―――――――――「建設労組の不払い対策活動」関連―――――――――
海野和夫
◎ ─── 公共工事に準ずる工事での元下間の「不払い」問題 ───
発注者 公共に準ずる機関
元請 A社
1次下請 B社
2次下請 C社
3次下請 D社等数社
以上のような重層下請構造の下で発生した、元下間、下請間の「不払い」トラブルです。
工事は、○○外壁修繕他工事です。
多額の工事代金不払い被害を受けていると、2次下請のC社は主張しています。
1次―2次間での多額の未払いトラブルの発生です。
2007/10/15におこなわれた1次と2次との話し合いでは、1次は「追加工事について、ある程度認識している」、「金がない」、「元請から直接、2次が工事代金を受領していい。『代理受領』を認める」と発言しました。(これは、元請から1次への未払い代金600万円が存在し、この600万円を2次が元請から直接受領していい、ということを意味します)
2007/10/29の元請と2次との話し合いのとき、元請も「1次にあと600万円支払っていない」ことを認めました。
@ 着工の大幅な遅れが事実としてあり、2ヶ月の工期が1ヶ月で完成しなければならなくなり、半分の工期になってしまったわけです。工事開始の遅れが、トラブル発生のもとになっています。工期の遅れを取り戻すために、実際に建設工事を施工する下請業者は、相当な無理を強いられます。工事開始の遅れの責任は誰にあるのか? 一つのポイントです。その責任が発注者にあるのか、元請にあるのか、あるいは1次にあるのか?
2次には、工事開始の遅れの責任はありません。
着工の大幅な遅れの責任が主として元請にある可能性が濃厚です。
2007/12/25の元請と2次の交渉のとき、元請は「遅れの原因については、元請の責任の可能性が強いのは認める」と回答しています。
少なくとも、2次に工事開始の遅れの責任はないことは明白ですから、工事開始の遅れに伴う負担を2次に負わせるべきではなく、元請責任での解決が求められます。
A 人工について、延べにすると相当な数の待機が存在し、元請の所長の指示による待機だと、2次は主張しています。
2007/11/21におこなわれた元請、1次、2次の3社交渉のとき、元請は「待ってくれ」、「確保してくれ」と言ったことは認めました。その際1次も「工期が2ヶ月だったのが1ヶ月でやることになったので、2次の言い出したことはわかる」と発言しています。
B 1次が2次に指示して常用の約束で2次に施工させた工事部分があり、この部分の常用人工分が未払いと2次は主張しています。事実とすれば、元請責任での解決が必要です。
元請は「当社の職員の中に、常用の約束をした者はいない」と文書回答してきました。仮にそうだとしても、1次が2次に常用の約束をして施工させたとすれば、その未払いについては、元請が責任を負うことになります。
1次が2次に常用の約束で施工させた工事部分があることについては、それを推測させる1次の書いた文書が残っていますから、その可能性が大きいと思います。
C 多大な人工ロス、材料ロス、手戻り(やり直し)が存在しています。このようなロスを発生させた責任が、元請側にあるのか、2次の側にあるのか、が問題です。元請の不適切な指示がロス発生の原因だと、2次は主張しています。元請の責任で発生したとすれば、国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」にも明記されているように、(ロス発生について)元請に責任がある場合には、元請の負担で解決する必要があります。このような場合に、下請に負担を転嫁するのは、建設業法違反になります。
元請は「不適切な指示はしていない」と文書回答してきました。
D 「やり直し」の一部は、元請に責任がないような箇所もあるようです。「請負契約で決められた工事が適正に行われていないので、適正な工事になるよう指示しただけである」と元請は主張しています。請負契約ですから、2次の責任でロスが生じた部分は、2次の負担で解決せざるを得ないでしょう。
E 元請の所長による指示が全て、口頭での指示であり、書面による指示が行われていないことは、主として元請の責任を問われる部分です。その上、元請として下請指導、現場管理をする上で当然必要な日報が、存在していない、日報が付けられていない、という問題があります。元請の責任が問われます。
「口頭による指示」、「日報の不存在」については、元請も認めています。
F 元請の所長が工期の途中で(元請企業)を退社してしまい、所長交代という事態が発生しています。元請の責任が問われます。
所長の工期途中での退社、交代についても、元請は認めています。
なお、1次も責任を感じているからだと思いますが、毎月少しずつ1次は2次に支払いをおこなっています。
◎ ―――――――― 最近の不払い対策活動から ――――――――
NHKテレビなどでも報じられているように、倒産が増加傾向にあります。特に建設業、中小企業で増加傾向にある、とのことで、今後も増加傾向は続く、とのことです。
あらためて、不払い対策活動の体制を整え、不払い被害を受けた業者、労働者の困難の解決に取り組むことが、緊急の課題です。
その関係で、最近のいくつかの事例を紹介しておきます。(匿名にしてあります)
@ ○○社 民事再生事件
○○社が民事再生で倒産。資材の供給を受けて、住宅新築及び改築工事でのユニットバス(システムバス)の設置作業をおこなっていた「業者」が不払い被害を受けました。
私たちは、形式は「業者」であっても実態は労働者であると主張し、労働債権と認めて保護することを求めて運動。
○○社の代理人弁護士が、「業者」7人の未払金約1200万円について準労働債権(労働債権に準ずる債権)として位置付け、賃金支払確保法の申請をおこないました。ただ、法人の業者の分については準労働債権として認めず、課題として残っています。
A 残土排出、産廃処理での不払い
ゼネコンの現場で、残土排出、産廃処理といった建設業法上の「建設工事」とは言えない仕事での倒産・不払いが発生しています。
重層下請構造の現場でおこった倒産・不払いについては、賃金・工事代金以外のものであっても、元請責任での立替払の対象になるというのが、国土交通省の見解です。
国土交通省関東地方整備局の指導・誘導もあり、残土排出での倒産・不払いについては、大手ゼネコンが立替払いを行ない、円満に解決しました。
産廃処理での倒産・不払いについては、国土交通省関東地方整備局の指導も受けながら、現在、交渉中です。
B 4次とか6次という深い重層下請構造下での倒産・不払い
元請〜4次という重層下請構造、そして元請〜6次という重層下請構造のところで倒産・不払いが発生しています。
国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」も活用しながら、解決をめざし、「元請〜6次」のケースは立替払いを受けることで、解決しました。「元請〜4次」のケースでは、公共工事に準じる工事なので、発注者の独立行政法人UR都市機構に発注者責任での不払い解決を申し入れるなど、交渉中です。
◎ 憲法に基づく人間らしい生活と労働のために――多発する不払いとのたたかい
(以下の文書は、2005年11月20〜21日におこなわれた建設政策研究所等主催の第12回全国建設研究交流集会第10分科会での報告に、多少手を加え、再構成したものです――海野)
1 はじめに
建設産業で多発している倒産・不払いに苦しむ仲間への支援を、憲法を守る闘いに位置づけて報告します。
日本国憲法、特に憲法9条を守る闘いは、「平和・いのち・くらし・仕事を守るための戦後最大の闘い」だと、そういうように強く感じています。憲法9条を守ってこそ、憲法が保障する「基本的人権」、「個人の尊厳」と「生存権」を守ることができると思っていますし、戦争というのはまさに、平和・いのち・くらしのすべてを破壊するものだと考えています。同時に、日本国憲法が保障する基本的人権、個人の尊重、生存権を守る闘いが憲法9条を守ることに通じていくのだと思います。
現実に、建設産業の実態は、倒産、不払い等で悲惨な状態にあります。「長時間労働などでつぶされていく若年労働者」、あるいは「多重債務問題」などにつながります。
憲法や平和を、核兵器の問題を含めて、考える心のゆとり、感情が湧くには、やはり生活が守られているということが前提だと思います。生活がメチャクチャな状態で、平和を守ろうとか、憲法を守ろうとか、考えることはなかなか至難のわざだと思いますので、そういう意味で、建設産業で多発する倒産、不払いの被害から建設労働者、建設中小業者、下請業者を「救済」し、生活を守るたたかいはまさに、憲法9条を守るたたかいにつながっていると信じるものです。
憲法の基本の一つに「個人の尊厳」というのがあります。
これは、民法第1条にあらわれていまして、現在の民法第1条の中には「民法の解釈・運用・運営というのは、個人の尊厳と両性の本質的平等に基づいて行うべきである」とあります。
現実に、倒産・不払いとたたかう上で民法第1条の「個人の尊厳に基づいて、行うべきである」、これを、前提として必ず言います。「賃金が払われない、工事代金が払われない、これは、個人の尊厳を踏みにじるものであり、なんとしても解決する必要がある」というような趣旨で、ここにも憲法が生きていると思います。
この間の長期不況に伴い、建設就業者数は減少を続けています。2005年1月現在の建設就業者数は575万人(総務省「労働力調査」)で、ピーク時が1997年の685万人ですから、実に110万人もの人達が建設現場から退場しています。
建設産業というのは「重層下請構造」と言われていますし、その通りです。特に、最終下請のところでは「一人親方」に見られるように、労働者か業者かが外形上明確でない人達がいっぱいいます。今までは、労働法の保護の外に置かれてきましたが、こういう中で倒産・不払いが多発し、下請業者・労働者を苦しめています。こういうことで、建設労働運動でなんとかしようということになったわけです。
2 「労働者性」拡大の流れ
「賃金支払確保法」適用拡大の流れを建設労働運動は作り出してきました。
先ほど言いましたように、建設産業には、実態としては「労働者」であっても、「施工員」だとか、あるいは「請負契約を結んでいる」だとか、「下請」とか、そういう形の上の名目では「業者」というような形で使用されている労働者が大量に存在しています。
重層下請構造のもとでの中間業者の倒産・不払いであれば、下位業者の「工事代金」であっても、建設業法41条3項に基づく元請責任での立替払で下位業者に支払われる可能性があるのですが、元請倒産の場合だと、「工事代金」が支払われないという被害に泣き寝入りせざるを得ませんでした。
建設労働運動は、「施工員」、「一人親方」、「請負業者」等々が実態としては「労働者」であることを証明し、「救済」に努めてきました。
「労働者」ということになれば、倒産・不払いという場合に国が払ってくれる「賃金支払確保法」という法律・制度があります。この制度にはわかれめがありまして、「業者が受けた工事代金不払い」ということだと国は払ってくれませんが、「労働者」と認められれば国は払うというものなので、「労働者」として認められる範囲を広げるというのが非常に建設労働運動にとっては大事な問題です。
3 「労働者性」拡大の事例
この間、建設労組のほうで運動を続けてきまして、「労働者」として認められる範囲を広げてきた流れをちょっと簡単に整理してみました。
@ 2001年「リモテックス破産事件」
この時、最後に争点になったのが、「商号」とか「屋号」の問題でした。労働者と同様に実態は1人で施工に従事している場合でも、「○○建設」といった屋号、商号を使っている人たちが結構いるんです。そういう屋号を使っている人たちも含めた約220人の人たちを「労働者」と、東京地裁の裁判長が認め、国が未払い賃金の支払いを行いました。
A 2004年「新興産業倒産事件」(1)
この場合は、「請負契約」と、まさに契約書を結んでいたわけです。請負契約ということは業者です。形の上では書類まで揃って完全に「業者」ということだったのですが、実態は「労働者」だということでたたかいまして、全国に800人ぐらいいた人たちの大半は「労働者」として認められました。しかし、「塗装」とか「営繕」の材料持ちの人たちについては「労働者」ではなく「業者」だと、東京の立川労基署が労働者と認めませんでした。
それに対して、建設労組は、「材料持ちでも、実態は労働者だ」ということで運動をしまして、埼玉土建一般労組の運動で埼玉の春日部労基署が、千葉土建一般労組の運動で千葉の柏労基署が「材料持ちでも労働者」と認めてくれました。
そして今年(2005年)、立川労基署も含めまして、全員を「労働者」として認めたのですが、この話はまた後で話します。
B 2004年「朝日ハウス産業破産事件」
この事件の特徴は一言で言うと、「一人親方」を労働者として認めるだけではなく、人を使っている小規模の業者についても「労働者」として認めたということです。
3人以上はダメだけれど、労働者を1人、2人使っている事業主であれば労働者と一緒に働いていたということで、事業主1人、労働者1人〜2人と、合わせて3人までは「労働者」として認め、国が未払い賃金を払ったという非常に珍しい例です。実は、独立行政法人労働政策研究・研修機構のホームページにも、この事例が取り上げられています。建設労組の運動の成果で、労働政策研究・研修機構のHPに載っている唯一の例ではないかと思っています。
C 2005年「東京新興リフォーム倒産事件」
これは埼玉土建一般労組川口鳩ヶ谷支部の運動の結果として、「材料持ちの施工員」が「労働者」として認められました。
D 2005年「新興産業倒産事件」(2)
これは、2004年の事件の続きで、東京労働局が立川労基署の決定を取り消して、「材料持ち施工員」を「労働者」として認めました。この事件の最大の特徴は、東京労働局が「材料持ち施工員(一人親方)を、労働者として認めた」という点です。これは一つの画期的な事例だと言えます。
4 国会答弁
国会答弁でも、「法人など形の上では業者であっても、実態によっては労働者として認められることは十分にあり得る」と、答弁されています。
5 元請責任での不払い解決
さらに、倒産・不払い問題での解決の前進ということでは、重層下請構造の頂点にある元請の責任で不払いを払わせる。これは「建設業法」というものがあって、大きな企業については「特定建設業者」の許可が必要ということになっています。
建設業法は元請の特定建設業者に、「下請保護の特に重い義務」を課しています。要するに、元請で大きい企業については「下請のところで倒産・不払いがあった場合、賃金や工事代金などを元請の責任で払わなければいけない」という建設業法上の要請があります。しかし、いまひとつハッキリしない点がありまして、「行政は元請に対して勧告できる」という規定なので、強制力があるとかないとかいろいろな争いがあります。
全建総連関東地協は、21年42回にわたり大手企業50社くらいと企業交渉を積み重ね、行ってきました。1回1回はそれほど大きな成果は得られないかもしれませんが、交渉を積み重ね、ていねいに説得し、まともな労働組合だということが相手企業にも伝わった結果、元請の責任で不払いを解決するということができるようになってきました。ただし、企業交渉を積み重ねていない企業と話し合う場合は非常に苦労します。やはり、なかなか理解していませんから、「なんで1回払ったものをまた払わなきゃいけないんだ」と、いろいろややこしい話になります。それでも、粘り強く解決してきています。
6 新興産業倒産事件 全面解決の報告
新興産業は、2003年1月に社長が行方不明となり事実上の倒産となりました。新興産業という会社は、「ぱっとサイデリア」のテレビ・コマーシャルで知られている会社です。
全国に施工センターがありまして、約800人の人たちが形式上では「請負契約」と書類で交わしていましたから、完ぺきにそういう意味では「業者」だということでなかなか労働者と認められませんでした。しかし、建設労組のほうでは、実態は「労働者」だということで争い、労働者と認めさせることができました。
春日部労基署とか柏労基署は、「材料持ちも含めて全員が労働者である」と認めてくれましたが、東京の立川労基署は「材料持ちは労働者と認めない」ということで労働者と認めない状況が続きました。私たち建設労組と材料持ちの新興産業施工員は東京労働局に「労働者と認めるように」と、審査請求を申し立て、結果として東京労働局が立川労基署の決定を取り消し、「材料持ちの施工員」についても「労働者」と認めました。
認めてくれた理由について、非常に重要な点なので報告します。
東京労働局「裁決書」は、「取付施工について新興産業は、施工業務を行う労働者を雇用することによって生じる、人員調整の硬直性、労働基準法上の責務、労働社会保険料の会社負担、施工不良による損害賠償責任等を回避して、経費の節減を図るため、そして各施工業務を自らの完全な支配下に置くために、誰にも雇われず誰も雇わないで工事を請け負うことを建前とする一人親方との間で専属的に契約してその施工業務を行わせるようになった」と、そういう経費節減のために(「請負契約」という偽装を)新興産業がやったことを明らかにしました。
次に、材料持ちの施工員のところでは「塗装施工に係る塗料を、新興産業が施工員に支給していなかったのは、会社(新興産業)は、塗料の相当の費用を要する管理責任を回避して経費を節減するために、塗料を塗装施工員に負担させていた事情によるものであった」と解明し、これも、管理責任を回避して施工員に押し付けたという判断を示しています。「塗装施工に当たり、(施工員)は、塗料、自動車、刷毛、塗装用ローラー、養生用ビニール等その施工に必要な機械、器具等の大半を負担しており、外形上の事業者性がうかがえる。しかしながら、そもそも会社(新興産業)は、施工業務について労働者を雇用することによる責任を回避して経費の節減を図るために、一人親方との間で専属的に契約して、その施工業務を行わせてきた事情があるのであり、高価な機械、器具等もないことから、このこと(外形上の事業者性)を重視するのは相当ではない」という判断を下しました。東京労働局が、まさに建設労組と同じ判断を示したということです。
東京労働局の判断の影響で、立川労基署が、否認、保留にしていた材料持ち施工員6人全員の労働者性を認めました。立川労基署の認め方、査定の仕方は次のようになっていて、工賃の内訳を賃金80%、材料20%と査定して、賃金と査定した80%について国が支払うという形にしました。
このことで、材料持ちであっても労働者として認められる、特に東京労働局は一人親方という表現を使っていますから、材料持ちの一人親方であっても労働者として認める、ということになったわけです。まさに、材料持ちで働いていた一人親方についても労働者として認めました。こういう点で、建設労組の主張は認められたわけです。
私からすれば、労務を提供して働いていれば誰であろうと「労働者」だと思っていますから、「労働者として認めて当然」だと思っていますし、そういうように法律上しっかりと確立させるべきだと思っています。これは憲法の精神と結び付いていまして、「働いて収入を得ていれば全部労働者として保護すべき」だというのは、日本国憲法の精神と合致していると信じるものです。
◎ 最近の事例から 「仕事完成義務の放棄」 瑕疵 損害賠償請求
最近、「『仕事完成義務の放棄』 瑕疵 損害賠償請求」関係で、以下のような相談を受けました。
マンション管理組合との契約で、A業者はマンション改修工事を受注した。
マンション管理組合の指示のとおりに改修したのだが、マンション居住者の1人から「瑕疵だ」としてクレームを付けられ、損害賠償を請求されている。
そのマンション居住者からは、改修工事中にパソコンを落とされハードディスクを壊されたとして、そのほうの損害賠償も請求されている。A業者は、パソコンを落とした覚えはない、と言っている。
そのマンション居住者から嫌がらせを受け、A業者は、(あと2〜3日で終わるのに)改修工事完成の前に工事を中止してしまった。この件でも、管理組合から損害賠償を請求されている。
管理組合は、残工事を他の業者に頼む予定。
A業者は、他の工事の分は代金を貰っている。言い換えると、工事代金1200万円のうち1000万円を貰っている。
(対策)
「マンション管理組合の指示のとおりに改修した」、言い換えると「仕事の目的物の瑕疵が、注文者の与えた指図によって生じた」ときは請負人に担保責任は生じません(『民法(6)契約各論』(有斐閣))。注文者であるマンション管理組合は請負人に損害賠償を請求することはできません。
パソコンを落としたことがないのが事実とすれば、この件の損害賠償については、不当な請求としてはねつければいいだけです。
「そのマンション居住者から嫌がらせを受け、A業者は、(あと2〜3日で終わるのに)改修工事完成の前に工事を中止してしまった。この件でも、管理組合から損害賠償を請求されている」この点は、難しい面を含んでいます。
請負人には仕事完成義務があり、この義務を放棄した以上、損害賠償を請求されても仕方がありません。というより損害賠償を請求されるのが当然です。
但し、今回のケースでは、居住者の嫌がらせを原因として仕事完成義務を放棄しています。居住者も管理組合の一員です。
「嫌がらせ」の程度によっては、損害賠償を免れる、または逆に管理組合に損害賠償を求めることも可能かもしれません。
事実関係が問題です。マンション管理組合やその居住者の言い分も当然、聞く必要があります。
◎ 多発する倒産・不払い事件に建設労働運動として立ち向かう
1、大手企業交渉と建設業法の役割、活用――不払いの元請責任での解決
1 建設業法の行政解釈も元請責任での立替払い・二重払いを肯定
大手ゼネコン、大手住宅企業、大手サブコンに対する全建総連関東地協や建設首都圏共闘等の交渉力を背景とし、その力に支えられながら、私たちは、倒産・不払い発生の際の元請責任での解決を求める上で、建設業法に注目し、依拠し、建設業法がその役割を果すようその活用をはかってきました。
国土交通省のメンバー(担当者)が共同で執筆した『建設業法解説』(大成出版社)という建設業法についての解説書があります(以下、『解説書』と言います)。国土交通省の人たちが行政の立場から書いた本ですから、もちろん限界はあるわけですが、私たち労働組合の運動の反映もあるし、また本として公刊するわけですから国民の監視の目もあるし、結構私たちの見解に近い解説がおこなわれています。
また、国土交通省も、大林組、熊谷組などのゼネコンも、この『解説書』を不払いなど紛争解決の上での「ルール」、「バイブル」として認めています。
不払い発生の場合、元請責任での立替払いでの解決を私たちが求める根拠となっているのが、建設業法41条2項、3項です。41条の2項は、賃金の不払い発生の場合に元請責任での解決を定め、41条の3項は工事代金、資材納入代金等について不払い発生の場合の元請責任での解決を定めています。
――以下は建設業法41条の1項〜3項です――
(建設業を営む者及び建設業者団体に対する指導、助言及び勧告)
建設業法41条 国土交通大臣又は都道府県知事は、建設業を営む者又は第27条の37の届出のあった建設業者団体に対して、建設工事の適正な施工を確保し、又は建設業の健全な発達を図るために必要な指導、助言及び勧告を行うことができる。
建設業法41条の2 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工のために使用している労働者に対する賃金の支払を遅滞した場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、支払を遅滞した賃金のうち当該建設工事における労働の対価として適正と認められる賃金相当額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。
建設業法41条の3 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、当該他人が受けた損害につき、適正と認められる金額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。
───以下は建設業法28条1項、3項です───
建設業法28条1項「国土交通大臣又は都道府県知事は……場合においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。特定建設業者が第41条第2項又は第3項の規定による勧告に従わない場合において必要があると認めるときも、同様とする」
建設業法28条3項「国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が……指示に従わないときは、その者に対し、1年以内の期間を定めて、その営業の全部又は一部の停止を命ずることができる」
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『解説書』が、特定建設業者(建設業法は、建設業の許可を一般建設業の許可と特定建設業の許可に区分し、発注者から直接請け負った1件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額が3000万円以上〔建築工事業にあっては4500万円以上〕となる下請契約を締結して施工しようとする者は、特定建設業の許可を受けなければならない、と定めています)である元請が不払い解決の最終責任を負っていることについて、どのように明らかにしているかを、紹介しておきます。
(1)建設業法41条2項の行政解釈
『解説書』には次のように記述されています。
「(賃金不払いの場合、特定建設業者である元請に)通常の賃金水準、いわば賃金相場に相応する賃金額に限って立替払等をさせようというものである」、「本項(建設業法41条2項)の規定による勧告に従わない場合においてなおかつ、さらに必要があると認めるときは、指示処分の対象になり得るとされており、この点が単なる勧告とは異なるものであるといえよう」
(2)建設業法41条3項の行政解釈
『解説書』には次のように記述されています。「(工事代金、資材納入代金等の不払いの場合、特定建設業者である元請に対して)立替払い等の勧告の対象となる金額は……損害の額を限度とし当面の窮状を救済するに足りるかどうかを基本として求めるべきであろう」
なお、埼玉土建一般労組の要望を取り入れて、2002年春の全建総連関東地協の大手企業交渉の要求のなかに、「元請がまだ支払っていない場合に支払うのは、当然のことです。それが支払われなければ、不法行為になります。建設業法41条2項、3項は、元請がすでに支払っている場合に、下請のところで不払いがおこり、被害を受けた下請業者・労働者を、元請の責任で救済すべきことを定めたものです。『いったん払ったから』、『二重払いになるから』と元請の責任での不払い解決はしないという主張は、今後いっさいやめて下さい」が入りました。
この点について、『解説書』は、次のように明らかにしています。
「本項(建設業法41条3項)の『損害』のなかには、不法行為にもとづく損害と取引行為にもとづく損害とが考えられる。まず、下請負人の不法行為にもとづく損害としては、下請負人が建設工事を適切に施工しなかったため第三者の生命、身体又は財産に危害を与えた場合、及び同じく下請負人が建設工事の安全な施工に関する監督を怠り雇用する労働者に労働災害を生じさせた場合とがある。しかしながら、これらの下請負人の不法行為にもとづく損害であっても、下請負人の選任及びその工事の施工の指導監督について元請負人に過失がある場合には、元請負人も当然に損害賠償の責に任ずるのであるので、本項(建設業法41条3項)の『損害』とはならず、本項(建設業法41条3項)の勧告の対象となるものではない。次に、下請負人の取引行為にもとづく損害であるが、この損害には、下請負人がさらに工事を下請施工させる場合におけるその下請負人(いわゆる孫請負人)に対する下請代金の支払の遅滞するような場合、下請負人の建設資材納入業者との間の取引関係にもとづく代金の不払等をする場合、下請負人と工事現場周辺の商店等との取引関係にもとづく代金の不払等をする場合の損害が考えられる。これらの損害は、いずれも特定建設業者にとって直接の責任があるものでなく、したがって、元請負人である特定建設業者には、下請負人と第三者(下請負人がさらに工事を下請施工させる場合の下請負人、建設資材納入業者、工事現場周辺の商店など)との間における取引関係における損害を賠償する義務はないので、(これらの損害は)すべて本項(建設業法41条3項)の『損害』と解すべきであろう」。
このように難解な表現ではありますが、元請の特定建設業者が工事代金をすでに下請に支払っている場合など特定建設業者に民法上の責任がない場合に初めて建設業法41条3項が適用になることを、『解説書』は明らかにしており、まさに建設業法は元請の特定建設業者に二重払い、場合によっては三重払いを求めているのです。(実際に三重払いをおこなった大手ゼネコンも存在します)
「二重払いはしなくていい」というのは、民法の世界の話であり、「不払いを受けて困難におちいっている下請業者・労働者を元請の特定建設業者の責任で『二重払いをして』救済しなさい」というのが建設業法の世界であり、そのために民法とは別に建設業法が存在しているのです。
そして、民法と建設業法との矛盾を避けるために、建設業法41条2、3項では、「立替払い」という表現を使い、形式は「立替払い」(債権を債務者にかわって支払い、債務者に対する債権を取得すること)になっていますが、結果として内容は「二重払い」になるわけです。
2 元請の特定建設業者の工事代金立替払いについての政府見解
2002年7月23日の参議院国土交通委員会での「政府に対して、元請の特定建設業者の責任での不払い解決への指導を強めることを求める」(日本共産党)富樫練三参院議員(当時)の質問が引き出した国土交通大臣と国土交通省総合政策局長の答弁(「元請の特定建設業者は、下請保護の特別の義務を負っている」、「下請保護の特別の義務の中には、建設業法41条2、3項にもとづく不払い解決が含まれる」、「元請の特定建設業者がおこなう立替払いの中には賃金だけでなく工事代金も含まれる」、「立替払いの中には結果としての二重払いも含まれる」等々)は、埼玉土建一般労組など建設労組の不払い対策活動のなかで大きく生かされ、不払い解決へと結実しています。
また、この政府答弁は、国土交通省関東地方整備局の、建設業法にもとづく不払い解決に向けての元請指導にも反映し、指導の強化となってあらわれています。
その後、2005年12月に、全建総連関東地協賃対事務局からの申し入れに対して国土交通省関東地方整備局は「元請の特定建設業者は『二重払い』を立替払い拒否の理由にすることはできない」と回答しています。
3 元請側(大手ゼネコン)代理人弁護士も下請保護を主張
東京高裁2001年7月18日判決が出た控訴審での清水建設の代理人弁護士(近藤恵嗣氏、柳誠一郎氏)の答弁書からの抜粋を以下に紹介しておきます。
「建設業法上の要請のみならず、建設業界を取り巻く現在の厳しい環境の中、下請業者の倒産が頻繁に起きている現状においては、被控訴人のような特定建設業者が倒産した下請業者の代わりに立替払いしなければ、かなりの数の孫請業者らが連鎖倒産に追い込まれることが明白であり、そうなれば、日本の建設業全体、ひいては日本全体の景気や経済状況に計り知れない打撃を与えることもまた明白である。被控訴人のような特定建設業者は、建設業界の頂点にあって下請及び孫請業者らの存立をも考慮しなければならない立場にある以上、このような状況において、被控訴人には、孫請業者らに立替払いしないという選択肢は事実上存在しないのである。もし、このような特定建設業者の立替払いを否定されるなら、現実的に建設業界でしか生きていけないと言っても過言ではない孫請業者や作業員の生活は、脆くも崩壊せざるを得ないのである」
2、共同企業体(JV)の責任
倒産した企業が共同企業体(JV)の構成員の場合、下請業者はJVの他の構成員に対して工事代金等を請求できるかどうかについては、国土交通省監修の本『改訂版JV制度Q&A』(大成出版社)が、次のように解説しています。
《通常は請求できます。下請はJVに対して請求できるほか、(JVの)各構成員に対して出資分に応じた請求ができます。最近の判例では、JVの構成員が会社である場合には、各構成員はJVがその事業のために第三者に対して負担した債務について、商法第511条1項により連帯責任を負うとされました。従って、下請は下請代金の全額について、JVの構成員に請求できることになる道が開かれました》
現実に松栄建設破産事件のときには、埼玉土建一般労組、全建総連東京都連が力をあわせて、松栄建設とJVを組んでいた高元建設と交渉し、高元建設の出資分(出資割合)が40%だったことから、高元建設から(松栄建設・高元建設JV現場の工事代金の)40%の支払い(弁済)を受けることができました。
3、不払い対策活動の最近の事例、傾向、特徴
全体の感じで言いますと、ここ1年(2005年4月〜2006年3月)、建設労組が不払い相談を受ける件数、度合いが減っていると、そう感じていたのですが、ここのところ、最近、2006年5月あたりからまた増えてきているというのが実感です。帝国データバンク公表資料によると、最近、建設中小企業の倒産が増加基調とのことなので、それが反映しているのかもしれません。
――「労働者性」の事例――
新興産業倒産事件での多数の施工員の「労働者性」認定以来、埼玉土建一般労組の範囲内での目立った事例としては、埼玉土建一般労組川口鳩ヶ谷支部が取り組み、十数人の施工員の労働者性を認定させた東京新興リフォーム倒産事件が存在します。
ちなみに、新興産業倒産事件での「労働者性」認定の到達は、「材料持ちの一人親方」である施工員についても労働者として認められた、言い換えると、東京労働局、春日部労基署(埼玉)、立川労基署(東京)、柏労基署(千葉)が「材料持ちの一人親方」である施工員を労働者として認めて賃金支払確保法を適用した、ということです。
「材料持ち」とは自分で材料を購入、管理することです。建設労組は、新興産業の材料持ち施工員について、新興産業の指揮監督下での材料の購入、管理であることを、言い換えると、新興産業から指示命令を受けての材料の購入、管理であることを証拠、証言に基づいて明らかにし、新興産業の材料持ち施工員の「労働者性」を主張しました。東京労働局がこれを認め、次のように東京労働局裁決書が記述しています。
「取付施工について、新興産業は、施工業務を行う労働者を雇用することによって生じる、人員調整の硬直性、労働基準法上の責務、労働社会保険料の会社負担、施工不良による損害賠償責任等を回避して、経費の節減を図るため、(そして)各施工業務を自らの完全な支配下に置くために、誰にも雇われず誰も雇わないで工事を請負うことを建前とする一人親方との間で専属的に契約してその施工業務を行わせるようになった」、「(塗装施工に係る塗料を、新興産業が施工員に支給していなかったのは)新興産業は、塗料の(相当の費用を要する)管理責任を回避して経費を節減するために、塗料を塗装施工員に負担させていた事情によるものであった」、「塗装施工に当たり、請求人(材料持ち塗装施工員のSさん)は、塗料、自動車、刷毛、塗装用ローラー、養生用ビニール等その施工に必要な機械、器具等の大半を負担しており、外形上の事業者性がうかがえる。しかしながら、そもそも会社(新興産業)は、施工業務について、労働者を雇用することによる責任を回避して、経費の節減を図るため……一人親方との間で専属的に契約して、その施工業務を行わせてきた事情があるのであり、高価な機械、器具等もないことから、このこと(塗料、自動車、刷毛、塗装用ローラー、養生用ビニール等その施工に必要な機械、器具等の大半を負担)を重視するのは相当でない」
――元請責任の追及――
最新の大規模事例として錦江設備工業破産事件があり、この事例の構図は、元請として多数のゼネコンが存在し、また1次下請として多数の有力サブコンが存在し、2次の錦江設備工業が破産した結果、多数の3次下請業者が不払い被害を受けた、というものです。
2005年9月13日、株式会社錦江設備工業(本社 茨城)が破産に至り、茨城や埼玉の業者の中に不払い被害が広がっています(全部で24社)。負債総額は13億円位と破産管財人は話しています。株式会社錦江設備工業は、帝国データバンク企業情報による企業評価=D2の「事実上の倒産状態」またはそれに近いような状態の企業でした。
元請として、大林組、戸田建設、錢高組、五洋建設、清水建設等々がいることから、元請との交渉等による立替払いでの解決を求めて、全建総連関東地協の(東京、埼玉、茨城の)各県連・組合が連携しての取り組みとなりました。埼玉土建一般労組からは、猿島支部、八潮支部、本部がたたかいに参加しました。
錦江設備工業は2次下請で、1次下請として三晃空調、須賀工業、ユアテック、大氣社、東洋熱工業、三機工業、等のサブコンがいることがわかりました。
また、被害状況の特徴は、錦江設備工業による被害業者への支払いが100%手形払いということです。まさに労務費も手形払い、国土交通省通達違反の労務費の手形払いになっていることです。さらに、国土交通省通達が求める「120日以内」に違反する150日手形なのです。このことが、被害を大きくしています。
建設労組は共闘を広げ、確立し、全建総連関東地協の東京、埼玉、茨城の各県連・組合と被害業者が参加して「錦江設備工業被害業者対策会議」という共闘組織を作り、節目節目で繰り返し「錦江設備工業被害業者対策会議」を開き、方針、方向、闘争形態を決め、意思統一をはかってきました。「錦江設備工業被害業者対策会議」を5回開きました。前述のように、埼玉土建一般労組からは、八潮支部、猿島支部、本部が共闘組織に参加して、たたかいました。
その結果、時間がかかりましたし、満足、不満足ということもあったと思いますが、全建総連70万人の力、全建総連関東地協22年44回に及ぶ大手企業交渉の力に支えられながら、錦江設備工業破産管財人の弁護士→1次下請サブコン→元請ゼネコン→国土交通省関東地方整備局と協議、交渉を「下から上にコツコツと積み重ね」、現場ごとに、ゼネコン、サブコンの多様な組み合わせで建設業法に基づく立替払いが実施され、下請業者「救済」に至りました。
残っているのは、元請・錢高組、サブコン・須賀工業のケースだけです。解決に向け、進行中です。
――「その筋」問題――
建設労組の不払い対策活動を進めていると、時として元請が「その筋」だったりあるいは「その筋」の建設業者が組合員に不払いを起こしたり、「その筋」問題が絶えず発生してきます。
現在進行中の事例があります。現在進行形ですし、相手が相手ですから、具体的経過を紹介することはできませんが、この問題が発生しています。
この種の問題を解決するには、立ち向かう勇気が前提として必要です。同時に、建設労組の戦術、闘争形態、方針、方向としては、「その筋」と戦術、闘争形態の鋭さ、激しさを競い合うことは避け、建設労組を「その筋」との「抗争」に引き込み、巻き込む愚を犯すことなく、行政の力、法律の力に依拠し、行政の力、法律の力を引き出しながら、たたかっていくことになります。
この場合にも、「下から上にコツコツと」協議、交渉を積み重ねて解決をめざす点は同じです。相手の性質から言うと、「顔を潰す」、「営業妨害」などいろいろ言われないためにも、建設労組としてあくまでも「下から上に」を、法律、ルール、正当性を守りながら、解決をめざすことです。
書記(事務局)の体制について言いますと、担当書記一人に任せるのではなく、書記長が加わるあるいはベテラン書記が加わる、場合によっては書記長、ベテラン書記の両方が加わるなど必ず複数体制で臨むことです。
「伊丹十三監督の『ミンボーの女』を見るといいですよ」と埼玉土建一般労組さいたま北支部の書記の田中悌二さんからすすめられて、ビデオ屋さんで借りて見てみました。立ち向かうことができる根拠を知り、立ち向かう気構えを作る上で、いい作品だと思います。
――建設労組の組合員同士の不払いトラブル――
現在進行中の事例があります。この事例も現在進行形でかつ建設労組の組合員同士というケースなので、具体的経過を明らかにすることはできませんから、一般的な話になってしまいますが、組合員同士の不払いトラブルという問題にどう対応するのか? 少しでも明らかにできればと思い、抽象的な記述になりますが記述してみました。
組合員同士の場合、建設労組は、建設労組書記(事務局)は、組合員が法律、ルール、マナーを守りながら、自主的、自覚的、積極的に協議、話し合いを通じて、譲るべきところは譲り合って合意を形成する、その方向へ促進、援助、誘導することを心がけ、めざします。
組合員の不当な要求、不当なルール無視、マナー無視に対しては、建設労組として、建設労組書記としてはっきりものを言うことが必要です。「強大な圧力」をかけられる場合も、実際あります。経験で言うと、「組合がそんなことを言うのなら、従業員30人と一緒に全員で組合から脱退する」と言われたこともあります。まさに「強大な圧力」です。しかし、不当な要求に屈するわけにはいきません。立ち向かうことです。建設労組の正当性を守り抜くことです。正当性は、建設労組の力の源泉です。
――建設労働運動としての不払い対策活動――
請け負うのではなく組合員を主体として、労働運動として取り組むことです。憲法28条が保障する労働組合の団体行動権を重視していきます。
労働運動の力の源泉は正当性です。正当性を失ったとき、「ミンボー」に転化していきます。
憲法28条(勤労者の団結権) 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動する権利は、これを保障する。
4、公共工事の倒産・不払い解決での「入契法」付帯決議の役割、活用
以下に紹介するのは、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(略称=入契法)成立時に自民党から共産党まで全会一致で採択された参議院付帯決議です。平成12年(2000年)11月16日に参議院国土・環境委員会で採択されました。
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公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律案に対する附帯決議
参議院国土・環境委員会
平成12年11月16日
政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、適正化指針の策定等その運用に遺憾なきを期すべきである。
1 国民の負担による公共工事の受注者の選定に関し、国民の疑惑を招かぬよう努め、談合、贈収賄等の不正行為の根絶に向けて、厳重な監督処分、指名停止の運用基準の見直し等を行うこと。
2 一般競争入札における審査体制の整備、指名競争入札における指名基準の公表等公共工事の入札及び契約制度について更なる改善を推進すること。
3 入札予定価格の公表の在り方については、今後の検討課題とし、少なくとも事後公表を行うよう努め、地方公共団体においては事前公表を行える旨を明確にすること。
4 発注者は、入札参加者に対し、対象工事に係る入札金額と併せてその明細を提出させるよう努めること。
5 公共工事の入札及び契約に関して監視や苦情処理等を行う第三者機関については、実効を伴った効果的な活動がなされるよう努めること。
6 不良業者を排除する一方で、技術と経営に優れた企業の育成に努め、地域の雇用と経済を支える優良な中小・中堅建設業者の受注機会が確保されるよう配慮するとともに、建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるよう努めること。
7 施工体制台帳の活用等により、元請企業等と下請企業の契約関係の適正化・透明化に努めること。
8 いわゆるダンピング受注は、手抜き工事、下請へのしわ寄せにつながりやすく、また、建設業の健全な発達を阻害するので的確に排除し、公共工事の品質の確保を図ること。
9 公共工事の入札及び契約全般について事務の簡素化・効率化及び競争性・透明性の一層の確保等を図る観点から、IT化を促進するよう努めること。
10 公共工事の入札及び契約制度の改善を進めるに当たっては、公共工事の大宗を占める地方公共団体における改善の徹底を図るとともに、規模の小さい市町村等に関しては、その実情を勘案して、執行体制の確保を図るための必要な助言を行うなど、適切な支援措置を講ずること。
右決議する。
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上記の入契法成立時の参院付帯決議は、公共工事での倒産・不払い事件の解決に一定の役割を果していますし、また入契法付帯決議が解決に役割を果すよう入契法付帯決議の活用に建設労組は努めています。
たとえば、公共工事で1次下請が倒産し2次下請業者に工事代金不払い被害を与えた場合を考えてみましょう。この場合には元請企業が存在するわけですから、建設業法に基づく元請責任を果たして、不払い被害を受けた2次下請業者に立替払いを実施し、2次下請業者を「救済する」ことが解決の道になるし、建設業法は元請の特定建設業者に対して、この解決の道を歩むよう求めています。これがルールです。
しかし、建設労組の経験でも、ルールをなかなか守らない元請が存在します。建設業法に基づく立替払いでの下請保護、下請救済を実施せず、ゼロ回答を続ける元請が存在します。こうしたケースでは普通は、特定建設業者の許可行政庁である国土交通省や都道府県に元請への指導を申し入れるのですが、公共工事でのこの種のケースでは、特定建設業者の許可行政庁である国土交通省や都道府県に相談に行く前にまず、この公共工事を直接発注した部署に、その担当者に申し入れを行い、元請業者への働きかけを要請します。
言い換えると、元請業者が建設業法を守って下請業者を救済するよう発注者から元請に働きかけることを、公共工事の発注者に要請するということです。
前記のように、参院付帯決議6項は「不良業者を排除する一方で、技術と経営に優れた企業の育成に努め、地域の雇用と経済を支える優良な中小・中堅建設業者の受注機会が確保されるよう配慮するとともに、建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるよう努めること」と定め、7項は「施工体制台帳の活用等により、元請企業等と下請企業の契約関係の適正化・透明化に努めること」と定めています。参院付帯決議は、公共工事の発注者にこれを求めているということです。
「建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるよう努めること」、「施工体制台帳の活用等により、元請企業等と下請企業の契約関係の適正化・透明化に努めること」が公共工事の発注者には課せられているのです。発注者(お客)だから、業者間の不払いについては関知しないではすまないのです。業者間に不払いが起こるということは、建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われなくなるということであり、この事態を打開するためには、建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるようにするためには不払い解決が必要であり、このケースでの解決への唯一の道は、建設業法に基づく元請の責任での不払い解決なのです。
公共工事の発注者の責任として、建設業法を守る方向へ元請を誘導することが求められます。解決へ向けての形態としては、発注者のところに元請業者、不払い被害を受けた2次下請業者、建設労組の三者を呼んで、発注者立会いのもとに三者協議を実施し、お互いに譲り合って合意点を形成し、円満解決を実現する、こういった形態がこの種のケースでは一般的に行われ、円満解決へと結実しています。
5、労働運動としての構え
1 労働運動と位置づけて連帯・団結の力で
最後に、多発する倒産・不払い事件に建設労働運動として立ち向かうにあたっての、構えというか姿勢というか、その辺を少し明らかにしておきたいと思います。
これらの活動は労働組合としておこなうわけですから、労働運動として位置づけておこなっていくことになります。「債権回収業者」としてやるわけではないのですから、労働者、労働組合の連帯を大事にしながら、傾向の違う組合とも力をあわせて不払い解決等の活動をおこなっていくことになり、連帯・団結の力がたいせつです。
2 ルールを守る
建設業法にもとづく元請の責任での不払い解決=下請業者救済というルールを守るよう、元請の大手企業、特定建設業者に要求するわけですから、私たちのほうもルールを守ることが必要ですし、決定的、絶対的なことです。
たとえば、2次下請が倒産して3次下請の業者(埼玉土建一般労組の組合員)に不払いが発生した場合、いきなり元請に「救済」を求めるのではなく、下から上へ階段をのぼるように順番に交渉をしていく、それがルールです。倒産した2次下請とまず交渉する、支払うよう交渉するわけです。倒産ですから払えないと言われるわけですが、それでいいのです。
倒産した2次下請の破産管財人などから、「元請が3次下請に直接支払った金額は本来2次下請に支払うべき金銭だから、元請と3次下請は連帯してその金銭を2次下請に返還すること」を求める裁判をおこされることなどを防ぐためにも、2次下請と交渉しておくことが大事なのです。
次に、1次下請と交渉します。1次下請を飛び越して元請に行くことは1次下請の取引に打撃を与える可能性があり、トラブルのもとになります。元請が1次下請を指導して1次下請に立替払いをさせる、または1次下請が元請に行かれるのをいやがって自分で自主的に立替払いをする事例もありますので、1次下請との交渉は大事です。
また、要求の内容や金額については、いうまでもなく正当な要求、正当な金額であることが必要であり、要求金額の水増しは絶対に許されません。組合員の要求に水増しがあることがわかった場合、組合は「手を引く」ことになります。
3 要求金額を明確にし、文書化する
「こまっているから何とかしてほしい」だけでは、たとえ相手に救済の意思があっても解決はなかなか困難です。要求金額とその根拠を明確にしたうえで交渉することが必要です。要求の中身と根拠がはっきりすれば、相手も対応を考えることができるようになります。そして、要求金額とその根拠を文書化して、相手に示すことです。社内で協議し調整し、または上司と相談する場合、文書になっていれば相手としてもとてもやりやすいわけで、解決を促進することになります。
4 本人ががんばりぬくことが決定的
たとえば、元請と交渉してもどうしてもダメな場合でも、@国土交通省や自治体に元請への指導を求める、A発注者がディベロッパー、大手不動産会社などの場合は発注者の責任で不払いを解決するよう求める、B元請企業を実質的にコントロール下に置いている銀行、背景の銀行資本に解決を要求する、C議員にたのむなど政治の力を引き出す、D元請企業前での宣伝行動や社長への直訴等々、あきらめないでがんばることです。とくに、不払い被害を受けた本人ががんばりぬくかどうかが決定的な点です。
社会的な正当性を持つ要求であれば、たたかいぬけば解決の可能性が消えることはありません。
◎ 困難を切り開いて前進する全建総連首都圏組合の不払い対策活動
1、はじめに
2003年10月23日、24日を中心に全建総連関東地協第39回大手企業交渉がおこなわれ、賃金引き上げ、元請責任での不払い解決、職長の待遇改善、粉じん・アスベスト対策の徹底、労務費の現金払いの徹底と手形サイトの短縮、元請労災適用の徹底、建退共への加入促進などを要求して大手ゼネコン・サブコン・住宅企業あわせて48社と交渉をおこないました。
「困難を切り開いて前進する全建総連首都圏組合の不払い対策活動」を考えるばあい、20年39回にわたる全建総連関東地協の大手企業交渉の積み重ねがあったからこそ、首都圏組合の不払い対策活動は困難を切り開いて前進しつつあるのだということを、はっきりと見ておく必要があります。
私(海野)自身について言うと、東京土建一般労組書記の小野寺康夫さんから、不払い対策活動についてはいろいろ学びました。@交渉の場で組合が「相談してあとで答える」などと後回しにすることは基本的に正しくなく、あくまでも交渉の席での決着をはかるべきだということ、A不払い被害を受けた下請業者が細かい資料にもとづいて不払い被害を立証するということに片寄るのではなく、不払い被害の実態は元請の責任でつかむべきであり、あくまでも元請の責任で実態をつかませ、不払いを解決させること、など学びました。
また、全建総連の首都圏組合の不払い対策活動の前進を考える場合、その中心に座ってがんばっている全建総連東京都連の田口正俊書記長、宮本英典書記次長の存在があります。そして今回は、首都圏組合の頑張りをということで、東京土建一般労組、全建総連神奈川県連、千葉土建一般労組、埼玉土建一般労組の活動の一端を紹介したいと思います。
2、共栄冷機工業会社更生事件
(1)立替払いを求めて元請交渉
さいたま市大宮区大成町に本店がある共栄冷機工業株式会社(丹義明社長、資本金20億円、従業員195人、空調・給排水等の建物付帯設備工事の設計・施工)が2003年5月19日、東京地裁に会社更生法の申請をおこない倒産しました。
共栄冷機工業の場合、空調・給排水等の設備工事業者であることから、元請のゼネコンから仕事を受注している1次下請の現場が多く、2次下請業者が被害を受けています。
元請として、勝村建設、大成建設、安藤建設、フジタ、東急建設、埼玉建興、三井住友建設、熊谷組、淺沼組、五洋建設、奥村組、環境建設、西松建設など多数の特定建設業許可取得のゼネコンがいることから、全建総連関東地協は共栄冷機工業債権者(不払い被害者)対策会議を作り、建設業法にもとづく元請の特定建設業者の責任での下請業者救済を求めてゼネコン交渉をおこなってきました。それまで組合に入っていなかった下請業者も、組合に加入し、組合に結集してたたかいました。
そして、たとえば埼玉土建一般労組の場合、交渉する元請ゼネコンの数が多数にのぼることから、元請ゼネコンとの交渉窓口を10支部で分担して、交渉を進めてきました。
(2)共栄冷機工業の現場の問題点
共栄冷機工業の手形は、国土交通省の通達に違反する140日手形で、その上労務費の部分まで手形払いになっています。建設業法24条6項がさだめる、建設業法などの法律やルールを下請に守らせるための下請への的確な指導をおこなわず、これを放置してきた元請ゼネコンの責任は重大です。
(3)元請交渉の経過
大きな被害を受けた業者、労働者、組合員の救済に向け、たとえば埼玉土建一般労組の場合、埼玉土建一般労組の各支部執行委員会などへの報告を通じて組織の力をより一層引き出すなど、立替払いを渋り、さらに拒否するゼネコン包囲へ向け、組織対組織のたたかいの様相を強めていくことが求められたたたかいでした。
20年にわたる全建総連関東地協の大手企業交渉の積み重ねは、交渉相手の大手企業との間に紛争解決での一定のルール、ある意味では一定の「信頼関係」を確立してきました。それが、今回の共栄冷機工業会社更生事件にあざやかにあらわれました。
元請ゼネコンは、「共栄冷機工業に支払い済みだし、今回の事件ではうちも大損害を受けている。二重払いになるので下請業者の救済はできない」、「今回は会社更生なので、建設業法にもとづく立替払いはあてはまらない」、「二重払いはしない、材料代は払わない、手形で払ってあるものは払わない」などといろいろな理由を付けて最初は立替払いを拒否しました。一番わけがわからないのが、「手形で払ったものは払わない」という元請ゼネコンの理屈です。共栄冷機工業からもらった手形は不渡りになる手形であり、ただの紙切れに過ぎません。
会社更生管財人の弁護士も、「会社更生に建設業法にもとづく立替払いは通用しない。元請が直接お金を2次下請業者に支払った場合、裁判をおこす」と債権者説明会の場で明言しました。
組合は、国土交通省関東地方整備局の担当者に聞いて、「不渡りになるような手形、お金にならない手形をもらっても、それは支払われたことにはならず、不払いということで建設業法にもとづく立替払いの対象に当然なる」ことを確認し、また東京弁護士会が会社更生の場合にも建設業法にもとづく立替払いが通用することを明らかにしていることを、元請ゼネコンに説明しました。そして元請ゼネコンの多くが、結局は組合の説得を受け入れ、国土交通省の指導を受け入れ、支払いをおこないました。
不払い被害を受けた2次下請業者は埼玉土建一般労組だけでも23社にのぼります。東京、神奈川、千葉、茨城をあわせれば40社を超えます。
たとえば三井住友建設は、埼玉土建一般労組だけでも、9人の業者に対して合計1511万4000円の立替払いをおこないました。
五洋建設は「二重払いになるので、立替払いはできない。国土交通省でも都市基盤整備公団でもどこでも行って下さい」との回答から一変して、「全建総連関東地協とのこれまでの信頼関係を大事にして、立替払いの方向で努力したい」と組合に申し入れてきました。「5人の業者に対して、不払い金額の60%を五洋建設が支払う」ということで決着。
同じように、淺沼組、大成建設、東急建設、勝村建設に支払いをおこなわせて解決しました。熊谷組は、7社に対して総額500万円の立替払いを提案してきました。6社が受諾。「金額が少なすぎて、これでは救済にならない」と納得できない業者(1社)については、再交渉中です。安藤建設は1社解決、残り1社。奥村組は支払い金額を示す予定です。西松建設、フジタなどとは引き続き交渉中です。
(4)なぜ厳しさを突破して支払いを行わせることができたのか
@『建設業法解説』(大成出版社)の活用
国土交通省の担当者が書いた本『建設業法解説』(大成出版社)については、国土交通省自身が書いた本ですから当然のことですが、国土交通省は「この本に書いてあるとおりです」と回答しています。そして、この本に書いてあるのが「特定建設業者である元請は下請負人保護の特に重い義務を負っている」、「元請の特定建設業者が最終的責任者」、「元請の特定建設業者による立替払いの基準は、賃金については世間相場での金額、工事代金や納入代金については損害額を限度として当面の窮状を救済するのに足りるかどうかを基本として定める」等々であり、ここに書いてあることをおこなってほしいと組合は言っているだけだと元請ゼネコンに迫ると、元請ゼネコンもなかなかこれを否定できないということがあります。
A参議院国土交通委員会での政府答弁の活用
2002年7月23日の参議院国土交通委員会での政府答弁は、「元請の特定建設業者が負っている下請負人保護の特に重い義務の中には、建設業法41条2項、3項が含まれる」、「立替払いの中には、結果としての二重払いが含まれる」等々、『建設業法解説』(大成出版社)に書いてあることを国会の場で再確認しています。
B有価証券報告書の活用
有価証券報告書を購入して読むと、企業の業績がわかるだけでなく、会社役員の中に国土交通省(旧建設省)等の出身者がどの程度いるのか、国土交通省発注の工事をどの程度受注しているのか、大株主の状況、等々もわかりますから、「取締役の中に国土交通省出身者がいるのに、国土交通省の『建設業法解説』を守れないのか」の追及ができるようになります。
C国土交通省の力を引き出す
国土交通省関東地方整備局の担当者にも、『建設業法解説』を含めて事情や実態をよく事前に説明し、国土交通省から元請ゼネコンに対して指導をおこなわせることです。
D組織力を背景に
そしてやはり、全建総連70万人の組織力を背景にして交渉を進めることです。場合によっては労働組合としての争議行為に及ぶこともあり得ることを、元請ゼネコンにきちんと伝えることです。
E政治の力を引き出す
最後の手段として、組合と協力関係にある国会議員の力を借りることです。
3、労働者として認められる範囲の拡大
リモテックス社破産事件に続いて「春日部労基署、手間請父子など3人を労働者と認め賃金を保護」、「新興産業(テレビCM「ぱっとサイデリア」)施工員を労働者と認める」など請負の形で働いているなかまを労働者として認め、その賃金を保護する事例が積み重ねられ、私達の運動が実りつつあります。
千葉土建一般労組の三楠正広さんから言われて、2003年9月21日におこなわれた「千葉土建一般労組第1回建設政策研究交流集会」の第4分科会(労働債権確保)で埼玉土建一般労組の経験を報告したときに、千葉土建一般労組の資料を見て大変な成果だと思ったのは、三楠さんが中心になって進めてきた千葉土建一般労組の賃金支払確保法適用の経験の規模の大きさです。千葉土建一般労組は、労基署経由では、ミナミハウス(地域のリフォーム業者)倒産での一人親方等の施工員、元取締役を含めて30人への賃金支払確保法の適用、管財人経由では、山下組倒産での型枠大工(施工班)98人への適用、日立精機サービス倒産での代表取締役を含む下請社員全員と一人親方あわせて14人への適用などなど、多くの解決事例を積み上げてきています。
2003年6月〜7月の衆参法務委員会での審議では、民主党、共産党、社民党が、形が法人の場合(法人の社長の場合)であっても、実態が労働者と同じであれば、労働者と認めてその報酬を保護することは十分にあり得るとの政府答弁を引き出しました。この3党に対しては、全建総連関東地協賃金対策事務局が国会質問の直前に説明に行きました。また、私たちに対してこの問題で大門実紀史参院議員からの事前のアドバイスなどがあったことは、言うまでもありません。
4、建設業法41条にもとづく勧告の歴史的な意義
東京土建一般労組と全建総連神奈川県連が力をあわせて、行政からはじめて建設業法第41条にもとづく勧告を出させることができました。2003年9月16日に神奈川県知事名で出された建設業法第41条1項にもとづく勧告が、それです。船津建設倒産により不払い被害を受けた下請業者に対して建設業法にもとづく立替払いを拒否し続ける元請・特定建設業者の丸山工務所に対して出された勧告です。
東京土建一般労組の不払い対策活動と言えば、百瀬文治さん(当時)、溜口芳明さんですし、また、全建総連神奈川県連は佐野昭広さん(当時)、田中政広さん、吉良比呂志さんと強者が存在します(現在は、紺野広巳さんが加わっています)。またもちろん、全建総連首都圏組合の各支部の不払い対策担当書記のがんばりを特記する必要があります。
さて、東京土建一般労組と全建総連神奈川県連が力をあわせて、行政からはじめて引き出した建設業法第41条にもとづく勧告については、その到達の重み、歴史的な意義を強調しておく必要があります。これは、はじめての出来事です。旧建設省、国土交通省、そして全国自治体を通じて勧告書(建設業法に基づく元請責任での不払い解決についての勧告書)が出されたことは一度もありません。全建総連関東地協の長年の不払い対策活動の大きな到達としてこの勧告を正当に評価しておく必要があります。
勧告書など出るわけがないとたかをくくっていた大手ゼネコン・住宅企業には大きなショックですし、また今後、国土交通省や全国の自治体に勧告書を出すように迫っていく上での大きな力になるものです。
5、労働協約の方向こそ
2003年10月23日、24日を中心に行われた全建総連関東地協第39回大手企業交渉でも、月額50万円の賃金要求については、「理解はできる」としながらも、「不況の中激しい競争があり1企業では何ともならない」などとする回答が目立ち、また仲間からの声として「賃金額だけを決めても意味はない、働いている日数が大幅に減っているのだから」が出ていることから、大手企業交渉の今後の方向として、たとえば日本建設業団体連合会(略称「日建連」。大手ゼネコンの中央団体)と全建総連関東地協の間で「賃金の決定」、「仕事がなかった場合の賃金補償」、「不払い発生の場合そこからお金を支払うようにする『基金』の設置」などまさにドイツやフランスのように「労働協約」を結ぶ方向の追求が必要になってきているのではないかと感じています。
◎ (建設業、中小企業、地方)倒産増加の中での最近の不払い対策活動
1 大手企業の状況
最近の半期(2007年4月1日〜9月30日)で見ても、ビッグゼネコン5社は次のように利益をあげ、強固な財務地盤を形成しています。(竹中工務店は2006年1月1日〜2006年12月31日)
○ 大林組 売上高6467億11百万円 中間純利益49億85百万円 利益剰余金期末残高1877億3百万円
○ 清水建設 売上高6073億39百万円 中間純利益61億27百万円 利益剰余金期末残高1224億48百万円
○ 大成建設 売上高7191億15百万円 中間純利益119億9百万円 利益剰余金期末残高820億87百万円
○ 鹿島建設 売上高8151億33百万円 中間純利益248億55百万円 利益剰余金期末残高950億96百万円
○ 竹中工務店(2006年1月1日〜2006年12月31日) 売上高1兆4224億87百万円 当期純利益274億68百万円 利益剰余金期末残高2582億1百万円
様相が異なるのが、準大手、中堅ゼネコンです。純損益を半期(2007年4月1日〜9月30日)で見ると、三井住友建設3億21百万円、前田建設工業△36億31百万円、西松建設△4億84百万円、等々、というような状況です。そうは言っても見逃してはならないのが、一定強固な、準大手、中堅ゼネコンの財務基盤です。利益剰余金期末残高(2007年9月30日残高)を見ると、戸田建設1270億65百万円、前田建設工業993億65百万円、西松建設1060億71百万円、等々、という状況です。
大手住宅企業について、最近の半期(2007年4月1日〜9月30日)で見ると、大和ハウス工業、積水ハウス、大東建託が相当な好調さを示すと同時に、強固な財務基盤を形成しています。
マスメディアも、企業利益の配分が株式配当に偏り、賃金に回っていないことについては報道していますが、それを象徴しているのが、大東建託の株式配当金の流れです。大東建託の株式の約3割を株式会社ダイショウが保有し、半期だけでもその配当金は16億円になります。(株式会社ダイショウは、大東建託会長の多田勝美氏の出資比率が81.41%となっています)
2 建設業、中小企業、地方での倒産増大
NHKテレビの報道によると、倒産が増加傾向にあり、特に地方、中小企業、建設業で増加傾向にあり、今後も増加傾向は続く、とのことです。
帝国データバンクによると、2007年の倒産件数は1万959件。前年と比べて1608件(17.2%)増加しています。中小企業の倒産増加、また建設業、小売業、サービス業の倒産の大幅増加が特徴です。
同様に帝国データバンクによると、倒産件数のトップは建設業で、2939件にのぼり、倒産件数全体に占める建設業の割合は26.8%に達しています。建設業で倒産の原因を見ると、2007年に倒産した2939件のうち、「不況型倒産」が前年比16.2%増の2509件に達し、85.4%を占めています。帝国データバンクは、「中小・零細企業の業況は一層厳しさが増しているのが実態」と指摘しています。
3 最近の不払い対策活動の経験から
最近の特徴的な事例を紹介しながら、傾向を明らかにできればと思います。
@ T社 民事再生事件
T社が民事再生で倒産。資材の供給を受けて、住宅新築及び改築工事でのユニットバス(システムバス)の設置作業をおこなっていた「業者」が不払い被害を受けました。
私たちは、形式は「業者」であっても実態は労働者であると主張し、労働債権と認めて保護することを求めて運動。
T社の代理人弁護士が、「業者」7人の未払金約1200万円について準労働債権(労働債権に準ずる債権)として位置付け、賃金支払確保法の申請をおこないました。ただ、法人の業者の分については準労働債権として認めず、課題として残っています。
A 残土排出、産廃処理での不払い
ゼネコンの現場で、残土排出、産廃処理といった建設業法上の「建設工事」とは言えない仕事での倒産・不払いが発生しています。
重層下請構造の現場でおこった倒産・不払いについては、賃金・工事代金以外のものであっても、元請責任での立替払いの対象になるというのが、国土交通省の見解です。
国土交通省関東地方整備局の指導・誘導もあり、残土排出での倒産・不払いについては、大手ゼネコンが立替払いを行ない、円満に解決しました。
産廃処理での倒産・不払いについては、交渉中。
B 4次とか6次という深い重層下請構造下での倒産・不払い
元請〜4次という重層下請構造、また元請〜6次という重層下請構造のところで倒産・不払いが発生しています。
国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」も活用しながら、解決をめざし、「元請〜6次」のケースは立替払いを受けることで、解決しました。「元請〜4次」のケースでは、発注者の独立行政法人UR都市機構に申し入れるなど、交渉中です。
C 許可行政庁の群馬県、福島県の指導、誘導による元請の立替払い
直近の事例としては、群馬県の指導、誘導による元請の立替払いがあります。群馬県知事許可の特定建設業者が、最初は立替払いを拒否していたのですが、許可行政庁の群馬県からの指導、誘導を受け、立替払いを実施したものです。(約700万円の未払い工事代金のうち520万円を立替払いしました)
また、福島県知事許可の特定建設業者が、許可行政庁の福島県の指導、誘導を受け、一定の立替払いを実施しました。
どちらも、建設労組による両県への申し入れが影響していることは、建設労組の不払い対策活動の結果と言えるものです。
建設業、中小企業、地方への倒産の拡大とそれへの建設労組の不払い対策活動の対応を反映して、許可行政庁の都道府県からの建設業法にもとづく指導の広がりを示しているのではないでしょうか。
◎ ―――――――― 2007年 建設業 倒産状況 ――――――――
帝国データバンク等を参考にして、建設業での2007年の倒産状況をまとめると、次のようになります。
NHKテレビ等の報道によると、倒産が増加傾向にあり、特に地方、中小企業、建設業で増加傾向にあり、今後も増加傾向は続く、とのことです。
帝国データバンクによると、2007年の倒産件数は1万959件。前年と比べて1608件(17.2%)増加しています。
中小企業の倒産増加、また建設業、小売業、サービス業の倒産の大幅増加が、全体の倒産件数を押し上げています。
倒産・不払いでの相談を受けた経験で言っても、ここ1年での建設業の大型倒産は「みらい建設グループ民事再生」ぐらいで、あとは中小建設業者の倒産です。
倒産件数1万959件のうち、倒産件数のトップは建設業で、2939件にのぼり、倒産件数全体に占める建設業の割合は26.8%に達しています。まさに4件に1件以上が建設業の倒産です。
建設業の倒産件数は、公共工事の縮小、「脱談合」の影響、また改定建築基準法関係の影響、資材高騰の影響などの打撃が重なり、前年(2606件)を12.8%(333件)上回りました。
全体の負債総額も増加しています。2007年の負債総額は5兆4917億2800万円で、前年に比べて2199億3100万円(4.2%)増えています。
倒産の原因を見ると、販売不振を主な原因とする「不況型倒産」が全体の77.1%を占めています。
建設業で倒産の原因を見ると、2007年に倒産した2939件のうち、「不況型倒産」が前年比16.2%増の2509件に達し、85.4%を占めています。建設業の「不況型倒産」は年々増加傾向にある、とのことです。NHKテレビ等も報じているように、建設業は、特に地方での倒産増加が顕著です。
帝国データバンクは、「中小・零細企業の業況は一層厳しさが増しているのが実態である」と指摘しています。
最近の倒産・不払い相談の増加傾向を考えると、この指摘は実感と一致しています。
今後の全体の見通しとして帝国データバンクは「しばらくは小規模企業の倒産多発が続き、年度末にかけても倒産は高水準で推移する見通しである」としています。
◎ 名前だけの取締役(名義貸しの取締役)に倒産・不払いの責任は及ぶのか?
「企業倒産。社長は行方不明状態。社長の親(母親)が取締役になっている。名前を貸しているだけのようだ。倒産・不払いについて、名前だけの取締役(名義貸しの取締役)の責任を追及できるのか?」という質問を受けました。
倒産多発の状況下、よくある事例です。
あらためて調べてみました。
会社法429条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
会社法429条は、上記のように定めていますが、調べた限り、判例の傾向は、第三者保護を重視する立場から、名前だけの取締役にも責任を負わせる傾向と、報酬も貰っていないような名前だけの取締役に責任を負わせることに慎重な傾向の、二傾向に分かれているような気がします。
しかし、名義貸しの取締役といっても取締役としての責任を負わされるのが原則のようです。
原則は、名前だけの取締役であっても取締役としての責任を第三者に対して負う、ということのようですが、報酬を全く貰っていないとかワンマン社長で取締役が何を言っても聞き入れないというような場合にまで取締役としての責任を負わせるのはどうなのか、ということで、名前だけの取締役になった経過とか会社との関係、会社の規模、倒産に至る経過など総合的に判断して、責任の有無、軽重を決める、ということになるようです。
取締役の義務として、社長などへの監視義務というのもあるとのことです。社長の行為を適切に監視していなかったために、会社や第三者に損害を与えたような場合、名前だけの取締役でも、第三者(取引先など)への損害賠償責任を負う場合がある、ということのようです。
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