配関係を有する労働者」に限定し、狭めるのは、間違っているのではないか? 単に「供給元が雇用関係にない労働者について供給先に労働者を雇用させること(又は指揮命令して使用すること)を約して行われるもの」とすべきではないでしょうか? ──海野)
A 供給元と労働者の間に雇用関係があるもの
供給元が雇用関係のある労働者について供給先に労働者を雇用させることを約して行われるもの。(供給元との間に雇用関係があるまま供給先に雇用させることは、労働者供給というより出向(在籍型出向)になります。労働者供給という場合、供給する時点以降、供給元との雇用関係はなくなります。言い換えると、@と同様、雇用していない労働者を供給先に供給するということになるのではないでしょうか? @、Aの2形態ということで分ける意味はないような気がするのですが──海野)
◎ ── 労働者派遣法が規定する罰則 派遣元 派遣先 ──
建設業務への労働者派遣は禁止されていますが、建設現場の事務、施工管理業務への派遣は認められています。言い換えると、建設現場の事務員、現場監督は、派遣が認められている、ということです。大手ゼネコン等の回答でも、派遣監督は一定の広がりを見せています。
そのようなこともあり、以下に、労働者派遣法での罰則を調べてみました。ほとんどの罰則は派遣元にのみ適用されますが、一部、派遣先に適用される罰則もあるのが、わかりました。
○ 労働者派遣法第58条 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣をした者は、1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。(派遣元のみが罰則の対象です──海野)
○ 同第59条 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。(派遣元のみが罰則の対象です──海野)
1.第4条第1項又は第15条の規定に違反した者
2.第5条第1項の許可を受けないで一般労働者派遣事業を行った者
3.偽りその他不正の行為により第5条第1項の許可又は第10条第2項の規定による許可の有効期間の更新を受けた者
4.第14条第2項又は第21条の規定による処分に違反した者
(以下は、第59条に関連する条文または説明です)
「第4条第1項」 何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行ってはならない。
1.港湾運送業務
2.建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう)
3.警備業法に掲げる業務その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務
「第15条」 一般派遣元事業主は、自己の名義をもって、他人に一般労働者派遣事業を行わせてはならない。
「第14条第2項」 (厚生労働大臣が一般派遣元事業主に対して一般労働者派遣事業の全部又は一部の停止を命ずることができることを定めた規定です──海野)
「第21条」 (厚生労働大臣が特定派遣元事業主に対して特定労働者派遣事業の廃止又は停止を命ずることができることを定めた規定です──海野)
○ 同第60条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。(以下に出てくる第49条の3第2項違反は、派遣元だけでなく派遣先も、罰則の対象です──海野)
1.第16条第1項に規定する届出書を提出しないで特定労働者派遣事業を行った者
2.第22条又は第49条の3第2項の規定に違反した者
3.第49条の規定による処分に違反した者
(以下は、第60条に関連する条文又は説明です)
「第22条」 特定派遣元事業主は、自己の名義をもって、他人に特定労働者派遣事業を行わせてはならない。
「第49条の3第1項」 労働者派遣をする事業主又は労働者派遣の役務の提供を受ける者がこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実がある場合においては、派遣労働者は、その事実を厚生労働大臣に申告することができる。 「第49条の3第2項」 労働者派遣をする事業主及び労働者派遣の役務の提供を受ける者は、前項の申告をしたことを理由として、派遣労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
「第49条第1項」 (厚生労働大臣が派遣元事業主に対して労働者派遣事業の改善を命ずることができることを定めた規定です──海野)
「第49条第2項」 厚生労働大臣が、派遣先に違反がある場合に、派遣元事業主に対して派遣先への労働者派遣の停止を命ずることができることを定めた規定です──海野)
○ 同第61条 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。(第41条、第42条、第50条、第51条第1項の違反は、派遣先に罰則が及びます──海野)
1.第5条第2項に規定する申請書、第5条第3項に規定する書類、第16条第1項に規定する届出書又は同条第2項に規定する書類に虚偽の記載をして提出した者
2.第11条第1項、第13条第1項、第19条第1項、第20条若しくは第23条第3項の規定による届出をせず、若しくは虚偽の届出をし、又は第11条第1項若しくは第19条第1項に規定する書類に虚偽の記載をして提出した者
3.第34条、第35条、第35条の2第1項、第36条、第37条、第41条又は第42条の規定に違反した者
4.第50条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
5.第51条第1項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
(以下は、第61条に関連する条文又は説明です)
「第5条第2項に規定する申請書」 (一般労働者派遣事業を行おうとする者は厚生労働大臣の許可を受けなければならないので、そのために提出する申請書──海野)
「第5条第3項に規定する書類」 (第5条第2項に規定する申請書には、一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る事業計画書その他厚生労働省令で定める書類を添付しなければならないことを、第5条第3項は定めています──海野)
「第16条第1項」 特定労働者派遣事業を行おうとする者は、届出書を厚生労働大臣に提出しなければならない。
「第16条第2項」 前項(第16条第1項)の届出書には、特定労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る事業計画書その他厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。
「第11条第1項」 (一般派遣元事業主による変更の届出を定めています──海野)
「第13条第1項」 (一般派遣元事業主による事業廃止の届出を定めています──海野)
「第19条第1項」 (特定派遣元事業主による変更の届出を定めています──海野)
「第20条」 (特定派遣元事業主による事業廃止の届出を定めています──海野)
「第23条第3項」 派遣元事業主は、「海外派遣」をしようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。
「第34条」 (派遣元が労働者派遣を行おうとするときは、事前に派遣労働者に就業条件等を明示しなければならないことを定めた規定です──海野)
「第35条」 派遣元事業主は、労働者派遣をするときは、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を派遣先に通知しなければならない。
1.当該労働者派遣に係る派遣労働者の氏名
2.当該労働者派遣に係る派遣労働者に関する健康保険法第39条第1項の規定による被保険者の資格の取得の確認、厚生年金保険法第18条第1項の規定による被保険者の資格の取得の確認及び雇用保険法第9条第1項の規定による被保険者となったことの確認の有無に関する事項であって厚生労働省令で定めるもの
3.その他厚生労働省令で定める事項
「第36条」 (派遣元事業主による派遣元責任者の選任義務を定めています──海野)
「第37条」 (派遣元事業主による派遣元管理台帳の作成義務を定めています──海野)
「第41条」 (派遣先による派遣先責任者の選任義務を定めています──海野)
「第42条」 (派遣先による派遣先管理台帳の作成義務を定めています──海野)
「第50条」 厚生労働大臣は、この法律を施行するために必要な限度において、厚生労働省令で定めるところにより、労働者派遣事業を行う事業主及び当該事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、必要な事項を報告させることができる。
「第51条第1項」 厚生労働大臣は、この法律を施行するために必要な限度において、所属の職員に、労働者派遣事業を行う事業主及び当該事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける者の事業所その他の施設に立ち入り、関係者に質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
○ 同第62条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第58条から前条(第61条)までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
◎ ─── 労働者派遣法 職業安定法 罰則について ───
○ 職業安定法44条 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。(違反には、職業安定法64条により、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」)
○ 職業安定法45条 労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。
上記のように、労働組合等が厚生労働大臣の許可を受けておこなう場合を除き、労働者供給事業は禁止されています。
また、ここは注意深く把握してほしいのは、職業安定法44条に違反すると、労働者供給をおこなう者も、供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させる者も、両者とも職業安定法64条により、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処せられる、という点です。
○ 職業安定法64条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを1年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
(1〜8を略します)
9 (職業安定法)44条の規定に違反した者
他方、労働者派遣法は、派遣元のみに罰則を適用し、派遣先には罰則がない、と言われています。労働者派遣法を調べてみました。確かにそのようです。
たとえば、
○ 労働者派遣法4条1項 何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行ってはならない。
1 港湾運送業務
2 建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう)
3 警備業法に掲げる業務その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務
○ 労働者派遣法59条 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
1 (労働者派遣法)4条1項の規定に違反した者
(以下略)
上記のように、建設業務等に違法派遣した者(派遣元)は罰せられるが、それを受け入れた側(派遣先)に罰則は適用されないということです。
◎ 建設産業 「労働者供給」 「労働者派遣」 「偽装請負」 「偽装出向」
(以下は、三楠正広さんの書いた論文、資料等を参考にさせていただき、書かせていただきました)
1 労働者供給は禁止
○ 労働基準法6条 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。(違反には、労働基準法118条により、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」)
○ 職業安定法44条 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。(違反には、職業安定法64条により、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」)
○ 職業安定法45条 労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。
上記のように、労働組合等が厚生労働大臣の許可を受けておこなう場合を除き、労働者供給事業は禁止されています。
2 在籍出向、労働者派遣、請負、業務委託
「在籍出向」 出向労働者と出向元との間に雇用関係が存在すると同時に出向労働者と出向先との間にも雇用関係が発生するので、出向先の指揮命令の下で、業務に従事させることができる形態。
「労働者派遣」 派遣契約により、派遣元が雇用する派遣労働者を派遣先の指揮命令の下で、業務に従事させることができる形態。
「請負」 請負契約の注文者は、請負業者の労働者を指揮命令して業務に従事させることができない。
「業務委託」 事務処理など業務の処理を委託する形態。業務委託契約の注文者は、受託業者の労働者を指揮命令して業務に従事させることができない。
3 建設業での違法な4形態
建設業での違法な4形態として、労働者供給、労働者派遣、偽装請負、偽装出向が存在します。
○ 「労働者供給」 自分と雇用関係にない労働者を他人に「供給」して、他人の指揮命令を受けて労働に従事させることを、「労働者供給」と言い、前述のように職業安定法44条等によって禁止されています。
○ 「労働者派遣」 自分と雇用関係にある労働者を他人に「派遣」して、他人の指揮命令を受けて労働に従事させることを、「労働者派遣」と言います。港湾運送業務、建設業務、警備業務、病院等での医療関係の業務については、労働者派遣は禁止されています。
建設現場での事務や施工管理業務は、「建設業務」に該当せず、労働者派遣が認められています。
建設労働者の雇用の改善等に関する法律(建設雇用改善法)31条が規定する「建設業務労働者就業機会確保事業」の要件を満たせば、「労働者の送出」が建設業でも認められています。
「労働者の送出」 事業主が自己の常時雇用する建設業務労働者を、当該雇用関係の下に、他の事業主の指揮命令を受けて、当該他の事業主のために建設業務に従事させること。建設業で禁止されている「労働者派遣」の例外を形成しています。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(労働者派遣法)4条 何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行ってはならない。
1 港湾運送業務
2 建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう)
3 警備業法に掲げる業務その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務
○ 「偽装請負」 外部から派遣で来てもらっているのに、労働者派遣契約を結ばず、請負契約を装うことです。注文者と請負業者との間に請負契約が成立し、請負業者と労働者との間に雇用関係、指揮命令関係の両方が存在し、注文者と労働者との間には雇用関係も指揮命令関係も存在せず、労働者は注文者との関係ではただ業務を遂行するだけという場合、適法な請負になります。注文者と請負業者との間に請負契約が成立し、請負業者と労働者との間に雇用関係が存在していても、注文者と労働者との間に指揮命令関係が存在する場合は、「偽装請負」となり、要するに労働者派遣となります。注文者と請負業者との間に請負契約が成立し、請負業者と労働者との間に雇用関係が存在していても、注文者の従業員が請負人の従業員を指揮命令している場合も、同様に「偽装請負」となり、労働者派遣となります。
また、実態としては労働者に業務の指揮命令を行なっている(雇用している)のに、雇用契約を結ばず、請負契約のように装うのも、「偽装請負」です。
単に肉体的な労働力を提供するのは、請負にはなりません。
○ 「偽装出向」 前述のように、出向者は、出向元、出向先双方と雇用契約関係が必要。「出向」という形をとっていても、出向先と雇用関係がなければ、「出向」要件を満たしていないので、偽装出向となります。
出向元と出向先の間に出向契約が結ばれることが前提になります。出向先が労働者を指揮命令して労働させる使用者であると同時に労働者との間に雇用関係がある雇用主になります。出向では、雇用と使用は分離していないのです。これに対して、派遣は、派遣元との間にだけ「雇用関係」があり、派遣先との間には指揮命令を受ける「使用関係」だけが生まれることになるわけです。
◎ 「一人親方」との下請負契約はあり得ないのではないか? 偽装請負か?
元請─1次下請、1次下請─2次下請、2次─3次、等々、同じなのですが、元請や上位下請がいわゆる「一人親方」との間に下請負契約を結ぶことは、形式上はあり得ても、実体としてはあり得ないのではないか? よく考えると、そうなるのではないか?
というのは、
(請負契約で)元請や上位下請からの指揮命令は、下位下請の現場責任者等事業主の組織をとおし、下位下請の責任者から作業員に行なうものであること。元請や上位下請からの指揮命令が、下位下請の作業員に直接おこなわれることは、偽装請負となる、わけですし、
また、
職業安定法施行規則第4条が、請負であるためには、次の4条件を全て満たす必要があると、定めているからです。
1 作業の完成について事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負うものであること。
2 作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること。
3 作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負うものであること。
4 自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要なる簡易な工具を除く。)若しくはその作業に必要な材料、資材を使用し又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
東京労働局などのまとめによると、偽装請負のパターンは五つだとのことです。建設業にあてはめると、次のように表現できるのではないかと思います。
@ 請負という形式を装いながら、実体は、元請が下請の労働者を、また上位下請が下位下請の労働者を、直接指揮命令するもの。
A 実体は、元請が下請の労働者を、また上位下請が下位下請の労働者を、直接指揮命令しているが、書類上、下請業者や下位下請業者を現場責任者として、その責任者に指揮命令しているように装い、違法をのがれようとするもの。
B 社員と複数の請負や派遣労働者が混在するなかで、同じ作業をしていながら、どこに雇われているのか、誰が責任者かもわからなくなってしまうパターン。
C 「一人親方」のように、一人で工事を請け負っている形式にしてしまうもの。
D 派遣会社からの出向という形をとるもの。旧労働省は1986年の告示で、法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであって、目的が派遣にあるときは偽装請負であるとしている、とのことです。
上記のCのパターンが偽装請負だとすれば、やはり一人親方との下請負契約というのはあり得ない、ということになるのではないかと思います。
◎ 偽装請負と派遣法・建設業法・労働安全衛生法 下請への打撃?
1 偽装請負と派遣法・建設業法・労働安全衛生法
みなとみらい労働法務事務所の 菊一 功 所長の講演を聞くことができました。「偽装請負に関連して派遣法・建設業法・労働安全衛生法の接点」というようななかみの講演でした。また、同氏の書いた『偽装請負 労働安全衛生法と建設業法の接点』(労働新聞社)を読みました。以下に、印象に残ったところを、羅列します。
○ 請負代金が「労務単価×人数×日数・時間数」となっていると、請負とは言えない。同時に、請負代金が「労務単価×人数×日数・時間数」となっているというだけで、派遣である、ということにはならない。
○ (請負契約で)元請からの指揮命令は、下請現場責任者等事業主の組織をとおし、その責任者から作業員に行なうものであること。元請からの指揮命令が、下請の作業員に直接おこなわれることは、偽装請負となる。
同時に、元請が下請現場責任者等事業主の組織に指揮命令をおこなわないことは、丸投げ(一括下請負)を意味する。
○ 建設工事の施工体制で、1次下請が元請との打ち合わせの結果を2次下請に伝えるだけの行為をおこなっているだけでは、1次下請は当該工事に実質的に関与しているとは言いがたく、丸投げに該当する可能性が高い。
○ 下請が現場に形式的に責任者を置いて、元請の指示を下請の個々の労働者に伝えるだけでは、元請が下請の個々の労働者に直接指示しているのと同じ。偽装請負のパターン。
○ 派遣労働者・在籍出向者の監理技術者・主任技術者は違反。監理技術者・主任技術者は、工事を請け負った建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係(3ヶ月以上の雇用関係)が必要。移籍出向は認められるが、一つの工事のみの短期間の移籍出向の場合は違反となる。
○ 派遣元のみ処罰……派遣法違反
1 建設業で禁止されている労務者の派遣をした場合。
2 偽装請負を行なった場合。
派遣法の処罰対象は派遣元であり、派遣先は対象外である。しかし、理論的には、派遣先についても共犯として派遣法違反で立件される可能性はある。
○ 派遣元と派遣先の双方を処罰……職業安定法違反
1 二重派遣の場合。
2 労働者供給事業を行なった場合。
○ 建設業者が派遣法違反、職業安定法違反で罰金刑を受けると……建設業許可不更新(5年)
○ 下請が派遣労働者を使用したときの元請の責任
建設業法による「指示処分」の対象となるおそれがある。
○ 建設業務への労働者派遣は解禁されていないが、建設業は、重層下請構造になっていて、1次下請、2次、3次と重層化が進むにつれて、単に労働者のみ現場に入れ、責任者が不在の状態となり、請負か派遣か区別がつかなくなっているのが実態である。
○ 元請が下請労働者を直接指揮命令すると、そこに元請との使用従属関係が発生し、黙示(もくし)の労働契約が成立する。
○ 派遣法施行以来、派遣法を適用して、元請の下請労働者に対する事業者責任を追及される事案が多くなってきた。行政や裁判所は、元請が下請労働者を直接指揮命令している場合、請負を否定した上、派遣労働者として認定して、派遣先としての事業者責任を元請に負わせている。
○ 災害が発生すると、安全措置義務違反と安全配慮義務違反に関して、重層請負での元請の責任が厳しく追及される事案が多くなっている。
○ 偽装請負は、労働者供給との考えもあるが、行政は派遣として扱っている。
○ 派遣と労働者供給の違いは、自己の労働者であるか否かであり、労働者供給は労働者の供給先と労働者の間に雇用関係があるのが特徴である。
2 下請への打撃?
(1) 処罰されるのは?
みなとみらい労働法務事務所の 菊一 功 所長の講演や著書でも述べられていましたが、派遣法違反で処罰されるのは派遣元のみで、職業安定法違反のときは派遣元、派遣先の双方が処罰されます。
菊一功氏は次のように整理しています。
○ 派遣元のみ処罰……派遣法違反
@ 建設業で禁止されている労務者の派遣をした場合。
A 偽装請負を行なった場合。
派遣法の処罰対象は派遣元であり、派遣先は対象外である。しかし、理論的には、派遣先についても共犯として派遣法違反で立件される可能性はある。
○ 派遣元と派遣先の双方を処罰……職業安定法違反
@ 二重派遣の場合。
A 労働者供給事業を行なった場合。
○ 建設業者が労働者派遣法違反、職業安定法違反で罰金刑を受けると……建設業許可不更新(5年)
○ 下請が派遣労働者を使用したときの元請の責任
建設業法による「指示処分」の対象となるおそれがある。
○ 派遣法施行以来、派遣法を適用して、元請の下請労働者に対する事業者責任を追及される事案が多くなってきた。行政や裁判所は、元請が下請労働者を直接指揮命令している場合、請負を否定した上、派遣労働者として認定して、派遣先としての事業者責任を元請に負わせている。
(2) 下請への打撃?
建設現場の重層下請構造下で、偽装請負、派遣法違反を追及していくと、下請が派遣元で元請が派遣先になっているわけですから、徹底的に追及すると、理論上、派遣元である下請のみが処罰され(懲役または罰金)、建設業許可不更新(5年)という致命的打撃を受けることになります。
また、職業安定法違反(二重派遣、労働者供給)で徹底的に追及していくと、派遣元、派遣先の双方が処罰され、言い換えると下請、元請の双方が処罰され(懲役または罰金)、元下の双方が建設業許可不更新(5年)という致命的打撃を受けることになります。
少なくとも、理論上は、そうなるわけであり、下請への打撃を結果します。偽装請負等を追及していく上で、注意すべき点だと思います。
その意味で、重層下請構造の解消・廃止の追求、一括下請負(丸投げ)の追及、「元請の特定建設業者の通報義務」の追求と同じ側面を持っています。
「諸刃(もろは)の剣(つるぎ)」なのです。
建設業法22条の1 建設業者は、その請け負った建設工事を、如何なる方法をもってするを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。
建設業法22条の2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負った建設工事を一括して請け負ってはならない。
建設業法24条の6の第1項 発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、当該建設工事の下請負人が、その下請負に係る建設工事の施工に関し、この法律の規定又は建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるものに違反しないよう、当該下請負人の指導に努めるものとする。
建設業法24条の6の第2項 前項の特定建設業者は、その請け負った建設工事の下請負人である建設業を営む者が同項に規定する規定に違反していると認めたときは、当該建設業を営む者に対し、当該違反している事実を指摘して、その是正を求めるように努めるものとする。
建設業法24条の6の第3項 第1項の特定建設業者が前項の規定により是正を求めた場合において、当該建設業を営む者が当該違反している事実を是正しないときは、同項の特定建設業者は、当該建設業を営む者が建設業者であるときはその許可をした国土交通大臣若しくは都道府県知事又は営業としてその建設工事の行われる区域を管轄する都道府県知事に、その他の建設業を営む者であるときはその建設工事の現場を管轄する都道府県知事に、速やかに、その旨を通報しなければならない。
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