COLUMN

何でもコラム
個人の尊厳、生命の絶対的尊重、両性の本質的平等のために
――――――――  「公契約法・条例」関連  ――――――――
――――――――  「公契約法・条例」関連  ――――――――
海野和夫
 
◎ 全建総連主催シンポジウム「公契約条例(法)の制定をめざして」
全建総連主催シンポジウム「公契約条例(法)の制定をめざして」が、2006年4月27日、(東京)社会文化会館で実施されました。
そのなかみの一端を、以下に紹介させていただきます。
 
パネリストは、堀内光子文京学院大学客員教授・元ILO事務局長補、君島一宇全日本自治団体労働組合(自治労)副中央執行委員長、永山利和日本大学商学部教授・建設政策研究所理事長、佐藤正明全建総連書記長の4氏です。そして、コーディネーターは古川景一弁護士です。
パネリスト4氏の発言を要約すると、下記のようになります。適切な要約になっているかどうかの問題がありますので、間違い、不十分等がありましたら email でご指摘下さい。直ちに訂正・削除・補強等、実施致します。
 
堀内光子氏「公正な競争の確保が行われなければ、使用者にとっても生きていけなくなるような状況になってくる。適正な賃金、労働時間、労働安全衛生等の確保は、働く人々のためだけでなく、結果として経営側にも健全な経営を成立させることになる。不平等に余りにも寛容になってはいけない」
 君島一宇氏「地域生活圏の運動をさらに発展させ、労働組合自らの要求を地方自治体にぶつけ、地域福祉春闘の運動化をはかってきた。自治体改革運動を運動の柱としている。地域がつぶれていくのを止め、住みよい地域を作っていく。そして、自治体公契約条例制定運動にたどりついた。(現状は)地域での公正労働基準が守られていない。2年間に全ての自治体に公契約条例を作ることをめざす。質の高い公共サービスを実現し、地域の資源とニーズに真正面から向き合っていく。自治体が中心軸であり、責任を放棄してはならない」
 永山利和氏「公共事業の削減、競争の促進、指し値発注などにより、年々賃金・単価が引き下げられてきている。下請の受注量の減少により経営危機が深まっている。(公契約運動は)日本の将来を決める要石となる運動である。賃金・労働条件の無視、建退共を貼付しないといった実態に対して、公の役割の観点から見直し、公正な労働基準、公正な取引を公の行政の側から実現していく運動である。一方的な民営化への防波堤となり得るものである。グローバリゼーション、小泉構造改革のマイナス面をおさえていく役割を持つものである」
 佐藤正明氏「入契法成立時の参院付帯決議『(公共工事の発注者は)建設労働者の賃金・労働条件の適切な確保に努めること』、これが大きかった。この表現が入るについては、全建総連も努力した。具体的に公契約条例をかちとる段階にもう一歩進めていく時期に来ている」
 君島一宇氏「発注者、行政の側には、使用者の公正な競争を担保する仕組みを作る義務がある」
 永山利和氏「地域産業への配慮が必要。地域要件などがそうだ。環境への配慮、心身障害者の雇用、社会保障の推進など総合評価方式を押し進めることだ。自治体の労働者と受注側の労働者の双方から働きかけることで公正な条件を確保していくことが大事」
堀内光子氏「公的な部分(国、自治体)が自らを律するルールが必要。公正競争の確保には、公からの規制が必要。コスト競争だけではない公正な競争が必要」
君島一宇氏「アウトソーシング(民間委託)したとしても、自治体としての責任は残っている。その責任を果たし続けているのかどうか、監視している。福祉、医療の質の問題を問い続けている。民間企業が請け負うと利潤を上げなければならないので、変質してしまうのではないかと警鐘を鳴らしている」
堀内光子氏「国の財政問題として民営化が進んでいる。働く人々の保護が必要とILOは主張している。アウトソーシング、契約労働について、今年のILO総会は、労働条件を検討することになっている。質のいいサービスを受けるためには、サービスのコストをある程度負担することなしには、最終的な解決には至らない」
永山利和氏「アウトソーシング──労働者への一方的なしわ寄せにならないような対応が必要。コストを下げ、流動化した労働者に任せることは、サービスの劣化になる。質のルール化をはかり、歯止めをかけ、改善する公機関の役割が求められる」
堀内光子氏「ILOは法的基準、ガイドラインを出している。公契約については、国以外の機関も制定するだろうという前提に立っている」
佐藤正明氏「全建総連は地域に根差した組織である。地域から運動を起こして、賃金を底支えすることなしには、賃金・単価は下がっていく。自治労と共同して、大いに公契約条例を作っていきたい」
君島一宇氏「公共の領域の中心軸に自治体を置く。地域の公共の力を作っていくために、全建総連、自治労、市民団体、NPOなどを含むネットワーク作りをしていく。自治体が発注する仕事で働いている人たちの年収は300〜400万円の水準だ。自治労は437自治体に公契約条例制定の要請を行い、153自治体から『検討する』との回答を得ている」
佐藤正明氏「たとえば、北海道・七飯町では、公契約条例制定が具体化に向かっている。自治労の積極的な取り組みに激励された」
堀内光子氏「アメリカは、政府が自ら推進するものは自ら契約して推進するというところがある。日本には、そういうところがない。ヨーロッパは、労働組合を政策決定のパートナーと見ている。社会的公平、社会的価値が根付いている。労働の柔軟化、流動化の中に、公平なルールを確立することだ」
永山利和氏「来年の一斉地方選挙をめざして、スケジュール化して、具体化をはかることだ。公共工事のコスト破壊機能を止めるには、歯止めをかける基礎条件を作ることが必要。二省協定賃金への配慮からさらに進んで公契約条例へということだ」
 
 
◎ 佐藤幸樹埼労連事務局次長講演の要旨の紹介
(下記は、2006年2月19日に埼玉県伊奈町県民活動総合センターでおこなわれた「第9回埼玉土建一般労組住宅・建設研究交流集会」分科会での佐藤幸樹埼労連事務局次長の講演「公契約運動の前進のために」の要旨をまとめたものです───海野和夫)
 
 全労連は賃金底上げの運動を行っています。
 小泉構造改革の特徴は、@小さな政府、A公務員バッシング、B二極化(勝ち組、負け組)の肯定、C国家の(税金、社会保障を通じての)再配分機能の縮小、D福祉切り捨て、E軍国主義化、などです。
 何を狙っているのか。市場原理を(介護も雇用も含めて)全ての分野に広めることです。雇用も市場原理にゆだねる自由競争へ、ということです。国際競争力を高めるために、賃金も中国、東南アジアなみに、というわけです。そして、終身雇用、年功序列などの日本型雇用システムを解体して、成果主義、短期雇用へと切りかえるということです。
 このことは、既に1995年の日経連「新時代の日本的経営」の中で提言されていました。@(能力給、年俸制の)正社員、A(職務給の)契約社員、B(職務給、時間給の)パート、派遣にわけることを、提言しています。
 今、既に、日本の(34歳までの)青年の三分の一は上記のB類型です。(25歳以下の)青年で見ると、二分の一が上記のB類型です。
 財界・経団連は、小泉構造改革は、規制改革・民間開放推進3か年計画を進め、労働者派遣法、労働基準法改悪など、上記の方向を推進しています。
 このように、パート、アルバイト、派遣、請負などの非正規雇用労働者の増大のもとでは、賃金の底上げが重要です。
 公務員を悪役に仕立て、国民を分断し、民営化が推進されています。広く労働者、国民から支持される労働運動がとても大事です。
 賃金底上げの重要な柱は、@均等待遇(「パートだから」賃金が低いといった実態の改善)、A最低賃金(埼玉県・時給682円の大幅引き上げを)、B公契約運動(自治体発の低賃金労働を許さないたたかい)の三つです。
 均等待遇の問題について言うと、日本の正規雇用男性の賃金を100とすると、正規雇用女性は67、パート男性は41、パート女性は37です。
 低すぎる日本の法定最低賃金。平均賃金と比較すると、日本の法定最低賃金は27.1%です。まさに、貧乏人を作って戦争に行かせることを、狙っているのです。
 自治体調査でわかったことですが、自治体臨時・非常勤職員の時給単価などが地域相場より低いということです。自治体が地域の賃金相場を引き下げているのです。
 労働者の実態を見ない議論である「ニュー・パブリック・マネージメント」が最近もてはやされ、ほとんどの自治体が導入しています。何でも「委託化」、「外注化」、安ければ安いほどいいという理論です。これをテコに公務員を減らしています。
 これは、本当に正しいのか。そうではなく、税金で「働く貧乏人」を作らないことが必要です。公契約賃金の改善を求めることが必要です。公契約とは、国や自治体などの公的な機関を相手に結ばれる契約のことです。公共工事、委託業務(ゴミの収集、上下水道、庁内の掃除・警備・受付、等々)が、それです。
 また、補助金を受けている「福祉職場で働く労働者」、「保育所の保育士、学童保育の指導員」、「市町村採用の臨時教職員」も、公契約に含まれると私は考えています。「市町村採用の臨時教職員」について言うと、生活保護を申請したら認められる事例が生まれているような低賃金実態です。
 官公需印刷物のダンピング受注が問題になっています。委託(印刷等)は、(公共工事には存在する)最低制限価格制度がないのです。まさに、公契約での賃金水準の確保が必要です。自治労連を含めて共闘の呼びかけをしてほしいと思います。全国一般、福祉保育労、建交労、全印総連もそうです。
 公契約運動とともに賃金水準の引き上げ運動をする必要があります。
 今、自治体の役割が問われています。委託業務の実態は、過当な競争入札で落札時、単価が大きく下がり、労働者の受け取る実賃金は落札時よりさらに下がり、年収300万円程度になっています。
 森永卓郎氏は「いまや年収100万円、200万円台の労働者が増大している。その要因は、パート、アルバイト、フリーターなどの非正社員が増えていることだ。それは、小泉政権の政策によってもたらされた」と指摘しています。
 景気と所得の二極分化が進んでいます。大企業は大もうけ、高額所得層がさらに金持ちに、平均所得の連続減、等々。
 ILO(国際労働機関)94号条約は「関係労働者にその地方の同一性質の労働に劣らない有利な賃金・労働時間などの労働条件の確保を、(国や自治体などの発注者に)義務付け」ています。これが発動すれば、公共工事、委託業務に従事する労働者への直接的影響にとどまらず、地域の労働者全体に波及していきます。
 ILO94号条約の批准国は59か国です。日本は未批准です。
 公契約条例の制定は、地域労働者の賃金底上げを実現し、中小企業の経営安定をもたらし、その結果として自治体の財政安定にもつながります。
 法定最低賃金の現状は、生活保護、年金より低い。せめて平均賃金の半分にすることが求められています。全労連の最低賃金の当面の目標は、月15万円、日7,400円、時間1,000円です。
 また、全労連は、最低保障年金として、月7万円を掲げています。
 ロンドン市は、公契約賃金は公務員賃金を目安とすると定めています。
 賃金水準を引き上げる運動とあわせて公契約運動の推進を。大手企業交渉は重要です。現場での賃金闘争が重要。業界団体との連携も視野に。いろいろな労組との連携も視野に。市民的な合意を勝ち取れる運動へ――ここが特に重要。
 (埼玉土建一般労組の)川越、上尾伊奈などでの取り組みも教訓に。川越市の文書は、労働時間にも言及しています。
 二省協定(公共工事設計労務単価)の水準は微妙です。その辺も考慮に入れることが必要です。
 行政への働きかけ。議会の力関係を変えること。
 どこから始めるのか――実態の掌握から始めること。どこが大変か、何が大変かをつかむこと。その中で、一緒に組織化を進めていくことです。
 公契約従事者は全国で1000万人を超えています。
 現場調査で自治体の役割をもっと発揮させることです。市民が納得できる提言、取り組みを進めることです。公契約条例の制定は、建設業者の経営を安定させ、自治体の財政を豊かにします。
 せめて二省協定(公共工事設計労務単価)まではという要求は正しいと思っています。しかし、技能工としてそれ位(その水準)でいいのかどうかという問題意識を私は持っています。
 
  
◎ 公契約条例と公共工事入札契約適正化促進法参議院付帯決議
国や自治体の発注工事での建設労働者の適正で公正な賃金の確保のため、国での公契約法(公共工事での適正な賃金の確保法)、自治体での公契約条例(公共工事での適正な賃金の確保条例)の制定が、いま強く求められています。
 民間工事だけでなく公共工事でも、建設現場の重層下請構造の中で、建設労働者に支払われる賃金が、1次下請、2次下請、3次下請……と先に行けば行くほど減額され、実際に汗水流して施工に従事している下請労働者に支払われる賃金額は低くなっています。
 公共の福祉と公共の財産の整備等を目的としておこなわれる公共工事での、施工に従事する労働者の低賃金は、許されるものではなく、発注者の国や自治体と元請との間の契約で決められた賃金が、下請労働者に、減額されることなく支払われるべきです。そして、建設労働者の賃金が安定することは、企業の受注価格の安定にもなるものです。
 すでに1949年6月にILO(国際労働機関)で「公契約での労働条項にかんする条約」(ILO94号条約)が採択され、ILO加盟国174か国中59か国が批准しています。この「公契約での労働条項にかんする条約」は、「公の機関による工事で、下請業者を含め、関係労働者に、賃金・労働時間その他の労働条件を確保し、すべての関係者に知らせる」というものです。日本はまだ、この条約を批准していません。
 日本も、早急に同条約を批准し、公契約法、公契約条例を制定することが求められています。
 イギリスでは1891年の「公正賃金決定」、フランスで1899年に「ミルラン命令」(公契約規制令)、アメリカの1931年の「ディヴィス・ベーコン法」と先進資本主義諸国では、公契約法が制定されています。
 建設産業での賃金が、冷酷な市場原理に左右され、社会保障の視点から規制されないのであれば、全産業の1割を占め、産業として重要な一翼をになう建設労働者の生活がおびやかされたままであり、後継者も育たず、将来にわたって禍根を残すことになります。
 建設産業が発展していく上で、公契約法、公契約条例の制定は不可欠です。
公共工事入札契約適正化促進法の成立により、公共工事では一括下請(丸投げ)が全面禁止となっています。 
また、公共工事入札契約適正化促進法の成立にあわせて、衆参両院で付帯決議がおこなわれました。付帯決議の中には、衆参両院で「発注者は、入札参加者に対し、対象工事にかかわる入札金額とあわせてその明細を提出させるよう努めること」が入りました。これは、賃金や法定福利費の別枠支給に道を開くものであり、今後の大手企業交渉などをつうじて大手企業にその実行を迫っていく上での根拠を与えるものです。
また、参院の付帯決議には、「(発注者は)建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるよう努めること」が入り、公共工事での建設労働者の賃金、労働条件に対する発注者責任をはじめて明らかにしたものであり、画期的な前進です。
 上記の参院付帯決議の成立以前は、公共工事の現場で賃金、工事代金の不払いが発生したばあい、発注者である国や自治体などは「民民契約(民間どうしの契約)の問題には、発注者は介入できないし、不払いについて発注者に責任はない」として不払い解決での発注者責任をまったく認めていませんでしたが、賃金に対する発注者責任を確認したこの参院付帯決議は、公共工事の現場での賃金、工事代金の不払いの解決に、新しい道を切り開きました。また、公共工事設計労務単価(二省協定賃金)を含めて賃金、労働条件の改善に結びつくものであり、さらには、公契約法・条例の制定へ向けての根拠を与えるものであり、私たちは、国土交通省や自治体に対して、公契約法、公契約条例の制定に踏み込むことを、求めています。
 
 
◎ ――― 公契約条例 地域労働協約 拡張適用 ―――
1 公契約条例と地域労働協約
 公契約条例は、公共工事での賃金について、地域労働協約が定める賃金を下回ることができないことを定めます。ですから、公契約条例が成立すれば、公共工事での賃金は地域労働協約が定める賃金を下回ることができなくなり、地域労働協約が定める賃金によって公共工事の賃金は規定されるようになります。
 成立した公契約条例をまともに機能させるためには、地域労働協約を成立させ、地域労働協約で適正な賃金を定め、保障することが欠かせないわけです。
2 地域労働協約の拡張適用 
厚生労働省所管の独立行政法人である労働政策研究・研修機構は、(地域労働協約の拡張適用を含む)労働協約の一般的拘束力について、下記のように記述しています。
 団体交渉についてアメリカのような排他的交渉代表制(一定の交渉単位で過半数の労働者の支持を得た労働組合のみが交渉単位の労働者のための排他的な交渉権を取得する手続)をとっていない複数組合代表制をとるわが国では、労働協約は本来、締結労働組合の組合員に対してのみ効力を生じ、それら組合員以外の労働者には、効力を生じません。しかし、労組法(労働組合法)はこの原則に対して例外を設け、一定の場合、一定の条件のもとでは、労働協約を締結労働組合の組合員以外のもの(これをアウトサイダ―といいます)にも適用させるようにしています。このように労働協約を拡張して適用する効力を一般的拘束力といい、それには、@事業場単位の一般的拘束力(労組法17条)と、A地域的一般的拘束力(労組法18条)の二つの種類があります。
3 労働組合法17条、18条
労働組合法第17条(一般的拘束力) 一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。
労働組合法第18条(地域的の一般的拘束力) 一の地域において従業する同種の労働者の大部分が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該労働協約の当事者の双方又は一方の申立てに基づき、労働委員会の決議により、厚生労働大臣又は都道府県知事は、当該地域において従業する他の同種の労働者及びその使用者も当該労働協約(第2項の規定により修正があったものを含む。)の適用を受けるべきことの決定をすることができる。
2 労働委員会は、前項の決議をする場合において、当該労働協約に不適当な部分があると認めたときは、これを修正することができる。
3 第1項の決定は、公告によってする。
4 第1項の申立てに係る労働協約が最低賃金法第11条に規定する労働協約に該当するものであると認めるときは、厚生労働大臣又は都道府県知事は、同項の決定をするについては、賃金に関する部分に関し、あらかじめ、中央最低賃金審議会又は都道府県労働局長の意見を聴かなければならない。この場合において、都道府県労働局長が意見を提出するについては、あらかじめ、地方最低賃金審議会の意見を聴かなければならない。
最低賃金法第11条 厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域内の事業場で使用される同種の労働者及びこれを使用する使用者の大部分が賃金の最低額に関する定めを含む一の労働協約の適用を受ける場合又は賃金の最低額について実質的に内容を同じくする定めを含む2以上の労働協約のいずれかの適用を受ける場合において、当該労働協約の当事者で、ある労働組合又は使用者(使用者の団体を含む。)の全部の合意による申請があったときは、これらの賃金の最低額に関する定めに基づき、その一定の地域内の事業場で使用される同種の労働者及びこれを使用する使用者の全部に適用する最低賃金の決定をすることができる。
4 地域の多数派に
 地域労働協約の拡張適用を考慮した場合、建設労組の組織化をさらに進め、地域での多数派になることが決定的に大事ですし、それが公契約条例を成立させ、また成立した公契約条例がまともに機能することを保障します。
 
 
◎ ─── 公契約条例  「民民」の壁を超えるには ───
1 「公契約条例と民民の壁」のメール
 最近、「公契約条例と民民の壁」の関係で、白滝誠さんから以下のようなメールをいただきました。
 公契約条例の検討を行政等に求めていくときに決まって出されるのは「民民契約」だから元請から下には手を出せない云々という回答が壁になっています。      
そこでかなり屁理屈ですが、次のようなことは考えられませんか。
建設業法23条に「注文者は、請負人に対して、建設工事の施工につき著しく不適当と認められる下請負人があるときは、その変更を請求することができる」とあります。
拡大解釈すれば下請が不適当かどうか発注者は常に監視し、そう認めれば、下請変更という形で元請を指導し、適当な業者に変えられることになり、関与できることになるのではと思います。 何をもって「不適当」とするのか、その基準と細目は各自治体の指導要綱などに「賃金ほか労働条件」の項目を入れ、活用すれば事実上民民論を打破できないでしょうか?
2 検討 
 上記メールの民民論打破の方向は、言われてみると確かにそうかもしれないと、私も感じました。
(下請負人の変更請求)
建設業法第23条 注文者は、請負人に対して、建設工事の施工につき著しく不適当と認められる下請負人があるときは、その変更を請求することができる。ただし、あらかじめ注文者の書面による承諾を得て選定した下請負人については、この限りでない。
2 注文者は、前項ただし書の規定による書面による承諾に代えて、政令で定めるところにより、同項ただし書の規定により下請負人を選定する者の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって国土交通省令で定めるものにより、同項ただし書の承諾をする旨の通知をすることができる。この場合において、当該注文者は、当該書面による承諾をしたものとみなす。
 国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)の建設業法23条についての逐条解説部分には、次のように書かれています。
 本条は、建設工事の施工に当たっている下請負人が、注文者の期待に反して、建設工事を的確に施工していない場合、あるいはその円滑な施工を妨げている場合等には、注文者は、請負人に対して、その下請負人の変更を求めることができることを明らかにしたものである。それは、請負人は、通常当該建設工事の完成の義務を負うだけであり、どのような下請負人を使おうとも原則として自由なはずであるが、右のような下請負人がいる場合には、注文者は安心して工事の施工を請負人に任せておくことができず、注文者と請負人の信頼関係の上に成り立つ建設工事の請負契約の履行そのものが危ぶまれるからである。
1 第1項の規定により、下請負人の変更を請求することができるのは、その下請負人が、「建設工事の施工につき著しく不適当と認められる」場合に限られる。したがって、「建設工事の施工」に直接関係のない事柄、たとえば下請負人の品行がよくないというようなことは、本条の直接問題とするところではない(ただし、そのために工事の施工そのものが不可能となるような場合には、本条に該当するものと考えられよう)。また、建設工事の施工に関係のある事柄(建設工事を的確に施工しうる技術、技能又は能力の有無等)であっても、そのことについて「著しく不適当と認められる」者でなければ、変更を求めることはできない。「著しく不適当と認められる」ためには、客観的妥当性が必要であり、注文者が主観的あるいは恣意的判断により、変更を請求しても、客観的に証明されない限り請負人はそれに応ずる義務がないことは当然である。
2 下請負人の「変更」の請求とは、要するに下請負人の交代の請求のことであり、単に著しく不適当と認められる行為に対する是正の要求に止まるものではない。これは、下請負人は、工事の施工に実質的に携わるものであり、下請負人に対する全人格的信頼のない限り、注文者は工事の的確な施工そのものについて確信を持つことができないこととなるからである。
3 本条ただし書の規定は、下請負人の選定について、注文者が、あらかじめ書面により承諾している場合には、その変更を請求することができない旨を規定したものである。これは、注文者が自己の責任において、その下請負人を容認したものであるから当然のことである。
4 注文者の下請負人の変更の請求が正当な理由に基づくものであるのに、請負人がその変更の請求に応じない場合には、指示等の監督処分の対象になると解されよう。
3 対応
 建設業法23条は、言われているように、注文者は下請の変更を請求できることを定めているわけですから、「民民契約」だから元請から下には手を出せない云々という行政等の回答は、成立しません。 
また、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律案に対する附帯決議」(参議院国土・環境委員会 2000年11月16日)は、その6項で「不良業者を排除する一方で、技術と経営に優れた企業の育成に努め、地域の雇用と経済を支える優良な中小・中堅建設業者の受注機会が確保されるよう配慮するとともに、建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるよう努めること」と定め、建設労働者の賃金、労働条件の適切な確保への公共工事発注者の責任を明らかにしています。
 同附帯決議はその7項で「施工体制台帳の活用等により、元請企業等と下請企業の契約関係の適正化・透明化に努めること」と定め、まさに元請から下に手を出すことを、公共工事発注者に求めています。
 さらに同附帯決議はその8項で「いわゆるダンピング受注は、手抜き工事、下請へのしわ寄せにつながりやすく、また、建設業の健全な発達を阻害するので的確に排除し、公共工事の品質の確保を図ること」と定め、ダンピング受注の排除を公共工事発注者に求めています。建設労働者の賃金、労働条件の適切な確保がダンピング受注を阻む土台となるものですから、この意味でも公共工事発注者には、建設労働者の賃金、労働条件の適切な確保が求められています。
「民民契約だから、元請から下には手を出せない」は成立しません。
 
 
◎ 2007/7/18策定「国分寺市の調達に関する基本指針」全文
(以下に紹介するのは、2007/7/18策定「国分寺市の調達に関する基本指針」の全文です。「低価格の入札」の予防・排除、「適正な労働条件及び賃金水準を確保するよう努める」、元下関係の適正化、「障害者・高齢者」に対する雇用促進、等々、大きな前進面を含んでいますが、他方、「施策化の局面では、競争入札にふさわしい案件に対し落札率の低減化を促進」という表現も存在します。「市民協働」に配慮したものと思われます――海野)
国分寺市の調達に関する基本指針
平成19年7月18日策定
第1 制定の趣旨
 市は、市政を推進するために、さまざまな「もの・人・サービス」を契約により広く外部から調達しているが、それらは、市政の質に深くかかわるものである。そこで、市は、市政目標の実現に寄与すべき調達の基本的なあり方を明確化するため、「国分寺市の調達に関する基本指針(以下「基本指針」という。)」を定めるものとする。
第2 基本理念
 市は、より良い地域社会の実現に向けて、不断に市政推進に取り組む必要がある。そして、それらの事業遂行に伴う様々な調達手続き(発注から履行完了時の検査及び検証・評価までを含む。以下同じ。)は、事業実現を担保するとともに、地域社会をも向上させる機能と役割が求められる。
 そこで市は、様々な調達手続きにおいて、公正性、透明性及び競争性を発揮するとともに、地域社会や地域経済の向上に寄与する機能と役割を発揮することをこの基本指針の柱に定め、これを基本理念と位置づけるものとする。
第3 市の責務
 市は、市政執行に伴う調達手続きのあらゆる場面において、常にこの基本指針の具現化に努めるものとする。そのために市は、事業を実施するすべての部門において、調達に先立つ予算編成はもとより、施策の構想又は立案段階から常にこの基本指針を踏まえ、市政推進に努めるものとする。
第4 市の調達にかかわる者の責務
 市の事業を受注等する者又は受注等しようとする者(以下「市の調達にかかわる者」という。)は、市政を実現する事業の履行者又は履行予定者として社会的責任を負う立場にあることを重く受け止め、その調達手続きにおいて、常にこの基本指針の実現に寄与するよう努めるものとする。
第5 基本目標
 この基本指針に掲げる基本理念を具現化するため、以下のようにその基本的な目標を明確化し区分する。
 1 公平で公正な入札・契約制度の確立
 市は、調達手続きの秩序を適正化し、公平で公正な入札・契約制度の確立に努めるものとする。
 即ち、法令や社会水準に適合する適正な履行体制が確立されるための環境を整備するとともに、不信用・不誠実な者、低価格の入札、不適正な積算及び談合行為など、調達手続きの秩序を低下させ混乱させるさまざまな事象を予防・排除し、あわせて、それらが生じた場合の対応策を明確化するよう努めるものとする。
 また市は、調達の手続きや手順に関する取り決めを明確化して調達環境の客観化を図るものとする。
 2 品質を確保することができる入札・契約制度の確立
 市は、調達において、最良の品質が最適な価格水準によって確保されるよう、手続きの適正化に努めるものとする。
 また市は、調達しようとするものに品質等の基準や規格等が社会的に定められている場合、それらの適用を図るものとする。
 3 市の経済の活性化を図る入札・契約制度の確立
 市は、地域の経済振興に寄与すべき調達手続きを具現化し、それを推進するものとする。
 また市は、市民協働による市政促進が発揮されるべき調達手続きの具現化を目指すものとする。
第6 個別目標
 基本目標を施策として展開するため、市の調達が役割を担うべき目標を以下のように整理し、個別目標として定める。
 1 「公平で公正な入札・契約制度の確立」へ向けた個別目標
 (1)社会的に適正な雇用水準の向上
 市は、調達する事業において、適正な労働条件や賃金水準が確保される必要があるため、それらの実施状況を把握できる環境の整備を図るものとする。
 また、市の調達にかかわる者は、常に労働関係法令を遵守することはもとより適正な労働条件及び賃金水準を確保するよう努めるものとする。
 (2)元請と下請等における関係の適正化
 市は、市の調達にかかわる者における施工体制や請負体制を適確に把握するものとする。
 また、市の調達にかかわる者は、適正な履行体制を図るため、元請と下請等との間における手続きの適正化及び明確化に努めるものとする。
 (3)価格入札における秩序の適正化
 市は、市へ損害を与えるような不当な入札価格及び行為等を調査・排除等する監視制度や仕組みを確立することにより、品質にふさわしい価格による調達手続きが達成されるよう秩序の適正化を確立するものとする。
 また、市の調達にかかわる者は、関係法令を遵守することはもとより、積算の内容等を明確な根拠に基づき説明する責任を負うものとする。
 施策化の局面では、競争入札にふさわしい案件に対し落札率の低減化を促進して調達価格の適正化を図るものとする。
 (4)社会的に公平な雇用の促進
 市の調達にかかわる者は、障害者・高齢者などの就労困難者に対する雇用促進に努めるとともに、子育てを支援し男女平等を推進することにより公平な労働環境の向上を推進するものとする。 
 2 「品質を確保することができる入札・契約制度の確立」へ向けた個別目標
 (1)価格以外の評価による調達方式の推進
 市は、調達手続きのうち、価格による手続きがなじまないことが認められるものに対し、総合評価方式やプロポーザル方式など価格以外で評価・判断する調達手続きを整備するものとする。またそのために市は、係る調達手続きの対象とすべき事業と手続き方法等を明確化するものとする。
 (2)調達成績が検証・評価される仕組みの推進
 市は、調達するものに対する安全性と信頼性を確保するため、履行中の事業の工程を進行管理等する手順や完了時の検査を客観的に評定する基準を整備してマニュアル化するとともに、専門的判断力を有する者の判定による適確な検証手続きを確立するものとする。
 また市は、それらの検証結果を調達手続きへ適切に反映する仕組みを整備するとともに、市の調達にかかわる者の実績を適正に評価する環境を整備するものとする。
 (3)地球環境へ配慮した調達の推進
 市及び市の調達にかかわる者は、地球的規模で取り組む必要のある環境配慮対策を、調達手続きにおいて具現化するよう努めるものとする。また、そのために市は、調達に先立つ事業立案及び予算編成段階から、市が定める環境配慮に関するルールを念頭に置いた施策の推進に努めるものとする。
 (4)客観的な調達手続きの促進
 市は、調達に係る事務手続きについて、その根拠や考え方を明確に説明できる環境を確立するために、判断基準や事務マニュアルを整備して事務手続きの客観性、均一性及び透明性を図るものとする。
 3 「市の経済の活性化を図る入札・契約制度の確立」へ向けた個別目標
 (1)地域社会向上へ寄与する調達の推進
 市は、調達手続きにおいて、国分寺市の経済の活性化を図るため、市内事業者を対象に調達実績や市政への貢献活動等を評価に加味する仕組みの検討及び導入に努めるものとする。
 (2)市民協働事業を活発化する調達の推進
 市は、調達手続きにおいて、市民協働が促進されるために必要な仕組みや環境の整備に努めるものとする。
第7 推進計画
 市は、この基本指針に示した目標の具現化を推進するための計画(以下「推進計画」という。)を作成するものとする。なお推進計画は、そこに掲げられる事業が緊急性又は政策順位等を踏まえて展開される必要があるため、この基本指針とは別に定めるものとする。
 
 
◎ 2005/6/8第75回全国市長会議決定「公共事業に関する要望」全文
(以下は、2005/6/8第75回全国市長会議決定「公共事業に関する要望」の全文です。国への要望事項として、その中に「公共工事における建設労働者の適正な労働条件を確保するため、関係法令の整備等を図ること」があり、今後もこれに注目し、公契約法・条例の制定の運動また公共工事での倒産・不払い問題への対応等に生かしていくべきものだと思います――海野)
平成17年6月8日
決議要望事項
全国市長会
公共事業に関する要望
 公共事業を円滑に推進するため、国は、次の事項について積極的な措置を講じられたい。
1 公共事業用地及び代替地取得を円滑に推進するため、譲渡所得に対する特別控除額の引上げ等、税制上の優遇措置を拡大すること。
 また、公共用地取得が2ヵ年以上にわたって行われる場合の譲渡所得の特別控除の通算適用を図ること。
2 市町村等の公共事業用地先行取得に係る農地取得制限の緩和を図ること。
3 土地開発公社が保有する先買い用地のうち、当初の目的に供することができなくなった土地については、民間に売却できるよう制度の改善を図ること。
4 国等が施工する建設事業にかかる負担金について、関係法令の見直し等を行い、市負担の廃止もしくは軽減を図ること。
5 公共工事における建設労働者の適正な労働条件を確保するため、関係法令の整備等を図ること。
 また、コスト縮減と品質確保の両立を図るため、公共事業に相応しい調達方法の確立や技術者のいない発注者の支援について必要な措置を講じること。
 以上要望する。
 
 
◎ 上尾市に公契約条例制定への大きな取り組みの検討を求める上尾市議会決議
(以下に紹介するのは、上尾市に公契約条例制定への大きな取り組みの検討を求める上尾市議会決議の全文です)
議第27号議案
市発注の公共工事等における労働者の適正な賃金・労働条件の確保を求める決議
 この5年間で建設就業者は全国で91万3千人、埼玉県内でも3万人減少していることが2005年国勢調査で明らかになった。これは「いざなぎ景気」を超えたと言われつつも不況による民間工事の減少と公共工事削減政策が大きく影響しているものと思われ、建設投資の落ち込みは、過度のダンピング競争により建築物の品質を保つことが困難な状況に陥っている。
 また、埼玉県内の建設労働者を対象とした賃金実態調査では、全職種の平均賃金は14,466円と昨年より下落、5人に1人は1日1万円〜1万2千円台と景気回復とは遠い実態が明らかになった。
 建設産業で働く労働者の賃金・単価の現状は、元請によるダンピング受注や指値発注により下請け業者の経営が圧迫され、末端で働く者が生計を立てられないなど事態は深刻化している。このような状況が続けば、若年技能士の確保も危うく建設業全体の疲弊が危惧されることから、建設業界の健全な発展のためには適正なルール(環境への配慮・障害者や高齢者の雇用等の福祉・男女共同参画の推進・公正労働基準の充足等、社会的価値の実現を総合的に判断する政策入札の導入など)に基づいた受注競争が行える環境づくりが不可欠である。
 よって市は、市発注の工事について、最低でも、公共工事設計労務単価を元に積算された労務経費が当該工事に従事する下請事業所の労働者等に賃金として確保されるような条例や基本指針の策定など入札・契約制度について従来にない大きな取り組みを検討するよう求めるものである。
 平成19年9月21日
                        上尾市議会
 平成19年9月21日
    提出者  上尾市議会議員 児玉 晋
    賛成者  上尾市議会議員 糟谷珠紀
    賛成者  上尾市議会議員 遠藤朝子
議決第111号
平成19年9月21日  原案可決
上尾市議会議長  永吉 勇
 
 
◎ 公契約法・公契約条例の構造の中に企業の適正な利益の確保を組み込むこと
 建設労働組合は、国や自治体の発注工事(公共工事)での建設労働者の公正な賃金の確保のため、国での公契約法(公共工事での適正な賃金の確保法)、自治体での公契約条例(公共工事での適正な賃金の確保条例)の制定に向け、運動をおこなっています。
 民間工事だけでなく公共工事でも、建設現場の重層下請構造の中で、建設労働者に支払われる賃金が、1次、2次、3次……と先に行けば行くほど減額され、実際に施工に従事している下請労働者に支払われる賃金額は低くなっています。そして今、国土交通省もサブコン団体も、重層化はますます深まっていると言っています
 公共の福祉と公共の財産の整備等を目的としておこなわれる公共工事での、施工に従事する労働者の低賃金は、許されるものではなく、発注者の国や自治体と元請との間の契約で決められた賃金が、下請労働者に、減額されることなく支払われるべきです。そして、建設労働者の賃金が安定することは、元請を含めて企業の受注価格の安定になり、経営の安定に資するものです。
 なお、付け加えれば、公契約条例・公契約法の制定が企業活動の安定につながるよう、企業の適正な経費、適正な利益の確保を、公契約条例・公契約法の制定の前提として考え、公契約条例・公契約法の構造の中に企業の適正な経費、適正な利益の確保を組み込むことが必要だと考えます。
 すでに1949年6月にILO(国際労働機関)で「公契約での労働条項にかんする条約」(ILO94号条約)が採択され、ILO加盟国174か国中59か国が批准しています。この「公契約での労働条項にかんする条約」は、「公の機関による工事で、下請業者を含め、関係労働者に、賃金・労働時間その他の労働条件を確保し、すべての関係者に知らせる」というものです。日本はまだ、この条約を批准していません。
 日本も、早急に同条約を批准し、公契約法、公契約条例を制定することが求められています。
 イギリスでは1891年の「公正賃金決定」、フランスで1899年に「ミルラン命令」(公契約規制令)、アメリカの1931年の「ディヴィス・ベーコン法」と先進資本主義諸国では、公契約法が制定されています。
 建設産業での賃金が、冷酷な市場原理に左右され、社会保障の視点から規制されないのであれば、全産業の1割を占め、産業として重要な一翼をになう建設労働者の生活がおびやかされたままであり、後継者も育たず、将来にわたって禍根を残すことになります。
 建設産業が発展していく上で、公契約法・公契約条例の制定は不可欠です。
 
 
更新日時:
2008/07/25
―――――――   「労働者性」関連(4)   ―――――――
―――――――   「労働者性」関連(4)   ―――――――
海野和夫
 
◎ ――― 埼玉労働局の文書からの抜粋  労働者性関連 ―――
 以下は、アスベスト関連での「労働者性」の認定及び判断での基準を示した埼玉労働局の2007年7月9日付けの文書からの抜粋です。
別紙
第7 事実の認定及び判断
1 判断の要件
 労災保険法上、休業補償給付の対象となるか否かは、労働基準法第9条にいう労働者に当たるか否かにより決められるべきものである。
 さらに、労災保険法上の補償を受けることができる者は、労働者として粉じん作業に従事した期間が事業主等として粉じん作業に従事した期間より明らかに長いと認められることが必要である。
(1)労働者と認められるための要件
ア 労働基準法第9条によれば「この法律で労働者とは、職業の種類を問わず、事業または事務所(以下「事業」という。)に使用されるもので、賃金を支払われる者をいう。」と定義されている。
イ 労働基準法第11条においては「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」と定義されている。
ウ 建設事業などにおいては、一人または数人単位の下請業者が特定企業と専属下請関係をもって実際上は、その従業員と同様の役割を演ずることがあり、その「労働者性」が問題となる。これについては、当該企業と下請業者との間の専属下請としての継続的支配が存在していても、当該業者に零細なりとはいえ自己の計算において事業を営む者としての要素(機械・器具・経費の負担、剰余金の取得、危険や責任の引受、他人の雇用など。このような場合は、報酬も相応の額や定め方となり、また納税上も事業所得としての自己申告がなされる)が、存在すれば、労働者とは認められないものである。
 これに対して、そのような要素がほとんど存在せず、他に使用されて労働の対価を得ているにすぎないと認められれば、労働者といえることとなる。
(2)労働者性が認められない期間を含む場合の取扱い
 「昭和61年2月3日付け基発第51号粉じんばく露歴に労働者性を認められない期間を含む者に発生したじん肺症等の取扱いについて」によれば、次のとおりである。
ア 対象者
 本通達による取扱いの対象者は、じん肺症又は合併症にり患したと認められる者であって次の(ア)及び(イ)の期間をいずれも有するものとする。
(ア)労働基準法第9条に規定する労働者又は労災保険法第27条に規定する特別加入者(以下「労働者等」という。)として粉じん作業に従事した期間
(イ)上記(ア)の労働者等以外の者(以下「事業主等」という。)として粉じん作業に従事した期間
イ 業務起因性の判断
(ア)労働者等として従事した粉じん作業と事業主等として従事した粉じん作業とを比較検討し、次のAからCまでに掲げる事項のいずれにも該当する場合には、業務起因性があるものとして取扱う。
A 粉じんの種類に明らかな差異が認められないこと。
B 粉じんの濃度に明らかな差異が認められないこと。
C 労働者等としての粉じん作業従事期間が事業主等としての粉じん作業従事期間より明らかに長いと認められること。
(イ)労働者等としての粉じん作業従事期間が事業主等としての粉じん作業従事期間より明らかに長いと認められる場合とは、「昭和61年2月3日付け事務連絡第73号粉じんばく露歴に労働者性の認められない期間を含む者に発生したじん肺症等の取扱いに関する留意事項等について」によれば、3年以上の差を有する場合をいう。
 
 
◎ 『労働者概念を巡る日本法の沿革と立法課題』(古川景一弁護士)を読んで
 季刊労働法219号(2007年冬季)掲載の『労働者概念を巡る日本法の沿革と立法課題』(古川景一弁護士)を読ませていただきました。
1 戦前の労働法制と現行の労働法制との比較
 「1945年8月以前に施行されていた労働法制と現行の労働法制との異同を比較検討することは、労働法学上の検討手法の一つとして新たな分析視覚を提供するものである」(古川景一弁護士)として、古川景一弁護士はこの「検討手法」を、労働者概念を巡る問題の解明に適用します。
 上記手法を駆使して古川弁護士は、一言で言うと、次の点を明らかにしました。
 戦前の労働法制は、労働者概念の中に「指揮監督(命令)、使用従属関係、人的従属性」は含めておらず、経済的従属性を有する者を広く労働者として認めていた。戦後の労働法制が、労働者概念の中に、「指揮監督(命令)、使用従属関係、人的従属性」を導入した。
 
2 労働者概念での立法課題
 戦前の労働法制と現行の労働法制との比較検討を通じて、それを踏まえて古川弁護士は、労働者概念での立法課題を次のように提起します。
 労働基準法上の「労働者」については、(労働者概念から「指揮監督(命令)、使用従属関係、人的従属性」を排除し)「労務を提供しその対価としての報酬を受け取る者であって、独立事業主である者を除く」ことが明確にされるべきである。
 労災保険法上の「労働者」については、(労働者概念から「指揮監督(命令)、使用従属関係、人的従属性」を排除し)「労務を提供しその対価としての報酬を受け取る者であって、独立事業主である者を除く」と解すべきであり、これを明文化すべきである。
 労災保険について、雇用保険、厚生年金保険、健康保険と同様に、災害発生前に被保険者資格の有無を確認できる制度にする必要がある。その際、「労務を提供しその対価たる報酬を受け取る者であって独立事業主以外の全ての者」を被保険者とする。
3 検討
 古川弁護士が提示する理論構造について、そのとおりだと思うのですが、2点、私の理解が及ばない点を以下に記述します。
 @ 労働者概念として、「労務を提供しその対価としての報酬を受け取る者」にプラスして「独立事業主である者を除く」をあえて組み込む理由が、わかりません。独立事業主だとして「労働者」から排除される可能性をあえて残すものであり、独立事業主概念を巡る争いを発生させるような気がします。 
 A 労災保険に被保険者資格を導入することで、最初から適用対象が被保険者に限定され、「被保険者」以外の人たちを「救済」する道が、最初から閉ざされることになるのではないでしょうか?
 
 
◎ 労基研報告の労働者性「強める要素」「弱める要素」「その他」への分解
(1996年3月「労働基準法研究会労働契約等法制部会労働者性検討専門部会報告」(略称・労基研報告)について、「労働者性を強める要素」と「労働者性を弱める要素」に分解して、わかりやすくしてほしい、手間請就労者、一人親方等が自分は「労働者性を強める要素」と「労働者性を弱める要素」をどの程度、どのように持っているのか、すぐわかるようにしてほしい、との要望がありましたので、以下に1996年3月労基研報告を「考え方」、「労働者性を強める要素」、「労働者性を弱める要素」、「どちらとも言えない要素」の四つに分解して、示しておきました。多分単純明快になり過ぎて、労基研報告の構造を単純化し過ぎていると思いますが、だいたいの目安と考えていただければいいのかなと思います──海野)
(以下は、1996年3月労基研報告を「考え方」、「労働者性を強める要素」、「労働者性を弱める要素」、「どちらとも言えない要素」の四つに分解したものです)
1 「考え方」
○ 建設業での「手間請」について「工事の種類、坪単価、工事面積等により総労働量及び総報酬の予定額が決められ、労務提供者に対して、労務提供の対価として、労務提供の実績に応じた割合で報酬を支払うという、建設業での労務提供方式」と定義。
○ 手間賃(日当)による日給月給制の場合は、労働者性の問題が生じるところではなく、一般に労働者と解することができる。
○ 呼び名ではなく、実際の役割に留意する必要がある。
○ 指揮監督下の労働かどうかが問題。
○ 「拘束性の有無」が問題。
○ 「代替性の有無」が問題。
○ 「報酬の額」が問題。
○ 発注書、仕様書等の交付という事実だけから判断するのではなく、これらの書面の内容が事業者性を推認するに足りるものであるか否かを検討する必要がある。
○ ある者が手間請の他に事業主としての請負業務を他の日に行っていることは、手間請を行っている日の労働者性の判断に何ら影響を及ぼすものではないため、手間請を行っている日の労働者性の判断は、これとは独立に行うべきものである。
○ 諸条件、諸事情を実態に即して総合的に考慮、判断して、労働者性の有無を明らかにする。
2 「労働者性を強める要素」
○ (グループによる手間請の場合)グループの世話役が、労働者のグループの単なる代表者である。
○ 指揮監督下の労働。
○ 指示書等により作業の具体的内容・方法等が指示されており、業務の遂行が「使用者」の具体的な指揮命令を受けて行われている。
○ 「使用者」の命令、依頼等により通常予定されている業務以外の業務に従事することがある。
○ 勤務時間が指定され、管理されている。
○ 報酬が、時間給、日給、月給等時間を単位として計算されている。
○ 特定の企業の仕事のみを長期にわたって継続して請けている。
3 「労働者性を弱める要素」
○ (グループによる手間請の場合)グループの世話役が、グループの構成員を使用する者である。
○ 具体的な仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対して諾否の自由がある。
○ 労務提供の量及び配分を自ら決定でき、契約に定められた量の労務を提供すれば、契約で予定された工期の終了前でも契約が履行されたことになり、他の仕事に従事できる。
○ 本人に代わって他の者が労務を提供することが認められている。
○ 本人が自らの判断によって補助者を使うことが認められている。
○ 報酬が、同種の業務に従事する正規従業員に比して著しく高額である。
○ 当該手間請従事者が、@材料の刻みミスによる損失、組立時の失敗などによる損害、A建物等目的物の不可抗力による滅失、毀損等に伴う損害、B施工の遅延による損害について責任を負う。
○ 手間請従事者が業務を行うについて第三者に損害を与えた場合に、当該手間請従事者が専ら責任を負う。
○ 発注書、仕様書等の交付により契約を行っている。
4 「どちらとも言えない要素」
○ 報酬が、1uを単位とするなど出来高で計算されている。
○ 報酬の支払に当たって手間請従事者から請求書を提出させている。
○ 電動の手持ち工具程度の器具を所有している。
○ 釘材等の軽微な材料費を負担している。
○ 月給等でみた報酬の額が高額である場合であっても、それが長時間労働している結果であり、単位時間当たりの報酬の額を見ると同種の業務に従事する正規従業員に比して著しく高額とはいえない。
○ 専属性がない。
○ 税務上有利であったり、会計上の処理の必要性等から発注書、仕様書等の交付を行っている。
 
 
◎ 「賃金の支払の確保等に関する法律」(賃金支払確保法)の効用と限界
1 はじめに
 「賃金の支払の確保等に関する法律」(賃金支払確保法)について質問が寄せられました。
 元請A社、1次B社、2次C社の重層下請構造の中で、B社が破産し、C社が工事代金の不払い被害を受けました。
 当然C社は、元請のA社に対して、建設業法41条3項に基づく立替払でのC社救済を要請し、交渉中です。
 C社の関係者から寄せられた質問は、B社が破産したために不払被害を受けたのだから、C社の労働者に賃金支払確保法は適用にならないのだろうか、というものです。以下に、お答えします。
2 「賃金の支払の確保等に関する法律」(賃金支払確保法)
 まず以下に、「賃金の支払の確保等に関する法律」の抜粋を載せておきます。
賃金の支払の確保等に関する法律
(目的)
第1条 この法律は、景気の変動、産業構造の変化その他の事情により企業経営が安定を欠くに至った場合及び労働者が事業を退職する場合における賃金の支払等の適正化を図るため、貯蓄金の保全措置及び事業活動に著しい支障を生じたことにより賃金の支払を受けることが困難となった労働者に対する保護措置その他賃金の支払の確保に関する措置を講じ、もって労働者の生活の安定に資することを目的とする。
(定義)
第2条の1 この法律において「賃金」とは、労働基準法第11条に規定する賃金をいう。
第2条の2 この法律において「労働者」とは、労働基準法第9条に規定する労働者をいう。
(途中、省略)
(未払賃金の立替払)
第7条 政府は、労働者災害補償保険の適用事業に該当する事業の事業主が破産の宣告を受け、その他政令で定める事由に該当することとなった場合において、当該事業に従事する労働者で政令で定める期間内に当該事業を退職したものに係る未払賃金があるときは、民法474条第1項ただし書及び第2項の規定にかかわらず、当該労働者の請求に基づき、当該未払賃金に係る債務のうち政令で定める範囲内のものを当該事業主に代わって弁済するものとする。
(返還等)
第8条の1 偽りその他不正の行為により前条の規定による未払賃金に係る債務の弁済を受けた者がある場合には、政府は、その者に対し、弁済を受けた金額の全部又は一部を返還することを命ずることができ、また、当該偽りその他不正の行為により弁済を受けた金額に相当する額以下の金額を納付することを命ずることができる。
第8条の2 前項の場合において、事業主が偽りの報告又は証明をしたため当該未払賃金に係る債務が弁済されたものであるときは、政府は、その事業主に対し、当該未払賃金に係る債務の弁済を受けた者と連帯して、同項の規定による返還又は納付を命ぜられた金額の納付を命ずることができる。
(以下、省略)
3 賃金支払確保法の効用、限界、問題点
 @ 賃金支払確保法が適用されるのは、企業が倒産した場合に限られます。倒産というのは、破産、民事再生、会社更生、事実上の倒産などです。倒産ではなく、倒産には至らないが経営不振等で賃金不払を起こしている場合などには、賃金支払確保法は適用されません。法整備を含めて改善が求められるところです。
 A 適用になるのは中小企業の倒産に限られます。
 B 適用になるのは、倒産した企業に直接働いていた労働者に限られます。前述の質問の「B社が破産したために不払被害を受けたのだから、C社の労働者に賃金支払確保法は適用にならないのだろうか」についてお答えすると、適用になるのはB社に直接働いていた労働者に限られ、B社の下請のC社の労働者には適用になりません。建設産業の重層下請構造等を考えると、法整備を含めて改善が求められるところです。
 C 「労働者性」が問題になります。適用になるのは労働基準法上の労働者に限られ、労働者と認められなければ、適用を受けられず、泣き寝入りを余儀なくされます。建設労組は、労働者性の拡大、確立のたたかいに取り組み、労働者として認めさせる運動を繰り広げ、一定の成果をあげています。
 建設現場で報酬を得るために働いていれば、みんな労働者だと、法整備を含めて賃金支払確保法による救済範囲を全面的に拡張、拡大することが求められています。
 
 
◎ 倒産事件での「労働者性」の到達 労働債権に準じた対応
1 「泣き寝入り」をしないために
 建設現場の状況は、正規の社員、正規の労働者ではないが、実態として正規労働者と同様の形態、なかみで、少なくともそれに準ずる形態、なかみで労働に従事している従事者が多数、存在しています。
 名目は、「施工員」、「一人親方」、「個人事業主」、「(法形式上は)法人事業主」など様々ですが、実態から見れば、正規労働者と同様の形態、なかみで、少なくともそれに準ずる形態、なかみで、労働に従事している従事者が多数、存在しています。
 言い換えると、「正規労働者に準ずる労働者」と言うべき人たちです。
 このような建設現場従事者には当然、労働者に準じて、労災保険の適用での保護、労働債権としての保護等の労働者保護法の適用での保護が与えられるべきです。
 「泣き寝入り」を余儀なくされるような状況の発生を許してはなりません。
2 最近の事例
 最近の事例で、私達の関心を惹く事例が生まれています。
 ある倒産事件で、正規の社員、正規の労働者の賃金については、当然のことですが、労働債権として認めました。そして、それと同時に、正規労働者に準ずる形態、なかみで労働に従事している従事者について、その債権を、言い換えると名目上「工事代金」を、準労働債権として認め、労働債権に準ずる保護を行ないました。
 準労働債権、言い換えると労働債権に準ずる債権の存在を認め、労働債権に準ずる保護を行なうという対応を示したわけです。
注目すべき構想です。
 くわしくは、時機を見て、明らかにしたいと思います。
 
 
◎ ホステスの労働者性を認めた大阪地裁判決が存在していました
 以下の八木裕之氏のサイトを参考にさせていただきました。
http://blog.goo.ne.jp/titmouse_1962/m/200602
1 背景
 資本主義が成熟すればするほど、全産業の中に占める「サービス産業」の割合は増大していく、と言われています。従って、サービス産業に従事する労働者の比率も増大していきます。
 事実、日本資本主義の現実を見ると、街を歩くと、多数の、無数のと言っていいくらいのサービス産業、企業、店が存在しています。絶えず大量の生産、廃業、再生産の流れの中にあります。
 接客業で働いている人たちも当然、労働者として認めて、法の保護の下に置くべきです。
 問題意識として浮かんできたのが、接客業の一つと思われるいわゆる「ホステス」の労働者性は? ということです。
 八木裕之氏は書いています。「(高級クラブ等で)提供されているのは、『お酒』や『お色気』だけではなく、『社交の場としての空間』と『ホスピタリティ(歓待)』である」、「そこで働くとなると……社会や経済の情勢に通じていなければならず、並みのサラリーマン以上の勉強が必要だという」
 八木裕之氏はまた、衣装や美容院代、お客さんへのプレゼントなどで多額の出費を強いられること、売上に比例して報酬を得られるシステムであることを指摘しています。
2 大阪地裁判決
 「ホステスとクラブとの契約は、クラブでホステスとして接客サービスという労務を提供し、クラブ経営者が賃金を支払うという雇用契約であり、労働基準法の適用がある」(クラブ「イシカワ」入店契約事件 大阪地裁判決 2005年8月26日)
 クラブホステスの労働者性を認め、クラブ側の「サービス業務委託契約」であるという主張をしりぞけた判決です。
 労働者性を認める根拠としては、タイムカードによる管理がおこなわれ、拘束性があり、使用従属関係が認められること、クラブが負担する店舗等にかかる費用全般を考えると、ホステスの負担する衣装代が高額としても、なおホステスに事業者性を認めることはできないなどを指摘している、とのことです。 
 
 
◎ バイシクルメッセンジャー及びバイクライダーの労働者性について(全文)
バイシクルメッセンジャー及びバイクライダーの労働者性について
(「バイシクルメッセンジャー及びバイクライダーの労働者性について」の東京労働局長と厚生労働省労働基準局長の見解の全文を入手しましたので、以下に紹介しておきます。建設労働運動での「労働者性」の確立、拡大にも好影響を与えるものです──海野)
(東京労働局長の見解)
東労基発第257号 
平成19年9月6日
厚生労働省労働基準局長 殿
東京労働局長
(公印省略)
バイシクルメッセンジャー及びバイクライダーの労働者性について(りん伺)
 当局管内においては、特定信書便事業又は貨物軽自動車運送事業(以下「特定信書便事業等」という。)を行なう事業場において、自転車又は自動二輪車を使用し、信書の送達又は貨物の輸送を行なっているが、当該事業場には自転車を使用して業務を行なういわゆるバイシクルメッセンジャー又は自動二輪車を使用して業務を行なういわゆるバイクライダー(以下「バイシクルメッセンジャー等」という。)が多数従事しているところである。
 これらバイシクルメッセンジャー等は、特定信書便事業等の事業を行なう者(以下「バイク便事業者」という。)と「運送請負契約」と称する契約を締結し、業務に従事しているものであるが、当局において、これらバイシクルメッセンジャー等の就労の実態をあるバイク便事業者について調査した結果、下記1のとおりであることが判明したところである。
 ついては、これらバイシクルメッセンジャー等の労働者性について、下記2のとおり解してよろしいか、お伺いする。
1 当局の調査結果
(1)契約関係
 バイシクルメッセンジャー等は、バイク便事業者と「運送請負契約」と称する契約を締結し、契約上、業務請負として配送業務に従事している。
(2)使用従属性に関する事実関係
 ア 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由
 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由は、契約上認められているが、実態を見ると、仕事の依頼、業務従事の指示等を拒否している例はみられない。
 イ 指揮命令等
 (@)配送業務については、伝票の作成方法、運送方法、携帯電話の使用及び顧客の接遇等に関して手引が定められており、バイシクルメッセンジャー等は、営業所長の面接を受けて採用された後、この配送に関する手引に基づき行われる座学研修と営業所長に帯同した実地研修を数日間受講している。
 なお、研修期間中は一定額(日額)の報酬が支払われている。
 (A)採用後は、各営業所に配属され、日常、営業所長の指示の下、配送業務に従事している。
 (B)日々の配送業務においては、出勤時、営業所長から交通安全、接遇マナー等についての諸注意を受けた後、各バイシクルメッセンジャー等は、各自の待機場所へ移動し、配送指示があるまで待機する。その後、配車センターからの配送指示に従い荷を配送し、次の配送指示があるまで、配送を終えた場所で待機し、以後、業務終了時まで配送・待機を繰り返す。
 (C)日々の配送指示は、顧客から配送依頼のあった1件の配送品ごとに引取先、引取時刻、届出先及び配送時の注意事項等が指示されている。
 (D)配送経路は、契約上、「最も合理的な順路で走行すること」とされており、研修時には、最短距離で到着するよう指示されている。
 (E)バイシクルメッセンジャー等は、携帯電話の保持が義務付けられており、最初の配送指示があるまでの待機場所への到着時、配送指示メール受信後の移動開始時、荷の引取時、配送終了時(配送後の待機開始時)、休憩開始時及び休憩終了時において、携帯メールで配車センターに報告することが求められている。
 (F)バイシクルメッセンジャーは、営業所長の指示があった場合には、内勤スタッフの業務を手伝うことがある。
 以上のように、業務の遂行方法等に関する詳細な指示を受け、常時バイク便事業者から管理されているものであり、業務遂行上の指揮監督が行われているものと認められる。
 ウ 拘束性
 (@)各営業所では、配送体制を確保するため、営業所長が配送量を勘案し、日々の配送業務に必要な配送員数を定めるとともに、各人の具体的な出勤日・勤務時間についても、本人の希望、配送量等を勘案し、各人ごとに定めている。
 (A)各バイシクルメッセンジャー等は、出勤日には始業時刻までの営業所への出所と業務終了後の営業所への帰所が義務付けられており、欠勤等がある場合は、営業所長への連絡が求められている。
 (B)バイシクルメッセンジャー等の日々の出勤時刻等の出勤状況は、出勤簿により管理されている。
 (C)配送業務については、1件当たりの配送処理時間が定められている。また、上記イのとおり、荷の配送後においては当該配送を終えた場所での待機が指示されているほか、休憩時間についても携帯メールで報告することが求められている。
 以上のように、時間的・場所的な拘束性があるものと認められる。
 エ 代替性
 契約上、業務の再委託は禁止されているほか、実際にもバイシクルメッセンジャー等は、所定の研修を受けて承認された者に限定されていることから、配送業務を他の配送員に委託するなど労務提供の代替性は認められない。
 オ 報酬の労務対償性
 (@)報酬は、完全歩合制を採用しており、月末締切の翌15日支払(口座振込)となっている。
 (A)歩合給は、月ごとの配送料金合計額の50%を基本歩合率とした上で計算されるが、平日にすべて出勤した場合、皆勤加算として基本歩合率に一定の歩合率が加算される一方、あらかじめ定められた出勤日に出勤しない場合には欠勤減算として、あらかじめ定められた出勤時刻に営業所に出所しない場合には遅刻減算として、それぞれ基本歩合率から一定の歩合率が減算される。
 以上のように、出勤日・勤務時間に応じて加減算された報酬が定められており、報酬の労務対償性が認められる。
(3)事業者性に関する事実関係
 ア 機械・器具等の負担関係
 業務用無線(必要な場合に限る。)、配送員用バックは会社負担であるが、自転車や自動二輪車のほか、携帯電話は自己負担であり、この維持に要する燃料代・修理代・税金・車検代等についても、自己負担となっている。
 イ 報酬の額
 バイシクルメッセンジャー等の報酬の額は、日額に換算すると1万円から1万5千円程度となっている。
 ウ 商号の使用
 独自の商号の使用は認められておらず、バイク便事業者の企業名が表示されている配送員用バックや荷箱の使用が義務付けられている。
 エ 専属性
 他社の業務に従事することは契約上制約されていないが、出勤日・勤務時間があらかじめ指定され、その間は拘束されていることから、兼業を行うことは困難な状況にある。
2 当局の判断
 上記1のとおり、当該事業場に対する調査の結果、バイシクルメッセンジャー等については、自転車等の装備品が自己負担であることなど事業者性を肯定する要素も一部認められるものの、使用従属関係を肯定する事実として、@業務の内容及び遂行方法に係る指揮監督が行われていること(指揮監督があること)、A勤務日及び勤務時間があらかじめ指定され、出勤簿で管理されていること(拘束性があること)、B他の者への配送業務の委託は認められていないこと(代替性がないこと)、C報酬の基本歩合率が欠勤等により加減されること(報酬の労務対償性があること)等が認められ、さらに、労働者性の判断を補強する事実として、D独自の商号の使用は認められず、事実上兼業を行うことは困難な状況にあること等が認められ、総合的に判断すると労働基準法第9条の労働者に該当するものと認められる。
(厚生労働省労働基準局長の回答)
基発第0927003号  
平成19年9月27日
東京労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長
(公印省略)
疑義照会に対する回答について
 平成19年9月6日付け東労基発第257号「バイシクルメッセンジャー及びバイクライダーの労働者性について(りん伺)」により貴職から照会のあった事項につき、下記のとおり回答する。
 貴局において調査した結果から総合的に判断すると、使用従属関係が認められるため、貴見のとおり解する。
 
 
◎ 法形式上「法人」の労働者性の可能性を明らかにした国会答弁から
2003年6月13日の衆議院法務委員会、2003年7月22日の参議院法務委員会での政府答弁「法人であっても、実態によっては労働者として認めることはあり得る」について、以下に、国会会議録そのものから抜粋しておきました。
1 2003年6月13日の衆議院法務委員会の会議録から
○ 保坂展人(社会民主党) なかなか力強くない答弁だったと思うんですね。保護を図っていくのかな、これは保護されないのかなって感じなんですね。
 前回の局長の答弁で、契約の形式じゃなくて、実態として債務者に対して労務を提供して生活を営んでいる者であるかどうか、ここを見ていく、つまり形にこだわらないということであると思うんですね。そうすると、私の聞き方もちょっとまずかったかもしれないんですけれども、先ほど言ったグループ請だとか、あるいは家族数名、お父さんとお兄さんと自分とか、そういった家族工務店だとか、そういう形の、形態上はしかし外注費扱い、一応法人でもある、あるいは個人事業者として申告している、いろいろな形があると思うんですが、しかし、中身はこれは労務提供じゃないかと言える部分について、これは柔軟に見ていけるんでしょうか。そうだとすれば、保護されていくのかなというのが少し力強くなると思うんですが。
○ 房村政府参考人 その点は、前にも申し上げましたように、法形式ではない、要するに、実態としての、いわゆる雇用関係に当たるのかどうかということを主眼として判断をするという形になっておりますので、それは指揮命令のあり方であるとか報酬の払い方であるとか、そういったものを総合して、実質的に雇用関係だ、こう認定できれば、おっしゃるような形態であっても、この先取特権の保護が及ぶということは十分あり得ると思っています。
2 2003年7月22日の参議院法務委員会の会議録から
(民主党)鈴木寛参院議員の質問「最近のいわゆるリストラクチャリングといいますか、経営革新の手法の一つといたしまして、例えば課長さんとか部長さんとかいった管理職、総務をやったり営業部長さんをやったり経理部長さんをやったりという方を、いったんこれ、社員ではなくて独立をさせまして、形式上、そして会社を作っていただいて、そして、その会社の経理部門を元の経理部長さんが新しく作った会社にアウトソーシングをするとか、あるいは元の営業部長さんが作った会社に営業委託をするとか、こういったことが、経営学ではこれ、アウトソーシングという言い方で割とポジティブに、もちろんポジティブな面もないわけではないわけでありますけれども、非常に盛んに行われ始めております。例えば、これは仕事の実態からいたしますと、正に経理部長に引き続き経理部長の仕事をしてもらう、経理課長に引き続き経理課長の仕事をしてもらう……ということで、仕事の内容あるいは指揮命令系統、もちろんリスクの負担とか若干違ってくるかもしれませんが、こういうケースがございます。例えばこういう場合は、新しく改正されるところのこの雇用関係に該当するのでしょうか」
(政府側の答弁)「御指摘のような場合ですと、形式的には契約の当事者は法人、新たに設立された会社ということになります。ただ、御指摘のような、実質的には、その会社の主体である人が、個人が労務提供している、指揮命令系統も従来と変わらない、いわゆる雇用関係と同じような指揮命令がなされている、あるいはその報酬の対価の定め方も労務提供の場合と基本的に変わらないと、そういうような事情があれば、これはあくまでも、法形式ではなくて、その実態に即して雇用関係にもとづく債権という設定がなされ得ると考えております」
(日本共産党)井上哲士参院議員の質問「たとえば、グループや家族などで法人格を取得して経営して、みんなで就労している工務店などよくあるわけですね。おとうさんが社長でおかあさんが専務とか、実際には家族みんなで現場に行っていると。こういう場合についての判断というのはいかがでしょうか」
(政府側の答弁)「実態が個人がそれぞれの労務を提供しているという場合と異ならないということであれば、その実質に着目をしてこの先取特権の保護が及ぶということだと思っております」
(社民党)福島瑞穂参院議員の質問「正規雇用労働者だけでなく、労働組合法上の労働者にまで労働債権の保護の範囲を広げ、請負的就労、派遣、委託労働、下請労働者等の非正規不安定雇用労働者の未払い賃金などの労働債権にも先取特権を与えるべきではないでしょうか」
(政府側の答弁)「ただいま御指摘のようないわゆる正規の社員でない者であっても、また契約形態が請負とか委任であってもその実質が雇用関係であれば今回の先取特権の保護の範囲に含まれるということになります」
 
 
◎ 労災保険事業主特別加入 通勤災害 家族労働者の「労働者性」
 「労災保険事業主特別加入と通勤災害」、「家族労働者の労働者性」について質問を受けました。調べてみました。
1 労災保険事業主特別加入と通勤災害
 『改訂新版 労災保険制度の詳解』(編者 厚生労働省労働基準局労災補償部労災管理課 発行 株式会社労務行政)に明確に「(事業主)特別加入者が業務災害を被った場合は、保険給付として療養補償給付、休業補償給付、傷害補償給付、遺族補償給付、葬祭料及び傷病補償年金を、また、通勤災害を被った場合は、療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付、葬祭給付及び傷病年金を本来の労働者と全く同様に受けることができる」と書かれています。
2 労災保険一人親方特別加入と通勤災害
 上記の『改訂新版 労災保険制度の詳解』に「(一人親方)特別加入者は、一般の労働者と同様に業務災害及び通勤災害に関する保険給付(通勤の実態のない特定の特別加入者は、業務災害に関する保険給付のみ)を受けることができる」と書かれています。
3 家族労働者の労働者性
 上記の『改訂新版 労災保険制度の詳解』には、「家族労働者であっても、同居の親族ではなく、事業主と使用従属関係にあり賃金を受けている場合や、重役といっても名目だけで、重役報酬ではなく賃金を受けて労働している場合などは、労働基準法上の労働者と解釈される」と書かれています。
 上記を読むと、「同居の親族」の場合は労働者性を弱める要素となるわけですが、労基研報告によれば、あくまでもいろいろな要素、状況、実態を総合的に判断して労働者かどうかを決めるということですから、あきらめないで頑張ることです。
 たとえば労基研報告の中には、「ある者が手間請けの他に事業主としての請負業務を他の日に行っていることは、手間請けを行っている日の労働者性の判断に何ら影響を及ぼすものではないため、手間請けを行っている日の労働者性の判断は、これとは独立に行うべきものである」と述べている箇所があります。
 この部分を素直に読むと、「同居の親族」であっても、労災事故にあった現場ではまさに「労働者」の実態にあった場合には、労働者と判断するということだと思います。泣き寝入りすることなく、たたかうことです。
 
 
◎ 再び法人の労働者性の可能性を明らかにした04/4/1参院法務委員会政府答弁
2003年6月6日の衆議院法務委員会、2003年6月13日の衆議院法務委員会、2003年7月22日の参議院法務委員会、2004年4月1日の参議院法務委員会の、各法務委員会での政府答弁「法人など形の上では業者であっても、実態によっては労働者として認めることはあり得る」のうち、当HPではまだ紹介していないと思われる2004年4月1日の参議院法務委員会での政府答弁を、以下に紹介しておきます。
 各法務委員会での政府答弁は、事前に建設労組として各野党議員の先生に資料等を提供しながらお願いし、それらに基づいて各野党議員の先生が追及して、政府から引き出したものです。
 「構造改革」の悪影響で、建設現場で多発し、増加傾向にある倒産・不払い事件。
不払い被害で泣き寝入りを余儀なくされないために、活用されることを、望みます。
(以下は、2004年4月1日参議院法務委員会の国会会議録からの抜粋です)
○ 井上哲士(日本共産党) 
労働債権の保護が拡大をしていくわけですが、じゃ、どれが労働債権になるかという問題があります。
 先ほども議論がありましたし、民法の一部改正のときにも随分細かく議論をいたしましたので繰り返す気はないんですが、民法で言う使用人と同じなんだという先ほどの御答弁もありました。いわゆる手間請労働などの中には、例えば屋号でやっているけれども実際には労務提供の場合、それから法人を名乗っているけれども実際にはもう家族みんなで労務提供をしているとか、こういう場合もこういう労働債権になり得るんだなということで前回もお聞きしたわけですが、そういうことで確認してよろしいわけですね。
○ 政府参考人(房村精一) 
使用人、あるいは破産法で給与債権として保護されるかどうかという点でございますが、これは御指摘のように、法的な契約形態ではなくて実態に着目して判断をするということになりますので、実態がそうであれば入るということでございます。
 
 
◎ 「事業主」の労働者性とグループ手間請 「労基研報告」との関係で
1 形式上「事業主」の労働者性に関する質問
 「A社に専属で15年、手間請として働いている。形式上、商号を持ち、『従業員』1人を使っているが、実態は、『事業主』の自分も『従業員』と同様に、工事現場での施工に従事してきた。アスベスト労災の関係で、形式上『事業主』の自分は労働者として認められないのか? 認められる可能性は?」という趣旨の質問を受けました。
 衆参法務委員会の質疑の中では、「個人業者あるいは法人の場合であっても、実態によっては労働者として認められることは、十分あり得る」という趣旨の政府答弁が行なわれていますし、また、実例として、2例、朝日ハウス産業破産事件とT社民事再生事件のとき、「従業員」1〜2人の「事業主」について労働者として破産管財人の弁護士等に認めさせ、賃金支払確保法の適用を実現した事例を、建設労働運動は持っています。
 手間請の労働者性の判断基準である「労基研報告」(1996年)に注目すると、この労基研報告には、次のように書かれています。
2 「労基研報告」との関係では
 「手間請従事者の労働者性が認められる場合には、原則的には、手間請従事者又はそのグループと直接契約を締結した工務店、専門工事業者、一次業者等が使用者になるものと考えられるが、グループで仕事を請けている場合には、グループの世話役等が使用者になる場合も考えられる。したがって、グループによる手間請の場合においては、グループの世話役と構成員の間及び工務店、専門工事業者、一次業者等とグループの構成員の間の使用従属関係の有無等を検討し、グループの世話役が、労働者のグループの単なる代表者であるのか、グループの構成員を使用する者であるのかを、その実態に即して判断する必要がある」
 今回の質問に即して言えば、形式上「事業主」を労働者として認めさせるためには、労基研報告の上記の部分(グループ手間請の箇所)の活用の方向が、一つ、あると思います。
 専属の手間請で「事業主」1人、「従業員」1人ということですから、この状況をグループ(2人)手間請と捉え、この2人の関係に着目することです。2人の関係が真に事業主と労働者の関係なのか、そうではなく基本的に平等な労働者2人でのグループ形成であるのか、把握することです。もちろん労基研報告が言うように「グループの世話役と構成員の間及び工務店、専門工事業者、一次業者等とグループの構成員の間の使用従属関係の有無等の検討」が必要です。
 
 
◎ ――― 材料の購入・管理・使用と「労働者性」 ―――
1 はじめに
 大手企業との交渉で材料持ちの一人親方を労働者として認めることを要求することは、法律に反する違法行為を企業に要求することになるのではないかとの疑問、質問が出されています。
 その関係で、疑問、質問に答えたいと考えます。
2 『労基研報告』では
労働基準法上の労働者かどうかの判断基準(法律上根拠のある判断基準)を明らかにしている『労基研報告』(労働基準法研究会労働契約等法制部会労働者性検討専門部会報告 平成8年3月)には「電動の手持ち工具程度の器具を所有していることや、釘材等の軽微な材料費を負担していることは、労働者性を弱める要素とはならない」と記述されています。
 要するに、「軽微な材料費を負担していることは、労働者性を弱める要素とはならない」ということです。材料費を負担しているからといって必ずしも労働者ではないということにはならないわけです。
3 新興産業破産事件での東京労働局の判断
東京労働局は、「(塗装施工に係る塗料を、新興産業が施工員に支給していなかったのは)新興産業は、塗料の相当の費用を要する管理責任を回避して経費を節減するために、塗料を塗装施工員に負担させていた事情によるものであった」として塗料を購入・管理・使用していた(新興産業)塗装施工員を労働者として認めました。
4 新興産業破産事件での立川労基署の判断
新興産業破産事件での、立川労基署(東京)による材料持ち施工員の賃金の認め方、査定の仕方は、(新興産業の材料持ち施工員を労働者として認めた上で)工賃の内訳を賃金80%、材料代20%と査定して、賃金の部分(工賃の80%)に賃金支払確保法を適用し、国の賃金立替払いを実施するというものでした。
5 朝日ハウス産業破産事件での破産管財人の判断
 朝日ハウス産業破産事件では、破産管財人(弁護士)が「賃確法による『国の賃金立替払制度』は本来、従業員の賃金を対象としており、下請職人の請負代金は対象にしていない。しかし、破産会社の従業員と同視できるような職人については、手間賃の部分のみ、労働の対価であるとして立替払いが認められる可能性がある」ことを認め、(請負代金から材料代金等を引いた金額)を計算し、これを賃金として認め、賃確法適用手続きをおこなうに至りました。そして、賃確法が適用されました。
6 終りに
 上記をまとめれば、大手企業との交渉で材料持ちの一人親方を労働者として認めることを要求することは、法律に反する違法行為を企業に要求することには全くならないことが、お分かりいただけると思います。
今後の方向としては、下級審判決の動向と言われている「元請・下請の関係というだけで言わば自動的に労働者性を認める」を、法律、ルールとする方向が一つあると思います。
 もう一つは、工事代金の中の労務費については法律で労働債権として認めることが、追求の方向としてあると思います。
 単純明快に、「建設現場で働いていれば、自動的に労働者として認める」、この方向の追求が決定的に大事だと思います。
 
 
◎ 「国による未払賃金の立替払制度」での労働者健康福祉機構の対応
1 労働者健康福祉機構の対応
民事再生事件で、いわゆる「業者」(形の上では「業者」だが実態は労働者)が不払い被害を受けました。形式は「業者」であっても実態は労働者だと、労働債権と認めて保護することを求めて運動。再生会社の代理人弁護士が、「労働債権に準ずる債権」として位置付け、賃金支払確保法適用(「国による未払賃金の立替払制度」適用)の申請を労働者健康福祉機構に行ないました。
 弁護士が「準労働債権」として認めて、賃金支払確保法の適用を労働者健康福祉機構に申請したのは、一定の前進でした。
 従来の事例(リモテックス破産事件)では「機構側がどうこうするということではなく、基本的に申請を尊重する」というのが、機構側の見解です。
 従来どおり「申請の尊重」を通じての不払い被害者の「救済」が、課題です。
2 機構のHPによると
○ 立替払を受けることができる人(以下は、機構のHPからの抜粋です)
 「立替払を受けることができる人」は、次に掲げる要件に該当する人です。
@ 労災保険の適用事業で1年以上にわたって事業活動を行ってきた企業(法人、個人を問いません)に、「労働者」として雇用されていたこと。
A 企業の倒産に伴い退職し、「未払賃金」があること。
「労働者」とは、倒産した企業に雇用され、労働の対償として賃金の支払を受けていた人をいいます。(外国人労働者、パートタイマー、アルバイトの方も対象となります)
本制度は、労働基準法にいう「労働者」を対象としていますので事業所の登記簿に「役員」として記載されている者は、原則として立替払を受けられません。ただし、名義上は「役員」とされていても、業務執行権がなく、業務の内容や報酬について一般の労働者と何ら変わらない実態にある者については「労働者」として認められる場合があります。
○ 立替払の支払い(以下は、機構のHPからの抜粋です)
労働者健康福祉機構は、提出された「未払賃金の立替払請求書」等の書類を審査し、請求の内容が法令の要件を満たしていることを確認したうえ、請求者が指定した金融機関を通じて立替払金を支払います。
○ 支払いまでどの位かかるか? (以下は、機構のHPからの抜粋です)
立替払金の支払については、請求書に記入漏れや記入誤りなどがなければ、 請求書を受け付けてから平均30日以内にお支払するように努めています。
立替払請求書を送付してから1か月半以上経過してもなお支払通知書が届かない場合には、お問い合わせください。
 
 
◎ ──────── 同居の親族の労働者性について ────────
1 同居の親族の労働者性の基準
 同居の親族の労働者性を判断するばあいの、国の基準は、現在、次のようになっています。
 同居の親族は、事業主と居住及び生計を一つにするものであり、原則として労働基準法上の労働者には該当しないが、同居の親族であっても、常時同居の親族以外の労働者を使用する事業で一般事務又は現場作業等に従事し、かつ、次の(1)及び(2)の条件を満たすものについては、一般に私生活面での相互協力関係とは別に独立した労働関係が成立しているとみられるので、労働基準法上の労働者として取り扱うものとする。
(1) 業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。
(2) 就労の実態がその事業場の他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。特に、@始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等及びA賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期等について、就業規則その他これに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること。
2 別の接近
 親子、夫婦のような場合を含めて、形は事業主であっても実態は労働者という方向から、「事業主」も同居の親族も両者とも労働者だという主張も、十分成立する可能性はあります。「法人の事業主であっても、実態によっては労働者と認められることは十分にあり得る」との国会答弁もおこなわれています。
 
 
◎ 「○○社」民事再生での「労働者性」の経過について
1 経過
 ○○月○○日、○○社が東京地裁に民事再生を申請。○○社のもとでユニットバスやキッチンの設置工事に従事していた形式上「業者」が不払い被害を受けました。
 形式上「業者」について、実態は労働者であり、労働者として認め、賃金支払確保法(国による未払賃金の立替払)を適用することを求めて運動。
 ○○月○○日、○○社代理人弁護士が形式上「個人業者」の債権について「労働債権」に準ずる「準労働優先債権」として位置付け、労働者健康福祉機構に賃確法の適用を申請。
 諸種の経過を経た後、○○月○○日、労働者健康福祉機構に申し入れを実施。
 労働者健康福祉機構は、「賃金台帳に準ずる書類」、「○○社社長及び代理人弁護士連名の、賃確法適用申請を行なった従事者の『労働者性』を明らかにする文書」の2文書の提出を求めてきました。
2 「労働者性」の根拠
 「労基研報告」には、「グループ手間請について、グループ内が平等であれば労働者として認めることはあり得る」という趣旨の記述があります。
 衆参法務委員会での政府答弁が「法人といえども、実態によっては労働者として認められることは、十分にあり得る」としています。
 新興産業(パットさいでりあ)倒産事件では、東京労働局の裁決が、材料持ちの一人親方を労働者として認めています。
 朝日ハウス産業破産事件(本社 大阪)では、破産管財人が「従業員」2人までの「事業主」を、実態は労働者と同視できるとして、労働者として認めています。
○○社の従事者を「労基研報告」にもとづいて総合してとらえた場合、労働基準法第9条が言う労働者と判断すべきだと考えます。
 @ ○○社従事者は、班として登録されていました。
A 「事業主」だけでなく、「従業員」も登録されていました。
B 従事者によっては、月に一度、班として集められて、会議に参加させられていました。
C 施工現場に入る時間については、ユニットバスやキッチンの現場への到着時間が決まっていて、それに間に合うよう義務付けられていました。
D 休日をとるときは、○○社の了解をとらなければなりませんでした。
E ○○社に毎日、完了報告書を出していました。
F ○○社の名前が入っている、またはメーカーの名前が入っているユニフォームの着用を指示されていました。また、メーカーの名前入りのヘルメットの着用を指示されていました。 
G 工事を孫請けに請け負わせることは不可能でした。
H 工賃は従事者が任意に見積もった金額で請求したり、あるいは、従事者と○○社の交渉によって工事ごとに決まったりするのではなく、すべての工事について、メーカーと○○社の間で決められた1台(あたり)単価によって自動的に計算され、支給されていました。
I ○○社から材料を無償支給されていました。
J 従事者は○○社への専属または基本的に専属でした。
K 従事者は、○○社の取締役である「番頭」の指揮命令のもとで働いてきましたが、その「番頭」がいなくなったために、その「番頭」抜きで働くようになりました。
L ○○社からの具体的な仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対して、従事者に諾否の自由はありませんでした。
M 施工マニュアルにより、作業の具体的内容が指示されていました。
N 工事を休む時、また、遅刻、早退のときは○○社へ事前に連絡することを義務づけられていました。
O 工事期間中の現場作業の休止や時間変更は不可能でした。
P 労働基準法第12条は、「出来高払い制その他の請負制によって定められた場合」の賃金を、労働基準法上の賃金として認めています。
 
 
◎ ───  建設現場での法人の労働者性について  ───
1 はじめに
 建設業の場合、建設現場の実態として、法人になっていても、夫が社長で妻が専務で、実態は夫妻が一緒に労働者として働いている、労働者と同視できる、同様に法人になっていても、父子が一緒に労働者として現場施工に従事している、労働者と同視できる、というようなことが普通のこととして、存在しています。
 以上のような実体を反映して、「法人」の労働者性の可能性を明らかにした国会答弁がおこなわれています。2003年6月13日の衆議院法務委員会、2003年7月22日の参議院法務委員会、そして2004年4月1日の参議院法務委員会での政府答弁がそれであり、民主党、共産党、社民党の野党議員の質問に答えて、「法人であっても、実体によっては労働者として認めることはあり得る」という趣旨の政府答弁が繰り返しおこなわれています。
2 例をあげると
 たとえば、次のような例があります。 
 法人(有限会社)になっていて、夫のAさんが社長、妻のBさんが夫と一緒に現場施工に従事。
妻のBさんが、労災事故にあい、負傷。
建設現場は、
 元請 ○○社
 1次 △△社
 その下にAさん、Bさんが施工に従事
という元請・下請構造であり、法人(有限会社)という形式になっていますが、実態は、AさんとBさんは、△△社の指揮監督下で作業に従事していた労働者です。
被災したBさんは、この現場の内装班の一員として、△△社の指揮監督下で作業に従事していました。同様に、夫のAさんもこの現場で、内装班の一員として、△△社の指揮監督下で作業に従事していました。
 Aさん、Bさんの2人の、この現場での実態は、以下のような状況です。
○ 実態は、グループ(2人)による手間請であり、Aさんは、グループの単なる代表者です。
○ △△社の指揮監督下で、2人は労働していました。
○ 作業手順書により作業の具体的内容・方法等が指示されており、業務の遂行が△△社の具体的な指揮命令を受けて行われていました。
○ △△社の現場監督の「別の現場に行ってくれ」といった命令、依頼等により通常予定されている業務以外の業務に従事することがあり、その場合は「日給」でした。
○ 入場時に記名、刻時し、また退場時に記名、刻時していました。
○ △△社の専属の従事者です(約5年)。
○ 具体的な仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対して諾否の自由はなく、△△社の現場監督の指示に従いました。
○ 本人が自らの判断によって補助者を使うことは認められておらず、△△社の現場監督の判断によりました。
○ 報酬は、同種の業務に従事する正規従業員と同じ位です。
○ AさんとBさんは、建物等目的物の不可抗力による滅失、毀損等に伴う損害や施工の遅延による損害について責任を負っていません。
 形式上は法人(有限会社)であり、△△社から注文書が来て、Aさんが請書を出す、出来高(手間請)の契約という形式になっていますが、実態は、法人といっても、人を使っていないし、△△社の指揮監督下で、夫のAさんと妻のBさんの2人で労務提供している労働者です。
 従って、労基研報告にもとづいて判断し、また国会での政府答弁を考慮すれば、Aさん、Bさんの2人は、労働基準法上の労働者と見るべきであり、元請労災の適用による補償が与えられるべきです。
前述のように、この問題での政府答弁でも「法人という法形式であっても、実体によっては労働者として認められることはあり得る」という趣旨の答弁がおこなわれています。
3 「法人」の労働者性の可能性を明らかにした国会答弁から
2003年6月13日の衆議院法務委員会、2003年7月22日の参議院法務委員会、そして2004年4月1日の参議院法務委員会での政府答弁「法人であっても、実態によっては労働者として認めることはあり得る」について、以下に、国会会議録そのものから抜粋しておきました。
 (各法務委員会での政府答弁は、事前に全建総連として各野党議員の先生に資料等を提供しながらお願いし、それらに基づいて各野党議員の先生が追及して、政府から引き出したものです)
@ 2003年6月13日の衆議院法務委員会の会議録から
○ 保坂展人(社会民主党) なかなか力強くない答弁だったと思うんですね。保護を図っていくのかな、これは保護されないのかなって感じなんですね。
 前回の局長の答弁で、契約の形式じゃなくて、実態として債務者に対して労務を提供して生活を営んでいる者であるかどうか、ここを見ていく、つまり形にこだわらないということであると思うんですね。そうすると、私の聞き方もちょっとまずかったかもしれないんですけれども、先ほど言ったグループ請だとか、あるいは家族数名、お父さんとお兄さんと自分とか、そういった家族工務店だとか、そういう形の、形態上はしかし外注費扱い、一応法人でもある、あるいは個人事業者として申告している、いろいろな形があると思うんですが、しかし、中身はこれは労務提供じゃないかと言える部分について、これは柔軟に見ていけるんでしょうか。そうだとすれば、保護されていくのかなというのが少し力強くなると思うんですが。
○ 房村政府参考人 その点は、前にも申し上げましたように、法形式ではない、要するに、実態としての、いわゆる雇用関係に当たるのかどうかということを主眼として判断をするという形になっておりますので、それは指揮命令のあり方であるとか報酬の払い方であるとか、そういったものを総合して、実質的に雇用関係だ、こう認定できれば、おっしゃるような形態であっても、この先取特権の保護が及ぶということは十分あり得ると思っています。
A 2003年7月22日の参議院法務委員会の会議録から
(民主党)鈴木寛参院議員の質問「最近のいわゆるリストラクチャリングといいますか、経営革新の手法の一つといたしまして、例えば課長さんとか部長さんとかいった管理職、総務をやったり営業部長さんをやったり経理部長さんをやったりという方を、いったんこれ、社員ではなくて独立をさせまして、形式上、そして会社を作っていただいて、そして、その会社の経理部門を元の経理部長さんが新しく作った会社にアウトソーシングをするとか、あるいは元の営業部長さんが作った会社に営業委託をするとか、こういったことが、経営学ではこれ、アウトソーシングという言い方で割とポジティブに、もちろんポジティブな面もないわけではないわけでありますけれども、非常に盛んに行われ始めております。例えば、これは仕事の実態からいたしますと、正に経理部長に引き続き経理部長の仕事をしてもらう、経理課長に引き続き経理課長の仕事をしてもらう……ということで、仕事の内容あるいは指揮命令系統、もちろんリスクの負担とか若干違ってくるかもしれませんが、こういうケースがございます。例えばこういう場合は、新しく改正されるところのこの雇用関係に該当するのでしょうか」
(政府側の答弁)「御指摘のような場合ですと、形式的には契約の当事者は法人、新たに設立された会社ということになります。ただ、御指摘のような、実質的には、その会社の主体である人が、個人が労務提供している、指揮命令系統も従来と変わらない、いわゆる雇用関係と同じような指揮命令がなされている、あるいはその報酬の対価の定め方も労務提供の場合と基本的に変わらないと、そういうような事情があれば、これはあくまでも、法形式ではなくて、その実態に即して雇用関係にもとづく債権という設定がなされ得ると考えております」
(日本共産党)井上哲士参院議員の質問「たとえば、グループや家族などで法人格を取得して経営して、みんなで就労している工務店などよくあるわけですね。おとうさんが社長でおかあさんが専務とか、実際には家族みんなで現場に行っていると。こういう場合についての判断というのはいかがでしょうか」
(政府側の答弁)「実態が個人がそれぞれの労務を提供しているという場合と異ならないということであれば、その実質に着目をしてこの先取特権の保護が及ぶということだと思っております」
(社民党)福島瑞穂参院議員の質問「正規雇用労働者だけでなく、労働組合法上の労働者にまで労働債権の保護の範囲を広げ、請負的就労、派遣、委託労働、下請労働者等の非正規不安定雇用労働者の未払い賃金などの労働債権にも先取特権を与えるべきではないでしょうか」
(政府側の答弁)「ただいま御指摘のようないわゆる正規の社員でない者であっても、また契約形態が請負とか委任であってもその実質が雇用関係であれば今回の先取特権の保護の範囲に含まれるということになります」
B 2004年4月1日の参議院法務委員会の会議録から
○ 井上哲士(日本共産党) 
労働債権の保護が拡大をしていくわけですが、じゃ、どれが労働債権になるかという問題があります。
 先ほども議論がありましたし、民法の一部改正のときにも随分細かく議論をいたしましたので繰り返す気はないんですが、民法で言う使用人と同じなんだという先ほどの御答弁もありました。いわゆる手間請労働などの中には、例えば屋号でやっているけれども実際には労務提供の場合、それから法人を名乗っているけれども実際にはもう家族みんなで労務提供をしているとか、こういう場合もこういう労働債権になり得るんだなということで前回もお聞きしたわけですが、そういうことで確認してよろしいわけですね。
○ 政府参考人(房村精一) 
使用人、あるいは破産法で給与債権として保護されるかどうかという点でございますが、これは御指摘のように、法的な契約形態ではなくて実態に着目して判断をするということになりますので、実態がそうであれば入るということでございます。
4 労基研報告から
1996年3月「労働基準法研究会労働契約等法制部会労働者性検討専門部会報告」(略称・労基研報告)は、建設業での労働者かどうかの基準の「考え方」として、以下の諸点を示しています。
○ 建設業での「手間請」について「工事の種類、坪単価、工事面積等により総労働量及び総報酬の予定額が決められ、労務提供者に対して、労務提供の対価として、労務提供の実績に応じた割合で報酬を支払うという、建設業での労務提供方式」と定義。
○ 手間賃(日当)による日給月給制の場合は、労働者性の問題が生じるところではなく、一般に労働者と解することができる。
○ 呼び名ではなく、実際の役割に留意する必要がある。
○ 指揮監督下の労働かどうかが問題。
○ 「拘束性の有無」が問題。
○ 「代替性の有無」が問題。
○ 「報酬の額」が問題。
○ 発注書、仕様書等の交付という事実だけから判断するのではなく、これらの書面の内容が事業者性を推認するに足りるものであるか否かを検討する必要がある。
○ ある者が手間請の他に事業主としての請負業務を他の日に行っていることは、手間請を行っている日の労働者性の判断に何ら影響を及ぼすものではないため、手間請を行っている日の労働者性の判断は、これとは独立に行うべきものである。
○ 諸条件、諸事情を実態に即して総合的に考慮、判断して、労働者性の有無を明らかにする。
 
 
◎ 「一人親方の労働者性」とマスメディア ── 「善意」を信じて
2008年8月1日の『朝日新聞』に「一人親方、建設不況に泣く」の記事が載りました。その中に、「厚生労働省によると、一人親方でも、建設現場での事故なら、原則、工事を受注した企業の労災が適用になるという」と書かれています。ところが、記事のこの箇所に対して厚生労働省から朝日に訂正の申し入れがあったと言われており、朝日が訂正記事を載せました。
2008年8月8日の『朝日新聞』の訂正記事では、表現が「厚生労働省によると、一人親方は一般的に労働者とは認められず、工事を受注した企業の労災が適用にならないという」に逆転しています。
 一人親方の労働者性については、厚生労働省自身の『労基研報告』が「全体的な諸事情を考慮して、実体によって判断する」としているし、また新興産業倒産事件の際、東京労働局は一人親方を労働者として認めているし、さらに衆参法務委員会での政府答弁が「実体によって判断する」としています。
 今回の厚生労働省の見解とされる「一人親方は一般的に労働者と認められない」は、上述のような従来の見解、経過、ルールを踏みにじるものです。
 建設労組では、いま、元請が住宅企業の現場で、ベニヤ板の下敷きになって重症を負った「一人親方」について、法形式上は法人(有限会社)の事業主だが、従業員はいない・決算書を作っていないなど法人としての実体はなく、本質的には、住宅企業の指揮監督下で住宅企業の社員と同様に働いていた労働者だと、労基署に認めてもらう運動をおこなっています。元請の住宅企業と交渉して、元請労災を使って労災適用を申請するところまで進むことができました。
労基署が、労働者性の実体を調査、把握して、労災適用を認める地点まで進むことが、求められています。そのために、本人、家族を含めて、たたかっています。建設現場で働いている人たちの労働災害や倒産・不払い被害について、労働者と認めて保護することで、泣き寝入りを余儀なくされる人たちを出さないことが、いま、本当に必要です。
 なお、マスメディアが「一人親方の労働者性」に関心を示して、取材に来ました。2008/10/7放映予定とのことでしたが、延期となっています。
 2008/10/7放映予定、延期→2008/10/16放映予定(マスメディアのHPに「特集・ひとり親方」2008/10/16放映予定、と載りました)、延期→2008/10/17放映予定、延期→? という経過になっていて、まさに「狐につままれた」感じです。
 しかし、マスメディアに抗議するとか、放映を要求するとか、筋の悪いことはしないで、取材に来た人の善意を信じ、「延期になりましたが、必ず放映します」という約束を信じたい、そう思っています。
 (追記)なお、その後、2008/10/27に放映することに決定した、との連絡が来ています。
(再追記)2008/10/27放映されました。感謝します。
 
 
◎ 厚生労働省からの作用で「一人親方の労働者性」関連記事訂正(補正版)
1 記事の訂正
 2008/8/1『朝日新聞』に「一人親方、建設不況に泣く」の記事が載っています。
その中に、「厚生労働省によると、一人親方でも、建設現場での事故なら、原則、工事を受注した企業の労災が適用になるという」との記述が存在します。これは、建設現場の実体を反映した正しい考え方です。
伝えられてきた情報によると、この箇所に対して厚生労働省から朝日に訂正の申し入れがあり、朝日が訂正記事を載せた、と言われています。
図書館で『朝日新聞』を調べてみました。
 ありました。2008/8/8『朝日新聞』に訂正記事が、載っていました。訂正のなかみは、「厚生労働省によると、一人親方でも、建設現場での事故なら、原則、工事を受注した企業の労災が適用になるという」から「厚生労働省によると、一人親方は一般的に労働者とは認められず、工事を受注した企業の労災が適用にならないという」への反動的改変です。
2 反動的改変
 二つの意味で、極度に道理も理屈もない反動的改変です。
 一つには、このような改変を申し入れた厚生労働省の対応の反動性です。
 一人親方の労働者性については、厚生労働省自身の『労基研報告』が「全体的な諸事情を考慮して、実体によって判断する」としているし、また新興産業倒産事件の際、東京労働局は一人親方を労働者として認めているし、さらに衆参法務委員会での政府答弁が「実体によって判断する」としています。
 今回の厚生労働省の見解とされる「一人親方は一般的に労働者と認められない」は、上述のような従来の見解、経過、ルールを踏みにじるものです。
 もう一つは、朝日の対応です。
 厚生労働省からの申し入れがあったからといって、上述のような一人親方の労働者性をめぐる諸議論、諸問題を考慮することなく、無批判に受け入れるのは、自主性の欠如、権力への迎合といわざるを得ません。
 朝日は、訂正をただちに撤回して、その存在意義を示すべきです。 
3 『朝日』読者も心配
 2008/9/8『朝日新聞』掲載の「池上彰の新聞ななめ読み」の中に、池上彰氏が紹介していますが、上記の訂正記事の件で「記者が萎縮したり、表現が不明瞭になったりしなければいいなあと思いました」という読者からの心配のハガキが届いた、とのことです。
 建設現場での労災事故への労災適用を狭める方向への、記事の反動的改変は、事故や不払い等で泣き寝入りを余儀なくされる現場従事者を増やす方向への改変であり、心配であると同時に許すべきではないと考えます。
 
 
◎ ────  「一人親方」の労働者性 埼玉労働局の見解  ────
 2008/11/6 「一人親方や一人親方的『事業主』を労働者として認め労災適用して下さい」という要望に対する埼玉労働局の見解を聞くことができました。
 以下の通りです。
 埼玉労働局「法人の事業主や一人親方であっても、最初から労働者ではないとしてはねつけるのではなく、労基研報告を基準として、あくまでも実体によって判断する」
 
 
◎ 第15回全国建設研究交流集会に参加 「労働者性」での前進のために
@ 一人親方や一人親方的事業主層の「労働者性」
 建設現場では、重層化が進み、一人親方が増えています。労働災害や倒産・不払いの際、一人親方や一人親方的事業主を労働者として認めさせ、保護することが、ますます大事な課題になっています。
 労働者性の判断基準としての厚生労働省「労基研報告」の存在とその使用、活用の活発化、法人事業主が実体によっては労働者であり得ることを示した「衆参法務委員会での政府答弁」「埼玉労働局見解」、また新興産業倒産事件の際、一人親方を労働者として認めた東京労働局見解、そして一人親方はもちろん従業員1人〜2人というような一人親方的事業主を労働者として認める事例の増加、最近のNHKテレビの「一人親方を労働者として認めて保護を」という趣旨の放映、等々、前進面が大きく存在し、拡大しています。
 その反面、労災裁判での全建総連の最高裁判決での敗訴、東栄住宅裁判でのパワービルダーの元請責任を免罪し、一人親方層に労災保険料負担を転嫁しかねないような地裁判決など、後退の流れ、逆流も存在します。
 しかし、この後退面をそれほど誇張する必要はないでしょう。
 最高裁判決も、労基研報告を労働者性の判断基準と認めた上で、○○さんについては労働者ではないと判断したもので、○○さんに限定されるものであり、その一般化をはかるような風潮とは、たたかい、阻止することです。東栄住宅裁判もそうであり、東栄住宅のその範囲に限定されるものであり、通達によって一般化をはかるような誤謬を厚生労働省に犯させないたたかいが、必要です。
 発注者は発注者であり、元請ではない、というような言い逃れ、「形式論理」の横行を許すことなく、発注者の場合、設計管理にとどまっていれば発注者だが、施工管理をおこなっていれば元請になるという、実体によって発注者か元請かを判断する立場を堅持していくことです。
A 重層下請構造の解消
 韓国「建設業法」のように改正して、重層下請構造を解消することが、日本の建設産業にも必要だとする見解が広まっているようです。確かにプラス面が有力に存在します。
 問題は、小規模な業者層、商人層を絶えず大量に生み出す「日本資本主義の構造」との整合性を、どのように導出するのか、ということにある、と感じています。
 
 
◎ 「一人親方の労働者性」についての研究者による「新しい方向付け」?
1 研究者による「新しい方向付け」?
 研究者から、「一人親方の労働者性」についての「新しい方向付け」の話を聞きました。
 その話の要旨は、以下のようなものです。
 一人親方が増えている。外注化したほうが採算が取れるしリスク回避になる、そういう事業主側の判断がある。
 一人親方の増加と重層化の深まりは、連動している。
 建売業者としての東栄住宅を、東京地裁判決は、元請ではないとした。建売業者としてのパワービルダーは、建売住宅が完成するまでは(施工管理者がいるし指揮している)施工業者であり、完成後は建売住宅を売る不動産業者となる。それにもかかわらず、元請ではないとした判決が出た。
 (一人親方的労働者を労働者ではないとした)佐藤労災最高裁判決が存在する。
 一人親方は、請負と雇用の中間にある。
 一人親方の位置付けについて、一人親方を労働者とみなすという韓国建設業法改正がおこなわれた。
 一人親方の労働者性については、現行の法律、裁判では解決できない。新しい方向付けが必要だ。
(研究者による上記のような話に対して、「新しい概念で『一人親方の労働者性』問題を解決したい」とするものだとの評価も出されています──海野)
2 多少の心配
 私見として、少し危うさを感じたのは、「一人親方の労働者性については、現行の法律、裁判では解決できない。新しい方向付けが必要だ」と断定している点です。
 東栄住宅東京地裁判決、佐藤労災最高裁判決の二つの判決などを、その根拠にしているようですが、否定的状況だけを見て、「商号使用者48人を含めて約300人の一人親方的施工員を労働者として認めたリモテックス破産事件、材料持ちの一人親方を含めて一人親方的施工員約500人を労働者として認めた新興産業倒産事件、小規模な事業主層を労働者として認めた朝日ハウス産業破産事件、一人親方や個人事業主にとどまらず法人事業主の労働者性の可能性を明らかにした国会答弁、その国会答弁と同趣旨の埼玉労働局の回答、等々、一人親方の労働者性を認める方向での肯定的到達、建設労働運動の到達を、把握していないような危うさを感じます。ちょうちん持ちをするのではなく、建設労働運動からの、研究者への勇気を出しての助言が必要だと思います。
 
 
◎ 「工事代金」「一人親方を労働者として認める」 マスメディア 企業の対応
 2008年10月27日、NHKのゆうどきネットが「一人親方の労働者性」問題を、またテレビ朝日のJチャン(小宮悦子さん)が井上工業破産事件の関連で全建総連の動き、考えを報道しました。
 詳細は省きますが、NHKの番組は、建設労組の組合員の労災事故の関係で、「一人親方を労働者として認めて労災適用すべきだ」(同番組中での私の発言)という趣旨の放送をおこないました。
 また、テレビ朝日の番組は、不払い被害が広がっている井上工業破産事件など多発する倒産・不払い事件との関連で「工事代金を賃金と認めて保護するよう法改正すべき」(同番組中での私の発言)との全建総連の主張を放送しました。
 100年に一度と言われるような恐慌的状況下、マスメディアの目が建設労組の活動、考えに一定、向いてきているのでしょうか。
 上記との関連で、第49回全建総連関東地協企業交渉での「一人親方の労働者性」、「元請責任での不払い解決」への企業の回答に注目してみました。
 「一人親方であっても、元請労災で労基署に申請する。最終判断は労基署」という趣旨の回答をおこなった企業、また「不払い解決について二重払いであっても対応」という趣旨の回答を行った企業については、コンプライアンス、CSRの点で一定評価できると思います。
○ 「一人親方であっても、元請労災で労基署に申請する。最終判断は労基署」という趣旨、またはそれに近い趣旨の回答をおこなった企業
 大林組、竹中工務店、長谷工コーポレーション、西松建設、五洋建設、奥村組、ピーエス三菱、鉄建建設、安藤建設、きんでん、大和ハウス工業、積水ハウス、積水化学工業、大東建託、ミサワホーム、パナホーム、三井ホーム
○ 「不払い解決について二重払いであっても対応」という趣旨の回答を行った企業
 大林組、前田建設工業、西松建設、ピーエス三菱、鉄建建設、大和ハウス工業、ミサワホーム
追記:2008/11/13におこなわれた「企業交渉」で安藤建設は「最近の事例だが、現場で一人親方が被災した際、家族とも相談して、被災者が困らないように、一人親方の労働者性を考慮して、元請労災の適用を労基署に申請し、労働者として認められて、元請労災が適用された」と回答しています。
 
 
◎ ─── 出演契約の舞台俳優を労働者と認め労災を適用 ───
(「毎日新聞」「赤旗」「ZAKZAK」「産経ニュース」を参考にし、要点を以下に記述しました──海野)
○ 演劇の元マッスルミュージカル団員で映演労連フリーユニオンの女性組合員(舞台俳優)が、「テレビ番組収録中に左ひざのじん帯を断裂したのは労働災害」として労災申請していた問題で、東京都の中央労働基準監督署が労災と認定していたことが、2009/2/24わかった。 
○ ショーの運営会社「デジタルナイン」とケガをした女性(舞台俳優)の契約は出演契約で、雇用契約ではなかった。「出演契約では(労働者ではなく)個人事業主と判断されることが多い」とのことです。
○ ケガをした女性(舞台俳優)は、(労働者性の判断基準を示している)労基研報告に基づき、実体は労働契約だと主張。
○ 労基署がケガをした女性(舞台俳優)を労働者と認めた理由は、
 年間2000時間近い拘束時間。会社(事業主)の指揮命令がなければ舞台が成立しない。会社(事業主)の指揮監督下にある。実体は労働者。
 
更新日時:
2009/04/18
――――――――   「建退共」関連   ――――――――
――――――――   「建退共」関連   ――――――――
海野和夫
 
◎ (以下は、2002年11月10日〜11日に調布市でおこなわれた建設政策研究所等主催の「第9回全国建設研究・交流集会」で報告したものです)
(建退共)元請責任での証紙貼付のための自治体交渉等の結果
1、建退共帯広方式への注目
北海道帯広市発注の公共工事では、現場の建設労働者の1人1人について名簿を作り、その全員に建退共証紙を貼付すべきことを元請に義務付け、全員への貼付状況を明らかにする名簿(建退共証紙貼付実績報告書)の発注者への提出を、元請に義務付けています。
(北海道帯広市が、2000年10月1日から、帯広市の発注する公共工事について下請の労働者まで建退共の証紙が貼られていることを1人1人の労働者について確認することを元請に義務づけました。これは、全国で見てもはじめてのことであり、公共工事での建設労働者への建退共の完全適用に向けて大きな一歩となります。この制度は、2000年10月1日から、帯広市の「元請下請適正化指導要綱」を改正し、あわせて「建設業退職金共済制度関係事務受託処理要領」を制定し、1人1人の労働者名を記載した「建退共証紙貼付実績書」を「工事完成(完了)届け」とあわせて、発注者の帯広市に提出することを元請に義務づけ、下請の労働者にまで証紙が行きわたったことを確認するものです)
 函館市がこれに続き、帯広方式を採用しました。
 2001年9月20日、埼玉土建一般労働組合は埼玉県県土整備部と交渉。
 県に対して、@賃金・工事代金の不払い等での県の相談窓口の強化・拡充、A元請責任での不払い解決を県が指導すること、B小規模契約希望者登録制度をつくること、C住宅リフォーム助成制度をつくること、D地元中小業者への優先発注、E建退共の帯広方式(建設産業の重層下請構造の最終下請に至るまで、すべての現場労働者に建退共の証紙を貼ることを、元請の大手企業、中堅企業に義務づけるやり方)を県発注の工事で採用すること、E公契約条例の制定、などを要求。
 これに対して県側は、「県の工事は競争入札が原則なので、小規模契約希望者登録制度はなじまない」、「個人のために公費を使うことになるので、住宅リフォーム助成制度の実現は困難」など、建設労働者、中小業者の深刻な実態を無視した回答が目立ちました。
 しかし、建退共の帯広方式についてだけは、「有効なものと考えている、その採用について前向きに検討する」と約束。
そして、2002年3月15日、都道府県でははじめて埼玉県が、建退共帯広方式を実現しました。埼玉県県土整備部長名で出された建退共普及促進の通達は、その中で、1人1人の労働者名を記載した「建退共証紙貼付実績書」を工事完了届けとあわせて、発注者の埼玉県に提出することを元請に義務づけ、ついに埼玉県で建退共帯広方式を実現しました(ただし、600万円以上の工事に適用)。
 また、埼玉県の建退共通達は「(元請は)労働者の便宜(べんぎ)を図るため、工事現場事務所での貼付に努めるものとする」と明言し、国・自治体を含めて全国ではじめて「工事現場事務所での貼付」を通達で明らかにしている点で、帯広方式を超えて「埼玉方式」とよぶことができるものです。
600万円以上の工事だけでなく、すべての工事への帯広方式の適用を埼玉県に要求すると同時に、自治体交渉を通じて県内全市町村にこの帯広方式(埼玉方式)の適用を求めていきます。また、自治体でできることを、国でできないわけはありません。国土交通省に対して、建退共での帯広方式の導入を求めていきます。
埼玉県発注の公共工事での帯広方式の実現を、まさに建退共普及促進の好機が来たととらえ、自治体交渉を通じての県内全市町村にこの帯広方式(埼玉方式)の適用を求める運動、大手企業現場への訪問を通じての建退共説明を含む組合加入説明会の組織、大手企業現場での「建退共証紙貼付請求書」、「建退共手帳交付請求書」の活用などとあわせて、保護帽(ヘルメット)への「私は建退共に加入しています」のシール貼付の運動に取り組んできました。
その成果は、すでに大きく出始めています。
埼玉土建一般労組の各支部がおこなった自治体交渉の結果として、新座市、そして騎西町が建退共埼玉方式を導入しました。また、加須市、入間市など多くの市町村が「前向きに検討」を約束しています。
さらに、建退共普及の県通達等の反映と考えられる事例が次のように続出しています。
「元請から突然、1年分の建退共証紙(労働者3人分)と加入事務委託書が送りつけられてきた」(埼玉土建一般労働組合浦和支部組合員、さいたま市有数の地場ゼネコンの下請で働く企業班)、「建退共手帳を作って持ってくるように会社から言われた」(埼玉土建一般労組朝霞支部組合員)、「(自治体から)建退共のことで困るくらい詰められている」(吉川市立小学校、松伏町立中学校の工事現場責任者)、「大宮では、公共工事の元請が下請企業に対して『建退共に入れ』と指示を出している」(埼玉土建一般労働組合大宮支部組合員)、「道路工事を請け負う企業では、いま下請労働者1人1人の名簿を作り始めている、建退共についての指示文書が県から続々と来ている」(埼玉土建一般労働組合熊谷支部組合員)。
2、建退共函館方式の特徴
私たちは、建退共函館方式にも注目しています。帯広方式をとり入れている函館のばあいさらに、元請業者の責任で未加入の下請業者を建退共に加入させることを土木部長の名前で明記しています。そして、元請業者が市へ提出する下請選定通知書で、2次以下の下請が建退共に加入しているかどうかを、チェックします。その記載がない場合は、受理しません。これによって、証紙貼付がおこなわれないことがないようにしているわけです。
3、建退共運用利回り問題
建退共の予定運用利回りの引下げ問題が、新聞で報道されました。
建退共中央本部の担当者の川島さんに聞くと、川島さんは、「平成13年度〜14年度(2001年度〜2002年度)、赤字の見通し。赤字が累積すると厳しくなってくる。予定運用利回りの変更(引下げ)を検討しなければならないとの認識になっている。これから検討を始める。中退共(中小企業退職金共済制度)については、今国会で予定運用利回りを1%にするとの法案が成立している」と回答。
4、新しい掛金納入方式の検討
建退共本部は、建退共の新しい掛金納入方式の導入に向け、2002〜2003年度におこなう現場実験のモニター(参考意見・批評を提出する人)募集をおこないました。実験は、手帳・証紙方式を廃止し、ICカード、磁気カード、OCR(光学式文字読み取り装置)を用いた新方式に切り替えるためのものです。
 ICカード、磁気カードのモニターは、読み込み機とパソコンを現場に設置することが条件となります。OCR方式は、専用のOCR用紙に就労実績を記入し、FAXまたは郵送で建退共に送付する仕組みです。
全建総連賃対部から、埼玉土建の支部の任意組合の一つ(建退共加入者100人未満)にOCR方式のモニターになってほしいとの要請が来たのを受け、現在、埼玉土建一般労組朝霞支部が対応しています。
5、入契法と建退共
 入契法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)にもとづいて定められた「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」の中に、公共工事の発注者の責任として、「元請業者の適切な施工体制の確保のため、建設業退職金共済制度の適用を受ける事業主に係る工事現場であることを示す標識の掲示等の確認を行うこと」が明記されています。
6、元請による建退共事務受託の促進
 建退共の完全適用に向けての提案として、「元請の大手企業による事務受託」の積極推進、積極促進がとても重要だと私たちは考えています。これを突破口として、建退共の普及促進は、いままでのようななかなか進まない状況からぬけ出し、いい方向へと決定的に転回し、いい方向での循環が開始されると考えます。
 そして、そのための拠点はすでに築かれています。1999年3月18日の労働省・建設省・建退共本部の連名通達は「元請事業主による積極的事務受託の推進を図る」と言明し、また2002年3月15日の埼玉県通達も「下請業者の規模が小さく、建退共に関する事務処理能力が十分でない場合は、元請業者においてできる限り下請業者の事務の受託に努めるものとする」と明言しています。
 これを通達だけに終らせるのではなく、私たちの運動によって支え、通達の不十分さを補強しながら、実際に元請の大手に「規模が小さく建退共の事務処理能力が十分でない下請業者については、元請の大手業者の責任で建退共事務(加入・手帳交付・証紙貼付)の下請業者からの受託をおこなわせていく」ことが、決定的に大事だと思います。
 
 
◎ 建退共(建設労働者の退職金制度)普及の鍵は元請による事務受託
埼玉土建一般労組等の申し入れの結果、2002年3月15日、都道府県でははじめて埼玉県が、建退共帯広方式を実現しました。埼玉県県土整備部長名で出された建退共普及促進の通達は、その中で、1人1人の労働者名を記載した「建退共証紙貼付実績書」を工事完了届けとあわせて、発注者の埼玉県に提出することを元請に義務づけ、埼玉県で建退共帯広方式を実現しました。
また、埼玉県の建退共通達は「(元請は)労働者の便宜(べんぎ)を図るため、工事現場事務所での貼付に努めるものとする」と明言し、国・自治体を含めて全国ではじめて「工事現場事務所での貼付」を通達で明らかにしている点で、帯広方式を超えて「埼玉方式」とよぶことができるものです。
建退共帯広方式=北海道帯広市が、2000年10月1日から、帯広市の発注する公共工事について下請の労働者まで建退共の証紙が貼られていることを1人1人の労働者について確認することを元請に義務づけました。これは、全国で見てもはじめてのことであり、公共工事での建設労働者への建退共の完全適用に向けて大きな一歩となります。この制度は、2000年10月1日から、帯広市の「元請下請適正化指導要綱」を改正し、あわせて「建設業退職金共済制度関係事務受託処理要領」を制定し、1人1人の労働者名を記載した「建退共証紙貼付実績書」を「工事完成(完了)届け」とあわせて、発注者の帯広市に提出することを元請に義務づけ、下請の労働者にまで証紙が行きわたったことを確認するものです。
埼玉土建一般労組は、自治体交渉を通じて埼玉県内全市町村にこの帯広方式(埼玉方式)の適用を求めています。また、自治体でできることを、国でできないわけはありません。国土交通省に対して、建退共での帯広方式の導入を求めています。
埼玉土建一般労組は、自治体交渉を通じての県内全市町村にこの帯広方式(埼玉方式)の適用を求める運動、大手企業現場等への現場立ち入り・調査行動を通じての建退共加入の確認、徹底、大手企業現場等での建退共説明会を含む建設労組への加入説明会の開催、大手企業現場等での「建退共証紙貼付請求書」、「建退共手帳交付請求書」の活用など、取り組んでいます。
私たちは、建退共函館方式にも注目しています。帯広方式をとり入れている函館のばあいさらに、元請業者の責任で未加入の下請業者を建退共に加入させることを土木部長の名前で明記しています。そして、元請業者が市へ提出する下請選定通知書で、2次以下の下請が建退共に加入しているかどうかを、チェックします。その記載がない場合は、受理しません。これによって、証紙貼付がおこなわれないことがないようにしているわけです。
 入契法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)にもとづいて定められた「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」の中に、公共工事の発注者の責任として、「元請業者の適切な施工体制の確保のため、建設業退職金共済制度の適用を受ける事業主に係る工事現場であることを示す標識の掲示等の確認を行うこと」が明記されています。
 建退共の完全適用に向けての運動として、「元請の大手企業による事務受託」の積極推進、積極促進、さらに義務化が決定的に重要だと私たちは考えています。これを突破口として、建退共の普及促進は、いままでのようななかなか進まない状況からぬけ出し、いい方向へと決定的に転回し、いい方向での循環が開始されると考えます。
 そして、そのための拠点はすでに築かれています。1999年3月18日の労働省・建設省・建退共本部の連名通達は「元請事業主による積極的事務受託の推進を図る」と言明し、また2002年3月15日の埼玉県通達も「下請業者の規模が小さく、建退共に関する事務処理能力が十分でない場合は、元請業者においてできる限り下請業者の事務の受託に努めるものとする」と明言しています。
 これを通達だけに終らせるのではなく、私たちの運動によって支え、通達の不十分さを補強しながら、実際に元請の大手に「規模が小さく建退共の事務処理能力が十分でない下請業者については、元請の大手業者の責任で建退共事務(加入・手帳交付・証紙貼付)の下請業者からの受託をおこなわせていく」ことが、決定的に大事だと思います。その際、制度として「元請の大手企業による事務受託」の義務化を実現することを、埼玉土建一般労組は運動方向として掲げています。
 また、公共工事等での建退共証紙購入の基準とされている「(建退共の)対象労働者の分だけ購入すれば足りる」の、「対象労働者」について、「建退共に加入している(建退共手帳を持っている)労働者」と狭く捉えるのではなく、あくまでも「対象労働者」とは「建退共の対象になっている(建退共に加入すべき)全ての労働者」と捉えることを、埼玉土建一般労組は、建退共加入促進、徹底の立場から主張し、掲げています。
 元請による事務受託の義務化(制度化)と「対象労働者」のまともな解釈、運用が結び付いたとき、建設労働運動によって結び付けることができたとき、建退共は大きく普及、促進、前進していくものと考えます。
 
 
◎ 06年4月「建退共加入促進について」へのゼネコン回答
 下記は、2006年4月13日、14日を中心に実施された全建総連関東地協第44回大手企業交渉での「建退共加入促進について」に対するゼネコンの回答の一部です。(ゼネコン14社を掲載)
(記録者の主観、記録不足、間違い等もあると思いますので、そのことを前提に読んで下さい。間違い、不足点等ありましたら email を通じてご指摘下さい。直ちに訂正・補強・削除等実施致します)
清水建設 1次(下請)を通じて建退共証紙を貼付している。
鹿島 公共・民間ともに全て貼付するよう全社員に通達。民間については事業主と折半。
大成建設 各支店の事務センターが窓口。元請の当社は、建退共証紙の購入と支給を適正に行っていく。
竹中工務店 官民の区別なく、貼付する。官民の区別なく建退共ポスターを貼るよう3月31日付で約300現場に徹底した。
大林組 事業主研修、安全衛生大会で指導している。
熊谷組 朝礼のときに事業主に説明している。
戸田建設 官民全ての現場で対応できる。
ハザマ 加入促進については、安全衛生協議会で説明している。
フジタ 建退共発足当時から、証紙の購入、交付を積極的に対応してきている。
東急建設 月1回、災防協や会議で啓蒙活動している。
西松建設 新規入場者教育等で説明している。
前田建設工業 建退共の看板等、現場でやっている。
三井住友建設 (全建総連・組合の「建退共説明会」への協力)検討させてほしい。具体的に日時・場所の指定があれば、対応できる場合もある。
飛島建設 加入の有無を確認し、加入希望も回答させている。希望者がいる場合、その事業者に指導している。(全建総連・組合の「建退共説明会」への協力)業務に支障のない範囲と労働者が了解すれば協力する。
 
 
◎ 【報告】 「元請責任での建退共証紙貼付のための自治体交渉の結果」
(以下は、2002年11月開催の第9回全国建設研究・交流集会の第1分科会での私の報告です)
 建設労働者の退職金制度である建退共は国の制度ですが、退職金ですから賃金の後払いということで、建退共問題に絞って報告させていただきます。
 埼玉県からいろいろ通達が出て、その結果が広まっているということとあわせて、建退共の現在の問題点について、どこが問題なのか、どういう方向でその問題を打開したらいいのかも含めて、短い時間ですが報告できたらと思っています。
 最初に、私達埼玉土建一般労組として建退共を広げる上で、帯広方式と呼ばれているものに注目しました。この建退共帯広方式と呼ばれているものは、北海道の帯広市が発注する公共工事では、現場の建設労働者一人一人について名簿を作る。1次下請に限らず、2次、3次、最終下請まで含めて、労働者の一人一人について名簿を作る。ただそうは言ってもという問題点は明らかにしますが、とりあえずそういう名簿を作って全員に建退共の証紙を貼付することを元請に義務付けたということで、これが画期的だということで注目したわけです。これによって、現場の建設労働者全員への建退共証紙の貼付状況を明らかにする。そういう名簿を「建退共証紙貼付実績報告書」と名づけていますが、この名簿を発注者の帯広市へ提出することを元請に義務付けたということです。函館市がこれに続いて、この帯広方式を採用しました。ただ函館の場合はさらに独自の「函館方式」と呼ばれている特徴がありますが、それは後から紹介します。
2001年の9月20日に埼玉土建一般労組として埼玉県の県土整備部と交渉して、いくつか要求を出したところですが、その一つとして建退共の帯広方式を、「最終下請に至るまで全ての現場労働者に、建退共の証紙を貼ることを元請の大手企業に義務付けるやり方を、埼玉県発注の公共工事で採用すること」を要求したということです。その他にも不払い相談窓口の強化拡充とか、元請責任での不払い解決を県が指導することとか、小規模契約希望者登録制度を作ることだとか、住宅リフォーム助成制度をつくることとか、地元中小業者への優先発注、あるいは公契約条例の制定ということを要求したわけですが、その中で、なかなか県民のというか、私達建設業者、労働者の要求に応えないという中でただ一つ、建退共の帯広方式についてだけは「有効なものと考えている。その採用について前向きに検討する」と約束しました。もちろん事前に建退共帯広方式の資料等は県側に提出しておいたわけですが、それを事前に検討していたようで、そのような回答が即座に行われたということです。そして2002年の3月15日に、都道府県で初めて埼玉県が建退共帯広方式を採用しました。埼玉県県土整備部長名と県知事名で出された建退共普及促進の通達では、「一人一人の労働者名を記載した建退共証紙貼付実績報告書を工事完了届とあわせて発注者の埼玉県に提出すること」となっています。元請に義務付けたということで、埼玉県で建退共帯広方式を実現したということになるわけです。ただし、600万円以上の工事に適用するということです。
埼玉県の建退共に関する通達はこれにとどまらず、埼玉県独自の特徴を含んでいます。「元請は労働者の便宜を図るため、工事現場事務所での貼付に努めるものとする」と明言しています。これは帯広とか函館とかの通達と比べて、こういう表現が入っているのは埼玉県だけです。この点で帯広方式を超え、埼玉方式と呼ぶことができると思っているところです。私達埼玉土建一般労組としては、埼玉県発注の公共工事での帯広方式の実現は、まさに建退共を普及促進する好機だと捉えて、自治体交渉を通じて県内の全市町村にこの帯広方式、埼玉方式の適用を求める運動に取り組みました。あわせて大手企業現場への訪問行動を通じて、建退共の説明等をやりながら組合加入の説明をあわせておこなうとか、大手企業現場で組合を通じて建退共証紙の貼付を請求する、あるいは建退共手帳の交付を請求する。さらに、保護帽(ヘルメット)に「建退共に加入しています」というシールを貼る運動に取り組んできています。その成果は既に大きく出始めています。各支部が行った自治体交渉の結果、新座市、あるいは騎西町がこの建退共埼玉方式を導入しました。報告書では入間市、加須市など多くの市町村が前向きに検討すると回答したと書きましたが、その後加須市議会が建設部長の回答として、2002年11月から契約額1000万円以上を対象に、試行的に実施する。2003年の4月からは、500万円以上の工事を対象に本格的に実施すると回答したということです。さらに、この建退共普及の県通達の反映と考えられる事例が続出しています。たとえば埼玉土建一般労組浦和支部(当時)の組合員の話として、元請から突然労働者3人分の1年分の建退共証紙と加入事務委託書が送りつけられてきたといいます。これはさいたま市有数の地場ゼネコンの下請で働く企業班の人です。さらに埼玉土建一般労組朝霞支部(当時)の組合員からは、建退共手帳を作って、持ってくるように会社から言われた。さらに吉川市立小学校、松伏町立中学校の工事現場責任者の話では、自治体から建退共のことで困るくらい責められている。あるいは埼玉土建一般労組大宮支部(当時)組合員の話として、大宮では公共工事の元請が下請企業に対して建退共に入れという指示を出している。あるいは埼玉土建一般労組熊谷支部の組合員からは、道路工事を請け負う企業では今下請労働者一人一人の名簿を作り始めている。建退共についての指示文書が県から続々ときている、というような状況になっているということです。
 さきほど紹介した建退共函館方式の特徴ですが、私達は函館方式にも注目しているところです。帯広方式を取り入れている函館の場合、元請業者の責任で建退共未加入の下請業者を建退共に加入させることを土木部長の名前で明記しています。そして、元請業者が市へ提出する下請選定通知書で2次以下の下請が建退共に加入しているかどうかチェックします。その記載がない場合は受理しないということで、これによって建退共の証紙貼付が行われないことがないようにしているのが特徴です。
 建退共の予定運用利回りの引き下げ問題が現在浮上してきています。まだ国会に出されたとかいう段階ではありませんが、そのような問題が実は一つあります。
 新しい掛金納入方式の検討として、手帳に証紙を1枚1枚貼るのはどうも事務量の面で問題があり、これがなかなか普及しない原因の一つだという認識の下に、ICカード方式とかOCR方式に切り替える実験が行われています。それには東京土建一般労組とか埼玉土建一般労組もモニターになって協力しています。
 それから、入契法と建退共の関連で、入契法では建退共の促進を図っています。
 最後に、どうすればさらに普及を促進できるかという問題では、やはり元請による建退共事務受託の促進が大事だと思っています。建退共の完全適用に向けて、元請の大手企業による建退共事務受託を積極推進することが重要だと考えているところです。これを突破口として、建退共の普及促進というのは決定的にいい方向に向かっていくと、私達は考えています。そのための拠点は既に築かれています。一つは、1999年3月18日の労働省、建設省、建退共本部連名の通達が、「元請事業主による積極的事務受託の推進を図る」ことをうたっています。さらに2002年3月15日の埼玉県通達も、「下請業者の規模が小さく、建退共に関する事務処理能力が十分でない場合は、元請業者においてできる限り下請業者の事務の受託に努めるものとする」というふうに明言されているところで、行政でもこういう通達を出している。これを通達だけに終わらせるのではなく、やはり私達の運動によって通達の不十分さを補いながら、実際に元請大手に建退共の事務受託を迫っていく。加入、手帳の交付、証紙の貼付の事務を力のない下請にさせるのではなく、下請業者に代って元請の大手が行うよう、運動の力で実現させることが決定的に大事だというふうに考えているところです。
ここで実は問題点が三つあると思っています。一つは、いろいろな通達では対象労働者の分だけ元請が証紙を購入すればいいとなっているんですね。対象労働者というのは、私達は現場労働者全員だと思っていますが、実は行政の側では手帳を持っている労働者のことだと言っています。ということは、手帳を持っている労働者の分だけ元請のほうでは購入すればいいということです。これが一つの問題です。これを突破する必要があります。それから事務受託の中味の問題では、通達が出されていますが、残念ながら「証紙の購入だけの事務でいい」ということです。ただし、建退共への加入、手帳の請求、手帳への証紙の貼付事務もできます、という書き方です。ですから元請大手は証紙の購入だけをする事務を受託すればいいということで、大手企業交渉等で要求してもなかなかここは突破できていないという問題点です。さきほどの、一人一人の労働者全員の名簿を作って云々の名簿を見ると、被共済者氏名と書いてあります。被共済者ということはやはり、建退共に加入している人、手帳を持っている人と狭く捉えられるおそれがあるので、ここは運動によって現場労働者全員だというふうにどうしても突破していく必要があるということです。全建総連関東地協の大手企業交渉でも要求しているところですが、清水建設とか鴻池組とか、なかなかそういう回答はしない。ただ、公共工事だけでなく民間工事でも請求があれば貼るよというところまでは来ています。ただ、それは建設労組を通じて請求しないとなかなか貼ってくれない。個人で行ってもなかなか難しい。これは不払い問題と同じです。建設労組を通じて言っていくと、不払いも解決します。
 最後に、賃金でいうと全建総連関東地協の2002年秋の大手企業交渉の中で、私達は月額50万円はどうしても建設労働者と家族の生活のために必要だと要求しているところですが、ビッグゼネコンについてみると、清水建設が「50万円については目標として理解する」。あるいは鹿島建設が「理解できる」。竹中工務店が「理解できる」。大林組が「50万円はわかる」、と理解できるとは言っています。ただ、払えないよということです。理解はできるが払えないというところで、交渉だけでなくて、私達の組織の拡大強化、あるいは大手企業の現場への攻め込みということを通じて、交渉力の強化とか、力関係の転換によってはじめて賃金問題、建退共の問題、不払いの問題全て解決できるということで、やはり組織の力、運動の力で突破していくと、まあ当り前のことですが、解決していくことが大事だとあらためて感じているこの頃です。
 以上です。どうもありがとうございました。
 
 
◎ ───建退共について―――  斉藤克博建退共事業推進室長に聞く
 先日、独立行政法人勤労者退職金共済機構建設業退職金共済事業本部発行の「建設業退職金共済制度の手引き」(以下「手引き」と略します)等を教材として、斉藤克博建退共事業推進室長から話を聞く機会を得ることができました。
 そのときの話から、建設業退職金共済制度(建退共)の証紙(以下「証紙」と略します)の購入の基準としての「対象労働者」の考え方、また建退共の「事務受託」の考え方、「証紙の貼付」の考え方の3点について、以下に記述しておきます。
1 証紙購入の考え方
 手引きには、「この制度(建設業退職金共済制度)は、もともと公共工事であると、民間工事であるとを問わず、現場で働く人を雇ったときは、すべて適用していただくことになっています……証紙を購入する額は、工事に従事する元請・下請を含めた労働者の延人数に対応する額となっております」と書かれ、また「証紙購入の考え方」として「証紙の購入については、対象労働者数と当該労働者の就労日数を的確に把握し、それに応じた額を購入することとなっております」と書かれています。
 上記を読む限り、証紙購入については、建退共に加入している現場従事者(建退共の手帳を持っている現場従事者)だけでなくこの制度の対象になっている建設業の現場で働くすべての人の分を購入することとなっている、というのが「証紙購入の考え方」と読み取ることができます。
 しかし、斉藤克博建退共事業推進室長の説明によると、手引きが言う「証紙の購入については、対象労働者数と当該労働者の就労日数を的確に把握し、それに応じた額を購入することとなっております」の中の「対象労働者」というのは要するに、「建退共の手帳を持っている(建退共に加入している)現場従事者」を意味するとのことです。
 その時点で建退共に加入していないというだけで、建退共の対象になっている現場従事者を排除するものであり、法整備を含めて改善が求められる部分です。 
2 事務受託
 手引きには、次のように書かれています。「建退共の掛金は、現場で働く人たちを直接雇っている事業主が負担するのが原則ですが、証紙を確実に購入していただくために、元請で一括して負担していただくことをお願いしています。この場合元請は、工事に必要な労働者の掛金に相当する金額で証紙をまとめて買い、その証紙を下請の延労働者数に応じてそれぞれ下請に現物交付することになります……大手事業主(元請)に対しては、『事務受託者証』を発行して、中小事業主である下請に交付する証紙を購入できるようにしております」
 上記を読めば、元請による「事務受託」と言っても、「証紙の購入」だけでも「事務受託」になることが、わかります。
 私たちが求める「元請による事務受託」は、これにとどまるものでは全くなく、未加入の現場従事者のために元請の責任で建退共手帳を作り、交付することです。言い換えると、証紙の購入はもとより手帳の作成・交付、証紙の貼付等の建退共に関する事務のすべてを、下請に代わって元請が受託することです。
 全建総連関東地協の大手企業交渉の際、たまに「建退共の事務受託をしている」と回答する企業が存在しますが、証紙購入の事務受託のことを言っているのでしょう。
3 証紙の貼付
 手引きには、「新しく被共済者となった労働者はもちろんのこと、既に被共済者となっている労働者について、賃金を支払うつど(少なくとも月1回)、その労働者を雇用した日数分の証紙を手帳に貼り、消印してください」と書かれています。「少なくとも月1回」の貼付ということです。
 
 
◎ 建退共未払い報道に対する建退共本部の説明全文の紹介
 2007年10月20日(土)付けの読売新聞に、「建設業 短期労働者の退職金 20万人未払いの可能性」の見出しで、「建設業で働く短期労働者らを対象とした『建設業退職金共済制度』で、約20万人分の退職金が未払いとなっている可能性があることが、(2007年10月)19日、明らかになった。未払いの総額は不明だが、数百億円の規模に上る可能性もある。厚生労働省が同日、民主党の長妻昭衆院議員に説明した」云々の記事が載りました。(同趣旨の記事が朝日新聞にも載りました)
 上記の記事について、以下のように、建退共本部(独立行政法人勤労者退職金共済機構建設業退職金共済事業本部)が全建総連に「説明の文書」を寄越しています。以下が、その全文です。
平成19年10月22日
全国建設労働組合総連合 殿
独立行政法人勤労者退職金共済機構
建設業退職金共済事業本部
10月20日付け読売新聞の記事について
 10月20日付け読売新聞(東京版朝刊)におきまして、別添のような建退共に関連する記事(2面、「建設業 短期労働者の退職金 20万人未払いの可能性」という見出し)が掲載されましたので、ご連絡いたします。
 新聞報道では、3年以上手帳を更新していない「長期手帳未更新者」が約41万人となっておりますが、事実としては3年以上更新がなく、かつ、掛金を24月以上納付している者の数が41万人となっております。
 また、「約41万人が退職した場合の退職金の総額は数百億円の規模に上る可能性もある」とされていますが、建退共の現行の電算システムでは退職金を集計する機能はなく、数字の根拠は不明です。
 さらに、報道では約20万人分の退職金が未払いとなっている可能性があるとされておりますが、建退共制度は業界退職金制度となっており、「長期手帳未更新者」が建設業を一時的に休業しているのか、あるいは最終的に建設業界から引退しているかについては、被共済者本人の意思にもかかることであり、明確に把握することは困難であります。
 このことから、建退共においては、長期未更新者のうち、既に退職している者に対して確実に退職金の支払いを行うこと等を目的として、平成9年度より、毎年度、長期未更新調査を実施しており、可能な限り退職金の支払いに努めているところです。
 建退共では、被共済者の皆様方の退職金は、確実に記録に残されており、請求があればいつでもお支払いできる状況であることを申し添えます。
 今回の新聞報道では、何かとご心配をおかけ致しますが、建退共制度につきましては、今後とも皆様方のご理解をお願い申し上げます。
 
 
◎ (建退共)元請による「積極的事務受託の推進」のために
1 「元請責任での事務受託の徹底」
建退共問題では、全建総連関東地協の次回企業交渉では、「元請責任での事務受託の徹底」を要望の中心に据えるべきではないかと考えます。
 理由は、
 @ 建設労働運動が建退共普及促進の中心的ルートと考えているのが、「元請責任での事務受託の徹底」であること。
 A 「元請責任での事務受託の徹底」については、行政の通達の中にも一定の根拠があること、文書での明示があること。
 B 従来は、「元請責任での事務受託の徹底」を建退共の要求での中心として打ち出したことはなく、次回打ち出すことで、交渉を新鮮なものにできること。
2 行政文書に見る根拠
 「元請責任での事務受託の徹底」については、行政の通達の中にも一定の根拠があり、文書での明示があります。以下に紹介しておきます。
 @ 2002/3/15埼玉県知事通知「建設業退職金共済証紙購入及び貼付状況の確認について」
 上記の埼玉県知事通知の中に「下請業者の規模が小さく、建設業退職金共済制度に関する事務処理能力が十分でない場合は、元請業者においてできる限り下請業者の事務の受託に努めるものとする」と明示されています。
 A 1999/3/18労働省、建設省、建退共本部連名の「建退共改善方策について」
 上記「建退共改善方策について」の中には「元請事業主による積極的事務受託の推進を図る。そのための事務受託処理要綱を策定するとともに、その普及を図る」と明記されています。
 そして、その「事務受託処理要綱」(「元請事業主による建退共制度関係事務受託処理要綱」)には、「証紙の購入に係る事務の受託」と並んで、「建退共制度への加入、手帳の請求、証紙の手帳への貼付その他証紙の購入以外の事務受託」が、次のように明記されています。
 「元請事業主が、建退共制度への加入、手帳の請求、証紙の手帳への貼付その他証紙の購入以外の建退共制度関係事務を下請事業主から受託する場合には、中小企業退職金共済法施行規則第65条及び66条に定めるところにより、事務を処理するものとする」
◎ 労働省、建設省、建退共連名1999/3/18「建退共制度改善方策について」全文
(以下に紹介するのは、1999/3/18労働省、建設省、建退共本部連名「建退共制度改善方策について」の全文です。建退共事務についての「元請による事務受託」の根拠にもなる文書であり、建設業法が定める元請責任と結び付けながら元請の大手企業に迫って、事務処理能力が十分でない下請に代って元請の大手企業に建退共の事務受託を行なわせる運動の強化が求められる今、再度注目する必要がある文書だと思います――海野)
建退共改善方策について
平成11年3月18日
労働省労政局勤労者福祉部福祉課  
建設省建設経済局労働資材対策室  
勤労者退職金共済機構建退共事業本部
 以下の各改善事項については、総合的に取組みを進めていくことが効果的であると考えられることから、原則として、一体のものとして、平成11年度当初から措置を講じていくこととする。
「@ 共済手帳及び共済証紙の受払い簿の様式策定・普及を図るとともに、経営事項審査用の加入・履行証明書発行の際の同受払い簿の添付を義務付ける。」
 中小企業退職金共済法施行規則第64条に定められた「共済手帳及び共済証紙の受払い状況を明らかにする」べき義務の履行の徹底を図るため、労働省は、共済手帳及び共済証紙の受払い簿の様式例(別紙1及び2)を示し、その周知を建退共に対して指示する。
 建退共は、下記Aの「事務処理の手引き」と併せ、全加入事業主に送付することにより周知、普及を図る。
 なお、本様式は、事務管理上の便宜に資するために示す標準的な様式例であり、当該様式により示された事項が明らかになるものであれば、個々の事業主が異なる様式を用いることを妨げるものではない。
 建退共において、経営事項審査用の加入・履行証明書を発行する際には、上記受払い簿(写し)の提出を求め、これらの書類等によって制度の適正履行を確認する等、よりきめ細かな審査を行なうよう、建設省から建退共に対して指示する。
 建退共においては、共済手帳の更新数及び証紙購入額が被共済者数に見合うものであることを基本とする経営事項審査用の加入・履行証明書の発行基準の統一化を図ることとする。
 経営事項審査用の加入・履行証明書発行を申請する際に添付すべき共済手帳及び共済証紙の受払い簿の範囲は、直近1年間分とする。
 経営事項審査用の加入・履行証明書の発行申請のために提出された共済証紙の受払い簿(写し)の内容については、当該元請事業主に係る下請事業主、関係する労働者及び発注者の求めに応じて情報提供することとする。
「A 建退共の事務手続き及び管理手法等の内容を盛り込んだ建退共事務処理の手引きを作成し、普及を図る。」
 @の受払い簿の内容、対象者の範囲、対象者に手帳の交付、証紙の貼付を行うべき旨その他の内容を盛り込んだ手引きを作成し、全加入事業主に送付する。(手引きの目次(案)は別紙3のとおり)
「B 証紙購入の「目安」を、よりきめ細かく、実態に即したものに改めるとともに、その位置付けを明確にする。」
 目安が設けられた昭和45年以降の建設現場の実態の変化に対応し、より実態に即した数値となるよう、算定の基礎とした「公共工事着工統計」における数値について直近の統計数字(平成9年度のもの)に置き換えて算出し直した数値に改めることとする。
 実態調査の結果、建設省所管の土木工事における積算内容等から、工事費用に占める必要とされる証紙代金の割合について、工事規模や工事種別によるかい離が大きいことが伺われ、かつ、上記による試算結果においても、工事規模別・工種別の購入率に大きな差異が見られることを踏まえ、よりきめ細かなものとして、「共済証紙購入の考え方について」(別紙4)(以下「別表」という。)を示すこととする。
 実態に即した今後の別表の見直しについては、頻繁に見直すことは煩瑣であり、かつ混乱も来すことから、原則として5年ごとに見直すこととする。ただし、毎年、直近の統計データに基づく検証を加え、大きなかい離が生じていることが明らかとなった場合には、5年を経過する前であっても、見直しを実施する。
 本来、証紙の購入は、対象労働者数と当該労働者の就労日数を的確に把握し、それに応じてなされれば足りるものであり、必ずしも別表に基づいて建設現場ごとに算出された額どおりに購入しなければならないものではないが、的確な把握が困難な場合に、必要に応じ発注機関や事業主において活用されるものである旨を、上記Aの「事務処理の手引き」等を通じて周知徹底する。
 また、建設省及び労働省から公共工事発注機関に対して、「掛金収納書」方式の採用を依頼するとともに、「掛金収納書」により受注者の共済証紙の購入状況を確認する際に、建設現場の実態に応じて必要な額の共済証紙を購入するよう指導することが困難な場合には、別表に基づいて建設現場ごとに算出された額を参考とするよう通知する。
 なお、各公共工事の発注機関において、建退共の定める別表を参考に、各々の実態に応じたよりきめ細かく、かつ、的確な証紙購入基準が設定されることを妨げるものではない。
「C 建退共各支部における相談機能の強化を図る。」
 これまでの主な相談事例及びその対応例をまとめた「相談対応マニュアル」を作成し、各支部に送付(通知)する。
 相談員については、来年度認可予算(案)において、現行の3名(本部)に加え、2名の増員(東京、大阪に配置し、それぞれ首都圏、近畿圏の相談を担当)を要求。(なお、別紙5を参照。)
 なお、労働基準監督署及び都道府県労政事務所において、建退共問題に関する相談を受けた場合には、建退共支部を紹介するよう、全国労働基準局長・労働主管部長会議(1月26日開催)において依頼した。
「D 元請事業主による積極的事務受託の推進を図る。そのための事務受託処理要綱を策定するとともに、その普及を図る。」
 元請事業主が下請事業主の事務を受託処理する場合の望ましい処理方法について、証紙の一括購入及び下請事業主への現物交付、下請事業主から元請事業主への対象労働者数及びその延べ就労日数の報告、証紙の貼付状況の報告等を盛り込んだ「元請事業主による建退共制度関係事務受託処理要綱(仮称)」(要綱に盛り込む主な事項案は別紙6のとおり)を、労働省・建設省の連名により策定する。
 本要綱については、労働省及び建設省より建設産業団体に通知し、当該要綱に沿った取組を各事業主に要請し、その普及を図ることとする。
 また、当該通知をする際には、「元請事業主は、中小企業退職金共済法第36条及び建設労働者の雇用の改善等に関する法律第8条第2項の規定の趣旨等を踏まえ、関係する下請事業主の加入指導に努めるとともに、下請事業主において建退共制度に関する事務処理能力が十分でない場合には、できる限り下請事業主に係る建退共制度関係事務の受託に努める」旨を要請することとする。
(上記の「事務受託処理要綱」(「元請事業主による建退共制度関係事務受託処理要綱」)には、「証紙の購入に係る事務の受託」と並んで、「建退共制度への加入、手帳の請求、証紙の手帳への貼付その他証紙の購入以外の事務受託」が、次のように明記されています。「元請事業主が、建退共制度への加入、手帳の請求、証紙の手帳への貼付その他証紙の購入以外の建退共制度関係事務を下請事業主から受託する場合には、中小企業退職金共済法施行規則第65条及び66条に定めるところにより、事務を処理するものとする」――海野)
「E 雇用管理責任者等を対象とした事務手続き、管理等についての研修会を実施する。」
 雇用促進事業団の協力を得て、同事業団の各都道府県センターが実施する雇用管理研修において、建退共制度の事務手続き、管理等についての研修を実施する。(なお講師は、各建退共支部の役職員が対応する。)
「F 共済手帳の申込書に、役員報酬を受けている者や本社等の事務専用社員は加入できない旨明記するとともに、申込み受付の際にもその旨の徹底を図る。
 別紙7のとおり、申込書の様式を変更するとともに、申込み受付の際の徹底について、建退共本部から各支部担当者への指導を徹底する。
 なお、建設業における雇用実態にかんがみ、期間の定めのない現場労働者について「期間の定めのない」ことのみをもって、建退共制度の対象としないことは、制度の趣旨にかんがみ適当ではなく、建設現場で働く現場労働者については、従来どおり、基本的に制度の対象者として取り扱うこととする。
「G 証紙以外の方式の導入(ICカード方式、実態に応じた掛金後払い等)について建退共本部に検討の場を設ける。」
 来年度当初の検討会の開催を目途に、関連費用(研究費を含む)を、来年度認可予算(案)において要求。
 本検討会については、業界関係者、労働組合関係者等の有識者の参画を得て、1年を目途に検討会としての結論を得るよう努める。
「H 建退共加入事業主リストを、建退共各支部ごとに整備し、発注者、事業主及び労働者の閲覧の用に供する。」
 建退共各支部は、管下の加入事業主名、所在地及び連絡先のみが記載されたリストを作成し、備え付けておき、発注者、元請事業主、建設労働者等からの求めに応じて当該リストを閲覧の用に供するものとする。(建退共本部は、各支部からの求めに応じ、都道府県単位の当該リストを作成し、提供するものとする。)
 建退共加入の有無を明らかにすることにより、発注者の工事の発注や元請事業主による下請選定の参考に資するとともに、職場を転々とする建設労働者において、証紙の請求が可能な事業主か否かの把握の便宜に資する。
「I 加入促進対策の強化、制度の周知徹底を図る。」
 労働省において、毎年度、加入促進強化月間(10月)に合わせ、専門工事業団体を含めた各建設産業団体に対する加入促進(傘下会員企業への加入指導及び傘下会員企業を通じた当該企業の下請企業への加入指導)及び履行確保の依頼の通知を発出するとともに、機構において、各団体主催の研修会等における制度PR等の機会を得るよう努める。
 未加入業者検索による文書等による加入勧奨の強化(現行5年程度で一巡しているものを3年程度で一巡させる)その他の取組みを強化しつつ、着実に進める。
 「建設業退職金共済制度適用事業主工事現場」標識(シール)について、労働者にとってより分かりやすいものとなるよう、別紙8のとおり文言を改めた上、引き続き掲示の普及を進めるとともに、労働組合の協力も得て、労働者に対する制度の周知を図る。
 建設省から、建設業界に対して、建退共が経営事項審査用の加入・履行証明書を発行する際にはきめ細かな審査を行なうよう指示したことを周知し、建退共制度への加入及び履行の徹底について指導する。
 また、建設省直轄工事の受注者に対して、引き続き、建退共制度への加入及び履行の徹底について指導する。
(以下は、上記「建退共改善方策について」に基づいて策定された「元請事業主による建退共制度関係事務受託処理要綱」の全文です――海野)
元請事業主による建退共制度関係事務受託処理要綱
(目的)
@ 本要綱は、元請事業主が、下請事業主に係る建設業退職金共済制度(以下「建退共制度」という。)関係事務を受託処理する場合における手続きを定めることにより、建退共の普及とその円滑かつ適正な履行を確保することを目的とする。
(証紙の購入に係る事務の受託)
A 共済証紙(以下「証紙」という。)の購入に係る事務を下請事業主から受託する元請事業主は、勤労者退職金共済機構(以下「機構」という。)から「事務受託者証」の交付を受けるものとする。なお、元請事業主が証紙の購入に係る事務のみを下請事業主から受託する場合には、当該交付に係る申請をもって、中小企業退職金共済法施行規則(昭和34 年労働省令第23 号)第65 条第1項に基づく機構への届書の提出に代えるものとする。
(共済証紙の一括購入)
B Aにより証紙の購入に係る事務を下請事業主から受託した元請事業主は、
自らが雇用する建退共制度の対象労働者(以下「対象労働者」という。)につい
て必要となる証紙及び当該受託に係る下請事業主(当該受託に係る下請事業主
が二次以下の下請事業主の証紙の購入に係る事務を受託した場合には、当該二
次以下の下請事業主を含む。二次以下の下請事業主が三次以下の下請事業主の
証紙の購入に係る事務を受託した場合も同様とする。)が雇用する対象労働者に
ついて必要となる証紙を一括して購入するものとする。
(証紙の適正購入)
C Bにより証紙を一括購入する元請事業主は、工事ごとに、自らが雇用する
対象労働者数、Aの受託に係る下請事業主(当該受託に係る下請事業主が二次以下の下請事業主の証紙の購入に係る事務を受託した場合には、当該二次以下の下請事業主を含む。二次以下の下請事業主が三次以下の下請事業主の証紙の購入に係る事務を受託した場合も同様とする。)が雇用する対象労働者数及びその延べ就労日数を的確に予測し、必要とされる証紙を適正に購入するとともに、必要に応じ、追加購入するものとする。この場合において、対象労働者数及びその延べ就労日数をあらかじめ的確に予測することが困難であるときは、必要に応じ、機構が定める「共済証紙購入の考え方について」を証紙購入の参考として活用するものとする。
(下請事業主による就労状況の報告)
D Aの受託に係る下請事業主は、各月ごとに、自らが雇用する対象労働者数
及びその延べ就労日数を元請事業主に報告するものとする。
(下請事業主による就労状況の把握の徹底)
E Aの受託に係る下請事業主は、Dの報告を適正に行い得るよう、建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和51 年法律第33 号)第5条第1項の規定に基づき選任される雇用管理責任者の活用を図るなどして、工事現場における対象労働者の就労状況を的確に把握し、管理するよう努めるものとする。
(下請事業主への証紙の交付)
F 元請事業主は、Aの受託に係る下請事業主からDの報告を受けた場合には、速やかに、当該下請事業主に対し、当該報告(Hによる報告を含む。)に基づき必要となる証紙を、現物により交付するものとする。
(下請事業主による証紙の貼付状況の報告)
G Fにより元請事業主から証紙の交付を受けた下請事業主は、各月ごとに又
は担当する工事終了後に、自らが雇用する対象労働者の共済手帳(以下「手帳」
という。)への証紙の貼付状況を当該元請事業主に報告するものとする。
(一次下請事業主が二次以下の下請事業主に係る事務を受託した場合の就労状況及び証紙の貼付状況の報告等)
H Aにより証紙の購入に係る事務を元請事業主に委託した一次下請事業主が
二次以下の下請事業主の証紙の購入に係る事務を受託した場合には、当該一次
下請事業主は、元請事業主に対してDの報告を行う際に、当該二次以下の下請事業主が雇用する対象労働者数及びその延べ就労日数を併せて報告するとともに、Gの報告を行う際に、当該二次以下の下請事業主が雇用する対象労働者の手帳への貼付状況を併せて報告するものとする。二次以下の下請事業主が三次以下の下請事業主の証紙の購入に係る事務を受託した場合も同様とする。
(一次下請事業主が二次以下の下請事業主に係る事務を受託した場合の証紙の交付等)
I Aにより証紙の購入に係る事務を元請事業主に委託した一次下請事業主が
二次以下の下請事業主の証紙の購入に係る事務を受託した場合において、Fにより元請事業主から二次以下の下請事業主に係る証紙の交付を併せて受けた当該一次下請事業主は、当該二次以下の下請事業主に対し、当該二次以下の下請事業主に係る証紙を、現物により交付するものとする。二次以下の下請事業主が三次以下の下請事業主の証紙の購入に係る事務を受託した場合も同様とする。
(下請事業主への報告の指導)
J Aにより証紙の購入に係る事務を受託した元請事業主は、下請契約を締結する際に、当該受託に係る下請事業主に対し、D及びGの報告を行うべき旨の指導を行うものとする。
(手帳及び証紙の受払い簿の作成及び備付け)
K Fにより証紙を下請事業主に交付した元請事業主及び当該証紙の交付を受
けた下請事業主(二次以下の下請事業主も含む。)は、手帳及び証紙の受払い簿
を作成し、事務所に備付けて置くものとする。
(その他の建退共制度関係事務の受託)
L 元請事業主が、建退共制度への加入、手帳の請求、証紙の手帳への貼付その他証紙の購入以外の建退共制度関係事務を下請事業主から受託する場合には、中小企業退職金共済法施行規則第65 条及び66 条に定めるところにより、事務を処理するものとする。
(元請事業主による手帳及び証紙の受払い簿の作成)
M Lにより手帳の請求又は証紙の手帳への貼付に係る事務を下請事業主から
受託した元請事業主は、当該下請事業主に係る手帳の受払い簿又は証紙の受払
い簿を併せて作成するものとする。
◎ 行政文書に見る「元請による建退共事務受託」の二重構造
1 「元請による建退共事務受託」の二重構造
 労働省、建設省、建退共連名1999/3/18「建退共制度改善方策」を見ても、また労働省、建設省、建退共連名1999/3/18「建退共制度改善方策」に基づいて策定された「元請事業主による建退共制度関係事務受託処理要綱」を読んでも、そこには、「元請による建退共事務受託」の二重構造が存在しています。それを乗り越えて、「元請による本格的、全面的建退共事務受託」への収斂を実現することができるのは、建設労働運動の力だと思います。
2 労働省、建設省、建退共連名1999/3/18「建退共制度改善方策」では
 一方では、「元請事業主が下請事業主の事務を受託処理する場合の望ましい処理方法について、証紙の一括購入及び下請事業主への現物交付、下請事業主から元請事業主への対象労働者数及びその延べ就労日数の報告、証紙の貼付状況の報告等を盛り込んだ『元請事業主による建退共制度関係事務受託処理要綱(仮称)』を、労働省・建設省の連名により策定する」と述べ、「証紙の一括購入及び下請事業主への現物交付」を元請による事務受託のなかみとして描いてみせていますが、他方では、「下請事業主において建退共制度に関する事務処理能力が十分でない場合には、できる限り下請事業主に係る建退共制度関係事務の受託に努める旨を(元請に)要請することとする」と述べて、建退共制度関係事務全般についての「元請による事務受託」と受け取ることができる表現を用いています。二重構造です。
3 「元請事業主による建退共制度関係事務受託処理要綱」では
 一方では、「証紙の購入に係る事務を下請事業主から受託する元請事業主は、勤労者退職金共済機構から『事務受託者証』の交付を受けるものとする」との表現があり、もう一方では、「その他の建退共制度関係事務の受託」の項目を設けて、そこに、「元請事業主が、建退共制度への加入、手帳の請求、証紙の手帳への貼付その他証紙の購入以外の建退共制度関係事務を下請事業主から受託する場合には、中小企業退職金共済法施行規則第65条及び66条に定めるところにより、事務を処理するものとする」と記述しています。二重構造です。
 繰り返しますが、この二重構造を解消して、「元請による本格的、全面的建退共事務受託」への収斂を実現することができるのは、建設労働運動の力だと思います。
 
 
◎ ─── 全建総連参加による淺沼組建退共加入促進現場説明会 ───
 全建総連関東地協第47回大手企業交渉では、建退共加入促進関連での要望の一つとして「建退共への加入促進を図るため、『建退共加入説明会』を現場で開いてください。また『加入説明会』へ全建総連傘下の組合を参加させて下さい」をかかげました。
 この要望に応えて 2008/2/25 淺沼組が現場で、「建退共加入促進説明会」を開催し、その説明会に全建総連東京都連と埼玉土建一般労組を参加させました。 
 現場は、埼玉県ふじみ野市内の「コンフォール上野台第9住宅建設工事」で、発注者は都市再生機構、元請が淺沼組です。
 説明会には、約30人の職長、協力業者、現場従事者が出席。
 地元の埼玉土建一般労組ふじみ野支部の太田孝書記が建退共について説明。また、同支部の加藤隆博書記長が埼玉土建一般労組のパンフ、チラシを配りながら、労組への加入を訴えました。
 公共工事では、元請は、建退共の対象労働者の分の(建退共)証紙を購入し、それを対象労働者に貼付しなければなりません。民間工事でも「請求があれば証紙を貼付する」と全建総連関東地協との企業交渉の場で回答している大手ゼネコンが多数存在します。
 今回の説明会の現場は、発注者が独立行政法人都市再生機構であり、公共工事に準ずる工事という位置付けになります。
 「公共工事、民間工事を問わず、請求があれば証紙を貼付する」と多くのゼネコンが答えていますが、問題は、「1次下請を通して請求してほしい。現場労働者からの直接の請求はダメ」と回答していることです。
 今回の説明会でも、「現場労働者からの直接の請求はダメという趣旨は、どういうことなのか?」という質問が、出席者から出ました。
 ゼネコンは「証紙は現金と同じであり、現場に置いておくのはまずい」という趣旨のことを言い、また、現場で直接貼付する事務体制確保は困難というようなことを理由にしています。
 建設労組は、現場労働者への証紙の直接貼付を要求しています。建退共に関する2002/3/15の埼玉県知事通達は「労働者の便宜を図るため、工事現場事務所での貼付に努めるものとする」と明示しています。また、同通達は「下請業者の規模が小さく、建退共に関する事務処理能力が十分でない場合は、元請業者においてできる限り下請業者の事務の受託に努めるものとする」と明示しています。正しい方向を示しているということができます。
 
 
◎ 建退共は賃金の一部 従って建退共証紙の貼り方は賃金を支払うつど
 建退共は賃金の一部であり、従って建退共証紙の貼付は、賃金を支払うつどということになります。
以下のように、「建設業退職金共済約款」でも建退共本部作成「建設業退職金共済制度事務処理の手引き」でも明確に、賃金を支払うつど貼付と規定しています。
 建設業退職金共済約款第6条 共済契約者は、被共済者に賃金を支払うつど、──円にその者を雇用した日数を乗じて得た金額に相当する額の証紙を建設業退職金共済手帳にはりつけ、これに消印することによって掛金を納付しなければなりません。
 「建設業退職金共済制度事務処理の手引き」 加入事業主は、加入従業員に賃金を支払うつど(少なくとも月1回)、その加入従業員が働いた日数分の共済証紙を共済手帳に貼って、消印してください。
 
 
◎ ── 建退共証紙購入の考え方 「対象労働者」とは何か? ──
 建退共の「証紙購入の考え方」、言い換えると証紙購入の基準としては、「証紙の購入については、対象労働者数と当該労働者の就労日数を的確に把握し、それに応じた額を購入する」となっています。
 たとえば、建退共本部のHPには、Q&A形式で次のように記されています。
Q 共済証紙はどのくらい購入すればよいのでしょうか。
A 共済証紙は、必要な枚数(対象労働者の延べ就労日数分)だけ購入するのが原則です。共済証紙の購入については、建退共制度の対象労働者数及びその延べ就労日数を的確に把握し、必要な枚数を購入すべきものです。
 2008/7/10 建設首都圏共闘の国土交通省関東地方整備局交渉に参加しました。
 証紙購入の基準とされている「対象労働者」の解釈について質問しました。
「建退共手帳を持っている(建退共に加入している)労働者」ということなのか? 「建退共手帳を持っている(建退共に加入している)かどうかにかかわりなく、建設現場で働いている労働者」ということを意味するのか?
 国土交通省関東地方整備局の担当者の回答は、「対象労働者」は「建退共手帳を持っている(建退共に加入している)かどうかにかかわりなく、建設現場で働いている労働者」を意味する、というものでした。
 以前確認したとき、埼玉県の担当者の回答(数年前)も、厚生労働省の担当者の回答(2008年1月)も、「対象労働者」は「建退共手帳を持っている(建退共に加入している)かどうかにかかわりなく、建設現場で働いている労働者」を意味するという趣旨のものでした。
 「対象労働者」の解釈について、そういう流れになっている、変化、前進していることを、感じました。
(参考)
2008/1/25 建設首都圏共闘の厚生労働省交渉
(以下は、建退共での厚生労働省の回答)
 公共事業での元請の、建退共証紙購入の基準とされている「対象労働者の分を購入すれば足りる」の「対象労働者」を、「建退共手帳を持っている労働者」と解釈するのはどうかと思う。そうではなく、「実態に応じて購入する」ということである。
 
 
◎ 2002年3月15日「建退共証紙購入及び貼付状況の確認」(埼玉県知事通知)
1 建退共埼玉県方式
2002年3月15日に埼玉県知事名で出された通知「建設業退職金共済証紙購入及び貼付状況の確認について」は、「証紙貼付実績報告書の発注者への提出」にとどまらず「労働者の便宜を図るため、工事現場事務所での貼付に努めること」を元請に課し、建退共埼玉県方式と呼ばれています。埼玉県内の同方式の普及では、同方式の導入自治体は、35自治体に広がっています。
 導入自治体をさらに増やし、導入自治体に対しては、元請による事務受託の義務化や最終下請の労働者に至るまで手帳取得を元請に義務づけるなど、求めていく必要があります。
 なお、公共工事での元請の証紙購入の第一の基準とされている「対象労働者」の解釈について、埼玉県はもとより厚生労働省(2008年1月 建設首都圏共闘との交渉)や国土交通省関東地方整備局(2008年7月 建設首都圏共闘との交渉)も「建退共手帳を持っている労働者という意味ではなく、手帳を持っているかどうかにかかわりなく現場の建設労働者という意味である」という趣旨の回答をしていることは、注目しておくべきです。
2 埼玉県知事通知からの抜粋
以下に、2002年3月15日に埼玉県知事名で出された通知「建設業退職金共済証紙購入及び貼付状況の確認について」からの、重要と思われる部分の抜粋を掲載しておきます。
「報告書(建設業退職金共済制度の発注者用掛金収納書を貼付した建設業退職金共済証紙購入状況報告書)を発注機関の長に提出した受注者は、当該受注工事における自らが雇用した対象労働者への共済証紙貼付実績及び下請業者が雇用した対象労働者への共済証紙貼付実績について、建設業退職金共済証紙貼付実績報告書により発注機関の長に提出し、確認を受けるものとする」
「(元請業者は)下請業者に対し共済証紙を現物交付し又は掛金相当額を下請代金へ算入するものとする」
「下請業者の規模が小さく、建設業退職金共済制度に関する事務処理能力が十分でない場合は、元請業者においてできる限り下請業者の事務の受託に努めるものとする」
「工事に従事する労働者については、賃金を支払うつど、雇用日数に応じた共済証紙を共済手帳に貼付するものとする。また、労働者の便宜を図るため、工事現場事務所での貼付に努めるものとする」
3 明確にすべき課題
 埼玉県知事通知が言う「対象労働者」の範囲についての解釈を、「建退共手帳を持っている労働者という意味ではなく、手帳を持っているかどうかにかかわりなく現場の建設労働者という意味である」と明確化する必要があります。
 同様に埼玉県知事通知が言う「元請による事務受託」の範囲の解釈について、「建退共証紙の購入にとどまらず、建退共手帳の作成、労働者への交付、証紙購入、貼付等の建退共事務の全般を意味する」と明確化することが、求められています。 
 
 
◎ ─── 建退共「欠損金」についての建退共本部の回答 ───
 2008/7/28 情報として伝わってきている建退共「欠損金」問題について建退共本部に電話で確認したところ、次のような回答を得ることができました。
 @ 2007年4月〜2008年3月の1年間の欠損金が約124億円、発生している。
 A 退職金の支払いにただちに影響することはない。
 その理由は、
 退職金支払いの原資としての責任準備金が約8270億円存在し、退職金のほとんど(97〜98%)を確保している。
 利益剰余金残高854億円が存在する。
(電話での取材なので、その辺を割り引いて、参考資料として下さい)
 
 
◎ ──────── 厚労省部会 建退共見直し議論 ────────
 2008/9/8『建設通信新聞』によると、「厚生労働省の労働政策審議会中小企業退職金共済部会が建退共見直し議論を2008年9月5日にスタートした」とのことです。
 年内にはまとめる予定、とのことです。
 議論するのは、@予定運用利回りの見直し、A累積剰余金のあり方、B退職金支給要件の掛金納付月数の緩和、だとのことです。
 2003年に予定運用利回りが4.5%→2.7%に引き下げられています。
 同紙によると、今回の見直し議論は「現行の2.7%に据え置くか引き上げても3%程度にとどめるかが焦点になりそうだ」とのことです。引き下げの可能性はないと捉えていいのかどうか? 気になるところです。
 同紙によると、「累積剰余金」とは掛金に応じて対象者すべてに退職金支給をするために積み立てている責任準備金とは別に計上された剰余金。建退共の累積剰余金は2008年度決算で706億円に上っている、とのことです。
 「退職金支給要件の掛金納付月数の緩和」というのは、退職金をもらうには、「手帳に貼り終わった共済証紙が24月分以上。但し、死亡の場合は12月分以上」必要となっていて、掛金納付月数24月未満が実質掛け捨てになっているのを、改善する、緩和する、ということです。掛金納付月数24月未満であっても退職金をもらうことができるようにする、そういう方向の議論であり、建設労働者の要求と合致しています。
 
更新日時:
2008/09/21
――――――――「行政改革推進法・労働福祉事業」関連――――――――
――――――――「行政改革推進法・労働福祉事業」関連――――――――
海野和夫
 
◎ 行革法案成立受け、具体化阻止へ
1、行革法 具体化阻止へ
 2006年5月26日の参院本会議で可決、成立した行政改革推進法は、公務員「純減」、総人件費削減の名による(国と地方公共団体の)労働組合つぶし、「特別会計改革」による労働福祉事業等々「廃止方向」、「政策金融改革」の名による中小企業、中小業者の切り捨て、「規制改革」により社会福祉、社会保障、労働等の分野を資本のもうけの場としてさらに徹底して「民間」に開放、等々、極めて危険な中身、本質、狙いを持っています。
 労働福祉事業等々「廃止方向」については、2006年5月17日の参議院行政改革特別委員会で吉川春子議員が質問、追及を行い、一定の歯止めをかけたと言うことができると思います。
 今後、成立した行革法の具体化阻止に向けての運動、たたかいが重要になってきます。
 
2、参議院行政改革特別委員会での吉川春子議員の質問、追及
 2006年5月17日、日本共産党の吉川春子参院議員が、行政改革推進法案の「第23条に、労災保険の労働福祉事業等については、廃止を含めて見直しを行うという規定がある」ことについて、労災保険で行っている労働福祉事業は、不幸にも労災に遭った被災労働者の円滑な社会復帰として義肢、車いすの支給、遺族への支援として遺児に対する就学費用の支給、労災防止としてアスベスト対策、過労死防止、メンタルヘルス、また未払賃金の立替え事業など重要な仕事を行っており、これを廃止することは許されないし、むしろ充実させるべきと政府を追及しました。
 リモテックス破産事件での賃金支払確保法の適用を具体例として上げながら、賃金支払確保法を含む労働福祉事業の大事さ、必要性を明らかにした吉川議員の質問・追及を受けて、川崎二郎厚労大臣は「基本的に必要なものは必要である、これはもう同じ考え方でございます。労働福祉事業は、被災労働者等の社会復帰の促進及び援護や労働災害の防止等のために極めて重要な役割を果たしております。しかし、その一方で、合理化、効率化を図る観点から、表現として『廃止を含めた見直しを』という表現を使いましたので、全部廃止かと、こういう形で御指摘いただきますけれども、今個々の事業の一つ一つ取り上げていただきましたけれども、そういった意味では、高い評価を得ているもの、一部御批判をいただいているもの、それをしっかり洗い直ししながらやってまいりたい」と回答しました。
 
3、『毎日新聞』2006年5月26日付
(以下は、『毎日新聞』2006年5月26日付記事です)
<行革法案>参院で成立 具体策の実施は「小泉後」時代に
 政府が今国会で最重要法案と位置づける行政改革推進法案など関連5法案は
(2006年5月)26日午前、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。政府系金融機関改革など重点5分野で基本的な改革の方向性を示し、小泉純一郎首相の改革路線継続を打ち出している。ただ、具体策の実施は「ポスト小泉」時代に委ねられることになる。
 行革法案は「簡素で効率的な政府」の実現に向け、政府・与党が昨年末にま
とめた改革の方針を寄せ集めた。「政府系金融機関を08年度に一元化し、貸付金残高を国内総生産(GDP)比で04年度の半分以下にする」、「5年間で国家公務員を5%以上、地方公務員を4.6%以上純減する」、「31ある特別会計を12〜17に減らす」などの数値目標と作業工程を盛り込んでいる。
 小泉改革の「総仕上げ」とされる同法案が成立したことで、国会では(2006年)6月18日までの会期の延長問題をにらみながら、教育基本法改正案などの行方が焦点となる。【谷川貴史】
 
4、2006年5月28日「赤旗」
(以下は、2006年5月28日「赤旗」主張です)
主張
「行革」関連法 利益第一主義の「総仕上げ」
 「行革」関連法が自民、公明などの賛成多数で成立しました。
 関連法のうち、「行革」推進法は生活に身近な分野の公務員の大幅削減や、中小企業向け政策金融の縮小を盛り込んでいます。公共サービスを入札にかける「市場化テスト」法では、民間企業のビジネスチャンスの拡大を狙っています。
 関連企業は「百年に一度、50兆円のチャンス」だと色めきたっています。
ビジネスチャンス
 ビジネスチャンスをつくり、分配するやり方は露骨です。
 例えば、国家公務員を5年間で5%以上純減させる具体策を検討している「行政減量・効率化有識者会議」の座長は、大手警備会社セコムの飯田亮・取締役最高顧問です。
 この会議は刑務所の建設を含む包括的な民間委託の推進を提言しています。セコムは刑務所事業への参入に力を入れ、山口・美祢(みね)市の刑務所の建設・運営を受注しています。
 政策決定にかかわる会議のトップに利害関係者をすえるのは「お手盛り」にほかなりません。同様の「お手盛り」は、規制改革会議、国家公務員宿舎の移転・跡地利用を審議する「有識者会議」など、小泉「構造改革」の中にまん延しています。
 「行革」関連法は「改革の総仕上げ」と小泉内閣は言います。その「改革」がもたらした深刻な被害とゆがみが耐震偽装、ライブドアなどの社会的事件や、貧困と格差の拡大によって次々と露呈しています。
 「官から民へ」「改革なくして成長なし」「努力したものが報われる社会」――こうした宣伝文句の陰で実際に進められてきたのは、大企業・大資産家に大もうけの「自由」を保障することです。
 「官から民へ」の代表が「行革」関連法だとするなら、「改革なくして成長なし」の代表は財界要求に基づく雇用の規制緩和です。
 小泉内閣は契約社員の雇用期間の上限を緩め、労働者派遣の製造業務への解禁、派遣期間の制限も緩和しました。労働時間の規制も、サービス残業を合法化する裁量労働制をホワイトカラー(事務労働者)全体に導入できるよう緩和しました。
 政権発足前の2000年と比べると05年の派遣社員は3.2倍に、契約社員や嘱託等は2.5倍化し、合わせて320万人も増えています。この間の非正規雇用の増加数(376万人)の85%が小泉内閣の規制緩和に関連しています。
 企業が非正社員を雇う最大の理由は「賃金の節約」です。民間企業の給与総額は2000年からの4年で15兆円も減りました。身勝手なリストラ人減らしと、正社員を非正規雇用に置き換えた「効果」です。
 働くものから吸い上げた「賃金の節約」が、上場企業の空前の利益の源泉となっています。
具体化やめさせよう
 大企業の利益第一主義の「自由」の拡大は、低賃金と長時間労働がはびこる勤労の「不自由」を広げました。いくつ会社を回ってもどこにも本採用されない、いくら頑張っても若者の半数が正社員になれない、いつリストラされるか分からないような社会――「構造改革」は、日本社会を「努力するものが報われる社会」の対極に向かわせています。
 公共サービスと公務員を標的にした「行革」関連法は、利益第一主義を社会の隅々に広げる「総仕上げ」です。その具体化を押しとどめるたたかいを、国、地方のあらゆる分野で強めていこうではありませんか。
 
 
◎ 「賃金支払確保法(国による未払い賃金の立替払事業)等の廃止」を閣議決定
1、全建総連労働対策部議案が警告
 2006年2月16〜17日に熱海でおこなわれた全建総連中央執行委員会労働対策部議案は、「政府は今通常国会提出を狙う『行政改革推進法案(仮称)』で、労働保険特別会計を保険給付事業のみとし、労働福祉事業及び雇用保険3事業(雇用安定、能力開発、雇用福祉)や失業保険への国庫負担の廃止など、徹底的に見直していくことを、2005年12月24日に閣議決定しました。廃止の方向が議論される『労働福祉事業』には、労災病院の設置・運営、労災保険の特別支給金、就学援護費の支給、安全衛生確保事業(労災防止対策)、未払い賃金の(国による)立替払い事業(賃金支払確保法)などが含まれており、今後、具体的な見直し内容の情報を把握し、適切な対応をすすめていきます」と警告し、全建総連としての対応の必要を明らかにしています。
 
2、2005年12月24日の閣議決定
 それでは、全建総連労働対策部が警告する「2005年12月24日の閣議決定」について、公務員削減、(自衛隊の)自衛官の民間委託化、等々、「官から民へ」の流れを徹底推進しようとするもので、様々な問題点を含んでいますが、とりあえず今回は、「労働福祉事業の廃止」の一点に絞って、その閣議決定の中身を紹介しておきます。労働福祉事業が廃止されるということは、要するに賃金支払確保法(国による未払い賃金の立替払事業)も廃止されるということであり、私たち埼玉土建一般労組を含めて全建総連の各県連・組合が、営々として築き上げてきた賃金支払確保法が適用される範囲の拡大=労働者性の拡張(手間請も一人親方も、そして小規模の事業主も労働者として認めさせて賃金支払確保法を適用させる)流れの全てを破壊するものです。こんなことを、絶対に許すわけにはいきません。
 「2005年12月24日の閣議決定」は、その部分で「労働保険特別会計については、原則として純粋な保険給付事業に限り本特別会計にて経理するものとし、労働福祉事業及び雇用保険3事業については、廃止も含め徹底的な見直しを行うものとする。また、失業給付事業における国庫負担のあり方については、廃止を含め検討するものとする」と労働福祉事業等の廃止の方向を明言しています。 
 
3、行政改革推進法案(仮称)
 法案の国会提出時期を2006年3月上旬としている行政改革推進法案(仮称)については、内閣官房行政改革推進事務局によってその概要が発表されています。「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案の概要」が、それです。
 「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案の概要」は、該当する部分(特別会計改革)で、「特別会計の改革においては、特別会計の統廃合及びその経理の明確化を図るとともに、財政の健全化に資するため事務又は事業の合理化及び効率化を図るものとし、平成18年度から5年間を目途に計画的に推進する。改革に当たっては、特別会計における資産及び負債並びに剰余金等を縮減するなどし、財政の健全化に総額20兆円程度の寄与をすることを目標とする」、「政府は、この法律の施行後1年を目途として、個別特別会計の改革の具体的な内容、財政法の例外規定等の整理及び企業会計の慣行を参考にした資産及び負債の開示その他の会計情報の開示に係る法制上の措置その他の必要な措置を講ずる」と定めています。
 事態は明白です。「労働福祉事業」を含む労働保険特別会計も個別特別会計の一つです。この法律が成立すれば、「政府は、この法律の施行後1年を目途として、個別特別会計の改革の具体的な内容」を定めることができるのです。
 閣議決定が「廃止の方向」を決定した以上、この法律が成立すれば、「この法律の施行後1年を目途として」政府が賃金支払確保法(国による未払い賃金の立替払事業)を含む「労働福祉事業」を「廃止の方向」へ持って行くことは明らかです。
 全建総連の総力をあげての反対運動の展開が緊急に必要な、まさにそういう段階に来ていると考えます。
 
 
◎ 労働福祉事業等々「廃止の方向」法案、2006年3月10日、国会提出
(以下は、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(いわゆる行政改革推進法)が2006年3月10日に国会に提出されたのを受け、既に載せていただいている従来の文書を急いで補強したものです)
 
1、労働福祉事業等々「廃止の方向」閣議決定
 2006年2月16〜17日に熱海でおこなわれた全建総連中央執行委員会労働対策部議案は、「政府は今通常国会提出を狙う『行政改革推進法案(仮称)』で、労働保険特別会計を保険給付事業のみとし、労働福祉事業及び雇用保険3事業(雇用安定、能力開発、雇用福祉)や失業保険への国庫負担の廃止など、徹底的に見直していくことを、2005年12月24日に閣議決定しました。廃止の方向が議論される『労働福祉事業』には、労災病院の設置・運営、労災保険の特別支給金(休業給付20%加算の休業特別支給金、等々)、就学援護費の支給、安全衛生確保事業(労災防止対策)、未払い賃金の(国による)立替払い事業(賃金支払確保法)などが含まれており、今後、具体的な見直し内容の情報を把握し、適切な対応をすすめていきます」と警告し、労働運動としての対応の必要を明らかにしています。
 
2、2005年12月24日の閣議決定
 全建総連労働対策部が警告する「2005年12月24日の閣議決定」について、公務員削減、(自衛隊の)自衛官の民間委託化、等々、「官から民へ」の流れを徹底推進しようとするもので、様々な問題点を含んでいますが、とりあえず今回は、「労働福祉事業の廃止の方向」の一点に絞って、その閣議決定の中身を紹介しておきます。労働福祉事業が廃止されるということは、要するに賃金支払確保法(国による未払い賃金の立替払事業)や労災保険の特別支給金(休業給付20%加算の休業特別支給金、等々)も廃止されるということであり、私たち埼玉土建一般労組を含めて全建総連の各県連・組合、また建交労等の全国の建設労組が、営々として築き上げてきた賃金支払確保法が適用される範囲の拡大=労働者性の拡張(手間請も一人親方も、材料持ち、ダンプ持ち込みでも、さらに小規模の事業主も、労働者として認めさせて賃金支払確保法を適用させる)流れの全てを破壊するものです。こんなことを、絶対に許すわけにはいきません。
 「2005年12月24日の閣議決定」は、その部分で「労働保険特別会計については、原則として純粋な保険給付事業に限り本特別会計にて経理するものとし、労働福祉事業及び雇用保険3事業については、廃止も含め徹底的な見直しを行うものとする。また、失業給付事業における国庫負担のあり方については、廃止を含め検討するものとする」と労働福祉事業等の廃止の方向を明言しています。 
 
3、「行政改革推進法案」の概要
 法案の国会提出時期を2006年3月上旬としている「行政改革推進法案」については、内閣官房行政改革推進事務局によってその概要が発表されています。「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案の概要」が、それです。
 「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案の概要」は、該当する部分(特別会計改革)で、「特別会計の改革においては、特別会計の統廃合及びその経理の明確化を図るとともに、財政の健全化に資するため事務又は事業の合理化及び効率化を図るものとし、平成18年度から5年間を目途に計画的に推進する。改革に当たっては、特別会計における資産及び負債並びに剰余金等を縮減するなどし、財政の健全化に総額20兆円程度の寄与をすることを目標とする」、「政府は、この法律の施行後1年を目途として、個別特別会計の改革の具体的な内容、財政法の例外規定等の整理及び企業会計の慣行を参考にした資産及び負債の開示その他の会計情報の開示に係る法制上の措置その他の必要な措置を講ずる」と定めています。
 事態は明白になってきています。「労働福祉事業」を含む労働保険特別会計も個別特別会計の一つです。この法律が成立すれば、「政府は、この法律の施行後1年を目途として、個別特別会計の改革の具体的な内容」を定めることができるのです。
 閣議決定が「廃止の方向」を決定した以上、この法律が成立すれば、「この法律の施行後1年を目途として」政府が賃金支払確保法(国による未払い賃金の立替払事業)や労災保険の特別支給金(休業給付20%加算の休業特別支給金、等々)を含む「労働福祉事業」を「廃止の方向」へ持って行くことは明らかです。
 労働運動からの反対運動の展開が緊急に必要な、まさにそういう段階に来ていると考えます。
 
4、「行政改革推進法案」そのものでは
 「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(いわゆる行政改革推進法)が、予定通り2006年3月10日に国会に提出されました。
 入手した「行政改革推進法案」(「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」)そのものを見ると、労働福祉事業等々の「廃止の方向」についてその第23条が次のように明確に述べています。
「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」第23条=労働保険特別会計において経理される事業は、労災保険法の規定による保険給付に係る事業及び雇用保険法の規定による失業等給付に係る事業に限ることを基本とし、労災保険法の規定による労働福祉事業並びに雇用保険法の規定による雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業については、廃止を含めた見直しを行うものとする。
「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」第23条の2=雇用保険法第66条の規定による国庫負担(失業等給付に係るものに限る。)の在り方については、廃止を含めて検討するものとする。
 
この23条を見る限り、労働福祉事業等々については「廃止が基本」としか読み取ることができません。前記の「廃止の方向」の閣議決定とあわせて考えると、放置することは許されない段階に既に来ていると強く感じます。
 
 法案の概要等が載っている内閣官房行政改革推進事務局のホームページは下記の通りです。
<http://www.gyoukaku.go.jp/>
 
 
◎ 労働福祉事業の種類と内容
1、はじめに
 「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(いわゆる行政改革推進法)が、2006年3月10日に国会に提出されました。
 「官から民へ」の流れを徹底推進しようとするもので、様々な問題点を含んでいます。この法案の中には、「労働福祉事業の廃止の方向」も含まれており、私たちとの関係を明らかにするために、以下に労働福祉事業の種類と内容をまとめてみました。
 
(下記は、「労災保険制度の詳解」(厚生労働省労働基準局労災補償部労災管理課編 株式会社労務行政発行)にもとづいて、まとめました)
 
2、労働福祉事業の種類
 労災保険では、保険給付の事業に並立する事業として、労働福祉事業を行うこととしています。
 労働福祉事業としては、大別して次の4種の事業があります。
@療養に関する施設及びリハビリテーションに関する施設の設置及び運営その他被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業
A被災労働者の療養生活の援護、被災労働者の受ける介護の援護、その遺族の就学の援護、被災労働者及びその遺族が必要とする資金の貸付けによる援護その他被災労働者及び遺族の援護を図るために必要な事業(このうち最も重要なものとして、特別支給金の支給があります)
B業務災害の防止に関する活動に対する援助、健康診断に関する施設の設置及び運営その他労働者の安全及び衛生の確保のために必要な事業
C賃金の支払の確保、労働条件に係る事項の管理に関する事業主に対する指導及び援助その他適正な労働条件の確保を図るために必要な事業(要するに、未払い賃金の国による立替払い事業のことです)
 
3、労働福祉事業の内容
@療養に関する施設及びリハビリテーションに関する施設の設置及び運営その他被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業
(1)労災病院の設置・運営
(2)医療リハビリテーションセンターの設置・運営
(3)総合せき損センター(せき髄損傷者等の治療からリハビリテーション、さらに職業指導を一貫して行う施設)の設置・運営
(4)労災委託病棟の設置 
 労災病院の設置されていない地域について、患者のための医療施設を設置して、その運営を既存の病院に委託しています。
(5)看護専門学校
 労災病院に勤務する看護師を養成するために、看護専門学校を設置しています。
(6)外科後処置
 治ったといっても、再手術や電気治療やマッサージなどの物理療法を行わなければならない場合に、無料で診療の機会を与える制度が設けられており、これを外科後処置といいます。
(7)義肢等の支給
 義肢、義眼、補聴器、人口喉頭、車いす、電動車いす、収尿器、歩行補助つえ、等々、22種目を無料支給しています。
(8)労災リハビリテーション作業所
(9)温泉保養
(10)在宅介護住宅資金の貸付け
 重度被災労働者の介護に配慮した住宅の建設、改築又は増築を行う場合に、低利で貸し付けを行うものです。
(11)自動車購入資金の貸し付け
 車椅子生活を余儀なくされたせき髄損傷者に対して、足を使わなくても運転できる特殊自動車の購入資金を貸し付ける精度です。
(12)その他
 省略します。
A被災労働者の療養生活の援護、被災労働者の受ける介護の援護、その遺族の就学の援護、被災労働者及びその遺族が必要とする資金の貸付けによる援護その他被災労働者及び遺族の援護を図るために必要な事業
(1)特別支給金の支給
 特別支給金の種類は、休業特別支給金、障害特別支給金、遺族特別支給金、傷病特別支給金、障害特別支給金、障害特別一時金、遺族特別年金、遺族特別一時金、傷病特別年金の9種類です。
 休業特別支給金の額は、1日につき休業給付基礎日額の100分の20に相当する額です。(被災の際、休業補償がこれにより20%上乗せされ、賃金の80%の支給となるわけです)
 障害特別支給金は、障害等級第1級342万円〜第14級8万円までの14段階に分かれています。
(2)労災就学援護費
 被災労働者の子弟に就学援護費を支給する制度です。
(3)労災就労保育援護費
(4)年金担保資金貸付制度
 労災年金を担保として貸付を行っています。
(5)労災援護金の支給
(6)労働福祉事業としてのアフターケア
(7)その他
 省略します。
B業務災害の防止に関する活動に対する援助、健康診断に関する施設の設置及び運営その他労働者の安全及び衛生の確保のために必要な事業
(1) 労働災害防止対策の実施
(2)災害防止団体に対する補助
(3)勤労者予防医療センター
(4)健康診断センター
(5)海外勤務健康管理センター
(6)その他
C賃金の支払の確保、労働条件に係る事項の管理に関する事業主に対する指導及び援助その他適正な労働条件の確保を図るために必要な事業
 要するに、賃金支払確保法にもとづく「未払い賃金の国による立替払い制度」のことです。
 企業の倒産のため事業主から賃金を支払われない労働者に対して未払い賃金の一定範囲(原則80%)を国が事業主に代わって立替払いする(要するに支払う)制度です。
 
 
◎ 行政改革推進法(「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」)案の危険な中身(法案全文を検討)
1、法案の全文入手
「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(いわゆる行政改革推進法)案が、予定通り2006年3月10日に国会に提出されました。
この法案の全文が、以下の「国立大学法人法反対首都圏ネットワーク(新首都圏ネットワーク)」のサイトに載っています。
<http://www.shutoken-net.jp/index.html>
 
 入手した「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(いわゆる行政改革推進法)案の全文を見ると、労働福祉事業等々の「廃止の方向」についてその第23条が次のように明確に述べています。
「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」第23条「労働保険特別会計において経理される事業は、労災保険法の規定による保険給付に係る事業及び雇用保険法の規定による失業等給付に係る事業に限ることを基本とし、労災保険法の規定による労働福祉事業並びに雇用保険法の規定による雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業については、廃止を含めた見直しを行うものとする」
「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」第23条の2「雇用保険法第66条の規定による国庫負担(失業等給付に係るものに限る。)の在り方については、廃止を含めて検討するものとする」
 
この23条を見る限り、労働福祉事業等々については「廃止が基本」としか読み取ることができません。「廃止の方向」の(2005年12月24日の)閣議決定とあわせて考えると、放置することは許されない段階に既に来ていると強く感じます。
 
2、この法案の、(労働福祉事業等々「廃止方向」)以外の、危険な中身
 第1条で、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革を、(内閣総理大臣を長とする)行政改革推進本部を設置することにより、総合的に推進することが、この法律の目的だ、と定めています。
 第2条で、基本理念として、「我が国の国際競争力の強化」をあげています。
 政策金融改革(第4条〜第14条)では、現行政策金融機関(商工組合中央金庫、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行、日本政策投資銀行)について、商工組合中央金庫と日本政策投資銀行は完全民営化、公営企業金融公庫は廃止、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行は、新たに設立する「新政策金融機関」(株式会社又は独立行政法人若しくはこれに類する法人)に統合し、教育資金の貸付け、地方公共団体のための資金調達、中小企業への融資、農林漁業者への融資等々の縮減を定めています。
 独立行政法人の見直し(第15条、16条)では、独立行政法人に対する国の歳出の縮減を図ることを定めています。
 特別会計改革(第17条〜第41条)では、第17条で「(各種)特別会計の廃止及び統合」を打ち出し、2006年度から2010年度の5年間で総額20兆円の削減を目標とする、と定めています。
 また、第19条は「政府は、特別会計の廃止及び統合、一般会計と異なる取り扱いの整理並びに企業会計の慣行を参考とした資産及び負債の開示その他の特別会計に係る情報の開示のため、この法律の施行後1年以内を目途として法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする」と定め、政府一任とも受け取れる内容になっています。国会での追及が求められるところです。
特別会計の一つが労働福祉事業等を含む労働保険特別会計であり、これについては、前述のように、第23条で「労働保険特別会計において経理される事業は、労災保険法の規定による保険給付に係る事業及び雇用保険法の規定による失業等給付に係る事業に限ることを基本とし、労災保険法の規定による労働福祉事業並びに雇用保険法の規定による雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業については、廃止を含めた見直しを行うものとする」と定め、また第23条の2で「雇用保険法第66条の規定による国庫負担(失業等給付に係るものに限る。)の在り方については、廃止を含めて検討するものとする」と規定しています。
 総人件費改革(第42条〜第57条)では、5年間で5%以上の国家公務員数の純減、また地方公務員数の4.6%以上の純減を打ち出しています。独立行政法人、国立大学法人等については、その人件費の5年間で5%以上の削減を定めています。公共職業紹介所の業務等について、民間委託化の検討を決めています。
 公務員制度改革(第63条)は、「能力及び実績に基づく人事管理」等を定めています。
規制改革(第64条)では「民間活動に係る規制の撤廃又は緩和」に向けて「政府は、金融、情報通信技術、出入国の管理、社会福祉、社会保障、労働、土地の測量その他の分野における規制の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする」と規定しています。まさに社会福祉、社会保障、労働等の分野を資本のもうけの場としてさらに徹底して「民間」に開放しようとするものです。
 そして、それらを総合的に推進するために、第68条で「内閣に行政改革推進本部を置く」と定めています。第73条で、首相が行政改革推進本部の本部長に座り、全閣僚が本部員を占めることを定めています。
 
 
◎ 行政改革推進法案、公務員「純減」推進は労働組合つぶし、失業者の増大
小泉内閣が最重要法案と位置づける「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(いわゆる行政改革推進法)案など「行革関連5法案」の審議が、2006年4月3日から衆院行政改革特別委員会で始まります。
2006年4月3日の衆院行革特別委員会は、小泉純一郎首相と全閣僚が出席して総括質疑を行います。2006年4月4日には一般質疑を行います。
行政改革推進法案は、「特別会計改革」による労働福祉事業等々「廃止方向」、「政策金融改革」の名による中小企業、中小業者等への融資等の「縮減」による中小企業、中小業者等の切り捨て、「総人件費改革」による公務員の純減、民間委託化の推進、「規制改革」により社会福祉、社会保障、労働等の分野を資本のもうけの場としてさらに徹底して「民間」に開放、等々、極めて危険な中身、本質、狙いを持っています。
公務員の純減、民間委託化の推進の狙いが、単なる総人件費削減にあるのではなく、国家公務員、地方公務員等の「純減」を通じての労働組合活動家の排除にある点を見逃さないことが大事です。(国と地方公共団体の労働組合)を弱め、つぶすことを狙ったものである点です。また、公務員の純減は失業者の増大を結果するものであり、労働者、労働運動へのおどし、圧力の強化として機能します。
 行政改革推進法案は、第1条で、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革を、(内閣総理大臣を長とする)行政改革推進本部を設置することにより、総合的に推進することが、この法律の目的だ、と定めています。
 第2条で、基本理念として、「我が国の国際競争力の強化」をあげています。
 政策金融改革(第4条〜第14条)では、現行政策金融機関(商工組合中央金庫、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行、日本政策投資銀行)について、商工組合中央金庫と日本政策投資銀行は完全民営化、公営企業金融公庫は廃止、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行は、新たに設立する「新政策金融機関」(株式会社又は独立行政法人もしくはこれに類する法人)に統合し、教育資金の貸付け、地方公共団体のための資金調達、中小企業への融資、農林漁業者への融資等々の縮減を定めています。
 独立行政法人の見直し(第15条、16条)では、独立行政法人に対する国の歳出の縮減を図ることを定めています。
 特別会計改革(第17条〜第41条)では、第17条で「(各種)特別会計の廃止及び統合」を打ち出し、2006年度から2010年度の5年間で総額20兆円の削減を目標とする、と定めています。
 また、第19条は「政府は、特別会計の廃止及び統合、一般会計と異なる取り扱いの整理並びに企業会計の慣行を参考とした資産及び負債の開示その他の特別会計に係る情報の開示のため、この法律の施行後1年以内を目途として法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする」と定め、政府一任とも受け取れる内容になっています。国会での追及が求められるところです。
特別会計の一つが労働福祉事業等を含む労働保険特別会計であり、これについては、第23条で「労働保険特別会計において経理される事業は、労災保険法の規定による保険給付に係る事業及び雇用保険法の規定による失業等給付に係る事業に限ることを基本とし、労災保険法の規定による労働福祉事業並びに雇用保険法の規定による雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業については、廃止を含めた見直しを行うものとする」と定め、また第23条の2で「雇用保険法第66条の規定による国庫負担(失業等給付に係るものに限る。)の在り方については、廃止を含めて検討するものとする」と規定しています。
 総人件費改革(第42条〜第57条)では、5年間で5%以上の国家公務員数の純減、また地方公務員数の4.6%以上の純減を打ち出しています。独立行政法人、国立大学法人等については、その人件費の5年間で5%以上の削減を定めています。公共職業紹介所の業務等について、民間委託化の検討を決めています。
 公務員制度改革(第63条)は、「能力及び実績に基づく人事管理」等を定めています。
規制改革(第64条)では「民間活動に係る規制の撤廃又は緩和」に向けて「政府は、金融、情報通信技術、出入国の管理、社会福祉、社会保障、労働、土地の測量その他の分野における規制の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする」と規定しています。まさに社会福祉、社会保障、労働等の分野を資本のもうけの場としてさらに徹底して「民間」に開放しようとするものです。
 そして、それらを総合的に推進するために、第68条で「内閣に行政改革推進本部を置く」と定めています。第73条で、首相が行政改革推進本部の本部長に座り、全閣僚が本部員を占めることを定めています。
 
2006年4月3日「しんぶん赤旗」が下記のように報じています。
(以下は、2006年4月3日「しんぶん赤旗」記事の全文です)
―――今週の国会
「行革推進」法案を審議
医療改悪法案 本会議日程協議へ-
 2006年度予算の成立を受け、国会は重要法案の審議に焦点が移ります。小泉内閣が最重要法案と位置づける「行政改革推進」法案など「行革関連5法案」の審議が、(2006年4月)3日から衆院行政改革特別委員会で始まります。
(2006年4月)3日の衆院行革特別委員会は、小泉純一郎首相と全閣僚が出席して総括質疑を行います。(2006年4月)4日には一般質疑を行います。
 「行政改革推進」法案は、国家公務員を5年間で5%以上、地方公務員を5年間で4.6%以上「純減」するというのが最大の柱。政府系金融機関の統廃合も盛り込まれています。国民サービスの切り捨てにつながる大きな問題をはらんでおり、徹底審議が求められます。
 与党側は、高齢者を中心とする負担増、混合診療など保険医療の縮小を押し付ける医療改悪法案の衆院本会議での質疑も求め、同案の早期成立をはかる構えです。(2006年4月)3日の衆院議院運営委員会理事会で、本会議の日程について協議します。
 自民党の武部勤幹事長は、「行革推進」法案、医療改悪法案に加え、「教育基本法改正、国民投票法案も今国会成立を期していきたい」と強調しており、法案提出と審議に向け、動きを加速する構えです。
 (2006年4月)6日には、衆院憲法調査特別委員会が自由討議を行い、その後、改憲手続きを定める国民投票法制に関する「論点協議」のための理事懇談会を開きます。
 「偽メール」問題で、永田寿康衆院議員が提出した議員辞職願については、(2006年4月)3日の衆院議院運営委員会理事会で扱いを協議します。直近の本会議で辞職が許可される見通しです。また、永田氏の懲罰問題では、(2006年4月)3日に衆院懲罰委員会が理事会を開き、(2006年4月)4日に予定されていたメール提供者とされる西澤孝氏への証人喚問を中止することを決める見込みです。永田氏の議員辞職で、同氏の懲罰問題は消滅します。
参院決算委員会は省庁別質疑を行い、(2006年)4月5日に外務省・防衛庁にたいし質疑します―――
 
 
◎ 補装具の「削減・効率化」をやめさせ、無料支給を守るために
 全建総連東京都連の宮本英典書記次長から見せていただいた資料によると、労働福祉事業の見直しの検討状況について厚生労働省側は全建総連側に、『労働福祉事業の見直しについて(これまでの検討状況)』というタイトルの文書を出してきました(示してきました、見せました)。
 その文書『労働福祉事業の見直しについて(これまでの検討状況)』によると、基本的考え方として、先の国会で成立した「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(行革推進法)で労働福祉事業については「廃止も含め徹底的な見直し」を行うこととされたことを受け、事業の見直しを行う必要がある、としています。
 『労働福祉事業の見直しについて(これまでの検討状況)』は、全建総連が廃止・削減に強く反対している「未払賃金立替払事業(賃金支払確保法)」については、「関係者の意見を踏まえつつ、引き続き検討すべきではないか」としています。宮本英典書記次長の表現を借りれば、ペンディング(未決定、保留)ということです。なお、宮本英典書記次長が書いた文書によると、休業給付の際二割上乗せの「特別支給金」、中退金などの中小企業福祉事業等もペンディング(未決定、保留)となっていて、2006年9月以降の審議となっている、とのことです。
 私が相当イヤな感じを受けたのは、『労働福祉事業の見直しについて(これまでの検討状況)』が「削減・効率化を図るための見直しを行う方向とすべきではないか」としている事業の中に「補装具」が入っていることです。
 補装具の「削減・効率化」は、労災により傷病を被った人を狙い撃ちするものであり、私は絶対反対です、補装具の無料支給は絶対守り抜くべきです。
 『労災保険制度の詳解』(編者 厚生労働省労働基準局労災補償部労災管理課 発行所 株式会社労務行政)には、次のように書かれています。
 「労働災害により傷病を被った方で四肢喪失、機能障害等の残った方の社会復帰には、義肢その他の補装具が必要不可欠である。このため、労災保険では労働福祉事業として義肢等の支給を無料で行っている」、「労災保険の労働福祉事業として支給する義肢等は、現在、(1)義肢、(2)上肢装具及び下肢装具、(3)体幹装具、(4)座位保持装置、(5)盲人安全つえ、(6)義眼、(7)眼鏡、(8)点字器、(9)補聴器、(10)人口喉頭、(11)車いす、(12)電動車いす、(13)歩行車、(14)収尿器、(15)ストマ(腹壁につくられた排泄口)用装具、(16)歩行補助つえ、(17)かつら、(18)浣腸器付排便剤、(19)褥瘡(とこずれ)予防用ふとん、(20)介助用リフター、(21)フローテーションパッド(車いす・電動車いす用)、(22)ギャッジベッド(特殊寝台)の以上22種目である」
 
フローテーションパッド 人間の脂肪組織に似た性質を持つゲル構造の物質を使ったもので、圧力を分散・吸収する効果に優れています
 
 
◎ 補装具の「削減・効率化」やめさせ、無料支給継続求め、厚労省交渉
1 労働福祉事業の廃止・見直しの動向
 厚生労働省の『労働福祉事業の見直しについて(これまでの検討状況)』(以下、厚労省文書と略します)によると、厚労省の基本的考え方として、先の国会で成立した「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(行革推進法)で労働福祉事業については「廃止も含め徹底的な見直し」を行うこととされたことを受け、労働福祉事業の見直しを行う必要がある、としています。
 厚労省文書は、「未払賃金立替払事業(賃金支払確保法)」については、「関係者の意見を踏まえつつ、引き続き検討すべきではないか」としています。
 厚労省文書が「削減・効率化を図るための見直しを行う方向とすべきではないか」としている事業の中に「補装具」が入っています。
 補装具の「削減・効率化」は、労災により傷病を被った人を狙い撃ちするものです。補装具の無料支給は守り抜くべきです。
 『労災保険制度の詳解』(編者 厚生労働省労働基準局労災補償部労災管理課 発行所 株式会社労務行政)には、次のように書かれています。
 「労働災害により傷病を被った方で四肢喪失、機能障害等の残った方の社会復帰には、義肢その他の補装具が必要不可欠である。このため、労災保険では労働福祉事業として義肢等の支給を無料で行っている」、「労災保険の労働福祉事業として支給する義肢等は、現在、(1)義肢、(2)上肢装具及び下肢装具、(3)体幹装具、(4)座位保持装置、(5)盲人安全つえ、(6)義眼、(7)眼鏡、(8)点字器、(9)補聴器、(10)人口喉頭、(11)車いす、(12)電動車いす、(13)歩行車、(14)収尿器、(15)ストマ(腹壁につくられた排泄口)用装具、(16)歩行補助つえ、(17)かつら、(18)浣腸器付排便剤、(19)褥瘡(とこずれ)予防用ふとん、(20)介助用リフター、(21)フローテーションパッド(車いす・電動車いす用)、(22)ギャッジベッド(特殊寝台)の以上22種目である」
2 厚生労働省交渉
 2006年9月14日、建設関係労働組合首都圏共闘会議(建設首都圏共闘
 池上武雄議長)は厚生労働省と交渉を行い、「行革推進法が企図する労働福祉事業の廃止は行わないこと」を中心に要求。厚生労働省は、労働福祉事業の廃止・見直しの現時点での検討状況等を回答しました。
 この交渉に一員として参加しましたので、特に気になっている点での厚生労働省の回答を以下に記述しておきます。
労働福祉事業の見直しについては、厚生労働省と事業主団体で構成する「労働福祉事業見直しの検討会」(以下、「検討会」と略します)で検討中である。
 労働福祉事業は重要な役割を果していると認識している。効率化・合理化の観点から労働福祉事業の中の個別事業の精査を行っている。
 「検討会」での検討の上に、公労使参加の「労働政策審議会」でさらに具体化をはかっていく。
 今は検討段階である。労働側の意見を聞いていない。これから聞くことになる。
 労働福祉事業の中の「特別支給金」、「中小企業退職金共済事業」については、「検討会」の中で再検討の声は出ていない。
(労災の休業給付二割上乗せは、「特別支給金」から行われています)
労働福祉事業の中の「未払賃金立替払事業」については、引き続き検討する、ということだ。
「補装具及び社会復帰保養事業」について「事業の削減・効率化」のための見直しを「検討会」は言っているが、「補装具及び社会復帰保養事業」は事業名であり、必ずしも「補装具」を「削減・効率化」の対象にしているわけではない。
労働政策審議会については、厚生労働省のホームページに公開しているし、傍聴することもできる。
 
更新日時:
2008/01/19
「建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払」関連(6)
「建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払」関連(6)
海野和夫
 
◎ 元請〜5次という深い重層下請構造のもとでの工事代金不払い
 次のような、深い重層下請構造のもとでの、工事代金不払い事件です。
 発注者→元請→1次下請→2次下請→3次下請→4次下請→5次下請という深い重層下請構造です。
 工事は終了しています。
 1次下請は2700万円で2次下請に請け負わせ、1500万円しか払っていません。工事の遅滞による外注費の発生を、支払わない理由にしています。発生した外注費と支払うべき工事代金を相殺したというのです。
 いま、2次下請は夜逃げ状態。(2次下請は3次下請に200万円だけ払っています)
 3次下請は4次下請に1700万円で請け負わせ、1円も払っていません。3次下請も夜逃げ状態。
 4次下請は借金をして、5次下請に全額支払い済み。
 上記の構造を前提に考えると、
 一つは、元請責任の追及、もう一つは、1次下請との交渉が考えられます。
 1次は相殺の理由を、「工事の遅滞による外注費の発生」としていますが、工事の遅滞の原因が誰にあるのか、発注者なのか、元請なのか、1次自身なのか、2次なのか、3次なのか、それとも4次なのか? 明らかにする必要があります。
 工事の遅滞の原因が発注者または元請または1次にある場合は、言うまでもなく、2次に支払うべき工事代金と相殺する正当な理由にはなりません。
 工事の遅滞の原因が2次にある場合には、相殺の正当な理由になります。
 工事の遅滞の原因が3次にある場合、2次が選定した3次の不手際ですから、2次にも責任があり、相殺の理由になります。この場合は、2次は、相殺された分について、3次に支払うべき工事代金と相殺する理由を得たことになります。
 工事の遅滞の原因が4次にある場合、1次は、2次に支払うべき工事代金と相殺する理由になるし、順次、2次は3次に支払うべき工事代金と相殺、3次は4次に支払うべき工事代金と相殺、という構造が成立していきます。
 1次の選定責任の追及が必要です。1次が選定した2次が、3次に200万円払っただけで夜逃げ状態ということについて、1次は責任を負っています。自分が選定した下請が故意または過失によって他人に損害を加えた場合には、その下請を選定した請負業者も責任を負うことになります。
 同様に、3次が4次に1円も払わないまま夜逃げ状態ということについては、その3次を選定した2次にも責任があります。
 そして、最後に浮上するのが、重層下請構造での建設工事の最終的責任者としての元請の責任です。
 建設業法が定める元請責任です。
 今回のような不払い事件の場合には、建設業法41条2項、3項が定める元請責任での下請救済、言い換えると元請の立替払による不払いの解決が、必要になるし、建設業法が元請に要請するところです。
 また、元請は、重層下請構造下で今回のようなトラブルを起こさないよう下請を指導すべき重い責務を負っています。建設業法24条6項が定める元請による下請指導の責任です。
 元請は、法律やルールを守り、不祥事を起こさないよう下請を適切に指導すべき責任を負っています。
 重層下請構造下で今回のような不祥事が起こったということは、元請による下請指導が適切に行なわれていなかった、ということになります。この点について、元請に責任があります。
 
 
◎ 建設業法41条3項に基づく立替払いでの「合意書」のモデル
 「建設業法41条3項に基づく立替払いでの合意書のモデル」を教えてほしいとの要望がありましたので、あらためて、以下に「合意書のモデル」を掲載します。実際に大手住宅企業との間で交わした「合意書」を参考にして、それを匿名化したものです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
合 意 書
 A社を甲、B社を乙として、本日、下記のとおり合意した。
第1 甲は、乙に対して、○○社の倒産に伴う工事代金未払いに関して、建設業法第41条3項の趣旨に則り、○○社の未払い代金のうち金○○円を、○○年○○月末日限り(「限り」は「までに」の意味です――海野)立替払いするものとし、これを乙の指定する銀行口座(○○)への振込入金の方法により支払う。
第2 乙は、○○社の未払いに関して、本書に記載する以外には、名目の如何を問わず、甲に対して何らの経済的要求も行わないことを確認する。
第3 甲と乙は、○○社の未払いに関する甲と乙との間での紛争については、本書に記載するところによりその全てが円満に解決したことを相互に確認し、他に何らの債権債務もないことを相互に確認する。
第4 甲と乙は、本書に記載する内容については、第三者へ口外しないことを互いに確約する。
(第4の表現については、私たちは不要と考えますが、慎重な元請の場合、諸事情からこの表現の記述を要求してくる場合があり、私たちは譲歩して受け入れています。立替払での不払い解決が火急の課題ですから、話を壊さないように最大限配慮します――海野)
 以上の成立を証するため、本書2通を作成し、各自1通所持するものとする。
○○年○○月○○日
 甲     住所
       社名
       代表者名              印
 乙     住所
       社名
       代表者名              印
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 
◎ ─── 独立行政法人発注の公共工事でのトラブルの構造 ───
(関係者に配慮して匿名化してあります)
発注者  独立行政法人○○○○
元請   A社
1次下請 B社
2次下請 C社
3次下請 D社等数社
 以上のような重層下請構造の中で発生した、元下間のトラブルです。
 工事は、○○○○外壁修繕他工事です。
 多額の工事代金不払い被害を受けていると、2次下請のC社は主張しています。
1次―2次間での多額の未払いトラブルの発生です。建設業法に基づく元請責任での解決が求められています。
 @ 着工の大幅な遅れが事実としてあり、2ヶ月の工期が1ヶ月で完成しなければならなくなり、半分の工期になってしまったわけです。工事開始の遅れが、トラブル発生のもとになっています。工期の遅れを取り戻すために、実際に建設工事を施工する下請業者は、相当な無理を強いられます。工事開始の遅れの責任は誰にあるのか? 一つのポイントです。その責任が発注者にあるのか、元請にあるのか、あるいは1次にあるのか?
 2次には、工事開始の遅れの責任はありません。
着工の大幅な遅れの責任が主として元請にある可能性が濃厚です。
元請は「遅れについては、元請の責任の可能性が強いのは認める」と回答しています。
少なくとも、2次に工事開始の遅れの責任はないことは明白ですから、工事開始の遅れに伴う負担を2次に負わせるべきではなく、元請責任での解決が求められます。
 A 人工について、延べにすると相当な数の待機が存在し、元請の所長の指示による待機だと、2次は主張しています。
 元請は、この点に回答していません。
 B 1次が2次に指示して常用の約束で2次に施工させた工事部分があり、この部分の常用人工分が未払いと2次は主張しています。事実とすれば、元請責任での解決が必要です。
 元請は「当社の職員の中に、常用の約束をした者はいない」と文書回答してきました。仮にそうだとしても、1次が2次に常用の約束をして施工させたとすれば、その未払いについては、元請が責任を負うことになります。
 C 多大な人工ロス、材料ロス、手戻り(やり直し)が存在しています。このようなロスを発生させた責任が、元請側にあるのか、2次の側にあるのか、が問題です。元請の不適切な指示がロス発生の原因だと、2次は主張しています。元請の責任で発生したとすれば、国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」にも明記されているように、(ロス発生について)元請に責任がある場合には、元請の負担で解決する必要があります。このような場合に、下請に負担を転嫁するのは、建設業法違反になります。
 元請は「不適切な指示はしていない」と文書回答してきました。
 D 「やり直し」の一部は、元請に責任がないような箇所もあるようです。「請負契約で決められた工事が適正に行われていないので、適正な工事になるよう指示しただけである」と元請は主張しています。請負契約ですから、2次の責任でロスが生じた部分は、2次の負担で解決せざるを得ないでしょう。
 E 元請の所長による指示が全て、口頭での指示であり、書面による指示が行われていないことは、主として元請の責任を問われる部分です。その上、元請として下請指導、現場管理をする上で当然必要な日報が、存在していない、日報が付けられていない、という問題があります。元請の責任が問われます。
 「口頭による指示」、「日報の不存在」については、元請も認めています。
 F 元請の所長が工期の途中で(元請企業)を退社してしまい、所長交代という事態が発生しています。元請の責任が問われます。
 所長の工期途中での退社、交代についても、元請は認めています。 
 
 
◎ 質問「建設業法と賃確法・発注者と許可行政庁の責任」へのお答え
 以下のようなご質問が、当HPに寄せられましたので、お答えしておきます。実は、相当深い質問で、直面すると、私たちも悩む問題です。一緒に考える姿勢で、お答えしたいと思います。
 なお、賃確法適用・不適用については複雑な問題もあるのですが、それは省いて、できるだけ単純にお答えします。
(質問)
2008/1/16(水) 14:50  建設業法と賃確法・発注者と許可行政庁の責任について教えてください。
 いつもコラムを見ています。大変勉強になります。
 以下の2点の質問に対する過去の事例があればコラムで紹介するか、お返事をいただければ幸いです。1点目は、例えば地方自治体の公共事業(A市)で特定建設業者の元請(B)、一次下請(C)・二次下請(D)・Dの常用労働者(E)で、Dの倒産もしくは事実上の倒産によるEへの賃金不払いとしましょう。
 一次業者との交渉で解決しない場合に元請へ「建設業法41条2項による立替払」を要請するのか、最初から賃金確保法による立替払を労働基準監督署に申請するのか、どちらが良いのでしょうか?後述の方が特定元請からすると「ありがたい話」に思えるのですが…。
 2点目は同じく公共事業の発注者がA市で特定元請Bとしましょう。二次業者Dが事業継続中の場合あるいはEへの不払いが工事代金の場合ですが、Bが建設業法による立替払の要請に対して責任を果たそうとしない時に、発注者責任(A市)と許可行政庁(都道府県知事もしくは国道交通省)への申し入れは、どちらを先にするべきなのでしょうか?
(回答)
◎ 1点目 
 1点目のご質問での構造は、
 発注者     A市(公共事業)
 元請      特定建設業者B
 1次下請    C
 2次下請    D
 Dの常用労働者 E
 という重層下請構造で、2次下請Dの倒産または事実上の倒産によるE(2次下請Dの常用労働者)への賃金不払いというものです。
 結論を言うと、建設業法に基づく元請責任をはたさせるのが大事であり、今回のように元請の特定建設業者が存在する場合は、第一には、建設業法41条2項に基づく元請責任での(不払い賃金の)立替払を求めるべきだと思います。
 同時に、注意する必要があるのは、賃確法は一定期間申請しないと適用にならなくなりますので、この点の見極めが大事です。
 実例を言うと、清水建設が元請のケースで、「常用労働者」というより「手間請労働者」だったのですが、清水建設に立替払いを求めたときは、清水建設自らが努力して労基署に申請し、賃確法の適用を実現しました。
◎ 2点目
 2点目でのご質問の構造は、
 発注者     A市(公共事業)
 元請      特定建設業者B
 1次下請    C
 2次下請    D
 この下に    E
 というもので、2次下請Dが事業継続中の場合またはEへの不払いが工事代金の場合です。
 そして、この構造のもとで、元請の特定建設業者Bは、建設業法による立替払の要請に対して責任をはたそうとしません。
 このような場合は、原則として、発注者への申し入れを先に行ないます。
 公共工事の発注者には、入契法成立時の参議院付帯決議「(公共工事の発注者は)建設労働者の賃金・労働条件の適切な確保に努めること」という発注者責任があり、また、元請を指導・誘導して、元請に建設業法41条2項、3項に基づく立替払いを立派に行なわせることで、「建設労働者の賃金・労働条件の適切な確保」という発注者責任をはたすことができるからです。
 (公共工事)発注者段階で解決しない場合にはじめて、許可行政庁に指導・誘導を求めることになります。
 実例は、多数あります。
 
 
◎ 不払い解決要請 公共工事発注者→許可行政庁 F市、F県のケース
 「不払い解決要請 公共工事発注者→許可行政庁」の実例をとの要望がありましたので、以下に発注者F市、特定建設業者の許可行政庁F県のケースを紹介しておきます。
 F市発注の公共工事の現場で発生した倒産・不払いです。
 元請はA社、1次下請のB社が倒産、それに伴い2次下請のC社が工事代金不払い被害を受けました。元請のA社はF県知事許可の特定建設業者です。
 元請のA社に対して2次C社は、建設業法41条3項に基づく立替払での救済を求めました。A社は応じません。
 C社は、特定建設業者であるA社の許可行政庁であるF県に、元請責任での立替払いを行うよう元請A社を指導するよう申し入れました。
 県は、元請A社を呼んで指導。
 A社は、建設業法41条3項に基づく立替払をしないという姿勢を変えません。
 C社が県に話すと、「一度呼んで指導したのだから、あとは民民の話し合いで解決を」と言っているとのことです。
(解決のためには)
一つは、発注者のF市への申し入れです。
「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律案に対する附帯決議」(略称 入契法附帯決議)の第6項は、公共工事の発注者の責任として「建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるよう努めること」と定めています。以下に載せておきます。
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律案に対する附帯決議
参議院国土・環境委員会
平成12年11月16日
 政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、適正化指針の策定等その運用に遺憾なきを期すべきである。
 1 国民の負担による公共工事の受注者の選定に関し、国民の疑惑を招かぬよう努め、談合、贈収賄等の不正行為の根絶に向けて、厳重な監督処分、指名停止の運用基準の見直し等を行うこと。
 2 一般競争入札における審査体制の整備、指名競争入札における指名基準の公表等公共工事の入札及び契約制度について更なる改善を推進すること。
 3 入札予定価格の公表の在り方については、今後の検討課題とし、少なくとも事後公表を行うよう努め、地方公共団体においては事前公表を行える旨を明確にすること。
 4 発注者は、入札参加者に対し、対象工事に係る入札金額と併せてその明細を提出させるよう努めること。
 5 公共工事の入札及び契約に関して監視や苦情処理等を行う第三者機関については、実効を伴った効果的な活動がなされるよう努めること。
 6 不良業者を排除する一方で、技術と経営に優れた企業の育成に努め、地域の雇用と経済を支える優良な中小・中堅建設業者の受注機会が確保されるよう配慮するとともに、建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるよう努めること。
 7 施工体制台帳の活用等により、元請企業等と下請企業の契約関係の適正化・透明化に努めること。
 8 いわゆるダンピング受注は、手抜き工事、下請へのしわ寄せにつながりやすく、また、建設業の健全な発達を阻害するので的確に排除し、公共工事の品質の確保を図ること。
 9 公共工事の入札及び契約全般について事務の簡素化・効率化及び競争性・透明性の一層の確保等を図る観点から、IT化を促進するよう努めること。
 10 公共工事の入札及び契約制度の改善を進めるに当たっては、公共工事の大宗を占める地方公共団体における改善の徹底を図るとともに、規模の小さい市町村等に関しては、その実情を勘案して、執行体制の確保を図るための必要な助言を行うなど、適切な支援措置を講ずること。
 右決議する。
 工事代金の大半は労務費であり、工事代金の不払いが発生しているということは、「建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われていない」状況の発生であり、発注者の責務としてこの解決に努める必要があります。
 解決の道筋は示されています。建設業法41条3項に基づき、元請のA社が立替払いを行い、C社を救済することです。この方向を推進するために、発注者の責務として元請に働きかけ、元請が建設業法を守るように適切な指導、助言を行うことです。
もう一つは、事実かどうかわかりませんが、事実とすれば県の対応は改善が求められます。
たとえば、埼玉県、神奈川県、東京都は、解決するまで元請の特定建設業者を呼んで、指導します。神奈川県は、文書での指導、勧告を実施しています。
国土交通省関東地方整備局は、解決するまで元請の特定建設業者を呼んで、指導します。
国土交通省関東地方整備局は、次のように言明しています。
@ 元請を呼び、建設業法の趣旨を理解させる。「建設業法の趣旨」とは、「不払いを受けた下請業者等の窮状の救済」ということである。
A 「二重払い」は立替払いをしない理由にはならない。
B 全建総連の各県連・組合を不払い交渉の窓口として認める。 
C 下請の保護はもちろんのことである。特定建設業者の許可だが、下請保護ということで特定建設業者の許可を与えている。そのように特定建設業者の元請を指導していきたい。
D (元請責任での立替払いについて)解決に当たらない特定建設業者の元請に対しては強く指導していく。
E 工事代金は、建設業法41条3項に基づく立替払いの対象に入っている。付言すると、建設資材納入代金も立替払いの対象に入っている。
 国土交通省本省は、「元請の特定建設業者が立替払いをしないと開き直れば、それですむかというと、決してそんなことはない」と言明しています。
 参議院国土交通委員会では、扇国土交通大臣(当時)が、「建設業法を守らないような特定建設業者に対しては、特定をはずすことを含めて必ず方法はある」と答弁しています。
 特定建設業者の許可行政庁として、元請による下請救済が実現されるまで元請への指導を続けることは、当然のことです。
 全国の都道府県が、当然このレベルで、元請の特定建設業者への指導にあたるべきです。 
(解決しました)
その後、F県は元請への指導を改善し、より強い指導を実施。それに応えて元請は、一定の立替払いを行ない、円満解決に到りました。
 
 
◎ ――― 「高齢者用施設」建設工事での倒産・不払い事例 ―――
1 今回の構造
 今回紹介するのは、「高齢者用施設」建設工事での倒産・不払い事例です。
 構造を見るとやはり、重層下請構造下での中間業者の倒産により下位業者が受けた工事代金不払い被害という構造です。
 発注者
 元請
 1次
 2次
 3次
 という重層下請構造です。
 2次が3次に工事代金を支払うことなく、行方不明となり、3次が約500万円という不払い被害を受けたものです。
 元請は、○○県知事許可の特定建設業者です。
 「高齢者用施設」の新築工事です。
2 問題点
 ○ 元請の指示ミス、すみだしのミスなどの可能性がある。 
 ○ 1次と2次の間の契約が、書面の契約ではなく、口頭での契約の可能性がある。
 ○ 1次と2次の間で、追加工事について書面による契約がおこなわれていない可能性がある。 
 ○ 中間業者(2次)が下位業者(3次)に工事代金を支払うことなく、行方不明となっている。このことは、建設業法24条6項が元請に責任を負わせている、元請による下請指導が適切におこなわれていなかったことを示している。法律やルールを守るよう下請を指導すべき元請の責務が適切にはたされていないことを、示している。そのような中間業者を選んだという元請の選定責任もある。
 ○ 下位業者(3次)に工事代金を支払うことなく行方不明となるような2次を選んだという点で、1次は選定責任を負っている。自分が請け負った工事を2次に請け負わせた1次は、2次が故意または過失で他人に加えた損害について損害賠償の責任を負っている。
 ○ 言うまでもなく、元請の特定建設業者は、建設業法41条3項にもとづく立替払での下請救済の責務を負っている。
3 経過と方向
 不払い被害を受けた3次は、1次に相談。1次は「うちは払えない」、「元請に相談してくれ」という回答。 
 3次は元請に相談。元請は「救済できない」と回答。理由は、「3次とは直接契約関係にない」、「1次に全額支払い済みである」、「2次への債務はない」というものです。
 3次は、特定建設業者の許可行政庁の○○県に要請。
建設業法41条3項にもとづく立替払での3次救済をおこなうよう元請の特定建設業者を指導、誘導するよう、県の担当部局に要請しました。
 (国土交通省関東地方整備局は、「二重払いを立替払拒否の理由にすることはできない」、「賃金はもとより工事代金も建設資材納入代金も立替払の対象」、「建設業法の主旨は不払いを受けた下請業者の窮状の救済である」、「下請保護ということで特定建設業者の許可は与えられている」と明言しています)
 元請が救済拒否の理由としてあげている「1次に全額支払い済みである」等を国土交通省関東地方整備局の言明と照らし合わせると、元請の言い分を正当化できる根拠が全くないことが、よくわかります。
 建設業法を守って、不払い被害を受けた下請の窮状を救済するよう、元請の特定建設業者を適切に指導、誘導することが、許可行政庁の○○県に求められているし、期待されています。
 
 
◎ 大手ゼネコンが元請  元請〜5次の深い重層下請構造下での倒産・不払い
(匿名にしてあります)
 今回の事例の構造は、
 元請 大手ゼネコンの○○社
 1次下請
 2次下請
 3次下請 倒産
 4次下請 不払い被害を受ける
 5次下請 4次から支払ってもらったので、不払い被害は受けていない。
 現場は、ビルの解体工事です。
4次が請け負ったのは、アスベスト除去工事です。
 3次が倒産したために、4次は、3次からアスベスト除去作業の代金を1円も貰っていませんが、5次には支払いました。
 倒産するような下請を選定したという元請の、下請選定の責任があります。
 下請が倒産して不払いという損害を他の業者、労働者に加えたわけですから、元請として下請指導を的確におこなっていなかった、ということになります。
 また、3次、4次の間の契約が、書面による契約ではなく、口頭による契約であり、この点でも、元請として下請指導を的確におこなっていなかった、ということになります。
 3次と4次との間の口頭による契約では、4次が請けた仕事は「アスベスト除去の労務作業」です。仮に「4次ではなく3次の指揮命令下にアスベスト除去の労務作業に従事していた」などの場合には、偽装請負・違法派遣のおそれが出てきます。この点も、元請責任が問われるところです。
 4次は、建設業法にもとづく立替払いを求めて元請と交渉。
 元請は「見舞金」を支払うと回答。 
 できるだけ「見舞金」という名目は避けたほうがいいと思います。ただ、立替払いを受ける金額、比率が問題ですから、不払い被害者が納得するような金額、比率での立替払であれば、名目にどこまでも固執するのは、どうか? と考えます。
かつての「昭和鋼業民事再生」のケースでは、今回のケースの元請である○○社との交渉の過程で、立替払の比率をゼロ→25%→40%→50%→57%と引き上げていますから、がんばって、金額、比率を高めることだと思います。工事代金などの立替払の基準は、国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)に明記されているように、「損害額を限度として、不払い被害を受けた業者の当面の窮状の救済に足りる金額」です。
なお、賃金の立替払の基準は、上記の『建設業法解説』によれば、「世間相場での全額」です。
 かつて、(当時)立替払での下請救済を拒否し続ける、この○○社に対して、全建総連関東地協として1000人規模の本社前宣伝、抗議行動を準備し、建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払を行わせた経験を、建設労働運動は持っています。
――参考資料――
(以下は、厚生労働省パンフ、東京労働局パンフからの抜粋です。「請負とは」の基準を示しています。示された基準を全て満たす場合のみ請負です――海野)
 1 自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用する者であること。
  ・ 業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
  ・ 労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
  ・ 企業での秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うこと。
 2 請負契約で請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。
 ・ 業務の処理に要する資金につき、全て自らの責任の下に調達し、かつ、支弁(金銭を支払うこと)すること。
 ・ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としての全ての責任を負うこと。
 ・ 単に肉体的な労働力を提供するものではないこと。
 ・ 業務の処理のための機械、設備、材料、資材を自らの責任と負担で準備している、又は処理すべき業務を自らの企画又は専門的技術、経験により処理していること。
 ・ 業務処理に必要な機械、資材等を相手方から借り入れ又は購入した場合には、別個の双務契約(有償)が締結されていること。
 
 
◎ ―――  解体工事と建設廃棄物処理での元請責任  ――― 
解体工事が建設業法上の「建設工事」に該当するのかどうか解体工事と建設業法との関係を調べてみましたが、当然ですが、建設業法上の「建設工事」に該当することが、わかりました。
建設業法第2条には「この法律において『建設工事』とは、土木建築に関する工事で別表第1の上欄に掲げるものをいう」と規定され、『建設業法解説』(大成出版社)では、その「別表第1の上欄に掲げるもの」についての解説で「各建設工事の内容及びその具体的な例示」を示し、次のように解体工事が出てきます。
「土木一式工事」 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。以下同じ。)
 アンダーラインのところが大事なところです。「以下同じ」というのは、「別表第1」のトップに土木一式工事が掲げられ、それに続いて以下「建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、浚渫工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事」が掲げられていますから、「建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、浚渫工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事」も「補修、改造又は解体する工事を含む」ことを意味しています。
 したがって、解体工事は建設業法上の建設工事であり、解体工事についても建設業法が定める元請責任は及び、建設業法41条2項、3項が定める元請責任での立替払の対象になる、ということになります。
 解体工事は建設工事ではないから立替払の対象ではない、という理屈は成立しません。
 ここで、もう少し複雑な問題に踏み込みます。
 解体工事から建設廃棄物が発生します。
 建設廃棄物の流れは、解体→収集・運搬→中間処理→最終処分となります。
 「解体」は解体工事であり、上記のように建設業法上の建設工事になるわけですが、「収集・運搬→中間処理→最終処分」は建設廃棄物の処理であり、それぞれ収集・運搬業者、中間処理業者、最終処分業者が存在し、「建設廃棄物の処理」は建設業法上の建設工事ではない、と行政は解釈している、と考えられます。 
 したがって、建設廃棄物の処理については、元請責任は及ばないのかというと、そんなことはありません。
 2001年の環境省通達が、「建設廃棄物処理は元請の責任」、「建設廃棄物処理費用の負担は発注者の責務」を明示しています。
 
 
◎ ──── 元請の一般建設業者の責任はどこまで及ぶのか? ────
 パワービルダーと言われる一建設は一般建設業者であり、4年位前だったと記憶していますが、一建設が元請の、重層下請構造の現場で、1次下請が倒産し2次下請が工事代金の不払い被害をうけた際、一建設は、「自分は特定建設業者ではなく一般建設業者」ということを理由として、建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払を拒否しました。
 直近の事例では、群馬県知事許可の一般建設業者が、同様の理由で、建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払を拒否しています。
 そこで、国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)をあらためて見て、一般建設業者の責任について調べてみました。
 建設業法24条6項は、下請が法律やルールを守るよう下請を適確に指導すべき元請の指導義務を定めています。
 『建設業法解説』の、建設業法24条6項についての逐条解説の中に、「下請負人に対する指導義務等を負うのは、特定建設業者のうち、『発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者』だけである。したがって、特定建設業者が下請負人である場合は、本条(建設業法24条6項)の義務を負うところではないが、これは、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者が、当該建設工事の施工に関して統一的かつ総合的な指導監督を行うものであり、その下に各下請負人が共同して工事を施工するという実態を考えて、最終的責任者たる最初の元請負人である特定建設業者に法律上の義務を限定したものである。このことは、しかし、他の元請負人が下請負人に対する指導を怠ってもいいという趣旨でないことはもちろんであり、他の元請負人においても積極的に同様の指導に努めるべきであることはいうまでもない。また、同様に一般建設業者においても、当該工事の下請負人に対し本条(建設業法24条6項)の趣旨に準じ指導を行うことが望ましいことも当然のことである」と記述されています。
 重層下請構造下で、下請が倒産し、下位下請に工事代金等の不払い被害を与えたということは、元請の責任が問われます。一つには、倒産し他人に損害を加えるような下請を選定したという元請の選定責任であり、もう一つは、下請が倒産し他人に損害を加えたということは、法律やルールを守るよう下請を適切、適確に指導すべき元請の責任を果たしていなかったということになり、元請の責任が問われるということです。
 自分は一般建設業者だから、自分が元請の現場でおこった倒産・不払いについて、「責任はない、知らない」ではすまないのであり、責任があり、責任を負っているのであり、責任にもとづいて不払い解決に努める必要があります。
 その責任を認めない元請の一般建設業者がいる場合には、許可行政庁の国土交通大臣や都道府県知事は、その責任を果たすよう元請の一般建設業者に指導、助言及び勧告を行うことができます。その根拠が、建設業法41条1項です。
○ 「建設業法41条1項」 国土交通大臣又は都道府県知事は、建設業を営む者又は(建設業法)第27条の37の届出のあった建設業者団体に対して、建設工事の適正な施工を確保し、又は建設業の健全な発達を図るために必要な指導、助言及び勧告を行うことができる。
○ 「建設業法27条の37」  建設業に関する調査、研究、指導等建設工事の適正な施工を確保するとともに、建設業の健全な発達を図ることを目的とする事業を行う社団又は財団で国土交通省令で定めるものは、国土交通省令の定めるところにより、国土交通大臣又は都道府県知事に対して、国土交通省令で定める事項を届け出なければならない。
 
 
◎ 不払い被害を受けた下請が特定建設業者の場合 立替払を受けられない?
 一部で、「下請業者が特定建設業者の場合、建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払の対象にならない、立替払いを受けられない」と言われています。
 とりあえず、国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)をあらためて見て、調べてみました。
 特定建設業者の下請代金の支払期日等を定めた建設業法24条の5についての、『建設業法解説』の逐条解説部分に、次のような箇所がありました。
 ○ 「建設業法24条の5」 特定建設業者が注文者となった下請契約(下請契約における請負人が特定建設業者又は資本金額が政令で定める金額以上の法人であるものを除く。以下この条において同じ。)における下請代金の支払期日は、前条第2項の申出の日(同項ただし書の場合にあっては、その一定の日。以下この条において同じ。)から起算して50日を経過する日以前において、かつ、できる限り短い期間内において定められなければならない。
2 特定建設業者が注文者となった下請契約において、下請代金の支払期日が定められなかったときは前条第2項の申出の日が、前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは同条第2項の申出の日から起算して50日を経過する日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす。
3 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となった下請契約に係る下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならない。
4 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となった下請契約に係る下請代金を第1項の規定により定められた支払期日又は第2項の支払期日までに支払わなければならない。当該特定建設業者がその支払をしなかったときは、当該特定建設業者は、下請負人に対して、前条第2項の申出の日から起算して50日を経過した日から当該下請代金の支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に国土交通省令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。
○ 政令
(建設業法第24条の5第1項の金額)
「第7条の2」 建設業法第24条の5第1項の政令で定める金額は、4千万円とする。
 本条の規制の対象となる「下請契約」は、「特定建設業者が注文者となった下請契約」であるが、本条の立法趣旨が、経済的弱者である下請負人に対する下請代金の支払の著しい遅延を防止し公正な取引を確保しようとするものであることから、特定建設業者と同等以上の経済的能力を有すると認められる者が下請負人になった場合にまで、その保護を図る必要はないと考えられるので、下請負人が「特定建設業者又は資本金額が政令で定める金額以上の法人」である場合には、本条は適用されないこととされている。この本条の適用を除外される「特定建設業者」は、「当該建設工事に係る特定建設業者」であり、また「資本金額が政令で定める金額以上の法人」とは、それと同等以上の資力を有すると認められる「資本金額4千万円以上の法人」である。
(以上を見る限り、建設業法そのもの(建設業法24条の5)を見ても、建設業法24条の5についての『建設業法解説』の解説を見ても、特定建設業者である下請に適用されないのは本条(建設業法24条の5)であり、建設業法41条3項ではありません。『建設業法解説』全体を見ても、特定建設業者である下請に建設業法41条3項が適用されないとの記述は見当たりません。まさに特定建設業者である下請に適用されないとの記述があるのは、本条(建設業法24条の5)だけであり、『建設業法解説』全体を見ても、本条(建設業法24条の5)以外への不適用の広がりは見られません。特定建設業者と言っても、大手ゼネコン、大手住宅企業もいれば中小規模の財務基盤が脆弱なゼネコン、住宅企業もいます。少なくとも、一律に、「特定建設業者」ということだけで、建設業法41条3項の適用から除外されると解釈するのは、差し控えるべきであり、下請保護に反すると言わざるを得ません──海野)
 
 
建設業法41条3項が言う「その他の適切な措置」に「仕事の提供」は入るのか?
海野和夫
 元請責任での立替払での労働者「救済」を定めている建設業法41条2項、元請責任での立替払での下請業者「救済」を定めている建設業法41条3項は、下記のように、労働者「救済」、下請業者「救済」の措置について「立替払することその他の適切な措置」と表現しています。
「建設業法41条2項」 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工のために使用している労働者に対する賃金の支払を遅滞した場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、支払を遅滞した賃金のうち当該建設工事における労働の対価として適正と認められる賃金相当額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。(アンダーラインは海野)
「建設業法41条3項」 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、当該他人が受けた損害につき、適正と認められる金額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。(アンダーラインは海野)
 
 あるゼネコンは、「仕事の提供」が「その他の適切な措置」になるとの、独特の見解を示しています。
 本当にそうでしょうか?
 国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)は、別の見解を示しています。
 建設業法41条2項に関する解説で『建設業法解説』は、「本項(建設業法41条2項)による特定建設業者に対する勧告は、立替払のほか、『その他の適切な措置』がある。このうち『その他の適切な措置』には、立替払と同等の効果を有する当該労働者に対する貸付(無利子、無担保で、かつ、労働者が賃金の支払を受けるまでの返済を猶予するもの)又は賃金の支払に充当することを条件とする当該賃金不払を行った下請負人に対する融資などが考えられる」
 これは、建設業法41条3項の「その他の適切な措置」にも準用されるというかあてはまるというか、そういう性質のものだと思います。
 現に国土交通省関東地方整備局は、「(下請が不払い被害を受けたとき)口が裂けても、仕事の提供で下請救済をというようなことを、元請の特定建設業者に言うわけにはいかない」と私たちに回答しています。
 
 
◎ ── 深い重層下請構造下での倒産・不払いの「構造」について ──
全建総連の佐藤正明書記長(当時)が委員として入っていた国土交通省建設産業政策研究会「建設産業政策2007」も指摘していますし、またサブコン団体も言明しているように、建設現場の重層下請構造はさらに深まってきています。深まりつつある重層下請構造の中で、建設業法違反、ルール違反、トラブル、混乱が多発しています。倒産、不払いもそうです。重層化の深まりを反映して、深い重層下請構造下での倒産、不払いが目立ちます。
 最近の事例を以下に、紹介しておきます。
 百貨店内の店の設計、内装をおこなっていた○○社が破産。
 建設現場の構造は、
 元請   財務体力が優良なゼネコン
 1次下請 破産
 2次下請 20社位 不払い被害を受けました
 3次下請
 4次下請
 5次下請
 以上のような深い重層下請構造です。
 元請と(破産した)1次下請との間に、工事代金、追加工事をめぐるトラブルが発生していた、と言われています。真偽を含めて、どちらがどうなのか、正確なことはわかりません。
 元請は、「1次に過大な金を支払っている」、「応援等を入れ、過払い状態」と主張。
 施工体系図に見当たらない下請が存在しています。言い換えると、下請の一部が施工体系図に載っていません。
 1次との協議、合意がない工事代金の「支払い差し止め」がおこなわれています。
 破産、不払いをおこすような1次を選任したという元請の責任。
 破産、不払いをおこしたことを含めて1次を適切に指導することができなかった元請の責任。言い換えると、建設業法24条6項がさだめる下請指導の責任をはたせなかった元請の責任。
 「コノヤロー」、「たかりとしか思えない」と発言するなど、元請としての品性、誠実さは、どうなのか? 建設業法は、元請の誠実性をさだめています。
 
 
◎ ── 深まる重層下請構造下での倒産、不払いの「構造」(2) ──
 以下のような重層下請構造になっています。
 元請 ゼネコン 
 1次 破産
 2次 
 3次  
 4次 
 5次 
 以上のような元請〜5次の、深い重層下請構造の中に、無許可業者が存在し、施工体系図に載っていない下請業者が存在し、破産、不払いが発生し、元請による重層下請構造の把握(建設業法24条の7)、それにもとづく下請指導(建設業法24条の6)、また元請責任での不払い解決(建設業法41条2項、3項)が課題であることが、浮上してきています。
(交渉の経過)
 工事代金の不払い被害を受けた5次業者は、4次、3次、2次、1次と働きかけましたが、4次、3次、1次の業者の回答は要するに「上から貰っていないから、払えない」というものです。また、2次の業者に連絡したのだが「つかまらない」とのことです。
 そして、1次が破産。
 5次業者は、建設業法41条3項にもとづく(工事代金不払いの)元請責任での解決を求めて、元請と交渉中。
(各当事者の文書での主張)
○ 2次 
1次は2次に対して、本工事の一部と追加工事を未払いの状態である。
○ 1次 
2次は、元請に工事支援を要請。元請との間で1次に不利益となる合意をした。このため1次は、元請から工事代金の支払を受けていない。
 2次が工事をした部分については、1次は2次に支払い済み。
 最終的に元請から支払いを受けられない場合には、2次に対し損害賠償請求をおこなう。
○ 元請 
 元請は1次と契約。
 1次は、一部工事ができないとのことで、部分解除。この部分について元請は他の業者に発注。元請がその業者に支払うことになっている。
 元請は1次に追加工事を発注。 
 1次の応援要請にもとづき元請が紹介した業者への労務費を、1次は支払わなかった。1次に通知の上、元請は立替払いした。
 上記立替払金と下請工事代金残金とを対当額で相殺した。
 その結果、元請は1次に対して過払い状況にある。
 
 
◎ ──────  「ケーシング」での倒産・不払い  ──────
 
<http://kw.allabout.co.jp/glossary/g_house/w002463.htm>
 上記サイトの「住宅用語集」によると、
ケーシングとは、「窓のまわりにつける、飾り用の枠」のことで、飾りにとどまらず「クロスのはがれや結露の浸透を防ぐ効果がある」、とのことです。
 このケーシングを、工場でつくり、建設現場に納入する、まさに建設資材納入代金で、倒産・不払いがありました。
 元請 ゼネコン
 1次業者 破産
 2次業者 「ケーシングの納入代金」の不払い被害を受ける
 もう少し複雑なのですが、簡単に言うと、上記のような構造です。
 元請と1次業者との契約は、建設工事の請負契約です。
 この1次業者が破産して、2次業者に不払い被害を与えたわけですから、建設業法41条3項が言う「下請業者が他人に与えた損害」に該当し、2次が受けた「ケーシングの納入代金」(建設資材納入代金)の不払い被害について、元請のゼネコンは、建設業法41条3項にもとづき、立替払をおこない、2次業者を「救済」しなければなりません。
 国土交通省がつくった解説書『建設業法解説』(大成出版社)も国土交通省関東地方整備局も、同様の見解、解釈を示しています。
 大手ゼネコンも、上記と同様の方向で、協力、解決しています。
 
 
建設業法41条2、3項が言う「その他の適切な措置」とは?
海野和夫
「建設業法41条2項」 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工のために使用している労働者に対する賃金の支払を遅滞した場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、支払を遅滞した賃金のうち当該建設工事における労働の対価として適正と認められる賃金相当額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。
「建設業法41条3項」 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、当該他人か受けた損害につき、適正と認められる金額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。
上記の、建設業法41条2項、3項が言う「その他の適切な措置」とは何か?
繰り返し、蒸し返され、問題化する箇所です。
原点に戻り、国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)を読むと、以下のように書かれています。
 
「本項による特定建設業者に対する勧告は、立替払のほか、『その他の適切な措置』がある。このうち『その他の適切な措置』には、立替払と同等の効果を有する当該労働者に対する貸付(無利子、無担保で、かつ、労働者が賃金の支払を受けるまでの返済を猶予するもの)又は賃金の支払に充当することを条件とする当該賃金不払を行った下請負人に対する融資などが考えられる」
 「その他の適切な措置」は「仕事の提供」だと言う一部元請の主張は、間違いであることが、わかります。
 国土交通省関東地方整備局も、「(その他の適切な措置として)仕事の提供をとは、口が裂けても(元請に)言えない」と言明しています。
 まして建設労組が、「その他の適切な措置」として「仕事の提供」を元請に求めるなどというのは邪道であり、直ちにやめるべきです。
 
 
◎ 「現場作業ではない」、「破産会社と直接の関係がない」は立替払の対象外?
 1次下請が破産。
元請と破産会社との契約は、建設工事の請負契約です。
1次の破産により、2次以下の業者が不払い被害を受けました。そこで、元請に対して、建設業法41条3項に基づく元請責任での立替払を求めて交渉。
元請は、「現場作業ではない」、「破産会社と直接の関係(取引)がない。(不払い被害を受けた業者は5次)」ことなどを理由に、立替払を渋っています。
「現場作業ではない」、「破産会社と直接の関係(取引)がない」ことを立替払拒否の理由にすることができるのかどうか、以下に論点整理をおこないます。
1 現場作業ではない
 国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)はこの点について明確に「下請負人がさらに工事を下請施工させる場合のその下請負人(いわゆる孫請負人)に対する下請代金の支払の遅延するような場合、下請負人の建設資材納入業者との間の取引関係に基づく代金の不払等をする場合、下請負人と工事現場周辺の商店等との取引関係に基づく代金の不払等をする場合」を元請責任での立替払の対象だと規定しています。
 従って、「現場作業ではない」ことを立替払拒否の理由にすることはできません。
2 破産会社と直接の取引関係にない
 同様に国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)がこの点について明確に、次のように規定しています。「(元請責任での立替払の対象となる不払は)元請の特定建設業者と直接に下請契約を締結したいわゆる第1次下請負人(が起こした不払)に限らない。当該特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工する者である限り、当該特定建設業者と直接的な契約関係に立たないいわゆる孫請負人等第2次下請負人以下の者(の起こした不払)も含まれる」
 「破産会社と直接の取引関係にない」、「5次」、「最終下請」などを立替払拒否の理由にできないことも、明確です。
3 建設工事ではなく、その上3次の業者に対して、元請責任での立替払が実施された実例
「残土運搬」が建設業法に基づく元請責任での立替払の対象になるのかどうか、問題が発生し、最初、大手ゼネコン○○社は「残土運搬」は建設業法に基づく元請責任での立替払の対象にならないとの見解を打ち出しました。
 しかし、国土交通省関東地方整備局は逆に、「残土運搬」は建設業法に基づく元請責任での立替払の対象になるとの見解を示しました。
 そして、大手ゼネコン○○社は、国土交通省関東地方整備局の指導に従い、「残土運搬」が立替払の対象になることを認め、立替払いを実施し、円満解決に到りました。
 国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)を読むと、建設業法上の「建設工事」の例示の一つとして、「根切り工事」をあげています。
 『総合工事業者・専門工事業者間における工事見積条件の明確化について─「施工条件・範囲リスト」(標準モデル)の作成─第3版』によると、根切り工事というのは掘削工事であり、工程は、掘削→積込→残土処理(残土運搬)の流れになります。
 今回、倒産・不払いが発生した現場の元請は、前述の大手ゼネコン○○社です。1次下請が△△社。
 ディベロッパーからマンション建設工事を請け負った○○社(元請)が、根切り工事を△△社(1次下請)に請け負わせました。
 次に△△社(1次)は、根切り工事を分けて、再下請負に出しました。「残土の運搬」については、××社(2次)に行わせました。××社(2次)はさらに、この残土運搬を□□社(3次)に行なわせました。
 ××社(2次)が倒産。□□社(3次)は不払い被害を受けました。
 □□社(3次)は、建設業法41条3項に基づく元請責任での立替払いを、元請の特定建設業者の○○社(元請)に要請。
ところが、○○社(元請)は、△△社(1次)が××社(2次)に出したのは根切り工事の中の「残土運搬」の部分だったので、それを捉えて、残土運搬は建設工事ではない、従って、建設業法41条3項が定める元請責任での立替払の対象にならない、との見解を打ち出しました。言い換えると、下記の建設業法41条3項にある「特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」にあてはまらない、というわけです。ややこしい話ですが、××社(2次)は、△△社(1次)から建設工事ではない残土運搬を請けたのであり、「建設工事を施工している建設業を営む者」ではないではないか、というわけです。また、残土運搬は建設工事ではないから、「建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」にあてはまらない、というわけです。
○ 建設業法41条3項「特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、当該他人が受けた損害につき、適正と認められる金額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる」 
これに対して、以下は、国土交通省関東地方整備局の見解です。
@ 残土運搬は、建設工事ではない。
A 残土運搬は建設工事ではないが、本件は、建設業法41条3項が定める元請責任での立替払の対象になる。
(理由) 本件の場合、○○社と△△社の契約は、根切り工事という建設工事の請負契約であり、○○社は元請となる、元請の特定建設業者となる。これを言い換えると、△△社は、根切り工事という建設工事を請け負った下請業者となる。
 根切り工事という建設工事を請け負った下請業者である△△社(1次)が、残土運搬を××社(2次)に頼み、その××社(2次)が倒産して他人に損害を与えたのが本件の経過であり、これは、△△社(1次)が根切り工事という建設工事の施工に関し残土運搬の部分を××社(2次)に頼むことで他人に損害を加えたということであり、建設業法41条3項が言う「特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」に該当する。
 従って、本件の場合、建設工事ではない残土運搬であっても、建設業法41条3項が定める元請責任での立替払の対象になる。
 
 
◎ 建設業法に基づく立替払を実施しない不良不適格業者は市場から退場を
1 市場のコントロール
 国土交通省『建設業法解説』が指摘しているように、建設現場の重層下請構造の中で下請間の倒産・不払い・支払い遅延が発生した場合について元請責任で解決すべきことを定めている建設業法41条2項、3項は、一方では建設業許可行政庁からの元請への指導、誘導、他方での(行政の指導、誘導への)元請の協力、この両側面の結合によって成立する、そうした構造になっています。
 この協力を、この構造を、拒否するようなゼネコン、住宅企業、パワービルダー、等々は、「元請の特定建設業者」に値しない不良不適格業者と言わざるを得ず、市場からの退出を余儀なくされます。
 事実、経験で言うと、建設業法に基づく立替払を拒否し続けるような企業は、結局、破産に至っています。
 繰り返しになるかもしれませんが、法令遵守に反する企業、社会的責任を無視する企業、下請や建設労組との信頼関係を破壊する企業、行政からの法律に基づく指導、誘導に協力しないような企業は、市場からの信頼をも失い、市場からの退場を余儀なくされる、ということです。下請に泣き寝入りを強要するような元請は、報いとして自社もそうなる、ということでしょうか。
2 建設業法41条1〜3項の構造 
 国土交通省『建設業法解説』は、建設業法41条1〜3項の構造を、一方では行政からの元請の特定建設業者に対する非権力的な指導、誘導として描きます。これは、言い換えると、賃金不払い、工事代金不払い等が発生した場合に、不払い被害を受けた労働者、下請業者等を、元請の特定建設業者の責任で立替払い等で救済することを方向とする非権力的な指導、誘導ということです。『建設業法解説』は他方で、建設業法41条1〜3項の構造に不可欠なものとして、元請の特定建設業者の協力をあげています。
 これらを総合すると、立替払い等で下請業者等を救済することを求める行政の非権力的な指導、誘導とそれへの元請の特定建設業者の協力が結び付くことで、建設業法41条1〜3項の目的、趣旨は達成されるという構造になります。
 そして事実、ほとんどのゼネコン、住宅企業、サブコン等は、行政との信頼関係、あるいは下請業者との信頼関係、建設労組との信頼関係を大事にし、また建設業法41条1〜3項の趣旨を守り、行政からの非権力的な指導、誘導に協力して、立替払いで下請業者救済、保護を実施しています。
 行政からの非権力的な指導、誘導への協力を拒んで、立替払い等での下請救済を行わないと開き直る不良不適格業者はごく一部にとどまっています。これらの不良不適格業者からは、下請保護を趣旨とする特定建設業者の許可を剥奪する必要があります。
 『建設業法解説』は、建設業法41条2項、3項の趣旨について、賃金不払い、工事代金不払い等が発生した場合に、その解決の責任を元請の特定建設業者に「道義的に負担せしめようとするもの」と明らかにしています。 
 特定建設業者は、道義を守って下請を救済するということです。その方向で行政からの非権力的な指導、誘導が行われ、それに元請の特定建設業者が協力するということです。
 
更新日時:
2009/04/22

FUTURE INDEX PAST

HOME コラム LINK PHOTO 掲示板 DIARY


Last updated: 2010/3/12