COLUMN

何でも相談コラム
個人の尊厳、生命の絶対的尊重、両性の本質的平等のために
――――――――「本・映画・演劇・その他」関連――――――――
――――――――「本・映画・演劇・その他」関連――――――――
海野和夫
 
◎  『活憲』を読みました
 山吹書店発行で編集者が口石利昭さんの『活憲』(著者 法政大学教授、大原社会問題研究所副所長の五十嵐仁さん)を読みました、まさに一気に読みました。憲法を日々の暮らしに活かすことを、著者は「活憲」と呼んでいます。
 憲法を守るだけでなく、憲法を活かして現実を変えていく、憲法が定める平和、民主主義、人権、社会保障、両性の本質的平等の方向に現実を変えていくことが必要だと、著者は訴えます。特に、憲法9条が定める諸国民の友好、戦争の違法化、戦力保持の禁止の方向に現実を変えていく不断の努力を著者は決意し、私たちに熱く呼びかけています。
 「暴力や武力によって政治的目標を達成するという考え方は、もはや時代遅れの『旧思考』です。道徳と道理の力によって説得し、目標を達成するという『新思考』こそ、これからの日本の武器となる」との著者の「新思考」に私は大賛成です。
本書に出てくる関係者の生の声、証言は、特に私の胸を打ちました。平和、民主主義、労働運動の大事さをあらためて痛感しました。
 
 
◎ 「それでもボクはやってない」 冤(えん)罪事件を考えました
「冤罪(えんざい)」(三省堂「大辞林 第二版」から) 罪がないのに、疑われたり罰を受けたりすること。無実の罪。ぬれぎぬ。「―をこうむる」
 
 さっき、周防正行監督の「それでもボクはやってない」を見てきました。超満員の電車内での痴漢の冤罪事件を描いたものです。素材になっている「痴漢冤罪事件」は、実際にあった事件で、被告人は無罪だとして国民救援会が支援している事件のようです。
 この映画によると、日本の裁判全体で有罪判決が出るのは99.9%であり、無罪判決が出るのはわずか0.1%に過ぎません。無罪判決が出るのは1000件に1件ということになります。
 ただ、被告人が無罪、無実を主張している裁判に限ってみると、有罪判決が97%、無罪判決が3%だとのことです。100件に3件が無罪判決ということになります。
 この映画で「痴漢冤罪事件」の被告人を弁護する弁護士を役所広司さんが演じていますが、役所広司さん演じる弁護士は、日本の裁判の問題点として(特に痴漢のような事件の場合)、「被告人が犯行をおこなったことが立証されてはじめて被告人は有罪になるというのが裁判の本来の姿、あるべき姿なのだが、実際の裁判では被告人のほうが被告人の無実を立証しない限り、無罪にはならず有罪の判決が出されてしまう」、「裁判とは、国家権力に立ち向かうことだ」と述べています。
 よく言われるように、「疑わしきは罰せず」、「疑わしきは被告人の利益に」が裁判の原則、基本、前提だと私は思ってきましたから、「被告人のほうが被告人の無実を立証しない限り、無罪にはならず有罪の判決が出されてしまう」、「疑わしいということだけで、有罪にされてしまう」のが事実だとすれば、戦前の裁判、さらには江戸時代の裁判への逆行といわざるを得ません。
 この映画の被告人は「物証も自白もないのに、被害者の供述だけで有罪」にされてしまいます。これは、おそろしい話です。
 反面、この映画を見て、上記とは逆の印象も持ちましたので、以下に書きます。列挙してみます。
@ 自己の信念と良心に従って正しい判決を出している裁判長、裁判官が余り存在しないかのように映画は描いていますが、私はそうは思いません。リモテックス施工員を労働者として認めて保護するような、リモテックス破産事件での園尾隆司裁判長のように、自己の信念と良心に従って正しい判決を出している裁判長、裁判官は多数存在すると、私は信じます。三権分立制によって司法の独立性は保たれている、生きていると、私は思います。公務員攻撃と同種の裁判官攻撃によって、「司法改革」の名の下に司法の独立性が損なわれる方向へのこの映画の悪用を危惧するものです。 
A この映画は、被告人の証言をもとに構成され、作られており、その意味で一方的であり、公正さ、公平性、客観性に疑問を感じます。
B 被告人は法廷で裁判長に「暴言」を浴びせており、裁判長の心証形成に悪い影響を及ぼした可能性があります。
C 被告人の有罪、無罪については、この映画だけでは判断できないと感じました。
D 被告人の弁護士が被告人の無実を立証するものとして出してきた「証人の証言」、「電車のドアを背にしていたのだから、痴漢行為をしていた右手を(被害者から注意されて)後ろに引くことはできない」、「被告人の横にいた男性が横から手を伸ばして痴漢行為に及んだ」について、裁判長が無実の根拠にはならないとして述べた「論理」を突破しない限り無実の立証は難しい、と感じました。
 裁判長が言っていたのは、
「証人の証言」といっても、この「証人」は被告人が痴漢行為をしていないということを見ていないし、そう証言もしていないこと、
「電車のドアを背にしていたのだから、(被害者から注意されて)痴漢行為をしていた右手を後ろに引くことはできない」といっても、右手をたとえば上に上げることはできるではないかということ、
「被告人の横にいた男性が横から手を伸ばして痴漢行為に及んだ」とすれば、被告人はそれを感じるはずであるのに被告人は「その感触はなかった」と証言していること、などです。
 
 
◎ 『ワイルド・スワン』ユン・チアンの『マオ 誰も知らなかった毛沢東』
ユン・チアン、ジョン・ハリデイ共著の毛沢東伝
 ユン・チアン、ジョン・ハリデイ共著の『マオ 誰も知らなかった毛沢東』(講談社)を読みました。原書は英語で書かれ、原書のタイトルは MAO または MAO The Unknown Story のようです。
 上下巻で合わせると1,119ページです。著者のユン・チアンは、『ワイルド・スワン』を書いたユン・チアンです。私は、『ワイルド・スワン』は読んでいません。
 前提として考慮する必要があるのは、『マオ 誰も知らなかった毛沢東』(以下、『マオ』と略します)に書かれていることが、本当なのか、事実、真実なのかということです。やはり歴史の検証が必要だと思います。
 裁判であれば、証拠・証言を積み上げ、また原告、被告双方の言い分を平等に聞き取るなど、事実、真実に相当接近して、その上で裁判長が判決を下しますから、相当事実、真実の確度は高くなります。
『マオ』の場合、裁判長の代りに著者のユン・チアンとジョン・ハリデイがいます。この二人は、いかがわしい人物ではなく、まじめな人たちと一般に認められています。しかし、裁判長のような公平さ、公正さで、人間毛沢東に向き合えるかどうか、それは担保されていません。
『マオ』の場合、確かにかなり多数の証人が存在し、多くの証言が採取されています。インタビュー・リストの中には、日本の部分を抜き出し、そのまま紹介すると次のような人たちが含まれています。肩書き、経歴も『マオ』に記載されているとおり、以下に載せておきます。
有末精三中将   戦時陸軍諜報活動および原爆計画の責任者
衛藤瀋吉教授   中国専門家、歴史家
不破哲三     日本共産党書記長 
藤田公郎     外交官。周恩来・スカルノ秘密会談に同席、1965年
藤原彰教授    中国専門家、歴史家
秦郁彦教授    中国専門家、歴史家
金沢幸雄     著名な毛沢東主義ジャーナリスト
小泉清一     情報将校、在中国、1940年代、中国共産党担当
前田光繁     八路軍捕虜、在延安
三笠宮崇仁親王  昭和天皇の弟、志那派遣軍参謀、在中国、1940年代
宮本顕治     日本共産党名誉議長
中島嶺雄教授   中国専門家、歴史家
二階堂進     内閣官房長官
野坂参三     日本共産党議長
清水正夫     松山バレエ団団長
立木洋      日本共産党幹部、中国に長期在住
竹内実教授    毛沢東研究第一人者、毛沢東の著作を編纂
 まさに証人、証言は豊富です。しかし、裁判の場合、証言だけではなかなか有罪にはならず、物的証拠による裏付けの積み上げが必要です。『マオ』の場合、物的証拠が揃っていると言えるかどうか、という問題が残っています。慎重な見極めが求められるところです。
 裁判と『マオ』が違うもう一つの点は、「被告」の毛沢東が既に死亡しており、被告に反論、弁明の機会が与えられていないことです。これでは、裁判は成立しません。『マオ』の場合、言ってしまえば、原告からの一方的な攻撃、告発、批判、非難が存在するだけです。ここは、冷静に、慎重に見ておくべき点だと思います。やはり歴史の検証が必要でしょう。
 しかし、以上の前提を考慮しても、『マオ』は極めてショッキングな毛沢東伝です。スターリン等々だけでなく、「毛沢東あなたもなのか」との感情の湧出を抑えることは、なかなか困難です。しかし、抑えて冷静にならなくてはいけません。自分に言い聞かせます。
 従来の一般的な毛沢東評価は、大躍進政策、特に文化大革命で大失政、大失敗を犯したが、それまでは中国を帝国主義からの解放に導く基本的に正しい路線を遂行した指導者というものだったように思います。
 しかし、『マオ』はそのような評価と無縁です。
 一言で言いましょう。毛沢東の政治人生の最初から最後まで「文化大革命」型のやり方、手法を徹頭徹尾用いたのが毛沢東である、これが、『マオ』の表現していることなのです。
 独裁の出現を阻止するには、やはりシステムが必要です。法治国家、三権分立、そして近代民主主義の成果としての日本国憲法、これらを守り抜くことの中に、道は存在するのです。
 
 
◎ 筆坂秀世氏の本『日本共産党』(新潮社)を読んでの感想
 前提として私が感じているのは、日本のマスコミ、マスメディアは基本的に、支配層の宣伝機関と化している、という事実です。新潮社という大手出版社が、マスメディアの一部であることも、自明です。
 普通の人間が、私たちがというより私が、新潮社にいくら出版を頼んでも、新潮社が出版・発行してくれるわけがありません。支配層にとって価値がなければダメということです。
 支配層にとっての「利用価値」と言い換えてもいいでしょう。日本共産党は、仮にいろいろあったとしても、間違いなく被支配層の政党です。2年余前まで日本共産党の、参院議員、常任幹部会委員、書記局長代行、政策委員長だった筆坂秀世氏による日本共産党批判に、支配層のマスメディアが注目し、飛び付き、出版するのは、ごく自然な流れだと、私は感じました。筆坂秀世氏自身、ご自分が書いたこの本『日本共産党』の中で、「私は、2年余前まで共産党の……『ナンバー4』と呼ばれる最高幹部の1人だった」と記述しています。
 ご自分でご自分のことを「『ナンバー4』と呼ばれる最高幹部の1人」と表現することに対して、私は少なくない抵抗、反発を感じました。これでは、筆坂氏が『日本共産党』の中で記述している日本共産党の組織原則、体質等への批判がそのまま、筆坂氏の感覚、体質への批判としてご自分に戻ってきて、ご自分に鋭く突き刺さる結果になるのではないでしょうか。
 この本全体を通じて、私が唯一、今後の運動、展望、改革の中で考慮し、生かしていく部分なのかもしれないと感じたのが、組織のあり方の部分であり、その部分でさえ上記のように筆坂氏自身への鋭い棘(とげ)となって戻ってきて、突き刺さるのですから、他の部分は一言で言うと、「因縁をつけている」としか感じることができませんでした。
 この本で筆坂氏は「日本の政党のなかで、企業献金も、政党助成金も受け取っていないのは日本共産党だけだ。共産党はこれを大いに誇りにし、セールスポイントの一つにしている」と記述しています。この「セールスポイント」という表現の中に、氏の現在の到達点を感じるのは、私だけでしょうか。
 この本で、以下延々と「給与遅配も珍しくない地方組織」、「政党助成金を受け取れば楽になる」、「巨額秘書献金の行方」、「活動参加率3割の革命政党」、「組織を蝕む『党勢拡大運動』」、「宮本議長引退の真相」、「不破氏は現代のマルクスか?」、「不破氏はなぜ拉致問題を見誤ったのか?」、「遠ざかる一方の民主連合政府」、「ご都合主義の選挙総括」、「迷走する自衛隊政策」、「皆無の政権担当能力」等々、等々、筆坂氏はいちゃもんをつけ、難癖をつけ、粗探しを続け、その果てに「日本共産党がなんと言おうと、世界中で社会主義は地に落ちたのである」と断定し、結論を出し、大いに支配層への迎合を見せ付けています。
 批判には、二つのやり方があります。正しいやり方と間違ったやり方が、あります。
被支配層の運動は、支配層からの攻撃、弾圧、支配層の宣伝機関としてのマスメディアの存在、その他無数の様々な困難の中で進んでいきます。あるべき姿、理想から出発して、現実の運動を批判するという批判の仕方は、間違ったやり方です。
 そういうやり方ではなく、ルートヴィヒ・アンドレアス・フォイエルバッハが『キリスト教の本質』でキリスト教、神学の発生史的解明を行って得た到達「神の本質は、人間の本質の対象化されたものである」、「神学の秘密は人間学である」のように、発生史的解明に基づく現実の批判が正しい、実りのある批判なのです。言い換えると、その現実を発生させた歴史、原因、理由、現状の調査、把握、分析、解明に基づく批判が前向きの、物事を前進させる、正しい批判なのです。
 筆坂氏のように、あるべき姿、理想から出発して、現実の運動、日本共産党の運動と組織を批判するという批判の仕方は、間違ったやり方であり、粗探しに基づく打撃的批判(まさに日本共産党とその運動、組織に打撃を与えようとする、ためにする批判)であり、はっきり言えば、いちゃもんを付ける、難癖を付ける、因縁を付ける、その程度のレベルのものです。
 トロツキーが言っているように、(筆坂氏のような人たちは)「共産党の誤謬に寄生して」発生し、生き、開花するのです。人間の組織、運動である以上避けられない誤謬は当然たくさんあるわけであり、だからこそ、人間として温かい気持ちで被支配層の運動、組織を見守り、育て、発生史的解明に基づく改善、改革を粘り強く追求することこそ必要であり、被支配層の運動、組織についての執拗な粗探しとその公表は、支配層への迎合以外の何物でもありません。
 
 
◎ ───『NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘』───
 昨日(2006年7月29日)、文化庁支援 被爆60周年平和祈念作品 長編カラーアニメーション映画 『NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘』を見ました。原爆が人類と両立できない悪魔の兵器であることを、あらためて感じました。
舞台は1945年夏の長崎、アンゼラスの鐘が鳴る浦上天主堂の近くに存在する浦上第一病院です。浦上第一病院の医師、秋月辰一郎は、誠実な人柄や献身的な医療活動で、近隣の人々の尊敬を得ています。ある意味でこの医師が主人公で、この医師の目を通して、原爆の悲惨、長崎の惨状、軽いケガですんだと思っていた人々、運よく無傷で助かったと思っていた人たちが、実は原爆の出す放射線を浴びていたために苦しみながら次々と死んでいく様を描いていて、本当に私の心を苦しく、悲しくさせました。
秋月辰一郎医師は、原爆や原爆の出す放射線のために死んでいく人たちが爆心地を中心にして次第に内から外へと広がっていく様を、「死の同心円」と表現しています。
一例をあげますと、両手にひどいヤケドを負いながら死に物狂いで4人のわが子を救出した母親がいます、ところが放射線を浴びていたためにその4人の子供が一人また一人と死んでいき、ついに4人とも死んでしまいます。4人の子供の父親は、妻が命がけで助けた子供なのだから、「先生、何とか助けてあげて下さい」と秋月辰一郎医師に頼みます、秋月辰一郎医師は懸命に努力します、でも、現代科学が生み出した原爆、放射線の威力の前には無力でした。戦争を推進した立場の人も「日本人は、戦争の本当の悲惨さを知らなかった」と後悔、反省の涙を流します。
秋月辰一郎医師と浦上第一病院の人々は、一発の原爆によって医療設備・器具がほとんど破壊され、クスリもほとんど残っていない中で、懸命の医療活動を続けていきます。
 そんな中で、秋月辰一郎医師は、「生きたかったら、自分の力で動くんだ、自分で動けないような人間を誰も相手にしないぞ!」と究極の状況の中で患者を厳しい言葉で励まします。患者は、「藪医者め!」と言いながらも、担架のところまで自力で移動します。大型台風の大雨の続く中、濡れない場所に担架で患者たちを移動しなければ患者たちの命に関わることになるのに、担架に患者たちを運ぼうとすると「痛い、痛い、俺はここに残る、運ばなくてもいい!」(負傷していますから、運ばれるときすごく痛いわけです)と一部の患者が言うので、秋月辰一郎医師は「生きたかったら、自分の力で担架まで動くんだ、自分で動けないような人間を誰も相手にしないぞ!」と厳しく叱咤激励したのです。
 人間の強さを、生命の力を感じ、信じることができました。
 この映画のナレーションは、小林桂樹さんがやっています。
 監督は、有原誠治さん(虫プロダクション)です。 
 この映画とは直接関係していることではないのですが、「戦争に反対し平和を守る」の一点では、いわゆる「左翼」だけではなく、自民党元衆院議員の野中広務さんが頑張っています。「(戦争の)過去の傷跡を残しておられる方々のことを痛いほど感じ……私も残り少ない人生を可能な限りがんばりたい」と野中広務さんは述べています。新右翼と言われる「一水会」の鈴木邦男さんも頑張っているのを、最近知りました。まさに人類的課題だから、そうなるのだと思います。
『NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘』のホームページは、下記のとおりです。「アンゼラスの鐘」で検索すれば、出てきます。この映画を大いに全国に、全世界に、広めましょう!
http://nagasaki1945.info/
 
 
◎ ───「歩きたばこ」、「たばこポイ捨て」への法的規制を───
 「歩きたばこ」(喫煙しながら歩くこと)、「ポイ捨て」(たばこの吸殻のポイ捨て)があとを絶ちません。ポイ捨ては火事の原因になりますし、歩きたばこは周囲の人のやけどの原因になります。
 歩きたばこの際、大人がたばこを吸った手を振り下ろす高さは、小さな子供の顔の辺りになります。1994年、JR船橋駅構内で、3歳の幼児のまぶたにたばこの火があたり、やけどした事件がありました。目そのものにたばこの火があたっていたら、失明になりかねない事件です。
歩きたばこでやけどまたは衣服を焦がされる、このような被害を未然に防ぐためには、法律による規制が必要です。歩きたばこ禁止条例、ポイ捨て禁止条例を制定し、条例で規制する自治体が増加傾向にある、と言われています。
 以下のサイト(洲本市禁煙支援センターのサイト)に載っている資料によると、歩きたばこ禁止条例、ポイ捨て禁止条例がある自治体は多数存在しています。
http://www1.sumoto.gr.jp/shinryou/kituen/walkingsmoking.htm
東京都千代田区の「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」(千代田区生活環境条例)は、路上の「歩きたばこ」禁止条例としては全国初の条例だとのことです。靖国通り全域、神田、秋葉原、有楽町各駅周辺など歩行者の特に多い9地区を路上禁煙地区に指定。違反したら2,000円の過料。スタート1年間で過料を科せられたのは約5,500人で、1年後の吸い殻は定点観測で1割以下に減った、とのことです。
歩きたばこの禁止は、吸殻のポイ捨ての減少にもつながります。
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話は全然違いますが、「近所の猫や野良猫がうちの植え込みにフンをして困っている。規制したい。忌避剤使用の検討」というような話を聞きました。
「忌避剤」は人間、特に子供にとってもリスクがあるのではないかと思い、調べてみました。
 薬品会社の「忌避剤」説明書には、「注意点」として以下のように書かれています。
芝生や草花類に直接本剤がかかりますと枯れる等の被害があらわれる場合がありますので注意してください。
車などの塗装面に直接薬剤がかかりますと、塗装が変色又は剥げる等の変化がおきますので十分注意してください。
誤飲・誤食などのないように注意してください。誤って食べた場合は、すぐ吐き出させ医師の手当を受けてください。
使用中臭気により気分が悪くなった場合は、直ちに使用を中止し、通気のよい所で安静にしてください。気分が回復しない場合は、医師の手当を受けてください。
かぶれやすい人は、使用しないでください。
眼に入った場合は直ちに水洗いし、医師の手当を受けてください。
 
 
◎ タバコの害について 副流煙 受動喫煙 ガン ぜんそく 心筋梗塞
以下は、インタネット上を検索して得た資料に基づいてまとめた資料です。インタネット上で言われている、タバコの有害性についての意見、警告、不安、危険性を、短くまとめたものです。
 経験で言いますと、「分煙」と言っても、喫茶店の室内を二つに分けただけで煙は禁煙エリアに当然流れてきますし、新幹線の喫煙車両の隣の禁煙車両には相当な量の煙が喫煙車両から流れてきますし、駅のホームの喫煙エリアから流れてくる煙のために喫煙エリアには近付けないし、また、平然と歩きながらタバコを吸っている人はたいして減っていない感じですし、タバコの有害性から考えると、そして、タバコを吸っている人は吸っていない人に危害を加えているのだということを考えると、自主規制に任せることなく、損害賠償を含めて法律上の規制の強化が求められていると感じています。
1 健康増進法(2003年5月1日施行)第25条 「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わせることをいう)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」
2 たばこから出る副流煙(たばこの先から立ち上る煙)には、喫煙者が吸う「主流煙」よりも強い毒性がある。より多くの発がん性物質を含んでいる。言い換えると、「タバコを吸う人」よりもタバコを吸う人が出す煙を吸わされる「タバコを吸わない人」のほうが健康被害を受けることになる。
3 受動喫煙があるだけで胎児に悪影響。
4 タバコの煙は、小児ぜんそくの最大の原因。
5 タバコの煙は「クモ膜下出血、老人性痴呆、喉頭がん、肺がん、肝臓がん、乳がん、すい臓がん、食道がん、胃がん、膀胱がん、子宮がん、口腔・咽頭がん、動脈瘤、潰瘍、肺気腫、虚血性疾患」の原因。
6 障害児の原因。
7 同室の人が1日50本吸うと、非喫煙者も10年で心筋梗塞、狭心症の発生率が9倍以上に。
8 糖尿病患者の健康に悪影響。
9 脳に悪影響。
10 たばこの煙には、200種を超える有害物質(ニコチン、タール、一酸化炭素、ホルムアルデヒド、窒素酸化物、シアン化水素、ヒ素、フェノール、等々)。そのうち、発がん性物質は40種近く。
11 アメリカ環境保護局、1993年1月に報告書を発表。環境たばこ煙(室内に漂うたばこの煙)を「Aグループ発がん物質」と分類。「Aグループ発がん物質」=アスベストなど15種類。
12 肺がんの原因=たばこと有害業務(パラフィン、ヒ素、ニッケル、アスベスト、コールタール煙)従事。
13 関連する法律 
@労働安全衛生法3条(事業者等の責務)、22条、23条、71条の2。
http://www.houko.com/00/01/S47/057.HTM
A事務所衛生基準規則5条、7条、8条、9条。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S47/S47F04101000043.html
B建築物における衛生的環境の確保に関する法律。
<http://www.houko.com/00/01/S45/020.HTM>
 
 
◎ ─── 女優の吉永小百合さん 原爆詩を読む(朗読) ───
 先日、女優の吉永小百合さんが原爆詩を読むのを、直接聞く機会を得ることができました。
 この日は最初に、医師の肥田舜太郎氏の講演がおこなわれました。講演の中で肥田舜太郎氏は「乳がんの発生率が4.5倍にもなっているのは、原子力発電所の原子炉から出ている放射線が原因」と述べました。
 また肥田舜太郎氏は、原爆投下の結果について「太陽の表面の熱が直接地上を瞬間的に通り抜けていくのと同じ」と表現しました。印象に残りました。
 吉永小百合さんが朗読する原爆詩の中味にも、ショックを受けましたが、それと並んで、詩を朗読する吉永小百合さんの誠実さ、真面目さ、真剣に全力で読む姿に、衝撃を受けました。
 レーニンがロシアマルクス主義の宝庫と呼んだと言われるプレハーノフが書いた『史的一元論』には、「優れた芸術かどうかは、その芸術が描くなかみによって決まる。描かれているなかみの品性が高ければ高いほど、優れた芸術となり、その芸術に触れる人に美的衝撃を与えるのだ」と書かれています。
吉永小百合さんの原爆詩の朗読は、美的衝撃の極致です。
 吉永小百合さんが読んだ原爆詩の一つに、子供を原爆で殺された母親の嘆き、苦しみ、思い、呪い、希望、幻想、愛をうたった詩がありました。「子供を原爆で殺した相手を、夜叉になって呪い殺す」、「必要なのは、一番強いのは、武器ではなく愛なのだ」等々、様々な思いを述べながら、子供を原爆で殺された母親は、どこかで子供が元気に生きている、生きているはずだと信じているのです。
そして、生きているはずの子供に、母は、自分の思いを語りかけます。「道に迷って戻ってこないのではないか、早く戻っておいで」、等々。 
 フォイエルバッハは『キリスト教の本質』の中に書いています。「宗教の本質は、理性ではなく心情なのだ」、「神とは、人間の心の奥底の悲惨に注がれた愛の涙である」、「神の本質とは、人間にとって人間の本質が対象化されたものに他ならない」、「従って、人間が神に向かって祈っているとき、実は自分自身の内面に向かって祈っているのだ。だから祈りは、聞き入れられる」
 ニーチェは『ツアラツストラかく語りき』に書いています。「生きる歓喜の永遠を冀う(こいねがう)からこそ、永遠回帰は実現するのだ」
 母が子供の生きていることを冀うからこそ、「子供は生きているのです」。母が子供に向かって語りかけるとき、それは神に向かって語りかけているのであり、従って実は、自分自身の内面に向かって語りかけているのです。
 吉永小百合さんは、この母になりきり、魂の悲惨を見事に演じ抜きました。私の回りの人たちもみんな、泣いていました。
原爆の惨劇を正確に、無慈悲に、冷徹に、強力に伝えきった吉永小百合さんの朗読だったと思います。
いい意味で、女優のわざの凄さ、恐ろしい力を実感しました。
 
 
◎ 心情の高みへの彷徨と飛翔 あがた森魚『赤色エレジー』の歌詞について
 あがた森魚さんは、林静一さんの劇画『赤色エレジー』を読み、『赤色エレジー』という歌を作ったと言われています。その意味で、あがた森魚『赤色エレジー』の原点としての林静一『赤色エレジー』とは何だったのか、不可思議な世界でした。ただ、私にとっては、あがた森魚『赤色エレジー』が歌であったように、林静一『赤色エレジー』は絵であり、絵が与える情緒世界でした。林静一『赤色エレジー』は、私にとって、決して物語ではありませんでした。
 先日(2006年8月12日)、NHKの歌番組で、久しぶりにあがた森魚さんの「赤色エレジー」を聞き、青春の一瞬を思い出すとともに、この歌の素晴しさに、哀しさに、不可思議さに感動し、酔いました。理屈を超えて、いい歌はいい歌なのだと実感しました。
 青春は、その過程での恋愛、仕事、家族等々、様々な苦しさ、哀しさ、つらさ、たたかいは、全ての人にとって、ドラマであり、大舞台なのだと思います。
 その渦中で出会った運命的、革命的、幻覚的な、言ってしまえばおぞましさを美的世界、神的世界に変えてしまうような歌「赤色エレジー」は、私にとって本当に美的衝撃であり、「心の奥底の悲惨に注がれた愛の涙」(フォイエルバッハ『キリスト教の本質』)に他なりませんでした。
 汚いフトンに横たわりながら、何度も何度も歌ったのを、思い出します。「オフトンも一つ ほしいよね」は『赤色エレジー』だけの世界ではなかったのです。
 「赤色エレジー」で検索すると、『赤色エレジー』の曲が流れているサイトが複数、存在しています。
 サイトによって歌詞が微妙に違うのです、正しい歌詞はどれなのか、気になって真面目に調査、研究してみました。下記が正しい歌詞なのではないかと現時点では、判断しています。
 残念ですが当然、著作権に配慮して、歌詞の全部を載せることは差し控えます。サイトによって表現、言葉、意味が違う部分だけを抜き出して下記に載せます。
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『赤色エレジー』(作詞・編曲・唄:あがた森魚 作曲:八洲秀章)
昭和余年は 春も宵
桜吹雪けば 情も舞う
お母さまの 夢みたね
裸電灯 舞踏会
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 サイトによって歌詞が違うというのは、「昭和余年」を「昭和4年」と書いているサイトがあります。これは、「昭和余年」が正しい歌詞です。「余年」の意味するものが何か、調べてみたのですが、辞書によると、「余年 死期までに残された年。余生。余命」という意味であり、『赤色エレジー』の歌詞の「昭和余年」にあてはめるとしっくりしません。
 インタネットで検索すると、創業200余年というような使い方もされていますが、これをあてはめると「昭和余年」は「昭和数年」というような意味になるのでしょうか。わかりません。でも、「昭和余年」という表現は、『赤色エレジー』全体の運命的、革命的、幻想的、情緒的な世界、雰囲気、構成、構想の中で、本当に生きている表現だと思います。「昭和余年」はまさに、『赤色エレジー』を伝説の高みへと飛翔させる上での責務を果した表現なのかもしれません。
 「春も宵」を「春もよい」と表現しているサイトもあります。
辞書によると、
 もよい 名詞の下に付けて、そうなる気配が濃いさまを表す。きざし。「雨―の空」「雪―」
 となっています。
 『赤色エレジー』全体の雰囲気、構成から見れば、「昭和余年は春もよい」でも十分通用するのですが、「春も宵」が正しいようです。
 また、サイトによっては、「桜吹雪けば 情も舞う」ではなく、「桜吹雪けば 蝶も舞う」としているところもありますが、これは「蝶も舞う」ではなく「情も舞う」が正しい。
 今回、『赤色エレジー』の歌詞について真面目に調査、研究するまでは、私も「蝶も舞う」だと思っていましたし、それでも通用するのですが、あえて「情も舞う」にすることであがた森魚さんは、『赤色エレジー』の心情世界を真の高みへと上昇させることができたのだと思います。「情も舞う」からこそ、『赤色エレジー』は究極の心情世界として自己を完成させることができたのです。「蝶も舞う」では、絵画的世界としては美しかったとしても、心情の深みへと到達は阻まれたかもしれません。
 「お母さまの 夢みたね」の箇所では、「お母さまの 夢を見た」と書いているサイトが目立つし、「ああ 母さまの 夢見たね」と表現しているサイトも存在する。「お母さまの 夢みたね」が正しい。「母」、「おかあさん」、「かあさん」、「母さま」等々ではなく、「お母さま」と表現している点に、私は情緒の高み、高揚を感じる。 
 多数派という意味では「裸電灯」ではなく「裸電球」、「はだか電球」と表現しているサイトが多数存在しています。しかし、「裸電灯」が正しいようです。「電球」ではなく「電灯」なのです。少数派の勝利です。私もここは、裸電球のもとで幸子と一郎が暮らしているという構図で裸電球だと思い込んでいたので、意外でした。
 
 
◎ ――――――    中田英寿賛歌    ―――――― 
 中田英寿さんの引退表明については、前向きに受け止めています。中田英寿氏に関する本を読むと、「サッカーだけの人生で終わりたくない」と外国語や心理学の勉強、また税理士や公認会計士の勉強、さらにはデザインに関心を持ち勉強と、中田英寿氏の「新しい道」には多彩な可能性、展望、展開、シナリオが含まれています。
私の希望としては、将来中田英寿さんはW杯の監督になってほしい、そう私は願っています。もちろん、一番の願いは、最大の願いは、あと数年、選手としてたたかって下さい、ということです。しかし多分、天才としての中田英寿氏は、完璧な状態から、最高の水準から、ほんの少しでも落ちた状態ではもうたたかいたくない、ということなのだろうと思います。
 新しい道として何を選択するのか、本当に注目しています。どの道を選ぶにしても、サッカーのときと同じように、状況に適合する闘争形態、戦術を編み出す天才として、中田英寿さんは高貴、孤高、光輝の道を歩み続けるでしょう。期待しています。楽しみです。
 W杯でのあの、中田英寿さんの弾丸ロングシュートを私は忘れません。
 平和を守るための中田英寿さんの発言を、私は忘れません。
 唐突ですが、このような「中田英寿賛歌」を書きました。「カタロニア賛歌」という本から私は大きな影響を受けました。その関係で「賛歌」という表現を使いました。
 日本では労働者階級の政党も、自己を「民族の党」、「国民の党」と表現し、「民族には自衛権がある」、「国を愛する気持ちはモラルの一つ」と表明しています。日本の支配層の政党は、教育基本法を改悪し、憲法を改悪し、国を愛する心、愛国心を国民に強制しようと狙っています。さすがに日本の労働者階級の政党は、愛国心の強制には断固として反対しています。
日本は、そういう状況の国なのです。
テレビを見ていて、私は衝撃と感銘を受けました。「祖国日本のためにサッカーをたたかっているのですか」の質問に対して中田英寿さんは「日本のためにたたかっているわけではない」と答えたのです。「それでは何のためにたたかっているのですか」の再質問に対しては、「自分のため」と中田英寿さんは答えたのです。
第一次世界大戦のとき、労働者階級の政党のほとんどが「祖国防衛主義」に陥り、自国が勝つためにということで自国の労働者階級を戦争に駆り立てましたが、そのときロシアのレーニンは自国敗北主義を唱え、戦争反対を貫きました。
マルクス、エンゲルスの「共産党宣言」は、労働者階級は祖国を持たない、と宣言しています。
例のミサイル発射問題。レーニンの民族政策は、「強い民族が弱い民族に譲る」というものでした。日本が譲ることで、問題の平和的解決をはかるべきだと私は思います。
「祖国のためにたたかっているわけではない」、「日本のためにたたかっているわけではない」
高貴、孤高の天才、中田英寿さんは必ず、新しい人生で同様に光輝の道を歩み続けるでしょう。
 
 
◎ ―――  「谷崎潤一郎犯罪小説集」を読んでみました  ―――
 「谷崎潤一郎犯罪小説集」(著者 谷崎潤一郎 発行 集英社)を読んでみました。
 「酒も飲まないし、タバコも吸わないし、小説を書いている人間とはとても思えない」と言われたことがありますが、実は私も、以前は熱心に小説を書き、地元の三つの月刊誌に長期連載されていたこともあります。ですから、小説は膨大な数、読んでいます。谷崎潤一郎の作品も好きです。
 実際に書いていた人間ですから、評論は馬鹿げていると軽蔑していますから、勝手な感想だと思って下さい。
 「谷崎潤一郎犯罪小説集」には、『柳湯の事件』、『途上』、『私』、『白昼鬼語』の4短編が収められています。
 戦前の政治システム下で、よくこれだけ自由闊達に振る舞い、現代、現在を見通しているような作品を書けたものだと、感心します。
 人間の心情世界は、変わっていない、と感じました。
 同時に、自由闊達な作品ではあるけれども、「職工への侮蔑」と受け取ることができる表現もあり、「階級性」での限界が出ているのを感じました。
 「コノヤロー」、「奴」など、「差別表現」が戦前も今も、強力に存在している点でも、残念ですが労働運動を含めて人間は変わっていない、と感じました。
 4短編の中では、『白昼鬼語』が一番、綺麗ななかみであり、表現ですし、犯罪小説というよりは『痴人の愛』、『春琴抄』の流れの中に位置付けることができるものだと思います。
 高校生のとき高校の図書館で『痴人の愛』を読み、感心したものです。アンドレ・ジイド『狭き門』、トルストイ『戦争と平和』の中に描かれている愛の世界と相当様相の違う愛の世界が、描かれています。
 『痴人の愛』は大阪朝日新聞に連載された小説だとのことです。戦前にこのような小説がこのような新聞に連載されたことは、驚きです。
 日本経済新聞に、渡辺淳一氏『失楽園』が連載されたことも驚きですが、『痴人の愛』は戦前ですから、たいしたものです。支配層の「堕落」という側面もあるのかもしれません。
 『痴人の愛』は悪魔主義、耽美主義の作品と言われています。確かに唯美主義(耽美主義)です。図式的に言うと、泉鏡花→谷崎潤一郎→三島由紀夫(特に『豊饒の海』)→渡辺淳一氏(特に『桜の樹の下で』)の流れを感じます。
 唯美主義は、心情の世界に花開くものです。右へ、天皇への唯美主義、民族への唯美主義(ナチズム)にも向かっていくし、逆に左へ、労働者階級への唯美主義、プロレタリア国際主義、平和への、憲法9条への唯美主義にもなり得るものだと思います。 
 
 
◎ 「シリーズ 京都府政研究 2006 『不安社会からの脱出』」を読む
 2006年4月6日〜8日、「憲法知事」誕生をと願って、京都府知事選支援で京都に行った際、京建労(全京都建築労働組合)の徳本書記長から本を5冊いただきました。
 編著=京都府政研究会、発行=株式会社つむぎ出版の「シリーズ 京都府政研究 2006 『不安社会からの脱出』」、「シリーズ 京都府政研究 2006 『それぞれの地域が輝くまちづくり』」、「シリーズ 京都府政研究 2006 『安心社会への挑戦』」、「シリーズ 京都府政研究 2006 『京都府・市町村の連携を探る』」そして「シリーズ 京都府政研究 2006 『安心と共同の教育』」の5冊です。
 とりあえず「シリーズ 京都府政研究 2006 『不安社会からの脱出』」(以下、『不安社会からの脱出』と略します)を全文読ませていただきました。
 『不安社会からの脱出』は、「第1章 統計に見る京都経済の現状」で、各種統計を用いて、近年の京都経済の姿を客観的に明らかにすることを試みています。各種統計を使って、『不安社会からの脱出』は、京都府の産業の動向として「京都府では卸・小売業が一番多く(35.6%)、それに製造業(28.1%)、飲食・宿泊業(13.7%)が続いています。何より注目されるのは、事業所の総数が、2001年から2004年までのわずか3年間に、約8000件、5.8%も減少していることです」、「事業所減少の大部分を製造業と卸売・小売業が占めている」、「京都府の製造業事業所は、2003年時点で1万5099件ほど存在しました……伝統産業である繊維工業が、(製造業)事業所全体の約40%を占めています」、「京都の製造業を規模別で見てみましょう。従業者数が3人以下の事業所は、8630社(57.2%)あり、さらに10人未満の事業所をとると、1万2207事業所(80.9%)に達します」、「和装卸売業の不振が続いている……規模の小さい商店が減少する一方で、大規模小売店が増加している」、「派遣労働や不安定雇用が増大し、賃金水準も低下傾向にあり、京都府内での消費購買力の縮小と、小売業の不振という悪循環に陥っている」等々記述しています。
 また、『不安社会からの脱出』は、京都府の場合、「2000年の国勢調査によると、年金世帯の比率が2割に達している」ことを明らかにしています。
 『不安社会からの脱出』は「第3章 商工業者が元気になるために」で、中小業者を直撃する国民健康保険料値上げ、大型店の出店ラッシュ、5年連続500件を超える倒産、多重債務者の激増の実態を明らかにし、同時に、そういう中で「負けてたまるか」と立ち上がった中小業者の、「商工フェスタ」、「日曜市」、「土曜市」、「小町市」、「職人展」など様々な機会をとらえての共同の輪を広げる努力、運動を紹介しています。そして、『不安社会からの脱出』は「そうしたなか、中小業者振興を基本とした『地域経済振興基本条例』制定などを、各団体が協同で実現する機運が盛り上がっています」と述べています。
 『不安社会からの脱出』は「第6章 制度融資を中小企業・業者のためのものに」では、かつての蜷川民主府政の商工行政の基本理念「中小企業問題は、せんじつめれば結局二つの問題になると思う。一つは中小企業を大資本の圧力から守ることであり、他の一つは大資本の圧力に耐えることができるように中小企業の経営体そのものを強めることである」を紹介し、蜷川府政による1950年代初頭の「中小企業小口融資制度」(この制度の特徴は、@融資を金融機関任せにしない、A最も苦しんでいるところに重点的に援助する、B地元金融機関の育成)の発足、1966年の「小規模特別融資制度」(零細業者も無担保・無保証人で融資を受けられる)の創設の歴史を振り返りながら、中小業者にとって利用しやすい制度融資を進める府政への転換を求めています。
 「第7章 西陣を総合的伝統産業の集積地に――現場からの提案――」では、「京都の和装産地の再生を住民全体の課題として捉える」視点、方向、政策を提案しています。
 「第8章 住み続けられる地域づくりをめざして」では、住宅の耐震化、耐震・津波対策、公契約条例の制定、住宅改修助成制度の創設・拡充が提起されています。
 『不安社会からの脱出』は、公契約条例・公契約法の目的として、「公共工事の単価や賃金相場の安定的確保により、低価格による市場侵略から地域市場を守る制度であるともいえます」と指摘し、公契約条例・公契約法を捉える上での鋭い視点を示しています。
同時に公契約条例・公契約法の制定は「中間下請業者による搾取・ピンハネの禁止を意味します」と『不安社会からの脱出』は指摘します。この指摘はその通りです。合わせて、下請業者への「適正な利潤」、「適正な経費」の確保・保障を公契約条例・公契約法の制定は意味することも、付け加えておいたほうが、下請業者から誤解されないためにはいいのではないかと、感じました。
『不安社会からの脱出』は第9章で、地産地消や資源循環型社会の実現など府民の協同と連携の力に依拠しての農林漁業の再生を提起しています。
そして最終章(第10章)で、京都でのパート、アルバイト、派遣など不安定雇用労働者の増大、2004年の京都府の「15歳から24歳までの若年層」の完全失業率の「7.5%と飛び抜けて高い数字」、「働いていても、30歳未満の青年では、パート・アルバイト、派遣・契約社員で38.0%を占めており、しかもその年収は150万円に満たないものが79.8%も占めている」等々の実態を明らかにした上で、「地方自治体ができる、またしなければならないことは雇用の創出であり……具体的には、@失業者を対象とした緊急公的雇用事業の実施、A福祉・教育の充実による公務員の採用、B大型公共事業から生活関連公共事業への転換による地元循環型地域経済の確立など」であると指摘し、提起しています。
 
 
◎ ――――――――  映画『母べえ』を見ました  ――――――――
 映画『母べえ』を見ました。見てよかったと、思うことができた映画です。
 最近は、好奇心が相当薄れてきていますから、何を見ても「見なければよかった」、「見る必要はなかった」と後悔することが普通なのですが、この『母べえ』は違います。
 真面目で、いろいろな意味で綺麗な映画です。綺麗なものを見ることができた、それだけでも満足です。
 この映画がもし、いわゆる大ヒットしているのだとすれば、それは、平和の尊さ、戦争の悲惨、権力の暴虐などを描きながら同時に、美しいもの、崇高なものを中心に置いて、その美しさ、崇高さを静かに、冷徹に浮上させているからだと思います。
 どこに、崇高さ、美しさがあるのか? 考えてみました。
 ○ 吉永小百合さん。
 ○ 戦時下で「ぜいたくは敵だ」と非難されても「ぜいたくは素敵だ」と言い返して、自分の生き方を貫いた人(鶴瓶さんが演じていました)。  
 ○ 最後まで聖戦と認めることを拒んで、今で言う刑務所で死んでいく(病死)「思想犯」(坂東三津五郎さんが演じていました)。
 ○ 「思想犯」の美しい妻への心に秘めた愛から、彼女とその家族を守り続けようとする青年(浅野忠信さんが演じていました)。
中河与一の小説「天の夕顔」の主人公の青年の心情に似ているものがあります。中河与一の小説「天の夕顔」の主人公の場合は、気持ちを告白しており、一歩間違えば、不倫小説になってしまうところなのですが、女性が拒否し続け、最後に自殺して「天の夕顔」となることで、小説としての品格を維持しています。
浅野忠信さんが演じる青年の場合は、最後まで心に秘め続けることで、崇高さを獲得していると言えるのではないでしょうか?
 ○ 一つ一つの風景、まち並み、情景、場面が、本当に綺麗です。映画というのは、こんなにも綺麗に人を、ものを、描くことができるのだと感動しました。
 ともかく、いろいろあっても、いろんな考え方があっても、戦争に反対し、平和を守り、憲法9条を守り、憲法の全条項を守り、活かすために、がんばっていくしかないのだということを、『母べえ』を見て、あらためて決意しました。
 『母べえ』を見ないことは、人生での損失になると言い切りたい気持ちです。
 
 
◎ ―――― 中河与一『天の夕顔』をあらためて読んでみました ――――
 中河与一先生の書かれた小説『天の夕顔』をあらためて読んでみました。
 中河与一先生の晩年に、私は先生にお会いし、小説の指導を受けました。ありがとうございました。
 いま The Interpretation of Murder by Jed Rubenfeld を原文で読んでいますが、その中に、ハムレットの有名な言葉「生きるべきか死すべきか、それが問題だ」についての新しい解釈があり、興味を惹かれました。『天の夕顔』という小説の構造と結び付けて考えると、ますます興味を惹かれます。
 ハムレットの言葉の原文は To be, or not to be であり、その真に意味するものは、「生きるべきか死すべきか」、「生きるか、死ぬか」ではなく、「振る舞う(act)べきか振る舞うべきでないか(not act)」、「振る舞うか、振る舞わないか」というものだ、という解釈を示しています。
 もう少し言いますと、その置かれている立場にふさわしく「振る舞うべきか振る舞うべきでないか」ということを To be, or not to be は意味しているというのです。
 『天の夕顔』の構造は、他人の妻という立場にある美しい女性と青年との、基本的に、心の交流を描いた作品です。危うい頂上まで行くのですが、そこで踏み止まり、「不倫」という構造への移行を免れ、心の交流という構造を保持し、そして最後に女性が自殺(または病死?)して「天の夕顔」になることで、美的衝撃を読者に与えることができる小説になっているのではないでしょうか?
 先生は、トルストイの『アンナ・カレーニナ』の影響を受けていると思います。
 青年は To be, or not to be と悩み続けますが、女性は最後まで to be を貫きます。もちろん To be, or not to be と悩み抜いた末の結論ですが。妻という立場、母としての立場にふさわしく振る舞うことを選択した、ということです。
 青年は、女性を完全な神として崇拝します。神である女性が to be を選んだ以上、青年も当然それを尊重し、というよりそれに従い to be を貫くことになります。
 『天の夕顔』の構造の、もう一つの特徴は、女性と青年は互いに、思いを告白しあっています。その上での、「基本的に心の交流」という構造なのです。
 最近見た映画に、吉永小百合さんの『母べえ』がありますが、この映画に出てくる青年は、他人の妻という立場にある美しい女性(吉永小百合さん)への思いを最後まで心に秘め続け、戦地で死んでいきます。全面的に「心の交流」にとどまっています。綺麗な生き方かもしれないと、感じました。
 
 
◎ ―― The Interpretation of Murder by Jed Rubenfeld を読んで ――
 Jed Rubenfeldが書いた小説The Interpretation of Murderを原文で読みました。好奇心が薄れつつある状況下、好奇心を覚醒させるような小説で、久しぶりに短期間で読み切ることができました。
 この小説には、フロイトやユングが登場し、重要な役割を果たします。
○ ユング フロイトに接近するが、後にフロイトから距離を置くようになり、フロイトとは異なる心理学をつくりだした。 
フロイトが唱えたOedipus complex=エディプス・コンプレックス (息子が母親を確保しようとして、父親に強く反発し、対抗する心理状態)が殺人事件のベースに存在しますが、それにとどまらず逆転が続き、真犯人としてまさに意外な人物が表面化します。
青年期に読んだ本の中で、フロイト『精神分析入門』からは影響を受けました。人間の行動を規定するものの中心に、フロイトは、「性」を置き、そこから人間の行動を説明しようとしました。フロイトによる夢の分析には、関心を強く惹かれたものです。
The Interpretation of Murderの中に、ハムレットの有名な言葉「生きるべきか死すべきか、それが問題だ」についての新しい解釈があり、興味を惹かれました。ハムレットの言葉の原文は To be, or not to be であり、その真に意味するものは、「生きるべきか死すべきか」、「生きるか、死ぬか」ではなく、「振る舞う(act)べきか振る舞うべきでないか(not act)」、「振る舞うか、振る舞わないか」というものだ、という解釈を示しています。もう少し言いますと、その置かれている立場にふさわしく「振る舞うべきか振る舞うべきでないか」ということを To be, or not to be は意味しているというのです。
 ハムレットの有名な言葉についての、この新しい解釈が、フロイトが唱えたOedipus complex=エディプス・コンプレックスと結び付き、殺人事件の心理的ベースを形成し、事件の解明、解決へと結実していきます。
 犯人だと思っていた人物が犯人でなくなり、殺人事件の構造だと思っていたものがそうではなくなり、別の構造へ移行していくなど、激しい変転が特徴であり、トリックも巧妙を極めています。
 日本語訳も出ているようなので、あらためて日本語でも読んでみたいと思っています。
 話は違いますが、「ST 警視庁科学特捜班」シリーズ by 今野敏氏も、相当おもしろいですよ。やはり、弱まりつつある好奇心を覚醒させるようなストーリィ、構造になっています。
 
 
◎ 今野敏氏の小説『陽炎』(ハルキ文庫) 許すことの大事さを描く
 今野敏氏は、私の好きな作家の一人です。彼の短編小説集『陽炎 東京湾臨海署安積班』(発行 角川春樹事務所)を読みました。「偽装」、「待機寮」、「アプローチ」、「予知夢」、「科学捜査」、「張り込み」、「トウキョウ・コネクション」、「陽炎」とそれぞれ好奇心を刺激する短編です。
 安積警部補をリーダーとする東京湾臨海署安積班の活動、活躍を描いた短編の、集積です。読んでいると、安積警部補と俳優の藤田まことさんが、重なってきます。私は知りませんが、藤田まことさん主演でテレビドラマ化されているのかもしれません。
 刑事小説、推理小説の枠を超えて、「純文学」と言い得るような側面を、今野敏氏の作品は形成しています。
 特に、短編「陽炎」には、心を癒す側面が、強く存在しています。
 予備校生が、トラブルに巻き込まれます。トイレではないところで小便をしていたら、たまたま着替えをしていた女性がいて、痴漢と間違われます。彼は逃げます。横断道路を走って逃げます。車が急ブレーキをかけ、後ろの車がそれに追突します。彼は走り続け、老人にぶつかり、老人は歩道にひっくり返ります。ビルに逃げ込む。ビルの中の店先の小物を並べたワゴンにぶつかり、ひっくり返してしまう。警察官が追っかけてくるので、少女を「人質」に取ってビルの屋上に逃げます。
 少女も悩みを抱えている女の子でした。少女と彼は、気持ちが通い合います。追い詰められた気持ちの彼は、少女と一緒に屋上から飛び降りて自殺することを考えます。
 安積警部補が屋上に来ます。冷徹に事態の流れを整理し、予備校生に説明します。「君は少しも追い詰められていない、追い込まれていない」
 着替えていた女性は、着替えをするような場所ではないところで着替えていたし、また水着を着ていてその上の衣服を着替えていただけだから、裸や下着を見たわけではないから、「覗き」にはならない。トイレではないところで小便をするのは、軽犯罪法違反になるが、普通、警察官は注意するだけだ→横断歩道を渡ったとき、信号は青だった。左折してきた車が急ブレーキをかけた。それに追突した車の前方不注意だ。車間距離も不足していた→老人は立ち上がり、ズボンのほこりを払って、そのまま立ち去った→客の通る通路にワゴンを置いていた店の責任もあるので、店側はワゴンをひっくり返されたことを問題にしていない→少女は「人質」ではなく、ナンパではないか。ナンパは犯罪にはならない。
 「事件は存在しない」と安積警部補は言い切ります。円満解決です。
 
 
◎ プロレタリア小説『蟹工船』(小林多喜二)がベストセラー状態
 『読売新聞』や『朝日新聞』によると、小林多喜二が書いたプロレタリア小説『蟹工船』がいま、ベストセラー状態になっている、とのことです。
 雑誌『すばる』もこの現象に注目し、「プロレタリア文学の逆襲」というタイトルで特集号を出しているようです。
 そうなると、あの『太陽のない街』(徳永直)はどうなのだろう、と気になります。ベストセラー状態にはなっていないのか?
 もう一つあげれば、作家名も作品名も忘れてしまっているのですが、労働者と娼婦の交流を通して娼婦の生活の悲惨さを浮上させたプロレタリア小説が、いまどうなっているのか? 気になります。
 極めて大雑把にわければ、プロレタリア文学、純文学、中間小説、大衆小説、ポルノ小説などということになるのでしょうか?
 日本を戦前戦後で見ると、戦前はプロレタリア文学が一定盛んだった時期があるわけですが、戦後は現在に至るまで極少数派にとどまっていたと思っていいのではないでしょうか?
 理由、原因はあるのでしょうが、わかりづらいところですが、おそらく、スターリン主義の悪影響があるでしょうし、また『キリスト教の本質』(フォイエルバッハ)を圧殺したエンゲルス『フォイエルバッハ論』の悪影響もあるでしょう。個人、個性の絶対的尊重、人間愛がなければ、まともな小説は成立し得ないと思います。
 それがなぜいま、復活したのか? 労働者使い捨ての傾向を強めつつある日本資本主義の構造が、プロレタリア文学を復権させた、プロレタリア文学の逆襲を生み出したと言えるのではないかと思います。
 このままの日本資本主義の構造が続けば、その構造は、現代のプロレタリア文学を生み出す可能性があります。どうなるのか? 単に戦前のプロレタリア文学の復権にとどまるのか? それを超えて、現代のプロレタリア文学を生み出すのか?
 
 
◎ 樋野興夫教授「がん細胞の発生と成長の哲学的意味」
 『新医療』2008年6月号の「巻頭言」として、樋野興夫順天堂大学医学部病理・腫瘍学教授の文書が掲載されていました。
 読んで、樋野興夫氏の哲学的思考に惹かれました。
 『がん哲学外来』を実践している、とのことです。
 『がん哲学外来』とは何か?
 同氏は答えています。「『がん哲学外来』は対話型外来が基本である。多くは、再発・転移している患者である。1組の相談に30〜60分を費やす……患者さんの表情は明るくなる」、「『がん哲学外来』は、生きることの根源的な意味を考えようとする患者と、がん細胞の発生と成長に哲学的な意味を見出そうとする、『陣営の外』に出る病理学者の出会いの場でもある」
 「がん細胞の発生と成長の哲学的な意味」とは何か?
 そのことに哲学的な意味を見出そうとすることは、ユニークであり、素晴らしい発想であり、必要なことだと思います。
 同氏の考えをより深く、詳しく、知りたいと思います。
 
 
◎ ── マルクス再評価 山之内靖東京外語大学名誉教授 ──
 2008/6/14『朝日新聞』夕刊に、「マルクス再評価」の山之内靖東京外語大学名誉教授の文書が載っていました。
 参考にすべきだと感じたのは、
 マルクス『経済学・哲学草稿』には、人間の存在をあくまでも自然と大地の上に基礎を置き、制約されたものとして見る観点が存在している、と山之内靖氏が指摘している点、
 マルクス『ゴータ綱領批判』には、「『労働がすべての富の源泉である』という思想は社会主義者のものではなく、ブルジョワ思想である。土地と生産手段を独占しているブルジョワ階級は、自然が富の第一に重要な源泉だという事実を隠蔽しようとするのだ」という文章がある、との同氏の指摘、
 の2点です。
 
 
◎ ────  映画『まぼろしの邪馬台国』を見ました  ────
 宮崎康平が掲げた仮説「邪馬台国は島原にある」を知ることができた。推理に推理を積み重ねてたどり着いた仮説であることが、わかる。邪馬台国の女王とされる卑弥呼の墓を発見するには、至らない。
宮崎康平を竹中直人さんが、妻の和子を吉永小百合さんが演じている。
年齢を超越した若々しさ、美しさを示す吉永小百合さんが、死の直前の宮崎康平(竹中直人さん)の前に、卑弥呼となって現れるシーンは、サユリストに再び美的衝撃を与える。
マルクスの名前が出てきたり、『日本資本主義講座』、『窮乏の農村』が出てきたり、この点でも、異色、新鮮である。『窮乏の農村』は、繰り返し出てきた。
和子の父は、『窮乏の農村』を読む、反戦平和の人だった。
労働運動の労働者も、描かれていた。(浅かったけれど、資本が支援する「商業映画」の中で、深く描くように求めるのが、無理な要求だ)
 
 
◎ SEBASTIAN FITZEK著『THERAPY』を読んで 病気の心の多重構造
 SEBASTIAN FITZEK著『THERAPY』を原文で読みました。心の病気を持つ男性ビクターの、その心の世界の多重構造を描いていて、久しぶりに興味を強く惹かれ、割合一気に読み切ることができました。
主人公の男性 ビクター
妻      イザベル
娘      ジョセフィーヌ
ペットの犬  シンドバッド
謎の女性   アンナ
 主人公の男性ビクターの認識では、上記の人たちや犬が存在する。そして、娘ジョセフィーヌがいなくなる(行方不明)。ジョセフィーヌが行方不明になった4年後、謎の女性アンナが出現する。
 男性ビクターの認識が展開し、重大な変化を示す。ジョセフィーヌは行方不明になったのではなく、アンナが殺したのだ。過失で殺してしまったのだ。妻イザベルは「悪魔」であり、娘ジョセフィーヌを毒殺しようとしている。ビクターとアンナが協力して、ジョセフィーヌを守ろうとする過程で、アンナが過って殺してしまったのだ。
 さらにビクターの認識は、心の世界は、重大な転回を示す。アンナ=自分自身(ビクター)であることに、認識がたどり着く。つまり、自分がジョセフィーヌを過って殺してしまったのだ、妻による毒殺から娘を守ろうとする過程で。
 警察の追及で、新しい「事実」が明らかになる。娘のジョセフィーヌは死んでいたわけではなく、気絶していただけであり、妻イザベルが連れ去っていたのだ。それを、ビクターは、自分が殺していたとかん違いし、信じ込んでいたのだ。
 以上が最終的「現実」であるように思われた。
 しかし、そうではないようだ。ジョセフィーヌは、彼女のボディは、どこに存在するのか? 妻イザベルのところに存在すると、どうしてわかったのか? 誰が教えたのか?
 ビクターは言う。「アンナが教えてくれた」
 ここで、現実とイマジネーションが再び混在し、わけがわからない「実体」が再浮上する。
 
 
◎ ――――――――  ウィルス存在の哲学的意味?  ――――――――
 例の新型インフルエンザが、神戸、大阪と感染拡大。経路はっきりしない、ということのようです。
 専門家は「このような日本での感染の広がりは、フェーズ6(世界的大流行の警戒レベル)への引き上げの根拠の一つとなり得る」と言っているとのことです。(「フェーズ phase」=段階)
 米国での感染は、既に10万人を超えているとの見方もある、とのことです。
 この新型ウィルスの、
 潜伏期間は1日〜7日。
 弱毒性(但し、強毒性への変移の可能性)。
 感染力強い。
 免疫ない。
 48時間以内のタミフルの服用、有効と言われている。
 タミフルとリレンザが治療に有効。
 タミフルは「ウィルスを攻撃して、根源から治療する」と言われています。
 ウィルスは、生物と無生物の間の存在、というようなことも言われています。
 ウィルスは、自己増殖できない、他者(他生物)の細胞に寄生することを通じてのみ増殖できる、摂取(食事)も排泄もしない、とのことです。
 このようなウィルスの存在の哲学的意味は? などと考えてしまいます。
 2009/5/20東京、川崎へ感染拡大。
 専門家は、「必ず第二波が来る」と秋以降への警戒を呼びかけています。
 タミフルは、予防的に効く、とのことです。
 専門家は「広がっていくのは時間の問題」と指摘しています。
 2009/5/21京都に初の感染者。
 2009/5/22埼玉に初の感染者。
 アメリカの研究機関が「新型インフルエンザに対して60歳以上の人には、抗体があるかもしれない」と発表しています。
 専門家は「強毒性への変移の可能性に、警戒を緩めないことが必要」と警告しています。
 2009/5/23埼玉県鷲宮町に続いて、同県久喜市へと感染拡大。
 2009/5/23WHOによると、42カ国1万1168人が感染。WHOは「感染のスケールよりも質の変移を注視していく」というようなことを言っているとのことです。
 政府広報によると、治療薬タミフル、リレンザの備蓄は3800万人分。
 
更新日時:
2009/07/01
――――――――「行政改革推進法・労働福祉事業」関連――――――――
――――――――「行政改革推進法・労働福祉事業」関連――――――――
海野和夫
 
◎ 行革法案成立受け、具体化阻止へ
1、行革法 具体化阻止へ
 2006年5月26日の参院本会議で可決、成立した行政改革推進法は、公務員「純減」、総人件費削減の名による(国と地方公共団体の)労働組合つぶし、「特別会計改革」による労働福祉事業等々「廃止方向」、「政策金融改革」の名による中小企業、中小業者の切り捨て、「規制改革」により社会福祉、社会保障、労働等の分野を資本のもうけの場としてさらに徹底して「民間」に開放、等々、極めて危険な中身、本質、狙いを持っています。
 労働福祉事業等々「廃止方向」については、2006年5月17日の参議院行政改革特別委員会で吉川春子議員が質問、追及を行い、一定の歯止めをかけたと言うことができると思います。
 今後、成立した行革法の具体化阻止に向けての運動、たたかいが重要になってきます。
 
2、参議院行政改革特別委員会での吉川春子議員の質問、追及
 2006年5月17日、日本共産党の吉川春子参院議員が、行政改革推進法案の「第23条に、労災保険の労働福祉事業等については、廃止を含めて見直しを行うという規定がある」ことについて、労災保険で行っている労働福祉事業は、不幸にも労災に遭った被災労働者の円滑な社会復帰として義肢、車いすの支給、遺族への支援として遺児に対する就学費用の支給、労災防止としてアスベスト対策、過労死防止、メンタルヘルス、また未払賃金の立替え事業など重要な仕事を行っており、これを廃止することは許されないし、むしろ充実させるべきと政府を追及しました。
 リモテックス破産事件での賃金支払確保法の適用を具体例として上げながら、賃金支払確保法を含む労働福祉事業の大事さ、必要性を明らかにした吉川議員の質問・追及を受けて、川崎二郎厚労大臣は「基本的に必要なものは必要である、これはもう同じ考え方でございます。労働福祉事業は、被災労働者等の社会復帰の促進及び援護や労働災害の防止等のために極めて重要な役割を果たしております。しかし、その一方で、合理化、効率化を図る観点から、表現として『廃止を含めた見直しを』という表現を使いましたので、全部廃止かと、こういう形で御指摘いただきますけれども、今個々の事業の一つ一つ取り上げていただきましたけれども、そういった意味では、高い評価を得ているもの、一部御批判をいただいているもの、それをしっかり洗い直ししながらやってまいりたい」と回答しました。
 
3、『毎日新聞』2006年5月26日付
(以下は、『毎日新聞』2006年5月26日付記事です)
<行革法案>参院で成立 具体策の実施は「小泉後」時代に
 政府が今国会で最重要法案と位置づける行政改革推進法案など関連5法案は
(2006年5月)26日午前、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。政府系金融機関改革など重点5分野で基本的な改革の方向性を示し、小泉純一郎首相の改革路線継続を打ち出している。ただ、具体策の実施は「ポスト小泉」時代に委ねられることになる。
 行革法案は「簡素で効率的な政府」の実現に向け、政府・与党が昨年末にま
とめた改革の方針を寄せ集めた。「政府系金融機関を08年度に一元化し、貸付金残高を国内総生産(GDP)比で04年度の半分以下にする」、「5年間で国家公務員を5%以上、地方公務員を4.6%以上純減する」、「31ある特別会計を12〜17に減らす」などの数値目標と作業工程を盛り込んでいる。
 小泉改革の「総仕上げ」とされる同法案が成立したことで、国会では(2006年)6月18日までの会期の延長問題をにらみながら、教育基本法改正案などの行方が焦点となる。【谷川貴史】
 
4、2006年5月28日「赤旗」
(以下は、2006年5月28日「赤旗」主張です)
主張
「行革」関連法 利益第一主義の「総仕上げ」
 「行革」関連法が自民、公明などの賛成多数で成立しました。
 関連法のうち、「行革」推進法は生活に身近な分野の公務員の大幅削減や、中小企業向け政策金融の縮小を盛り込んでいます。公共サービスを入札にかける「市場化テスト」法では、民間企業のビジネスチャンスの拡大を狙っています。
 関連企業は「百年に一度、50兆円のチャンス」だと色めきたっています。
ビジネスチャンス
 ビジネスチャンスをつくり、分配するやり方は露骨です。
 例えば、国家公務員を5年間で5%以上純減させる具体策を検討している「行政減量・効率化有識者会議」の座長は、大手警備会社セコムの飯田亮・取締役最高顧問です。
 この会議は刑務所の建設を含む包括的な民間委託の推進を提言しています。セコムは刑務所事業への参入に力を入れ、山口・美祢(みね)市の刑務所の建設・運営を受注しています。
 政策決定にかかわる会議のトップに利害関係者をすえるのは「お手盛り」にほかなりません。同様の「お手盛り」は、規制改革会議、国家公務員宿舎の移転・跡地利用を審議する「有識者会議」など、小泉「構造改革」の中にまん延しています。
 「行革」関連法は「改革の総仕上げ」と小泉内閣は言います。その「改革」がもたらした深刻な被害とゆがみが耐震偽装、ライブドアなどの社会的事件や、貧困と格差の拡大によって次々と露呈しています。
 「官から民へ」「改革なくして成長なし」「努力したものが報われる社会」――こうした宣伝文句の陰で実際に進められてきたのは、大企業・大資産家に大もうけの「自由」を保障することです。
 「官から民へ」の代表が「行革」関連法だとするなら、「改革なくして成長なし」の代表は財界要求に基づく雇用の規制緩和です。
 小泉内閣は契約社員の雇用期間の上限を緩め、労働者派遣の製造業務への解禁、派遣期間の制限も緩和しました。労働時間の規制も、サービス残業を合法化する裁量労働制をホワイトカラー(事務労働者)全体に導入できるよう緩和しました。
 政権発足前の2000年と比べると05年の派遣社員は3.2倍に、契約社員や嘱託等は2.5倍化し、合わせて320万人も増えています。この間の非正規雇用の増加数(376万人)の85%が小泉内閣の規制緩和に関連しています。
 企業が非正社員を雇う最大の理由は「賃金の節約」です。民間企業の給与総額は2000年からの4年で15兆円も減りました。身勝手なリストラ人減らしと、正社員を非正規雇用に置き換えた「効果」です。
 働くものから吸い上げた「賃金の節約」が、上場企業の空前の利益の源泉となっています。
具体化やめさせよう
 大企業の利益第一主義の「自由」の拡大は、低賃金と長時間労働がはびこる勤労の「不自由」を広げました。いくつ会社を回ってもどこにも本採用されない、いくら頑張っても若者の半数が正社員になれない、いつリストラされるか分からないような社会――「構造改革」は、日本社会を「努力するものが報われる社会」の対極に向かわせています。
 公共サービスと公務員を標的にした「行革」関連法は、利益第一主義を社会の隅々に広げる「総仕上げ」です。その具体化を押しとどめるたたかいを、国、地方のあらゆる分野で強めていこうではありませんか。
 
 
◎ 「賃金支払確保法(国による未払い賃金の立替払事業)等の廃止」を閣議決定
1、全建総連労働対策部議案が警告
 2006年2月16〜17日に熱海でおこなわれた全建総連中央執行委員会労働対策部議案は、「政府は今通常国会提出を狙う『行政改革推進法案(仮称)』で、労働保険特別会計を保険給付事業のみとし、労働福祉事業及び雇用保険3事業(雇用安定、能力開発、雇用福祉)や失業保険への国庫負担の廃止など、徹底的に見直していくことを、2005年12月24日に閣議決定しました。廃止の方向が議論される『労働福祉事業』には、労災病院の設置・運営、労災保険の特別支給金、就学援護費の支給、安全衛生確保事業(労災防止対策)、未払い賃金の(国による)立替払い事業(賃金支払確保法)などが含まれており、今後、具体的な見直し内容の情報を把握し、適切な対応をすすめていきます」と警告し、全建総連としての対応の必要を明らかにしています。
 
2、2005年12月24日の閣議決定
 それでは、全建総連労働対策部が警告する「2005年12月24日の閣議決定」について、公務員削減、(自衛隊の)自衛官の民間委託化、等々、「官から民へ」の流れを徹底推進しようとするもので、様々な問題点を含んでいますが、とりあえず今回は、「労働福祉事業の廃止」の一点に絞って、その閣議決定の中身を紹介しておきます。労働福祉事業が廃止されるということは、要するに賃金支払確保法(国による未払い賃金の立替払事業)も廃止されるということであり、私たち埼玉土建一般労組を含めて全建総連の各県連・組合が、営々として築き上げてきた賃金支払確保法が適用される範囲の拡大=労働者性の拡張(手間請も一人親方も、そして小規模の事業主も労働者として認めさせて賃金支払確保法を適用させる)流れの全てを破壊するものです。こんなことを、絶対に許すわけにはいきません。
 「2005年12月24日の閣議決定」は、その部分で「労働保険特別会計については、原則として純粋な保険給付事業に限り本特別会計にて経理するものとし、労働福祉事業及び雇用保険3事業については、廃止も含め徹底的な見直しを行うものとする。また、失業給付事業における国庫負担のあり方については、廃止を含め検討するものとする」と労働福祉事業等の廃止の方向を明言しています。 
 
3、行政改革推進法案(仮称)
 法案の国会提出時期を2006年3月上旬としている行政改革推進法案(仮称)については、内閣官房行政改革推進事務局によってその概要が発表されています。「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案の概要」が、それです。
 「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案の概要」は、該当する部分(特別会計改革)で、「特別会計の改革においては、特別会計の統廃合及びその経理の明確化を図るとともに、財政の健全化に資するため事務又は事業の合理化及び効率化を図るものとし、平成18年度から5年間を目途に計画的に推進する。改革に当たっては、特別会計における資産及び負債並びに剰余金等を縮減するなどし、財政の健全化に総額20兆円程度の寄与をすることを目標とする」、「政府は、この法律の施行後1年を目途として、個別特別会計の改革の具体的な内容、財政法の例外規定等の整理及び企業会計の慣行を参考にした資産及び負債の開示その他の会計情報の開示に係る法制上の措置その他の必要な措置を講ずる」と定めています。
 事態は明白です。「労働福祉事業」を含む労働保険特別会計も個別特別会計の一つです。この法律が成立すれば、「政府は、この法律の施行後1年を目途として、個別特別会計の改革の具体的な内容」を定めることができるのです。
 閣議決定が「廃止の方向」を決定した以上、この法律が成立すれば、「この法律の施行後1年を目途として」政府が賃金支払確保法(国による未払い賃金の立替払事業)を含む「労働福祉事業」を「廃止の方向」へ持って行くことは明らかです。
 全建総連の総力をあげての反対運動の展開が緊急に必要な、まさにそういう段階に来ていると考えます。
 
 
◎ 労働福祉事業等々「廃止の方向」法案、2006年3月10日、国会提出
(以下は、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(いわゆる行政改革推進法)が2006年3月10日に国会に提出されたのを受け、既に載せていただいている従来の文書を急いで補強したものです)
 
1、労働福祉事業等々「廃止の方向」閣議決定
 2006年2月16〜17日に熱海でおこなわれた全建総連中央執行委員会労働対策部議案は、「政府は今通常国会提出を狙う『行政改革推進法案(仮称)』で、労働保険特別会計を保険給付事業のみとし、労働福祉事業及び雇用保険3事業(雇用安定、能力開発、雇用福祉)や失業保険への国庫負担の廃止など、徹底的に見直していくことを、2005年12月24日に閣議決定しました。廃止の方向が議論される『労働福祉事業』には、労災病院の設置・運営、労災保険の特別支給金(休業給付20%加算の休業特別支給金、等々)、就学援護費の支給、安全衛生確保事業(労災防止対策)、未払い賃金の(国による)立替払い事業(賃金支払確保法)などが含まれており、今後、具体的な見直し内容の情報を把握し、適切な対応をすすめていきます」と警告し、労働運動としての対応の必要を明らかにしています。
 
2、2005年12月24日の閣議決定
 全建総連労働対策部が警告する「2005年12月24日の閣議決定」について、公務員削減、(自衛隊の)自衛官の民間委託化、等々、「官から民へ」の流れを徹底推進しようとするもので、様々な問題点を含んでいますが、とりあえず今回は、「労働福祉事業の廃止の方向」の一点に絞って、その閣議決定の中身を紹介しておきます。労働福祉事業が廃止されるということは、要するに賃金支払確保法(国による未払い賃金の立替払事業)や労災保険の特別支給金(休業給付20%加算の休業特別支給金、等々)も廃止されるということであり、私たち埼玉土建一般労組を含めて全建総連の各県連・組合、また建交労等の全国の建設労組が、営々として築き上げてきた賃金支払確保法が適用される範囲の拡大=労働者性の拡張(手間請も一人親方も、材料持ち、ダンプ持ち込みでも、さらに小規模の事業主も、労働者として認めさせて賃金支払確保法を適用させる)流れの全てを破壊するものです。こんなことを、絶対に許すわけにはいきません。
 「2005年12月24日の閣議決定」は、その部分で「労働保険特別会計については、原則として純粋な保険給付事業に限り本特別会計にて経理するものとし、労働福祉事業及び雇用保険3事業については、廃止も含め徹底的な見直しを行うものとする。また、失業給付事業における国庫負担のあり方については、廃止を含め検討するものとする」と労働福祉事業等の廃止の方向を明言しています。 
 
3、「行政改革推進法案」の概要
 法案の国会提出時期を2006年3月上旬としている「行政改革推進法案」については、内閣官房行政改革推進事務局によってその概要が発表されています。「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案の概要」が、それです。
 「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案の概要」は、該当する部分(特別会計改革)で、「特別会計の改革においては、特別会計の統廃合及びその経理の明確化を図るとともに、財政の健全化に資するため事務又は事業の合理化及び効率化を図るものとし、平成18年度から5年間を目途に計画的に推進する。改革に当たっては、特別会計における資産及び負債並びに剰余金等を縮減するなどし、財政の健全化に総額20兆円程度の寄与をすることを目標とする」、「政府は、この法律の施行後1年を目途として、個別特別会計の改革の具体的な内容、財政法の例外規定等の整理及び企業会計の慣行を参考にした資産及び負債の開示その他の会計情報の開示に係る法制上の措置その他の必要な措置を講ずる」と定めています。
 事態は明白になってきています。「労働福祉事業」を含む労働保険特別会計も個別特別会計の一つです。この法律が成立すれば、「政府は、この法律の施行後1年を目途として、個別特別会計の改革の具体的な内容」を定めることができるのです。
 閣議決定が「廃止の方向」を決定した以上、この法律が成立すれば、「この法律の施行後1年を目途として」政府が賃金支払確保法(国による未払い賃金の立替払事業)や労災保険の特別支給金(休業給付20%加算の休業特別支給金、等々)を含む「労働福祉事業」を「廃止の方向」へ持って行くことは明らかです。
 労働運動からの反対運動の展開が緊急に必要な、まさにそういう段階に来ていると考えます。
 
4、「行政改革推進法案」そのものでは
 「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(いわゆる行政改革推進法)が、予定通り2006年3月10日に国会に提出されました。
 入手した「行政改革推進法案」(「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」)そのものを見ると、労働福祉事業等々の「廃止の方向」についてその第23条が次のように明確に述べています。
「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」第23条=労働保険特別会計において経理される事業は、労災保険法の規定による保険給付に係る事業及び雇用保険法の規定による失業等給付に係る事業に限ることを基本とし、労災保険法の規定による労働福祉事業並びに雇用保険法の規定による雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業については、廃止を含めた見直しを行うものとする。
「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」第23条の2=雇用保険法第66条の規定による国庫負担(失業等給付に係るものに限る。)の在り方については、廃止を含めて検討するものとする。
 
この23条を見る限り、労働福祉事業等々については「廃止が基本」としか読み取ることができません。前記の「廃止の方向」の閣議決定とあわせて考えると、放置することは許されない段階に既に来ていると強く感じます。
 
 法案の概要等が載っている内閣官房行政改革推進事務局のホームページは下記の通りです。
<http://www.gyoukaku.go.jp/>
 
 
◎ 労働福祉事業の種類と内容
1、はじめに
 「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(いわゆる行政改革推進法)が、2006年3月10日に国会に提出されました。
 「官から民へ」の流れを徹底推進しようとするもので、様々な問題点を含んでいます。この法案の中には、「労働福祉事業の廃止の方向」も含まれており、私たちとの関係を明らかにするために、以下に労働福祉事業の種類と内容をまとめてみました。
 
(下記は、「労災保険制度の詳解」(厚生労働省労働基準局労災補償部労災管理課編 株式会社労務行政発行)にもとづいて、まとめました)
 
2、労働福祉事業の種類
 労災保険では、保険給付の事業に並立する事業として、労働福祉事業を行うこととしています。
 労働福祉事業としては、大別して次の4種の事業があります。
@療養に関する施設及びリハビリテーションに関する施設の設置及び運営その他被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業
A被災労働者の療養生活の援護、被災労働者の受ける介護の援護、その遺族の就学の援護、被災労働者及びその遺族が必要とする資金の貸付けによる援護その他被災労働者及び遺族の援護を図るために必要な事業(このうち最も重要なものとして、特別支給金の支給があります)
B業務災害の防止に関する活動に対する援助、健康診断に関する施設の設置及び運営その他労働者の安全及び衛生の確保のために必要な事業
C賃金の支払の確保、労働条件に係る事項の管理に関する事業主に対する指導及び援助その他適正な労働条件の確保を図るために必要な事業(要するに、未払い賃金の国による立替払い事業のことです)
 
3、労働福祉事業の内容
@療養に関する施設及びリハビリテーションに関する施設の設置及び運営その他被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業
(1)労災病院の設置・運営
(2)医療リハビリテーションセンターの設置・運営
(3)総合せき損センター(せき髄損傷者等の治療からリハビリテーション、さらに職業指導を一貫して行う施設)の設置・運営
(4)労災委託病棟の設置 
 労災病院の設置されていない地域について、患者のための医療施設を設置して、その運営を既存の病院に委託しています。
(5)看護専門学校
 労災病院に勤務する看護師を養成するために、看護専門学校を設置しています。
(6)外科後処置
 治ったといっても、再手術や電気治療やマッサージなどの物理療法を行わなければならない場合に、無料で診療の機会を与える制度が設けられており、これを外科後処置といいます。
(7)義肢等の支給
 義肢、義眼、補聴器、人口喉頭、車いす、電動車いす、収尿器、歩行補助つえ、等々、22種目を無料支給しています。
(8)労災リハビリテーション作業所
(9)温泉保養
(10)在宅介護住宅資金の貸付け
 重度被災労働者の介護に配慮した住宅の建設、改築又は増築を行う場合に、低利で貸し付けを行うものです。
(11)自動車購入資金の貸し付け
 車椅子生活を余儀なくされたせき髄損傷者に対して、足を使わなくても運転できる特殊自動車の購入資金を貸し付ける精度です。
(12)その他
 省略します。
A被災労働者の療養生活の援護、被災労働者の受ける介護の援護、その遺族の就学の援護、被災労働者及びその遺族が必要とする資金の貸付けによる援護その他被災労働者及び遺族の援護を図るために必要な事業
(1)特別支給金の支給
 特別支給金の種類は、休業特別支給金、障害特別支給金、遺族特別支給金、傷病特別支給金、障害特別支給金、障害特別一時金、遺族特別年金、遺族特別一時金、傷病特別年金の9種類です。
 休業特別支給金の額は、1日につき休業給付基礎日額の100分の20に相当する額です。(被災の際、休業補償がこれにより20%上乗せされ、賃金の80%の支給となるわけです)
 障害特別支給金は、障害等級第1級342万円〜第14級8万円までの14段階に分かれています。
(2)労災就学援護費
 被災労働者の子弟に就学援護費を支給する制度です。
(3)労災就労保育援護費
(4)年金担保資金貸付制度
 労災年金を担保として貸付を行っています。
(5)労災援護金の支給
(6)労働福祉事業としてのアフターケア
(7)その他
 省略します。
B業務災害の防止に関する活動に対する援助、健康診断に関する施設の設置及び運営その他労働者の安全及び衛生の確保のために必要な事業
(1) 労働災害防止対策の実施
(2)災害防止団体に対する補助
(3)勤労者予防医療センター
(4)健康診断センター
(5)海外勤務健康管理センター
(6)その他
C賃金の支払の確保、労働条件に係る事項の管理に関する事業主に対する指導及び援助その他適正な労働条件の確保を図るために必要な事業
 要するに、賃金支払確保法にもとづく「未払い賃金の国による立替払い制度」のことです。
 企業の倒産のため事業主から賃金を支払われない労働者に対して未払い賃金の一定範囲(原則80%)を国が事業主に代わって立替払いする(要するに支払う)制度です。
 
 
◎ 行政改革推進法(「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」)案の危険な中身(法案全文を検討)
1、法案の全文入手
「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(いわゆる行政改革推進法)案が、予定通り2006年3月10日に国会に提出されました。
この法案の全文が、以下の「国立大学法人法反対首都圏ネットワーク(新首都圏ネットワーク)」のサイトに載っています。
<http://www.shutoken-net.jp/index.html>
 
 入手した「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(いわゆる行政改革推進法)案の全文を見ると、労働福祉事業等々の「廃止の方向」についてその第23条が次のように明確に述べています。
「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」第23条「労働保険特別会計において経理される事業は、労災保険法の規定による保険給付に係る事業及び雇用保険法の規定による失業等給付に係る事業に限ることを基本とし、労災保険法の規定による労働福祉事業並びに雇用保険法の規定による雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業については、廃止を含めた見直しを行うものとする」
「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」第23条の2「雇用保険法第66条の規定による国庫負担(失業等給付に係るものに限る。)の在り方については、廃止を含めて検討するものとする」
 
この23条を見る限り、労働福祉事業等々については「廃止が基本」としか読み取ることができません。「廃止の方向」の(2005年12月24日の)閣議決定とあわせて考えると、放置することは許されない段階に既に来ていると強く感じます。
 
2、この法案の、(労働福祉事業等々「廃止方向」)以外の、危険な中身
 第1条で、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革を、(内閣総理大臣を長とする)行政改革推進本部を設置することにより、総合的に推進することが、この法律の目的だ、と定めています。
 第2条で、基本理念として、「我が国の国際競争力の強化」をあげています。
 政策金融改革(第4条〜第14条)では、現行政策金融機関(商工組合中央金庫、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行、日本政策投資銀行)について、商工組合中央金庫と日本政策投資銀行は完全民営化、公営企業金融公庫は廃止、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行は、新たに設立する「新政策金融機関」(株式会社又は独立行政法人若しくはこれに類する法人)に統合し、教育資金の貸付け、地方公共団体のための資金調達、中小企業への融資、農林漁業者への融資等々の縮減を定めています。
 独立行政法人の見直し(第15条、16条)では、独立行政法人に対する国の歳出の縮減を図ることを定めています。
 特別会計改革(第17条〜第41条)では、第17条で「(各種)特別会計の廃止及び統合」を打ち出し、2006年度から2010年度の5年間で総額20兆円の削減を目標とする、と定めています。
 また、第19条は「政府は、特別会計の廃止及び統合、一般会計と異なる取り扱いの整理並びに企業会計の慣行を参考とした資産及び負債の開示その他の特別会計に係る情報の開示のため、この法律の施行後1年以内を目途として法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする」と定め、政府一任とも受け取れる内容になっています。国会での追及が求められるところです。
特別会計の一つが労働福祉事業等を含む労働保険特別会計であり、これについては、前述のように、第23条で「労働保険特別会計において経理される事業は、労災保険法の規定による保険給付に係る事業及び雇用保険法の規定による失業等給付に係る事業に限ることを基本とし、労災保険法の規定による労働福祉事業並びに雇用保険法の規定による雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業については、廃止を含めた見直しを行うものとする」と定め、また第23条の2で「雇用保険法第66条の規定による国庫負担(失業等給付に係るものに限る。)の在り方については、廃止を含めて検討するものとする」と規定しています。
 総人件費改革(第42条〜第57条)では、5年間で5%以上の国家公務員数の純減、また地方公務員数の4.6%以上の純減を打ち出しています。独立行政法人、国立大学法人等については、その人件費の5年間で5%以上の削減を定めています。公共職業紹介所の業務等について、民間委託化の検討を決めています。
 公務員制度改革(第63条)は、「能力及び実績に基づく人事管理」等を定めています。
規制改革(第64条)では「民間活動に係る規制の撤廃又は緩和」に向けて「政府は、金融、情報通信技術、出入国の管理、社会福祉、社会保障、労働、土地の測量その他の分野における規制の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする」と規定しています。まさに社会福祉、社会保障、労働等の分野を資本のもうけの場としてさらに徹底して「民間」に開放しようとするものです。
 そして、それらを総合的に推進するために、第68条で「内閣に行政改革推進本部を置く」と定めています。第73条で、首相が行政改革推進本部の本部長に座り、全閣僚が本部員を占めることを定めています。
 
 
◎ 行政改革推進法案、公務員「純減」推進は労働組合つぶし、失業者の増大
小泉内閣が最重要法案と位置づける「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(いわゆる行政改革推進法)案など「行革関連5法案」の審議が、2006年4月3日から衆院行政改革特別委員会で始まります。
2006年4月3日の衆院行革特別委員会は、小泉純一郎首相と全閣僚が出席して総括質疑を行います。2006年4月4日には一般質疑を行います。
行政改革推進法案は、「特別会計改革」による労働福祉事業等々「廃止方向」、「政策金融改革」の名による中小企業、中小業者等への融資等の「縮減」による中小企業、中小業者等の切り捨て、「総人件費改革」による公務員の純減、民間委託化の推進、「規制改革」により社会福祉、社会保障、労働等の分野を資本のもうけの場としてさらに徹底して「民間」に開放、等々、極めて危険な中身、本質、狙いを持っています。
公務員の純減、民間委託化の推進の狙いが、単なる総人件費削減にあるのではなく、国家公務員、地方公務員等の「純減」を通じての労働組合活動家の排除にある点を見逃さないことが大事です。(国と地方公共団体の労働組合)を弱め、つぶすことを狙ったものである点です。また、公務員の純減は失業者の増大を結果するものであり、労働者、労働運動へのおどし、圧力の強化として機能します。
 行政改革推進法案は、第1条で、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革を、(内閣総理大臣を長とする)行政改革推進本部を設置することにより、総合的に推進することが、この法律の目的だ、と定めています。
 第2条で、基本理念として、「我が国の国際競争力の強化」をあげています。
 政策金融改革(第4条〜第14条)では、現行政策金融機関(商工組合中央金庫、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行、日本政策投資銀行)について、商工組合中央金庫と日本政策投資銀行は完全民営化、公営企業金融公庫は廃止、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行は、新たに設立する「新政策金融機関」(株式会社又は独立行政法人もしくはこれに類する法人)に統合し、教育資金の貸付け、地方公共団体のための資金調達、中小企業への融資、農林漁業者への融資等々の縮減を定めています。
 独立行政法人の見直し(第15条、16条)では、独立行政法人に対する国の歳出の縮減を図ることを定めています。
 特別会計改革(第17条〜第41条)では、第17条で「(各種)特別会計の廃止及び統合」を打ち出し、2006年度から2010年度の5年間で総額20兆円の削減を目標とする、と定めています。
 また、第19条は「政府は、特別会計の廃止及び統合、一般会計と異なる取り扱いの整理並びに企業会計の慣行を参考とした資産及び負債の開示その他の特別会計に係る情報の開示のため、この法律の施行後1年以内を目途として法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする」と定め、政府一任とも受け取れる内容になっています。国会での追及が求められるところです。
特別会計の一つが労働福祉事業等を含む労働保険特別会計であり、これについては、第23条で「労働保険特別会計において経理される事業は、労災保険法の規定による保険給付に係る事業及び雇用保険法の規定による失業等給付に係る事業に限ることを基本とし、労災保険法の規定による労働福祉事業並びに雇用保険法の規定による雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業については、廃止を含めた見直しを行うものとする」と定め、また第23条の2で「雇用保険法第66条の規定による国庫負担(失業等給付に係るものに限る。)の在り方については、廃止を含めて検討するものとする」と規定しています。
 総人件費改革(第42条〜第57条)では、5年間で5%以上の国家公務員数の純減、また地方公務員数の4.6%以上の純減を打ち出しています。独立行政法人、国立大学法人等については、その人件費の5年間で5%以上の削減を定めています。公共職業紹介所の業務等について、民間委託化の検討を決めています。
 公務員制度改革(第63条)は、「能力及び実績に基づく人事管理」等を定めています。
規制改革(第64条)では「民間活動に係る規制の撤廃又は緩和」に向けて「政府は、金融、情報通信技術、出入国の管理、社会福祉、社会保障、労働、土地の測量その他の分野における規制の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする」と規定しています。まさに社会福祉、社会保障、労働等の分野を資本のもうけの場としてさらに徹底して「民間」に開放しようとするものです。
 そして、それらを総合的に推進するために、第68条で「内閣に行政改革推進本部を置く」と定めています。第73条で、首相が行政改革推進本部の本部長に座り、全閣僚が本部員を占めることを定めています。
 
2006年4月3日「しんぶん赤旗」が下記のように報じています。
(以下は、2006年4月3日「しんぶん赤旗」記事の全文です)
―――今週の国会
「行革推進」法案を審議
医療改悪法案 本会議日程協議へ-
 2006年度予算の成立を受け、国会は重要法案の審議に焦点が移ります。小泉内閣が最重要法案と位置づける「行政改革推進」法案など「行革関連5法案」の審議が、(2006年4月)3日から衆院行政改革特別委員会で始まります。
(2006年4月)3日の衆院行革特別委員会は、小泉純一郎首相と全閣僚が出席して総括質疑を行います。(2006年4月)4日には一般質疑を行います。
 「行政改革推進」法案は、国家公務員を5年間で5%以上、地方公務員を5年間で4.6%以上「純減」するというのが最大の柱。政府系金融機関の統廃合も盛り込まれています。国民サービスの切り捨てにつながる大きな問題をはらんでおり、徹底審議が求められます。
 与党側は、高齢者を中心とする負担増、混合診療など保険医療の縮小を押し付ける医療改悪法案の衆院本会議での質疑も求め、同案の早期成立をはかる構えです。(2006年4月)3日の衆院議院運営委員会理事会で、本会議の日程について協議します。
 自民党の武部勤幹事長は、「行革推進」法案、医療改悪法案に加え、「教育基本法改正、国民投票法案も今国会成立を期していきたい」と強調しており、法案提出と審議に向け、動きを加速する構えです。
 (2006年4月)6日には、衆院憲法調査特別委員会が自由討議を行い、その後、改憲手続きを定める国民投票法制に関する「論点協議」のための理事懇談会を開きます。
 「偽メール」問題で、永田寿康衆院議員が提出した議員辞職願については、(2006年4月)3日の衆院議院運営委員会理事会で扱いを協議します。直近の本会議で辞職が許可される見通しです。また、永田氏の懲罰問題では、(2006年4月)3日に衆院懲罰委員会が理事会を開き、(2006年4月)4日に予定されていたメール提供者とされる西澤孝氏への証人喚問を中止することを決める見込みです。永田氏の議員辞職で、同氏の懲罰問題は消滅します。
参院決算委員会は省庁別質疑を行い、(2006年)4月5日に外務省・防衛庁にたいし質疑します―――
 
 
◎ 補装具の「削減・効率化」をやめさせ、無料支給を守るために
 全建総連東京都連の宮本英典書記次長から見せていただいた資料によると、労働福祉事業の見直しの検討状況について厚生労働省側は全建総連側に、『労働福祉事業の見直しについて(これまでの検討状況)』というタイトルの文書を出してきました(示してきました、見せました)。
 その文書『労働福祉事業の見直しについて(これまでの検討状況)』によると、基本的考え方として、先の国会で成立した「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(行革推進法)で労働福祉事業については「廃止も含め徹底的な見直し」を行うこととされたことを受け、事業の見直しを行う必要がある、としています。
 『労働福祉事業の見直しについて(これまでの検討状況)』は、全建総連が廃止・削減に強く反対している「未払賃金立替払事業(賃金支払確保法)」については、「関係者の意見を踏まえつつ、引き続き検討すべきではないか」としています。宮本英典書記次長の表現を借りれば、ペンディング(未決定、保留)ということです。なお、宮本英典書記次長が書いた文書によると、休業給付の際二割上乗せの「特別支給金」、中退金などの中小企業福祉事業等もペンディング(未決定、保留)となっていて、2006年9月以降の審議となっている、とのことです。
 私が相当イヤな感じを受けたのは、『労働福祉事業の見直しについて(これまでの検討状況)』が「削減・効率化を図るための見直しを行う方向とすべきではないか」としている事業の中に「補装具」が入っていることです。
 補装具の「削減・効率化」は、労災により傷病を被った人を狙い撃ちするものであり、私は絶対反対です、補装具の無料支給は絶対守り抜くべきです。
 『労災保険制度の詳解』(編者 厚生労働省労働基準局労災補償部労災管理課 発行所 株式会社労務行政)には、次のように書かれています。
 「労働災害により傷病を被った方で四肢喪失、機能障害等の残った方の社会復帰には、義肢その他の補装具が必要不可欠である。このため、労災保険では労働福祉事業として義肢等の支給を無料で行っている」、「労災保険の労働福祉事業として支給する義肢等は、現在、(1)義肢、(2)上肢装具及び下肢装具、(3)体幹装具、(4)座位保持装置、(5)盲人安全つえ、(6)義眼、(7)眼鏡、(8)点字器、(9)補聴器、(10)人口喉頭、(11)車いす、(12)電動車いす、(13)歩行車、(14)収尿器、(15)ストマ(腹壁につくられた排泄口)用装具、(16)歩行補助つえ、(17)かつら、(18)浣腸器付排便剤、(19)褥瘡(とこずれ)予防用ふとん、(20)介助用リフター、(21)フローテーションパッド(車いす・電動車いす用)、(22)ギャッジベッド(特殊寝台)の以上22種目である」
 
フローテーションパッド 人間の脂肪組織に似た性質を持つゲル構造の物質を使ったもので、圧力を分散・吸収する効果に優れています
 
 
◎ 補装具の「削減・効率化」やめさせ、無料支給継続求め、厚労省交渉
1 労働福祉事業の廃止・見直しの動向
 厚生労働省の『労働福祉事業の見直しについて(これまでの検討状況)』(以下、厚労省文書と略します)によると、厚労省の基本的考え方として、先の国会で成立した「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(行革推進法)で労働福祉事業については「廃止も含め徹底的な見直し」を行うこととされたことを受け、労働福祉事業の見直しを行う必要がある、としています。
 厚労省文書は、「未払賃金立替払事業(賃金支払確保法)」については、「関係者の意見を踏まえつつ、引き続き検討すべきではないか」としています。
 厚労省文書が「削減・効率化を図るための見直しを行う方向とすべきではないか」としている事業の中に「補装具」が入っています。
 補装具の「削減・効率化」は、労災により傷病を被った人を狙い撃ちするものです。補装具の無料支給は守り抜くべきです。
 『労災保険制度の詳解』(編者 厚生労働省労働基準局労災補償部労災管理課 発行所 株式会社労務行政)には、次のように書かれています。
 「労働災害により傷病を被った方で四肢喪失、機能障害等の残った方の社会復帰には、義肢その他の補装具が必要不可欠である。このため、労災保険では労働福祉事業として義肢等の支給を無料で行っている」、「労災保険の労働福祉事業として支給する義肢等は、現在、(1)義肢、(2)上肢装具及び下肢装具、(3)体幹装具、(4)座位保持装置、(5)盲人安全つえ、(6)義眼、(7)眼鏡、(8)点字器、(9)補聴器、(10)人口喉頭、(11)車いす、(12)電動車いす、(13)歩行車、(14)収尿器、(15)ストマ(腹壁につくられた排泄口)用装具、(16)歩行補助つえ、(17)かつら、(18)浣腸器付排便剤、(19)褥瘡(とこずれ)予防用ふとん、(20)介助用リフター、(21)フローテーションパッド(車いす・電動車いす用)、(22)ギャッジベッド(特殊寝台)の以上22種目である」
2 厚生労働省交渉
 2006年9月14日、建設関係労働組合首都圏共闘会議(建設首都圏共闘
 池上武雄議長)は厚生労働省と交渉を行い、「行革推進法が企図する労働福祉事業の廃止は行わないこと」を中心に要求。厚生労働省は、労働福祉事業の廃止・見直しの現時点での検討状況等を回答しました。
 この交渉に一員として参加しましたので、特に気になっている点での厚生労働省の回答を以下に記述しておきます。
労働福祉事業の見直しについては、厚生労働省と事業主団体で構成する「労働福祉事業見直しの検討会」(以下、「検討会」と略します)で検討中である。
 労働福祉事業は重要な役割を果していると認識している。効率化・合理化の観点から労働福祉事業の中の個別事業の精査を行っている。
 「検討会」での検討の上に、公労使参加の「労働政策審議会」でさらに具体化をはかっていく。
 今は検討段階である。労働側の意見を聞いていない。これから聞くことになる。
 労働福祉事業の中の「特別支給金」、「中小企業退職金共済事業」については、「検討会」の中で再検討の声は出ていない。
(労災の休業給付二割上乗せは、「特別支給金」から行われています)
労働福祉事業の中の「未払賃金立替払事業」については、引き続き検討する、ということだ。
「補装具及び社会復帰保養事業」について「事業の削減・効率化」のための見直しを「検討会」は言っているが、「補装具及び社会復帰保養事業」は事業名であり、必ずしも「補装具」を「削減・効率化」の対象にしているわけではない。
労働政策審議会については、厚生労働省のホームページに公開しているし、傍聴することもできる。
 
更新日時:
2008/01/19
「建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払」関連(6)
「建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払」関連(6)
海野和夫
 
◎ 元請〜5次という深い重層下請構造のもとでの工事代金不払い
 次のような、深い重層下請構造のもとでの、工事代金不払い事件です。
 発注者→元請→1次下請→2次下請→3次下請→4次下請→5次下請という深い重層下請構造です。
 工事は終了しています。
 1次下請は2700万円で2次下請に請け負わせ、1500万円しか払っていません。工事の遅滞による外注費の発生を、支払わない理由にしています。発生した外注費と支払うべき工事代金を相殺したというのです。
 いま、2次下請は夜逃げ状態。(2次下請は3次下請に200万円だけ払っています)
 3次下請は4次下請に1700万円で請け負わせ、1円も払っていません。3次下請も夜逃げ状態。
 4次下請は借金をして、5次下請に全額支払い済み。
 上記の構造を前提に考えると、
 一つは、元請責任の追及、もう一つは、1次下請との交渉が考えられます。
 1次は相殺の理由を、「工事の遅滞による外注費の発生」としていますが、工事の遅滞の原因が誰にあるのか、発注者なのか、元請なのか、1次自身なのか、2次なのか、3次なのか、それとも4次なのか? 明らかにする必要があります。
 工事の遅滞の原因が発注者または元請または1次にある場合は、言うまでもなく、2次に支払うべき工事代金と相殺する正当な理由にはなりません。
 工事の遅滞の原因が2次にある場合には、相殺の正当な理由になります。
 工事の遅滞の原因が3次にある場合、2次が選定した3次の不手際ですから、2次にも責任があり、相殺の理由になります。この場合は、2次は、相殺された分について、3次に支払うべき工事代金と相殺する理由を得たことになります。
 工事の遅滞の原因が4次にある場合、1次は、2次に支払うべき工事代金と相殺する理由になるし、順次、2次は3次に支払うべき工事代金と相殺、3次は4次に支払うべき工事代金と相殺、という構造が成立していきます。
 1次の選定責任の追及が必要です。1次が選定した2次が、3次に200万円払っただけで夜逃げ状態ということについて、1次は責任を負っています。自分が選定した下請が故意または過失によって他人に損害を加えた場合には、その下請を選定した請負業者も責任を負うことになります。
 同様に、3次が4次に1円も払わないまま夜逃げ状態ということについては、その3次を選定した2次にも責任があります。
 そして、最後に浮上するのが、重層下請構造での建設工事の最終的責任者としての元請の責任です。
 建設業法が定める元請責任です。
 今回のような不払い事件の場合には、建設業法41条2項、3項が定める元請責任での下請救済、言い換えると元請の立替払による不払いの解決が、必要になるし、建設業法が元請に要請するところです。
 また、元請は、重層下請構造下で今回のようなトラブルを起こさないよう下請を指導すべき重い責務を負っています。建設業法24条6項が定める元請による下請指導の責任です。
 元請は、法律やルールを守り、不祥事を起こさないよう下請を適切に指導すべき責任を負っています。
 重層下請構造下で今回のような不祥事が起こったということは、元請による下請指導が適切に行なわれていなかった、ということになります。この点について、元請に責任があります。
 
 
◎ 建設業法41条3項に基づく立替払いでの「合意書」のモデル
 「建設業法41条3項に基づく立替払いでの合意書のモデル」を教えてほしいとの要望がありましたので、あらためて、以下に「合意書のモデル」を掲載します。実際に大手住宅企業との間で交わした「合意書」を参考にして、それを匿名化したものです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
合 意 書
 A社を甲、B社を乙として、本日、下記のとおり合意した。
第1 甲は、乙に対して、○○社の倒産に伴う工事代金未払いに関して、建設業法第41条3項の趣旨に則り、○○社の未払い代金のうち金○○円を、○○年○○月末日限り(「限り」は「までに」の意味です――海野)立替払いするものとし、これを乙の指定する銀行口座(○○)への振込入金の方法により支払う。
第2 乙は、○○社の未払いに関して、本書に記載する以外には、名目の如何を問わず、甲に対して何らの経済的要求も行わないことを確認する。
第3 甲と乙は、○○社の未払いに関する甲と乙との間での紛争については、本書に記載するところによりその全てが円満に解決したことを相互に確認し、他に何らの債権債務もないことを相互に確認する。
第4 甲と乙は、本書に記載する内容については、第三者へ口外しないことを互いに確約する。
(第4の表現については、私たちは不要と考えますが、慎重な元請の場合、諸事情からこの表現の記述を要求してくる場合があり、私たちは譲歩して受け入れています。立替払での不払い解決が火急の課題ですから、話を壊さないように最大限配慮します――海野)
 以上の成立を証するため、本書2通を作成し、各自1通所持するものとする。
○○年○○月○○日
 甲     住所
       社名
       代表者名              印
 乙     住所
       社名
       代表者名              印
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 
◎ ─── 独立行政法人発注の公共工事でのトラブルの構造 ───
(関係者に配慮して匿名化してあります)
発注者  独立行政法人○○○○
元請   A社
1次下請 B社
2次下請 C社
3次下請 D社等数社
 以上のような重層下請構造の中で発生した、元下間のトラブルです。
 工事は、○○○○外壁修繕他工事です。
 多額の工事代金不払い被害を受けていると、2次下請のC社は主張しています。
1次―2次間での多額の未払いトラブルの発生です。建設業法に基づく元請責任での解決が求められています。
 @ 着工の大幅な遅れが事実としてあり、2ヶ月の工期が1ヶ月で完成しなければならなくなり、半分の工期になってしまったわけです。工事開始の遅れが、トラブル発生のもとになっています。工期の遅れを取り戻すために、実際に建設工事を施工する下請業者は、相当な無理を強いられます。工事開始の遅れの責任は誰にあるのか? 一つのポイントです。その責任が発注者にあるのか、元請にあるのか、あるいは1次にあるのか?
 2次には、工事開始の遅れの責任はありません。
着工の大幅な遅れの責任が主として元請にある可能性が濃厚です。
元請は「遅れについては、元請の責任の可能性が強いのは認める」と回答しています。
少なくとも、2次に工事開始の遅れの責任はないことは明白ですから、工事開始の遅れに伴う負担を2次に負わせるべきではなく、元請責任での解決が求められます。
 A 人工について、延べにすると相当な数の待機が存在し、元請の所長の指示による待機だと、2次は主張しています。
 元請は、この点に回答していません。
 B 1次が2次に指示して常用の約束で2次に施工させた工事部分があり、この部分の常用人工分が未払いと2次は主張しています。事実とすれば、元請責任での解決が必要です。
 元請は「当社の職員の中に、常用の約束をした者はいない」と文書回答してきました。仮にそうだとしても、1次が2次に常用の約束をして施工させたとすれば、その未払いについては、元請が責任を負うことになります。
 C 多大な人工ロス、材料ロス、手戻り(やり直し)が存在しています。このようなロスを発生させた責任が、元請側にあるのか、2次の側にあるのか、が問題です。元請の不適切な指示がロス発生の原因だと、2次は主張しています。元請の責任で発生したとすれば、国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」にも明記されているように、(ロス発生について)元請に責任がある場合には、元請の負担で解決する必要があります。このような場合に、下請に負担を転嫁するのは、建設業法違反になります。
 元請は「不適切な指示はしていない」と文書回答してきました。
 D 「やり直し」の一部は、元請に責任がないような箇所もあるようです。「請負契約で決められた工事が適正に行われていないので、適正な工事になるよう指示しただけである」と元請は主張しています。請負契約ですから、2次の責任でロスが生じた部分は、2次の負担で解決せざるを得ないでしょう。
 E 元請の所長による指示が全て、口頭での指示であり、書面による指示が行われていないことは、主として元請の責任を問われる部分です。その上、元請として下請指導、現場管理をする上で当然必要な日報が、存在していない、日報が付けられていない、という問題があります。元請の責任が問われます。
 「口頭による指示」、「日報の不存在」については、元請も認めています。
 F 元請の所長が工期の途中で(元請企業)を退社してしまい、所長交代という事態が発生しています。元請の責任が問われます。
 所長の工期途中での退社、交代についても、元請は認めています。 
 
 
◎ 質問「建設業法と賃確法・発注者と許可行政庁の責任」へのお答え
 以下のようなご質問が、当HPに寄せられましたので、お答えしておきます。実は、相当深い質問で、直面すると、私たちも悩む問題です。一緒に考える姿勢で、お答えしたいと思います。
 なお、賃確法適用・不適用については複雑な問題もあるのですが、それは省いて、できるだけ単純にお答えします。
(質問)
2008/1/16(水) 14:50  建設業法と賃確法・発注者と許可行政庁の責任について教えてください。
 いつもコラムを見ています。大変勉強になります。
 以下の2点の質問に対する過去の事例があればコラムで紹介するか、お返事をいただければ幸いです。1点目は、例えば地方自治体の公共事業(A市)で特定建設業者の元請(B)、一次下請(C)・二次下請(D)・Dの常用労働者(E)で、Dの倒産もしくは事実上の倒産によるEへの賃金不払いとしましょう。
 一次業者との交渉で解決しない場合に元請へ「建設業法41条2項による立替払」を要請するのか、最初から賃金確保法による立替払を労働基準監督署に申請するのか、どちらが良いのでしょうか?後述の方が特定元請からすると「ありがたい話」に思えるのですが…。
 2点目は同じく公共事業の発注者がA市で特定元請Bとしましょう。二次業者Dが事業継続中の場合あるいはEへの不払いが工事代金の場合ですが、Bが建設業法による立替払の要請に対して責任を果たそうとしない時に、発注者責任(A市)と許可行政庁(都道府県知事もしくは国道交通省)への申し入れは、どちらを先にするべきなのでしょうか?
(回答)
◎ 1点目 
 1点目のご質問での構造は、
 発注者     A市(公共事業)
 元請      特定建設業者B
 1次下請    C
 2次下請    D
 Dの常用労働者 E
 という重層下請構造で、2次下請Dの倒産または事実上の倒産によるE(2次下請Dの常用労働者)への賃金不払いというものです。
 結論を言うと、建設業法に基づく元請責任をはたさせるのが大事であり、今回のように元請の特定建設業者が存在する場合は、第一には、建設業法41条2項に基づく元請責任での(不払い賃金の)立替払を求めるべきだと思います。
 同時に、注意する必要があるのは、賃確法は一定期間申請しないと適用にならなくなりますので、この点の見極めが大事です。
 実例を言うと、清水建設が元請のケースで、「常用労働者」というより「手間請労働者」だったのですが、清水建設に立替払いを求めたときは、清水建設自らが努力して労基署に申請し、賃確法の適用を実現しました。
◎ 2点目
 2点目でのご質問の構造は、
 発注者     A市(公共事業)
 元請      特定建設業者B
 1次下請    C
 2次下請    D
 この下に    E
 というもので、2次下請Dが事業継続中の場合またはEへの不払いが工事代金の場合です。
 そして、この構造のもとで、元請の特定建設業者Bは、建設業法による立替払の要請に対して責任をはたそうとしません。
 このような場合は、原則として、発注者への申し入れを先に行ないます。
 公共工事の発注者には、入契法成立時の参議院付帯決議「(公共工事の発注者は)建設労働者の賃金・労働条件の適切な確保に努めること」という発注者責任があり、また、元請を指導・誘導して、元請に建設業法41条2項、3項に基づく立替払いを立派に行なわせることで、「建設労働者の賃金・労働条件の適切な確保」という発注者責任をはたすことができるからです。
 (公共工事)発注者段階で解決しない場合にはじめて、許可行政庁に指導・誘導を求めることになります。
 実例は、多数あります。
 
 
◎ 不払い解決要請 公共工事発注者→許可行政庁 F市、F県のケース
 「不払い解決要請 公共工事発注者→許可行政庁」の実例をとの要望がありましたので、以下に発注者F市、特定建設業者の許可行政庁F県のケースを紹介しておきます。
 F市発注の公共工事の現場で発生した倒産・不払いです。
 元請はA社、1次下請のB社が倒産、それに伴い2次下請のC社が工事代金不払い被害を受けました。元請のA社はF県知事許可の特定建設業者です。
 元請のA社に対して2次C社は、建設業法41条3項に基づく立替払での救済を求めました。A社は応じません。
 C社は、特定建設業者であるA社の許可行政庁であるF県に、元請責任での立替払いを行うよう元請A社を指導するよう申し入れました。
 県は、元請A社を呼んで指導。
 A社は、建設業法41条3項に基づく立替払をしないという姿勢を変えません。
 C社が県に話すと、「一度呼んで指導したのだから、あとは民民の話し合いで解決を」と言っているとのことです。
(解決のためには)
一つは、発注者のF市への申し入れです。
「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律案に対する附帯決議」(略称 入契法附帯決議)の第6項は、公共工事の発注者の責任として「建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるよう努めること」と定めています。以下に載せておきます。
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律案に対する附帯決議
参議院国土・環境委員会
平成12年11月16日
 政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、適正化指針の策定等その運用に遺憾なきを期すべきである。
 1 国民の負担による公共工事の受注者の選定に関し、国民の疑惑を招かぬよう努め、談合、贈収賄等の不正行為の根絶に向けて、厳重な監督処分、指名停止の運用基準の見直し等を行うこと。
 2 一般競争入札における審査体制の整備、指名競争入札における指名基準の公表等公共工事の入札及び契約制度について更なる改善を推進すること。
 3 入札予定価格の公表の在り方については、今後の検討課題とし、少なくとも事後公表を行うよう努め、地方公共団体においては事前公表を行える旨を明確にすること。
 4 発注者は、入札参加者に対し、対象工事に係る入札金額と併せてその明細を提出させるよう努めること。
 5 公共工事の入札及び契約に関して監視や苦情処理等を行う第三者機関については、実効を伴った効果的な活動がなされるよう努めること。
 6 不良業者を排除する一方で、技術と経営に優れた企業の育成に努め、地域の雇用と経済を支える優良な中小・中堅建設業者の受注機会が確保されるよう配慮するとともに、建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるよう努めること。
 7 施工体制台帳の活用等により、元請企業等と下請企業の契約関係の適正化・透明化に努めること。
 8 いわゆるダンピング受注は、手抜き工事、下請へのしわ寄せにつながりやすく、また、建設業の健全な発達を阻害するので的確に排除し、公共工事の品質の確保を図ること。
 9 公共工事の入札及び契約全般について事務の簡素化・効率化及び競争性・透明性の一層の確保等を図る観点から、IT化を促進するよう努めること。
 10 公共工事の入札及び契約制度の改善を進めるに当たっては、公共工事の大宗を占める地方公共団体における改善の徹底を図るとともに、規模の小さい市町村等に関しては、その実情を勘案して、執行体制の確保を図るための必要な助言を行うなど、適切な支援措置を講ずること。
 右決議する。
 工事代金の大半は労務費であり、工事代金の不払いが発生しているということは、「建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われていない」状況の発生であり、発注者の責務としてこの解決に努める必要があります。
 解決の道筋は示されています。建設業法41条3項に基づき、元請のA社が立替払いを行い、C社を救済することです。この方向を推進するために、発注者の責務として元請に働きかけ、元請が建設業法を守るように適切な指導、助言を行うことです。
もう一つは、事実かどうかわかりませんが、事実とすれば県の対応は改善が求められます。
たとえば、埼玉県、神奈川県、東京都は、解決するまで元請の特定建設業者を呼んで、指導します。神奈川県は、文書での指導、勧告を実施しています。
国土交通省関東地方整備局は、解決するまで元請の特定建設業者を呼んで、指導します。
国土交通省関東地方整備局は、次のように言明しています。
@ 元請を呼び、建設業法の趣旨を理解させる。「建設業法の趣旨」とは、「不払いを受けた下請業者等の窮状の救済」ということである。
A 「二重払い」は立替払いをしない理由にはならない。
B 全建総連の各県連・組合を不払い交渉の窓口として認める。 
C 下請の保護はもちろんのことである。特定建設業者の許可だが、下請保護ということで特定建設業者の許可を与えている。そのように特定建設業者の元請を指導していきたい。
D (元請責任での立替払いについて)解決に当たらない特定建設業者の元請に対しては強く指導していく。
E 工事代金は、建設業法41条3項に基づく立替払いの対象に入っている。付言すると、建設資材納入代金も立替払いの対象に入っている。
 国土交通省本省は、「元請の特定建設業者が立替払いをしないと開き直れば、それですむかというと、決してそんなことはない」と言明しています。
 参議院国土交通委員会では、扇国土交通大臣(当時)が、「建設業法を守らないような特定建設業者に対しては、特定をはずすことを含めて必ず方法はある」と答弁しています。
 特定建設業者の許可行政庁として、元請による下請救済が実現されるまで元請への指導を続けることは、当然のことです。
 全国の都道府県が、当然このレベルで、元請の特定建設業者への指導にあたるべきです。 
(解決しました)
その後、F県は元請への指導を改善し、より強い指導を実施。それに応えて元請は、一定の立替払いを行ない、円満解決に到りました。
 
 
◎ ――― 「高齢者用施設」建設工事での倒産・不払い事例 ―――
1 今回の構造
 今回紹介するのは、「高齢者用施設」建設工事での倒産・不払い事例です。
 構造を見るとやはり、重層下請構造下での中間業者の倒産により下位業者が受けた工事代金不払い被害という構造です。
 発注者
 元請
 1次
 2次
 3次
 という重層下請構造です。
 2次が3次に工事代金を支払うことなく、行方不明となり、3次が約500万円という不払い被害を受けたものです。
 元請は、○○県知事許可の特定建設業者です。
 「高齢者用施設」の新築工事です。
2 問題点
 ○ 元請の指示ミス、すみだしのミスなどの可能性がある。 
 ○ 1次と2次の間の契約が、書面の契約ではなく、口頭での契約の可能性がある。
 ○ 1次と2次の間で、追加工事について書面による契約がおこなわれていない可能性がある。 
 ○ 中間業者(2次)が下位業者(3次)に工事代金を支払うことなく、行方不明となっている。このことは、建設業法24条6項が元請に責任を負わせている、元請による下請指導が適切におこなわれていなかったことを示している。法律やルールを守るよう下請を指導すべき元請の責務が適切にはたされていないことを、示している。そのような中間業者を選んだという元請の選定責任もある。
 ○ 下位業者(3次)に工事代金を支払うことなく行方不明となるような2次を選んだという点で、1次は選定責任を負っている。自分が請け負った工事を2次に請け負わせた1次は、2次が故意または過失で他人に加えた損害について損害賠償の責任を負っている。
 ○ 言うまでもなく、元請の特定建設業者は、建設業法41条3項にもとづく立替払での下請救済の責務を負っている。
3 経過と方向
 不払い被害を受けた3次は、1次に相談。1次は「うちは払えない」、「元請に相談してくれ」という回答。 
 3次は元請に相談。元請は「救済できない」と回答。理由は、「3次とは直接契約関係にない」、「1次に全額支払い済みである」、「2次への債務はない」というものです。
 3次は、特定建設業者の許可行政庁の○○県に要請。
建設業法41条3項にもとづく立替払での3次救済をおこなうよう元請の特定建設業者を指導、誘導するよう、県の担当部局に要請しました。
 (国土交通省関東地方整備局は、「二重払いを立替払拒否の理由にすることはできない」、「賃金はもとより工事代金も建設資材納入代金も立替払の対象」、「建設業法の主旨は不払いを受けた下請業者の窮状の救済である」、「下請保護ということで特定建設業者の許可は与えられている」と明言しています)
 元請が救済拒否の理由としてあげている「1次に全額支払い済みである」等を国土交通省関東地方整備局の言明と照らし合わせると、元請の言い分を正当化できる根拠が全くないことが、よくわかります。
 建設業法を守って、不払い被害を受けた下請の窮状を救済するよう、元請の特定建設業者を適切に指導、誘導することが、許可行政庁の○○県に求められているし、期待されています。
 
 
◎ 大手ゼネコンが元請  元請〜5次の深い重層下請構造下での倒産・不払い
(匿名にしてあります)
 今回の事例の構造は、
 元請 大手ゼネコンの○○社
 1次下請
 2次下請
 3次下請 倒産
 4次下請 不払い被害を受ける
 5次下請 4次から支払ってもらったので、不払い被害は受けていない。
 現場は、ビルの解体工事です。
4次が請け負ったのは、アスベスト除去工事です。
 3次が倒産したために、4次は、3次からアスベスト除去作業の代金を1円も貰っていませんが、5次には支払いました。
 倒産するような下請を選定したという元請の、下請選定の責任があります。
 下請が倒産して不払いという損害を他の業者、労働者に加えたわけですから、元請として下請指導を的確におこなっていなかった、ということになります。
 また、3次、4次の間の契約が、書面による契約ではなく、口頭による契約であり、この点でも、元請として下請指導を的確におこなっていなかった、ということになります。
 3次と4次との間の口頭による契約では、4次が請けた仕事は「アスベスト除去の労務作業」です。仮に「4次ではなく3次の指揮命令下にアスベスト除去の労務作業に従事していた」などの場合には、偽装請負・違法派遣のおそれが出てきます。この点も、元請責任が問われるところです。
 4次は、建設業法にもとづく立替払いを求めて元請と交渉。
 元請は「見舞金」を支払うと回答。 
 できるだけ「見舞金」という名目は避けたほうがいいと思います。ただ、立替払いを受ける金額、比率が問題ですから、不払い被害者が納得するような金額、比率での立替払であれば、名目にどこまでも固執するのは、どうか? と考えます。
かつての「昭和鋼業民事再生」のケースでは、今回のケースの元請である○○社との交渉の過程で、立替払の比率をゼロ→25%→40%→50%→57%と引き上げていますから、がんばって、金額、比率を高めることだと思います。工事代金などの立替払の基準は、国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)に明記されているように、「損害額を限度として、不払い被害を受けた業者の当面の窮状の救済に足りる金額」です。
なお、賃金の立替払の基準は、上記の『建設業法解説』によれば、「世間相場での全額」です。
 かつて、(当時)立替払での下請救済を拒否し続ける、この○○社に対して、全建総連関東地協として1000人規模の本社前宣伝、抗議行動を準備し、建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払を行わせた経験を、建設労働運動は持っています。
――参考資料――
(以下は、厚生労働省パンフ、東京労働局パンフからの抜粋です。「請負とは」の基準を示しています。示された基準を全て満たす場合のみ請負です――海野)
 1 自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用する者であること。
  ・ 業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
  ・ 労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
  ・ 企業での秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うこと。
 2 請負契約で請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。
 ・ 業務の処理に要する資金につき、全て自らの責任の下に調達し、かつ、支弁(金銭を支払うこと)すること。
 ・ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としての全ての責任を負うこと。
 ・ 単に肉体的な労働力を提供するものではないこと。
 ・ 業務の処理のための機械、設備、材料、資材を自らの責任と負担で準備している、又は処理すべき業務を自らの企画又は専門的技術、経験により処理していること。
 ・ 業務処理に必要な機械、資材等を相手方から借り入れ又は購入した場合には、別個の双務契約(有償)が締結されていること。
 
 
◎ ―――  解体工事と建設廃棄物処理での元請責任  ――― 
解体工事が建設業法上の「建設工事」に該当するのかどうか解体工事と建設業法との関係を調べてみましたが、当然ですが、建設業法上の「建設工事」に該当することが、わかりました。
建設業法第2条には「この法律において『建設工事』とは、土木建築に関する工事で別表第1の上欄に掲げるものをいう」と規定され、『建設業法解説』(大成出版社)では、その「別表第1の上欄に掲げるもの」についての解説で「各建設工事の内容及びその具体的な例示」を示し、次のように解体工事が出てきます。
「土木一式工事」 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。以下同じ。)
 アンダーラインのところが大事なところです。「以下同じ」というのは、「別表第1」のトップに土木一式工事が掲げられ、それに続いて以下「建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、浚渫工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事」が掲げられていますから、「建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、浚渫工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事」も「補修、改造又は解体する工事を含む」ことを意味しています。
 したがって、解体工事は建設業法上の建設工事であり、解体工事についても建設業法が定める元請責任は及び、建設業法41条2項、3項が定める元請責任での立替払の対象になる、ということになります。
 解体工事は建設工事ではないから立替払の対象ではない、という理屈は成立しません。
 ここで、もう少し複雑な問題に踏み込みます。
 解体工事から建設廃棄物が発生します。
 建設廃棄物の流れは、解体→収集・運搬→中間処理→最終処分となります。
 「解体」は解体工事であり、上記のように建設業法上の建設工事になるわけですが、「収集・運搬→中間処理→最終処分」は建設廃棄物の処理であり、それぞれ収集・運搬業者、中間処理業者、最終処分業者が存在し、「建設廃棄物の処理」は建設業法上の建設工事ではない、と行政は解釈している、と考えられます。 
 したがって、建設廃棄物の処理については、元請責任は及ばないのかというと、そんなことはありません。
 2001年の環境省通達が、「建設廃棄物処理は元請の責任」、「建設廃棄物処理費用の負担は発注者の責務」を明示しています。
 
 
◎ ──── 元請の一般建設業者の責任はどこまで及ぶのか? ────
 パワービルダーと言われる一建設は一般建設業者であり、4年位前だったと記憶していますが、一建設が元請の、重層下請構造の現場で、1次下請が倒産し2次下請が工事代金の不払い被害をうけた際、一建設は、「自分は特定建設業者ではなく一般建設業者」ということを理由として、建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払を拒否しました。
 直近の事例では、群馬県知事許可の一般建設業者が、同様の理由で、建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払を拒否しています。
 そこで、国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)をあらためて見て、一般建設業者の責任について調べてみました。
 建設業法24条6項は、下請が法律やルールを守るよう下請を適確に指導すべき元請の指導義務を定めています。
 『建設業法解説』の、建設業法24条6項についての逐条解説の中に、「下請負人に対する指導義務等を負うのは、特定建設業者のうち、『発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者』だけである。したがって、特定建設業者が下請負人である場合は、本条(建設業法24条6項)の義務を負うところではないが、これは、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者が、当該建設工事の施工に関して統一的かつ総合的な指導監督を行うものであり、その下に各下請負人が共同して工事を施工するという実態を考えて、最終的責任者たる最初の元請負人である特定建設業者に法律上の義務を限定したものである。このことは、しかし、他の元請負人が下請負人に対する指導を怠ってもいいという趣旨でないことはもちろんであり、他の元請負人においても積極的に同様の指導に努めるべきであることはいうまでもない。また、同様に一般建設業者においても、当該工事の下請負人に対し本条(建設業法24条6項)の趣旨に準じ指導を行うことが望ましいことも当然のことである」と記述されています。
 重層下請構造下で、下請が倒産し、下位下請に工事代金等の不払い被害を与えたということは、元請の責任が問われます。一つには、倒産し他人に損害を加えるような下請を選定したという元請の選定責任であり、もう一つは、下請が倒産し他人に損害を加えたということは、法律やルールを守るよう下請を適切、適確に指導すべき元請の責任を果たしていなかったということになり、元請の責任が問われるということです。
 自分は一般建設業者だから、自分が元請の現場でおこった倒産・不払いについて、「責任はない、知らない」ではすまないのであり、責任があり、責任を負っているのであり、責任にもとづいて不払い解決に努める必要があります。
 その責任を認めない元請の一般建設業者がいる場合には、許可行政庁の国土交通大臣や都道府県知事は、その責任を果たすよう元請の一般建設業者に指導、助言及び勧告を行うことができます。その根拠が、建設業法41条1項です。
○ 「建設業法41条1項」 国土交通大臣又は都道府県知事は、建設業を営む者又は(建設業法)第27条の37の届出のあった建設業者団体に対して、建設工事の適正な施工を確保し、又は建設業の健全な発達を図るために必要な指導、助言及び勧告を行うことができる。
○ 「建設業法27条の37」  建設業に関する調査、研究、指導等建設工事の適正な施工を確保するとともに、建設業の健全な発達を図ることを目的とする事業を行う社団又は財団で国土交通省令で定めるものは、国土交通省令の定めるところにより、国土交通大臣又は都道府県知事に対して、国土交通省令で定める事項を届け出なければならない。
 
 
◎ 不払い被害を受けた下請が特定建設業者の場合 立替払を受けられない?
 一部で、「下請業者が特定建設業者の場合、建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払の対象にならない、立替払いを受けられない」と言われています。
 とりあえず、国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)をあらためて見て、調べてみました。
 特定建設業者の下請代金の支払期日等を定めた建設業法24条の5についての、『建設業法解説』の逐条解説部分に、次のような箇所がありました。
 ○ 「建設業法24条の5」 特定建設業者が注文者となった下請契約(下請契約における請負人が特定建設業者又は資本金額が政令で定める金額以上の法人であるものを除く。以下この条において同じ。)における下請代金の支払期日は、前条第2項の申出の日(同項ただし書の場合にあっては、その一定の日。以下この条において同じ。)から起算して50日を経過する日以前において、かつ、できる限り短い期間内において定められなければならない。
2 特定建設業者が注文者となった下請契約において、下請代金の支払期日が定められなかったときは前条第2項の申出の日が、前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは同条第2項の申出の日から起算して50日を経過する日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす。
3 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となった下請契約に係る下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならない。
4 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となった下請契約に係る下請代金を第1項の規定により定められた支払期日又は第2項の支払期日までに支払わなければならない。当該特定建設業者がその支払をしなかったときは、当該特定建設業者は、下請負人に対して、前条第2項の申出の日から起算して50日を経過した日から当該下請代金の支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に国土交通省令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。
○ 政令
(建設業法第24条の5第1項の金額)
「第7条の2」 建設業法第24条の5第1項の政令で定める金額は、4千万円とする。
 本条の規制の対象となる「下請契約」は、「特定建設業者が注文者となった下請契約」であるが、本条の立法趣旨が、経済的弱者である下請負人に対する下請代金の支払の著しい遅延を防止し公正な取引を確保しようとするものであることから、特定建設業者と同等以上の経済的能力を有すると認められる者が下請負人になった場合にまで、その保護を図る必要はないと考えられるので、下請負人が「特定建設業者又は資本金額が政令で定める金額以上の法人」である場合には、本条は適用されないこととされている。この本条の適用を除外される「特定建設業者」は、「当該建設工事に係る特定建設業者」であり、また「資本金額が政令で定める金額以上の法人」とは、それと同等以上の資力を有すると認められる「資本金額4千万円以上の法人」である。
(以上を見る限り、建設業法そのもの(建設業法24条の5)を見ても、建設業法24条の5についての『建設業法解説』の解説を見ても、特定建設業者である下請に適用されないのは本条(建設業法24条の5)であり、建設業法41条3項ではありません。『建設業法解説』全体を見ても、特定建設業者である下請に建設業法41条3項が適用されないとの記述は見当たりません。まさに特定建設業者である下請に適用されないとの記述があるのは、本条(建設業法24条の5)だけであり、『建設業法解説』全体を見ても、本条(建設業法24条の5)以外への不適用の広がりは見られません。特定建設業者と言っても、大手ゼネコン、大手住宅企業もいれば中小規模の財務基盤が脆弱なゼネコン、住宅企業もいます。少なくとも、一律に、「特定建設業者」ということだけで、建設業法41条3項の適用から除外されると解釈するのは、差し控えるべきであり、下請保護に反すると言わざるを得ません──海野)
 
 
建設業法41条3項が言う「その他の適切な措置」に「仕事の提供」は入るのか?
海野和夫
 元請責任での立替払での労働者「救済」を定めている建設業法41条2項、元請責任での立替払での下請業者「救済」を定めている建設業法41条3項は、下記のように、労働者「救済」、下請業者「救済」の措置について「立替払することその他の適切な措置」と表現しています。
「建設業法41条2項」 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工のために使用している労働者に対する賃金の支払を遅滞した場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、支払を遅滞した賃金のうち当該建設工事における労働の対価として適正と認められる賃金相当額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。(アンダーラインは海野)
「建設業法41条3項」 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、当該他人が受けた損害につき、適正と認められる金額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。(アンダーラインは海野)
 
 あるゼネコンは、「仕事の提供」が「その他の適切な措置」になるとの、独特の見解を示しています。
 本当にそうでしょうか?
 国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)は、別の見解を示しています。
 建設業法41条2項に関する解説で『建設業法解説』は、「本項(建設業法41条2項)による特定建設業者に対する勧告は、立替払のほか、『その他の適切な措置』がある。このうち『その他の適切な措置』には、立替払と同等の効果を有する当該労働者に対する貸付(無利子、無担保で、かつ、労働者が賃金の支払を受けるまでの返済を猶予するもの)又は賃金の支払に充当することを条件とする当該賃金不払を行った下請負人に対する融資などが考えられる」
 これは、建設業法41条3項の「その他の適切な措置」にも準用されるというかあてはまるというか、そういう性質のものだと思います。
 現に国土交通省関東地方整備局は、「(下請が不払い被害を受けたとき)口が裂けても、仕事の提供で下請救済をというようなことを、元請の特定建設業者に言うわけにはいかない」と私たちに回答しています。
 
 
◎ ── 深い重層下請構造下での倒産・不払いの「構造」について ──
全建総連の佐藤正明書記長(当時)が委員として入っていた国土交通省建設産業政策研究会「建設産業政策2007」も指摘していますし、またサブコン団体も言明しているように、建設現場の重層下請構造はさらに深まってきています。深まりつつある重層下請構造の中で、建設業法違反、ルール違反、トラブル、混乱が多発しています。倒産、不払いもそうです。重層化の深まりを反映して、深い重層下請構造下での倒産、不払いが目立ちます。
 最近の事例を以下に、紹介しておきます。
 百貨店内の店の設計、内装をおこなっていた○○社が破産。
 建設現場の構造は、
 元請   財務体力が優良なゼネコン
 1次下請 破産
 2次下請 20社位 不払い被害を受けました
 3次下請
 4次下請
 5次下請
 以上のような深い重層下請構造です。
 元請と(破産した)1次下請との間に、工事代金、追加工事をめぐるトラブルが発生していた、と言われています。真偽を含めて、どちらがどうなのか、正確なことはわかりません。
 元請は、「1次に過大な金を支払っている」、「応援等を入れ、過払い状態」と主張。
 施工体系図に見当たらない下請が存在しています。言い換えると、下請の一部が施工体系図に載っていません。
 1次との協議、合意がない工事代金の「支払い差し止め」がおこなわれています。
 破産、不払いをおこすような1次を選任したという元請の責任。
 破産、不払いをおこしたことを含めて1次を適切に指導することができなかった元請の責任。言い換えると、建設業法24条6項がさだめる下請指導の責任をはたせなかった元請の責任。
 「コノヤロー」、「たかりとしか思えない」と発言するなど、元請としての品性、誠実さは、どうなのか? 建設業法は、元請の誠実性をさだめています。
 
 
◎ ── 深まる重層下請構造下での倒産、不払いの「構造」(2) ──
 以下のような重層下請構造になっています。
 元請 ゼネコン 
 1次 破産
 2次 
 3次  
 4次 
 5次 
 以上のような元請〜5次の、深い重層下請構造の中に、無許可業者が存在し、施工体系図に載っていない下請業者が存在し、破産、不払いが発生し、元請による重層下請構造の把握(建設業法24条の7)、それにもとづく下請指導(建設業法24条の6)、また元請責任での不払い解決(建設業法41条2項、3項)が課題であることが、浮上してきています。
(交渉の経過)
 工事代金の不払い被害を受けた5次業者は、4次、3次、2次、1次と働きかけましたが、4次、3次、1次の業者の回答は要するに「上から貰っていないから、払えない」というものです。また、2次の業者に連絡したのだが「つかまらない」とのことです。
 そして、1次が破産。
 5次業者は、建設業法41条3項にもとづく(工事代金不払いの)元請責任での解決を求めて、元請と交渉中。
(各当事者の文書での主張)
○ 2次 
1次は2次に対して、本工事の一部と追加工事を未払いの状態である。
○ 1次 
2次は、元請に工事支援を要請。元請との間で1次に不利益となる合意をした。このため1次は、元請から工事代金の支払を受けていない。
 2次が工事をした部分については、1次は2次に支払い済み。
 最終的に元請から支払いを受けられない場合には、2次に対し損害賠償請求をおこなう。
○ 元請 
 元請は1次と契約。
 1次は、一部工事ができないとのことで、部分解除。この部分について元請は他の業者に発注。元請がその業者に支払うことになっている。
 元請は1次に追加工事を発注。 
 1次の応援要請にもとづき元請が紹介した業者への労務費を、1次は支払わなかった。1次に通知の上、元請は立替払いした。
 上記立替払金と下請工事代金残金とを対当額で相殺した。
 その結果、元請は1次に対して過払い状況にある。
 
 
◎ ──────  「ケーシング」での倒産・不払い  ──────
 
<http://kw.allabout.co.jp/glossary/g_house/w002463.htm>
 上記サイトの「住宅用語集」によると、
ケーシングとは、「窓のまわりにつける、飾り用の枠」のことで、飾りにとどまらず「クロスのはがれや結露の浸透を防ぐ効果がある」、とのことです。
 このケーシングを、工場でつくり、建設現場に納入する、まさに建設資材納入代金で、倒産・不払いがありました。
 元請 ゼネコン
 1次業者 破産
 2次業者 「ケーシングの納入代金」の不払い被害を受ける
 もう少し複雑なのですが、簡単に言うと、上記のような構造です。
 元請と1次業者との契約は、建設工事の請負契約です。
 この1次業者が破産して、2次業者に不払い被害を与えたわけですから、建設業法41条3項が言う「下請業者が他人に与えた損害」に該当し、2次が受けた「ケーシングの納入代金」(建設資材納入代金)の不払い被害について、元請のゼネコンは、建設業法41条3項にもとづき、立替払をおこない、2次業者を「救済」しなければなりません。
 国土交通省がつくった解説書『建設業法解説』(大成出版社)も国土交通省関東地方整備局も、同様の見解、解釈を示しています。
 大手ゼネコンも、上記と同様の方向で、協力、解決しています。
 
 
建設業法41条2、3項が言う「その他の適切な措置」とは?
海野和夫
「建設業法41条2項」 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工のために使用している労働者に対する賃金の支払を遅滞した場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、支払を遅滞した賃金のうち当該建設工事における労働の対価として適正と認められる賃金相当額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。
「建設業法41条3項」 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、当該他人か受けた損害につき、適正と認められる金額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。
上記の、建設業法41条2項、3項が言う「その他の適切な措置」とは何か?
繰り返し、蒸し返され、問題化する箇所です。
原点に戻り、国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)を読むと、以下のように書かれています。
 
「本項による特定建設業者に対する勧告は、立替払のほか、『その他の適切な措置』がある。このうち『その他の適切な措置』には、立替払と同等の効果を有する当該労働者に対する貸付(無利子、無担保で、かつ、労働者が賃金の支払を受けるまでの返済を猶予するもの)又は賃金の支払に充当することを条件とする当該賃金不払を行った下請負人に対する融資などが考えられる」
 「その他の適切な措置」は「仕事の提供」だと言う一部元請の主張は、間違いであることが、わかります。
 国土交通省関東地方整備局も、「(その他の適切な措置として)仕事の提供をとは、口が裂けても(元請に)言えない」と言明しています。
 まして建設労組が、「その他の適切な措置」として「仕事の提供」を元請に求めるなどというのは邪道であり、直ちにやめるべきです。
 
 
◎ 「現場作業ではない」、「破産会社と直接の関係がない」は立替払の対象外?
 1次下請が破産。
元請と破産会社との契約は、建設工事の請負契約です。
1次の破産により、2次以下の業者が不払い被害を受けました。そこで、元請に対して、建設業法41条3項に基づく元請責任での立替払を求めて交渉。
元請は、「現場作業ではない」、「破産会社と直接の関係(取引)がない。(不払い被害を受けた業者は5次)」ことなどを理由に、立替払を渋っています。
「現場作業ではない」、「破産会社と直接の関係(取引)がない」ことを立替払拒否の理由にすることができるのかどうか、以下に論点整理をおこないます。
1 現場作業ではない
 国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)はこの点について明確に「下請負人がさらに工事を下請施工させる場合のその下請負人(いわゆる孫請負人)に対する下請代金の支払の遅延するような場合、下請負人の建設資材納入業者との間の取引関係に基づく代金の不払等をする場合、下請負人と工事現場周辺の商店等との取引関係に基づく代金の不払等をする場合」を元請責任での立替払の対象だと規定しています。
 従って、「現場作業ではない」ことを立替払拒否の理由にすることはできません。
2 破産会社と直接の取引関係にない
 同様に国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)がこの点について明確に、次のように規定しています。「(元請責任での立替払の対象となる不払は)元請の特定建設業者と直接に下請契約を締結したいわゆる第1次下請負人(が起こした不払)に限らない。当該特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工する者である限り、当該特定建設業者と直接的な契約関係に立たないいわゆる孫請負人等第2次下請負人以下の者(の起こした不払)も含まれる」
 「破産会社と直接の取引関係にない」、「5次」、「最終下請」などを立替払拒否の理由にできないことも、明確です。
3 建設工事ではなく、その上3次の業者に対して、元請責任での立替払が実施された実例
「残土運搬」が建設業法に基づく元請責任での立替払の対象になるのかどうか、問題が発生し、最初、大手ゼネコン○○社は「残土運搬」は建設業法に基づく元請責任での立替払の対象にならないとの見解を打ち出しました。
 しかし、国土交通省関東地方整備局は逆に、「残土運搬」は建設業法に基づく元請責任での立替払の対象になるとの見解を示しました。
 そして、大手ゼネコン○○社は、国土交通省関東地方整備局の指導に従い、「残土運搬」が立替払の対象になることを認め、立替払いを実施し、円満解決に到りました。
 国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)を読むと、建設業法上の「建設工事」の例示の一つとして、「根切り工事」をあげています。
 『総合工事業者・専門工事業者間における工事見積条件の明確化について─「施工条件・範囲リスト」(標準モデル)の作成─第3版』によると、根切り工事というのは掘削工事であり、工程は、掘削→積込→残土処理(残土運搬)の流れになります。
 今回、倒産・不払いが発生した現場の元請は、前述の大手ゼネコン○○社です。1次下請が△△社。
 ディベロッパーからマンション建設工事を請け負った○○社(元請)が、根切り工事を△△社(1次下請)に請け負わせました。
 次に△△社(1次)は、根切り工事を分けて、再下請負に出しました。「残土の運搬」については、××社(2次)に行わせました。××社(2次)はさらに、この残土運搬を□□社(3次)に行なわせました。
 ××社(2次)が倒産。□□社(3次)は不払い被害を受けました。
 □□社(3次)は、建設業法41条3項に基づく元請責任での立替払いを、元請の特定建設業者の○○社(元請)に要請。
ところが、○○社(元請)は、△△社(1次)が××社(2次)に出したのは根切り工事の中の「残土運搬」の部分だったので、それを捉えて、残土運搬は建設工事ではない、従って、建設業法41条3項が定める元請責任での立替払の対象にならない、との見解を打ち出しました。言い換えると、下記の建設業法41条3項にある「特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」にあてはまらない、というわけです。ややこしい話ですが、××社(2次)は、△△社(1次)から建設工事ではない残土運搬を請けたのであり、「建設工事を施工している建設業を営む者」ではないではないか、というわけです。また、残土運搬は建設工事ではないから、「建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」にあてはまらない、というわけです。
○ 建設業法41条3項「特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、当該他人が受けた損害につき、適正と認められる金額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる」 
これに対して、以下は、国土交通省関東地方整備局の見解です。
@ 残土運搬は、建設工事ではない。
A 残土運搬は建設工事ではないが、本件は、建設業法41条3項が定める元請責任での立替払の対象になる。
(理由) 本件の場合、○○社と△△社の契約は、根切り工事という建設工事の請負契約であり、○○社は元請となる、元請の特定建設業者となる。これを言い換えると、△△社は、根切り工事という建設工事を請け負った下請業者となる。
 根切り工事という建設工事を請け負った下請業者である△△社(1次)が、残土運搬を××社(2次)に頼み、その××社(2次)が倒産して他人に損害を与えたのが本件の経過であり、これは、△△社(1次)が根切り工事という建設工事の施工に関し残土運搬の部分を××社(2次)に頼むことで他人に損害を加えたということであり、建設業法41条3項が言う「特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」に該当する。
 従って、本件の場合、建設工事ではない残土運搬であっても、建設業法41条3項が定める元請責任での立替払の対象になる。
 
 
◎ 建設業法に基づく立替払を実施しない不良不適格業者は市場から退場を
1 市場のコントロール
 国土交通省『建設業法解説』が指摘しているように、建設現場の重層下請構造の中で下請間の倒産・不払い・支払い遅延が発生した場合について元請責任で解決すべきことを定めている建設業法41条2項、3項は、一方では建設業許可行政庁からの元請への指導、誘導、他方での(行政の指導、誘導への)元請の協力、この両側面の結合によって成立する、そうした構造になっています。
 この協力を、この構造を、拒否するようなゼネコン、住宅企業、パワービルダー、等々は、「元請の特定建設業者」に値しない不良不適格業者と言わざるを得ず、市場からの退出を余儀なくされます。
 事実、経験で言うと、建設業法に基づく立替払を拒否し続けるような企業は、結局、破産に至っています。
 繰り返しになるかもしれませんが、法令遵守に反する企業、社会的責任を無視する企業、下請や建設労組との信頼関係を破壊する企業、行政からの法律に基づく指導、誘導に協力しないような企業は、市場からの信頼をも失い、市場からの退場を余儀なくされる、ということです。下請に泣き寝入りを強要するような元請は、報いとして自社もそうなる、ということでしょうか。
2 建設業法41条1〜3項の構造 
 国土交通省『建設業法解説』は、建設業法41条1〜3項の構造を、一方では行政からの元請の特定建設業者に対する非権力的な指導、誘導として描きます。これは、言い換えると、賃金不払い、工事代金不払い等が発生した場合に、不払い被害を受けた労働者、下請業者等を、元請の特定建設業者の責任で立替払い等で救済することを方向とする非権力的な指導、誘導ということです。『建設業法解説』は他方で、建設業法41条1〜3項の構造に不可欠なものとして、元請の特定建設業者の協力をあげています。
 これらを総合すると、立替払い等で下請業者等を救済することを求める行政の非権力的な指導、誘導とそれへの元請の特定建設業者の協力が結び付くことで、建設業法41条1〜3項の目的、趣旨は達成されるという構造になります。
 そして事実、ほとんどのゼネコン、住宅企業、サブコン等は、行政との信頼関係、あるいは下請業者との信頼関係、建設労組との信頼関係を大事にし、また建設業法41条1〜3項の趣旨を守り、行政からの非権力的な指導、誘導に協力して、立替払いで下請業者救済、保護を実施しています。
 行政からの非権力的な指導、誘導への協力を拒んで、立替払い等での下請救済を行わないと開き直る不良不適格業者はごく一部にとどまっています。これらの不良不適格業者からは、下請保護を趣旨とする特定建設業者の許可を剥奪する必要があります。
 『建設業法解説』は、建設業法41条2項、3項の趣旨について、賃金不払い、工事代金不払い等が発生した場合に、その解決の責任を元請の特定建設業者に「道義的に負担せしめようとするもの」と明らかにしています。 
 特定建設業者は、道義を守って下請を救済するということです。その方向で行政からの非権力的な指導、誘導が行われ、それに元請の特定建設業者が協力するということです。
 
更新日時:
2009/04/22
――――――  カードマジックなどマジック関係  ――――――
――――――  カードマジックなどマジック関係  ――――――
海野和夫
◎ ─── 高木重朗氏の『カードマジック』を読みました ───
1 高木重朗氏の『カードマジック』
 『カードマジック』の中で高木重朗氏は次のように述べています。「カードを1組持っていれば、いつでも、どこでも、たちどころに不可思議なマジックを演じることができる」、「カードマジックは、マジックで行える現象のほとんどが行えるので、マジックの大きな分野を占めている」、「ヒエロニムス・スコットというイタリアの奇術師が……1602年にイギリスのエリザベス女王の前で演じた記録には次のように記されています。『イタリア人の奇術師が、わが宮廷を訪れ、カードを使って不思議な奇術を演じた。彼は、思ったカードをあてたり、手の下にしっかり押えているカードをいつのまにか変えてしまった。女王はこの奇術をご覧になって200クラウンを下賜された』」
 
2 高木重朗氏が紹介しているカードマジック
 『カードマジック』の中で高木重朗氏は、多くのマジックを紹介し、種明かしを行っています。
 たとえば、
@ 赤と黒
 任意に組み合わせたはずの10組のカードが、どの組も赤と黒のペアになっています。
A ニック・トロストの絵札のパーティ
 色も数も合っていないはずのカードの上をポンと叩いてから開けてみると、2枚ずつ色と数が合っています。
B 4枚のエース
 相手が四つに分けたカードの上が全部Aになります。
C 13の不思議
 数学を利用した奇術の傑作とされているものだとのことです。13を使うことで、カードを前もって予言します。
D クエスション・マーク
 相手の選ぶカードを紙に予言します。
等々。
 
3 種明かし
 著作権法との関係がありますから、種明かしは差し控えます。
 ただ、上記の「C 13の不思議」については、インタネット上に種明かしをしているサイトがあります。下記のサイトです。
<http://hm.aitai.ne.jp/~takenaka/index.html>
 
上記サイトの「誰でもできる手品」をクリックして下さい。「13の不思議」が出現します。
 
(追記)
 「B 4枚のエース」の種明かしをしているサイトを見つけました。
<http://www.geocities.jp/magicsatoru/tricks.html>
 
 
◎ ――― 「透視」マジック  トリックを明らかにします ―――
 以下のサイトに、「透視手品」が載っています。訪問して、楽しんで下さい。不思議ですか?
<http://www.usiwakamaru.or.jp/~doraemon/jyuku/magic2/magic2.htm>
 上記サイトを、仮に「透視手品サイト」と呼ぶことにします。
1 「透視手品サイト」
 「透視手品サイト」には、要旨、以下のように記述されています。
2桁の数字を思いうかべてください。
(例 90)
その2桁の数字の10の位と、1の位を入れ替えます。
(例 90→09)
次に初めに思った数字と、10の位と1の位を入れ替えた数字の差を計算します。
(例 90−09=81)
 
そして、下の表からその差の数字の右に書いてある図形を覚えます。
 
(その表には、100の図形が書いてあります。「透視手品サイト」のは複雑で妙な図形ですが、私のサイトではそれを表現できませんので、以下のように単純な図形にしておきました──海野)
0の右には◎
1の右には△
2の右には□
3の右には×
………………
 (という具合に99まで続きます。0〜99の100個の数字の右に、100個の図形が書いてあります──海野)
 
あなたの選んだ(あなたの覚えた)図形はこれです。
 
 (画面に現れるのは、◎の図形です。選んだ(覚えた)図形と一致しています。何度繰り返しても、同じです。選んだ(覚えた)図形と、画面に現れる図形は、同一です。まさに「透視」されている無気味さです。一見相当不思議です──海野)
 
2 トリック暴露
 2桁の数字しか選べないわけで、そこに法則が存在します。
 「99−99=0」、「98−89=9」、「97−79=18」、「96−69=27」、「95−59=36」、「94−49=45」、「93−39=54」、  「92−29=63」、「91−19=72」、「90−09=81」……(以下、略します)
 以上の数字を見れば、法則が見えてくるでしょう。
 そうです。
 2桁の数と、10の位と1の位を入れ替えた2桁の数の差は、必ず0、9、18、27、36,45、54,63、72,81のどれかの数字になるのです。
 トリックは、この「0、9、18、27、36,45、54,63、72,81」のどの数字の右にも同じ図形を書いておく、ということです。
 (今回で言うと、◎を書いておくわけです)
 こうしておけば、相手が2桁の数字のどんな組み合わせを選んでも、相手の見る図形は◎に決まっています。
 不思議がるのは、相手だけです。
 
 
◎ テレビが放映した「超能力」  やはりマジックでした(1)
 2007年1月29日、テレビが2人の「超能力者」の「人の心を読む能力」その他の「超能力」を放映していました。100%マジックだと思い、見ていました。基本的に、全ての「超能力」行為について、トリックがわかりましたが、今回、次回と2回に分けて、二つだけ暴露しておきます。
 
カードによる「超能力」
 演者(「超能力者」)は、テレビ出演者8人のそれぞれに、5枚のカードを用意しています。
 相手は、テレビ出演者8人にとどまらずテレビを見ている人全員です。
 相手から見て、左から右へ「白のカード」、「白のカード」、「白のカード」、「黒のカード」、「白のカード」と5枚並べてあります。
白  白  白  黒  白
 テレビ画面にも、
白  白  白  黒  白
 が映っています。
 説明をわかりやすくするために、以下のように番号を付けます。
白1  白2  白3  黒  白4
 相手に頼んで、人差し指で白1を指してもらいます。
 「そこから五つ、人差し指を移動して下さい」と相手に頼みます。
 移動の仕方は、右左、自由です。
 たとえば、「→白2→白3→黒→白4→黒」でもいいですし、「→白2→白1→白2→白1→白2」でもいいですし、「→白2→白3→黒→白3→白2」、「→白2→白1→白2→白3→黒」等々でもいいですし、「五つ移動する」と言っても、実に様々な動きが考えられます。どれでもいいのです、自由です。
 次に「自由に数を思い浮かべ、12なら12を思い浮かべ、その数で2回続けて、人差し指を移動して下さい」と相手に頼みます。(従って、たとえば10を思い浮かべたら、10の倍の20、人差し指を移動することになります)
 さらに「女性は、その位置から右へ二つ、人差し指を移動して下さい。男性は、好きな数を思い浮かべて、その数で2回続けて人差し指を移動させてから、右へ二つ、人差し指を移動させて下さい」と相手に頼みます。
 女性も男性も、全員の人差し指が、黒のカードに到着しています。テレビを見ていた私の人差し指も、同様です。
 数え違いをしていない限り、テレビを見ていた人たち全員の人差し指が黒のカードを指しているはずです。
 凄い超能力?
 そんなことはありません。
 レベルのそんなに高くない、ありふれたカードマジックです。
 上述のようなカードの状態(配置)を前提に、上述のようなルールに従って、上述のように人差し指を移動させれば、人差し指が行き着くのは、黒のカードしかないのです。
 超能力ではなく、数学の原理の利用に過ぎないのです。
 
 
◎ テレビが放映した「超能力」  やはりマジックでした(2)
 2007年1月29日、テレビが2人の「超能力者」の「人の心を読む能力」その他の「超能力」を放映していました。100%マジックだと思い、見ていました。基本的に、全ての「超能力」行為について、トリックがわかりました。今回は、「人の心を読む」超能力のトリックを暴露します。この超能力の実体は、レベルの高くないマジックに過ぎません。
 
「人の心を読む」超能力?
 「超能力者」(演者)は、「ジークムント・フロイトが言う人間の潜在意識の中に侵入し、その人の本当の欲望をつかみ、明らかにする」ことを宣言します。
 8人のテレビ出演者それぞれの前に用意されているのは、比較的小さなメモ用紙で、タテ5センチ・ヨコ10センチ位です。
 このメモ用紙は、真ん中から左右二つに分離できるようになっています。(分離すれば、タテ5センチ・ヨコ5センチの正方形のメモ用紙が2枚できるわけです)
 「超能力者」は相手に頼んで、(まだ分離していない)メモ用紙の左右に同じ数字を記入してもらいます。相手(テレビ出演者)は8人ですから、座っている順に1〜8を記入してもらいます。メモ用紙の左右に1と記入する人、2と記入する人……8人目の人はメモ用紙の左右に8を記入することになります。
 「超能力者」は相手に頼んで、その人がいま一番入手したいものを、メモ用紙の右半分に書いてもらいます。
 このテレビでは、杉本彩さんが「土地」と書いていました。杉本彩さんの数字は3です。
 8人に頼んで、メモ用紙を左右に分離してもらいます。左右のそれぞれを、記入されているものが見えないように、四つに畳んでもらいます。
 同一の大きな黒い袋が二つ、用意されています。
 一つの黒い袋に、数字だけが記入されている(メモ用紙の)左半分を入れます。8人分を入れます。
 一つの黒い袋に、数字だけでなく入手したいものも記入されている(メモ用紙の)右半分を、入れます。8人分、入れます。
 「8人いっぺんに心を読み取るのは難しいので、お一人ずつ読み取らせていただきます」と言いながら「超能力者」は、黒い袋からメモ用紙を1枚取り出し、相手に聞きます。「3が書いてあります。これは、どなたのですか?」
「私のです」と杉本彩さんが答えます。
会話を交わしながら、「超能力者」は手に持ったホワイトボードに文字を書き込みます。
杉本彩さんに見せます。
「土地」と書いてあります。不気味な瞬間です。
でも、マジシャンなら、もう見破っているでしょう。
同一の大きな黒い袋が二つ、用意されているのです。
すりかえてもいいでしょうし、また、同じ袋にメモ用紙の右半分、左半分の両方を入れてもいいのです。
そして、数字だけでなく入手したいものも記入されているメモ用紙のほうを取り出して、数字だけが記入されているメモ用紙を取り出したかのように振る舞えばいいのです。
 
 
◎ ──― 「インタネット上のトランプ手品」  種明かし ―――
1 インタネット上のトランプ手品
 最初に以下のサイトを訪問して下さい。
<http://www.usiwakamaru.or.jp/~doraemon/jyuku/magic/magic1.htm>
(このサイトには、トランプが表示され、次のような言葉が現れます)
「下の6枚のトランプ中から1枚を頭の中に思いうかべてください」
「このトランプをよくシャッフルします」
「そして私が、あなたの選んだ1枚を取り除きます」
「では残りの5枚をめくってみましょう」
 
2 マジック? ミステリー?
「シャッフル」 [shuffle] (三省堂「大辞林 第二版」から) トランプのカードを切りまぜること 
 上記サイトの言葉による指示に従って「残りの5枚をめくる」(画面上のトランプをクリックする)と、「あなたの選んだトランプだけありません」という結果になります。
 何度試しても同じです。「あなたの選んだトランプだけありません」という結果が待っています。
 ミステリー? 最初の一瞬、ちょっと怖くなりました。しかし、マジックです。ここまで読んだところで、とりあえず以下は読まないで、ご自分で種明かしに挑戦してみて下さい。
 
3 種明かし
 最初の6枚のカードと最後の5枚のカードを比べて下さい。近似していますが、異なります。
最初の6枚のカードは、キングの13、クローバーの12、クラブの11、キングの11、ハートの12、クローバーの13です。
最後の5枚のカードは、クラブの13、キングの12、クローバーの11、ハートの13、ハートの11です。
比べて下さい。最初の6枚と最後の5枚は、近似していますが、異なるカードです。ですから、最初の6枚のうちのどのカードを選んでも(思い浮かべても)、最後の5枚の中には存在しないわけです。
このトランプ手品は、人間の思い込みと錯覚を利用しています。最初のカードと最後のカードは同じだという「思い込み」とカードが近似していることから来る同じカードのように見える「錯覚」を利用しています。
 
 
◎ カードマジック  「心に思ったカードが消える?」
 以下のサイトに、カードマジック「心に思ったカードが消える?」が載っています。楽しく、おもしろいマジックです。
 一見不気味、不思議です。訪問して、体験して下さい。
 
<http://uguisu.skr.jp/magic/kijyutu1.html>
 
1 「心に思ったカードが消えるサイト」では
 上記のサイト(仮に「心に思ったカードが消えるサイト」と呼びます)には、要旨、以下のように書かれています。
 
心に思ったカードが消える?
お好きなカードを心に思って下さい。
(以下のカードが、「心に思ったカードが消えるサイト」の画面に並んでいます――海野)
 
「ハートの13」「クラブの11」「スペードの13」「ダイヤの12」「クラブの12」「ダイヤの11」
 
 たとえば、「スペードの13」を心に思います。
そして、「心に思ったカードが消えるサイト」の画面の『思いました』をクリックします。
あなたの選んだ(心に思った)カードを除きました。
(確かに、「心に思ったカードが消えるサイト」の画面から、「スペードの13」が消えています。不気味、不思議です――海野)
 何度やっても、同じです。心に思ったカードが消えます。
 
2 トリックを明らかにします
 「心に思ったカードが消えるサイト」の画面での、カードの変化に注目して下さい。
 最初の画面では、「ハートの13」「クラブの11」「スペードの13」「ダイヤの12」「クラブの12」「ダイヤの11」が出ています。
 ところが、『思いました』をクリックしたあとに現れる画面には、「ハートの12」「クラブの13」「ハートの11」「スペードの12」「ダイヤの13」が出ています。
 最初の画面のカードと同じカードは1枚もありません。
 ですから、最初の画面のどのカードを心に思っても、次の画面では当然、消えているわけです。
 最初の配置と次の配置に、似たようなカードを配置することで錯覚させる技法です。
 
 
◎ 前田知洋さんの何回やっても「トップに上がってくるカード」について
 テレビで活躍しているカード・マジシャン前田知洋氏の有名なカード・マジックに、何回繰り返しても「トップに上がってくるカード」があります。不思議な現象です。
1 現象
 たとえば、
 女優の島田陽子さんに、好きなカードを1枚選んでもらい、それにサインしてもらいます。
 演者(前田知洋氏)が持っているトランプ束の真ん中あたりに、サインしたカードを挿入してもらいます。
 演者はカード束を揃えます。
 カードをポンと叩くと、真ん中あたりにあるはずのサインしたカードが、トップに現れます。
 同じ過程を何回繰り返しても、同じ現象が繰り返されます。
 真ん中あたりに挿入したカードが、トップに上がってきています。
2 解明のヒント
 ルール上、このHPでタネを明らかにすることはできませんので、以下の範囲にとどめます。
 @ 『人気マジシャンのタネぜんぶバラしますver2.0』(編集人 鈴木祐一郎 発行 株式会社鉄人社)を参考にさせていただきました。
 A 「トランプ束の上下の交換」、「2枚同時にめくる」といった技法を組み合わせることで、このマジックは成立しています。
 カード自体には、タネも仕掛けもありません。
 見抜かれないためには、難易度の相当高い技術が必要です。
 私たち素人が見破られないためには、相当な練習が必要でしょう。不可能ではないですが、相当困難な課題です。
 たとえば、
 プロが0.5秒でやる過程を、私がやると数秒かかります。
 せめて1秒に短縮しようと練習しています。
 
 
◎ カードマジック「油と水」分離の現象(「油」は表面に浮いてくる)
(以下のカードマジックは、高木重朗さんの『カードマジック』(東京堂出版)から学ばせていただきました)
1 現象
 100円ショップでトランプを買って下さい。
 相手に頼んで、机上に黒のカード(クラブorスペード)を1枚ずつ5枚表向きに重ねて置いてもらいます。
 5枚の黒のカードの上に、さらに1枚ずつ5枚、表向きに重ねて、赤のカード(ハートorダイヤ)を置いてもらいます。
 演者は、その10枚を表向きのまま、左手に持ちます。
 10枚を両手で開いて(広げて)、赤5枚、黒5枚であることを、相手に見せます。
 演者は、左手に持っているカードを揃えて、「赤のカードを置きます」と言って右手でカードを表向きにデスクに置きます。
 「黒のカードを置きます」と言って、残りのカードを表向きに、デスクに先に置いた「赤のカード」の上に置きます。
 演者は、机上の10枚を裏向きに左手に持ちます。
 左手に持ったカードを上から1枚ずつ右手で取って、裏向きのまま1枚ずつ机上にカードを重ね、その際4枚目、5枚目を相手に見せ、赤のカードであることを確認してもらいます。
そして、演者は「デスクにいま、5枚の赤のカードを置きました。赤のカードは『水』です」と言います。
 左手に持っている残りのカードを表向きにして、2枚を少しずらして相手に見せ、黒のカードであることを確認してもらいます。
その際、「黒のカードは『油』です」と言います。
 左手に持っている5枚のカードを裏向きに戻します。
 机上に裏向きに置いてあるカードのトップの1枚を右手で取って、その1枚を別にして裏向きのままデスクに置きます。
 左手に持っているカードのトップの1枚を右手で取って、机上に別に置いた1枚の上に、裏向きのまま置きます。
 同様に、机上のカードと左手のカードを交互に重ねていきます。
この結果、「赤のカード」と「黒のカード」が、言い換えると「水」と「油」が交互に重なった10枚のカードが、机上に形成されます。
この机上に形成された10枚のカードを裏向きのまま左手に持ち、持ったまま振ります。
その際、「水と油を混ぜると、必ず油が表面に浮いてきます」と言います。
 左手に持っているカードを上から1枚ずつ5枚、表向きに机上に置いていきます。
 5枚とも黒のカードです。
 左手に残っている5枚のカードを、相手に見せます。
5枚とも赤のカードです。
「法則どおり、油は表面に浮きました」と演者は言います。
 
2 トリック
 技法が使われています。
 それ以上は書けません。
 ご自分で考えて下さい。
◎ ─── 高木重朗氏の『カードマジック』を読みました(続き) ───
1 ボブ・ハマーの3枚のカード
高木重朗さんの本を読み、それに基づき練習を繰り返し、身に付けています。
 「ボブ・ハマーの3枚のカード」を覚えました。今まで理解できなかったのですが、粘り強く読解し、把握するに至りました。
 3枚のカードの1枚を覚えてもらい、それを後ろ向きのまま当てるというものです。
 高木重朗さんの解説によると、「古くからある原理を非常に巧妙に利用したもので、これを知っているものでもひっかかってしまうほどだ」とのことです。
2 スチュアート・スミスの類は友を呼ぶ
 「スチュアート・スミスの類は友を呼ぶ」も、高木重朗氏の『カードマジック』(東京堂出版)に載っています。
 相手の選んだカードと同じ数のカードが三つの組の上に現れるマジックです。相手に見せると、相当不思議がります。
3 ニック・トロストの三つの一致
 「ニック・トロストの三つの一致」も、高木重朗氏の『カードマジック』に載っています。
 自分の出した3枚と相手の出した3枚の色と数が一致するマジックです。
 私のような年齢になると、一度覚えてもすぐ忘れてしまいがちなので、繰り返し読み直し、練習し、身に付ける努力をしています。
4 「カード奇術を楽しもう!」
 以下は、「カード奇術を楽しもう!」のサイトです。訪問して損はないサイトですよ。
 <http://uguisu.skr.jp/magic/index.html>
5 京都のマジシャン
 以下は、京都のマジシャンのサイトです。
<http://www.geocities.jp/magical_e4/heya.html>
◎ カードマジック  ボブ・ハマーの3枚のカード
 いろんなカードマジックを覚えましたが、相手に見せて一番不思議がられているのが、「ボブ・ハマーの3枚のカード」と呼ばれているカードマジックです。
 「ボブ・ハマーの3枚のカード」の繰り広げられる過程を、紙上に再現しますので、見破った人はEメールでご連絡下さい。
 トランプを準備します。100円ショップで買った種も仕掛けもないトランプです。「種も仕掛けもないトランプ」というのは本当です。これは、前提です。
 相手に気の済むまでシャッフル(切り混ぜる)してもらいます。
 相手に自由に好きなカードを3枚選んでもらい、机上に表向きに置いてもらいます。
 たとえば、相手から見て左のカードが「ハートの6」、中央のカードが「キングの12」、右のカードが「スペードの9」とします。
 相手に、「相手から見て左のカードを1、中央のカードを2、右のカードを3と呼ぶことにします」と説明します。
 演者(私)は、カードが見えなくなるように後ろ向きになります。
 後ろ向きになってから、演者は相手に、「2枚のカードの位置を入れ替えて下さい。どのカードを入れ替えたのか、さっき決めた1,2,3で言って下さい」と頼みます。
 たとえば、相手は、「1のカードと2のカードを入れ替えました」と答えます。
 これを、数回、繰り返します。
 そして、演者は後ろ向きのまま、「3枚のうち1枚を覚えてください」と相手に頼みます。
 相手は、たとえば、「キングの12」を覚えます。
 まだ後ろ向きのまま演者は、「1枚を覚えたら、他の2枚のトランプの位置を入れ替えて下さい」と頼みます。
 相手は、覚えていないほうの2枚の位置を入れ替えます。
 まだ後ろ向きのまま演者は、たとえば、「2のカードを見せて下さい」と相手に頼みます。
 相手は、2のカードを演者に見せます。
 相手のほうに向き直り、1枚のカードを選んで「これがあなたの覚えたカードです」と言いながら、相手に示します。
 そのカードがまさに、相手の覚えたカード「キングの12」なのです。
 相手は、首をひねります。不思議がります。
 最初にお話したように、カード自体には種も仕掛けもありません。
 テクニックもほとんど必要ありません。
 但し、少しトレーニングが必要です。
◎ ――― カードマジック  「13の不思議」 ―――
 「13の不思議」は数学の原理を利用したカードマジックの傑作と言われています。その過程をここに再現します。見破って下さい。見破ったら、Eメールでご連絡下さい。
 トランプには種も仕掛けもありません。100円ショップで買ったトランプです。
 相手に渡して、好きなだけ自由にシャッフル(shuffle 切り混ぜる)してもらいます。
 演者(私)のところに相手からカードを返してもらいます。
 「13という数は不思議な力を持っています、予言する力を持っています」と言いながら、演者はカードを裏向きにして左手に持ち、上から順番に13枚のカードを裏向きのまま机上に並べます。
 机上に並べた13枚の中から3枚を、相手に自由に選ばせます。
 選ばれなかった10枚のカードを、演者は、自分の左手に(裏向きにして)持っているカードの下に入れます。
 机上に3枚のカードが残ります。
 演者は再び、「13という数は不思議な力を持っています、予言する力を持っています」と言いながら(言ったあと)、相手に見せないようにしてメモ用紙に予言のカード(カードの種類(ハート、ダイヤ、クラブ、スペード)と数字)を記入して、メモ用紙を裏向きにして机上に置きます。何を記入したのか、相手にはわかりません。
 相手に頼んで、机上に残っている3枚のカードを表向きにしてもらいます。
 3枚のカードは、たとえば、「ダイヤの5」、「スペードの10」、「ハートの7」です。
 演者は、演者の持っているカードを裏向きのまま相手に渡します。
 相手に頼んで、カードを裏向きのまま上のほうから順番に、3枚のカードの上に載せてもらいます。載せ方があります。次のように載せてもらいます。
 前述のように、3枚のカードは、「ダイヤの5」、「スペードの10」、「ハートの7」です。
 演者は、「13という数は不思議な力を持っています、予言の能力を持っています」と言いながら(言ったあと)、相手に頼んで、3枚のそれぞれのカードに「13」までカードを載せてもらいます。
 つまり、「ダイヤの5」の上には、6,7,8,9,10,11,12,13と数えながら、相手が持っている裏向きのままのカードを上から順番に取って、載せてもらいます。
 同様に、「スペードの10」の上には、11,12,13と載せてもらいます。「ハートの7」の上には、8,9,10,11,12,13と載せてもらいます。
 相手の選んだ3枚のカードは、繰り返しますが、「ダイヤの5」、「スペードの10」、「ハートの7」です。この3枚の数字を、相手に合計してもらいます。5+10+7=22です。
 相手は「22です」と答えます。
 相手が裏向きにして持っているカードを裏向きのまま上から順番に一枚一枚、合計22枚、机上に載せてもらいます。
 22枚目のカードを、表向きにしてもらいます。
 22枚目の、そのカードは、「ハートの11」です。
 最後に演者は「『13』という数字は不思議な力を持っています。予言する力を持っています」と言いながら、予言のカードを記入してある机上のメモ用紙を表向きにします。メモされているのは、「ハートの11」です。
 
 
◎ ─── カードマジック  「FBIのカード」 ───
(以下のカードマジックは、高木重朗さんの『カードマジック』(東京堂出版)から学ばせていただきました)
 カードマジック「FBIのカード」は「非常にうまい原理を使っている」と言われています。
 FBIの探偵役を演じるカードが犯人役のカードを当てるというものです。
 トランプ自体には、種も仕掛けもありません。
 ジョーカーを抜いて、52枚にします。
 相手に渡して、好きなだけ自由にシャッフル(切り混ぜる)してもらいます。
 相手に頼んで、カードを裏向きに4枚、デスクに並べてもらいます。
 デスクに並べた4枚の上に、カードを全部、裏向きに、順番に置いてもらいます。
 デスク上に、1組13枚で4組が形成されます。
 演者(私)は、「好きな組を二つ選んで下さい」と言って、相手に2組を選ばせます。
 残りの2組は片付けます。
 机上には、2組だけ残ります。
 2組は、裏向きに置いてあります。
 さらに、2組のうちから1組を相手に選ばせます。
 相手に頼んで、選んだ1組の上半分位(だいたいでいいです)をつかんで、持ち上げてもらい、演者に見えないようにして、持ち上げた上半分のカードの一番下のカード(表向きのカード)を覚えてもらいます。覚えたカードは、たとえば、「クラブの4」です。
 そして、つかんでいる上半分のカードを裏向きの状態で、そのまままとめて、デスク上の選ばれなかった1組の上に重ねて置いてもらいます。
 ここで、「あなたが覚えたカードが犯人です。あとで私が選ぶカードがFBIの探偵になって、犯人カードをつかまえます」と演者は言います。相手が覚えた「クラブの4」が犯人カードです。
 相手に頼んで、犯人カードが入っている1組を裏向きのまま左手に持ってもらい、デスクに残っている1組の上に、裏向きのまま順番に1枚ずつ重ねて置いてもらいます。10枚置いてもらいます。
 10枚置いてもらったところでストップをかけ、演者は、「10枚置きました。あと数枚、置いて下さい。あと何枚置きますか」と相手に聞きます。
 相手は、たとえば、「3枚置きます」と答えます。
 そのとおり3枚、机上のカードの上に、1枚ずつ順番に重ねて置いてもらいます。
 相手の左手に、数枚のカードが残ります。
 左手に残っている数枚のカードを、そのまままとめて、机上のカードの上に載せてもらいます。
 デスク上には、26枚1組のカードが形成されます。
 それを、相手の左手に裏向きに持ってもらいます。
 「上から1枚ずつ順番に、表向きにして、デスクに重ねて置いて下さい」と相手に頼みます。
 演者は何枚目かでストップをかけ、「それがFBIの探偵カードです」と言います。
 そのカードは、たとえば、「ハートの7」です。つまり、探偵カードは、「ハートの7」です。
 演者は、「(探偵カードが「ハートの7」ですから)FBIの探偵カードは、7枚下のカードが犯人だと言っています」と言います。
相手に頼んで、さらに7枚を順番に、今度は裏向きに、机上に重ねて置いてもらいます。
相手が7枚目を置いたところで、演者は探偵カードの「ハートの7」をつかんで、7枚目のカードを「ハートの7」で軽く叩いて、「これが、犯人カードです。つかまえました」と言います。
7枚目を相手にめくらせて、表向きにします。「クラブの4」です。まさに、犯人カードです。
見破れますか? もちろん、種も仕掛けもありますよ。
◎ カードマジック 「ワイキキ・カード・ロケーション」
(以下のカードマジックは、高木重朗さんの『カードマジック』(東京堂出版)から学ばせていただきました)
 カードマジック「ワイキキ・カード・ロケーション」は、私自身、解説書を読んでも、最初わからなくて、最近やっとその手順を覚え、できるようになったとても不思議なマジックです。
 手順どおりに遂行すれば、成功し、結果が出るのですが、やっている私自身、なぜそういう結果が出るのか、まだ理解できない位、不思議なマジックです。
 100円ショップで買ってきたトランプを、そのまま使います。
ジョーカーを抜く必要はありません。
演者は相手にカードを渡して、自由にシャフル(切り混ぜる)してもらいます。
相手からカードを返してもらいます。
演者は、カードをだいたい三等分して、裏向きの状態でデスクに置きます。
従って、デスクには、ほぼ三分の一ずつのカードの山が形成されます。
言い換えると、3組のカードが形成されます。
相手に好きな組を選んでもらいます。
相手は、たとえば、中央の組を選びます。
演者に見えないようにして、中央の組の一番上のカードを相手に覚えてもらいます。
相手が覚えたカードは、たとえば、「ダイヤの13」です。
相手に頼んで、相手が選ばなかった(カードを覚えなかった)二つの組を、表向きにしてもらいます。(今回の場合は、相手は中央の組を選びましたから、左右の組を表向きにしてもらいます)
相手に頼んで、表向きにした二つの組を1組ずつよくシャフルしてもらい、表向きのままもとの位置に戻してもらいます。
左の組、右の組のどちらでもいいですから、表向きになっている組の一つを相手に選ばせ、選んだ1組を裏向きの組(今回の場合は中央の組)の上に載せてもらいます。
重なった2組をそのまま、残っている表向きの1組の上に載せてもらいます。
演者は、1組に戻ったカードを取り、二つに分けて(だいたい半分ずつ)、リフル・シャフルします。
「リフル・シャフル」 カードを二つに分ける→左右の手に持つ→(持ち方は)長方形の4辺の短いほうの2辺を「親指」と「中指・薬指・小指」で持つ→持ったままデスクに載せ、人差し指でカードの背を押えながら、親指で持っている部分を上に上げて(長方形の短いほうの1辺を上に上げて)、親指で調整しながら、(上に上げていた)長方形の短いほうの1辺を下に落として、(長方形の短いほうの1辺の部分で)左右のカードを相互に重ね合わせていく。
これを揃えます。
相手に数回、カットさせます。
「カット」 カードを二つに分けて、上下を入れ替えること。
 演者は、カードを受け取り、その中から1枚を選んで、机上に裏向きに置きます。
 「あなたの選んだカードは何ですか?」と相手に聞きます。
 相手は「ダイヤの13です」と答えます。
 相手に頼んで、机上のカードを表向きにしてもらいます。
 そのカードは、「ダイヤの13」です。
 変だな? 私自身も不思議だと感じます。
 トリックは?
 見破れますか?
◎ ――― カードマジック 「カードをあてるカード」 ―――
(以下のカードマジックは、高木重朗さんの『カードマジック』(東京堂出版)から学ばせていただきました)
 今回のカードマジック「カードをあてるカード」は、トリックが比較的簡単なので見破りやすいかもしれません。
 100円ショップでトランプを買って下さい。
 ジョーカーは抜いて下さい。
 トランプ自体には、種も仕掛けもありません。
 相手にカードを渡して、よくシャフルしてもらいます。
「シャフル」 切り混ぜる。
 相手にカードから1枚を選ばせ、裏向きのままデスクに置いてもらいます。
 そのカードは、たとえば、「クラブの11」です。
 「クラブの11」を除いた、残りのカードを、演者は相手から受け取ります。
 演者は、後ろを向き(相手に背を見せ)、「あなたが選んだ1枚を表向きにして、覚えてから、また裏向きにしてデスクに戻して下さい」と相手に頼みます。
(演者は、後ろ向きのとき、素早く、トランプに、ある「移動」をおこないます。種も仕掛けもある状態に、トランプはなります)
 演者は、前向きに戻り、カードを裏向きの状態でデスクに置き、二つ(2組)に分けます。
 二つ(2組)に分けたカードのうちの一つ(1組)の上に、相手が覚えた1枚のカード(「クラブの11」)を載せてもらいます。
 さらにその上に、残りの一つ(1組)を載せてもらいます。
 相手に頼んで、数回カットしてもらいます。
「カット」 カードを二つに分けて、上下を入れ替えること。
 演者はカードを裏向きの状態で、机上に横に広げます。
 裏向きの状態で横に広がったカードの中に、1枚だけ表向きのカードが混じっています。
 そのカードは、たとえば、「ダイヤの10」です。
 「ダイヤの10」の上に重なっているカードを、わきにどけます。
 「このカード(「ダイヤの10」)が、あなたの選んだカード(覚えたカード)をあてます。このカードは(「ダイヤの10」ですから)、自分の10枚下にあなたの選んだカードがある、と言っています」と演者は言います。
 相手に頼んで、「ダイヤの10」の直接下のカードから数え始めて順番に一枚ずつ、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10と10枚、デスクに置いてもらいます。
 10枚目のカードを、相手に頼んで、表向きにさせます。
 10枚目のカードは、相手の選び、覚えたカード、即ち「クラブの10」です。
 見破って下さい。
 
更新日時:
2008/02/10
――――――――― 「何でも相談活動」関連(2) ―――――――――
――――――――― 「何でも相談活動」関連(2) ―――――――――
海野和夫
 
◎ 何でも相談事例二つ 「独立見送り」 「賃金不払い」
(最近受けた何でも相談事例のうち、「独立見送り」、「賃金不払い」の2例を紹介します。できるだけ匿名化、抽象化してあります)
1 「独立見送り」
 ユニットバス施工の手間請職人です。
 メーカー―元請―手間請職人という構造です。
 メーカーと手間請職人が話し合い、「独立させる」という約束をメーカーは手間請職人にしていました。その約束を前提に、約10年位、元請のところで手間請職人としてユニットバス施工に従事していました。
 ところが、メーカーから「独立を見送る」と言われました。理由として「クレームが多い」と言われました。しかし、クレームの原因は、本人のミスではなく、「仲間の、作業でのミス」、「メーカーの下見ミス」、「工場からの不良品」だとその手間請職人は主張します。
 解決の方向としては、仲間や家族、建設労組等とよく相談しながら、メーカーや元請とよく話し合い、円満な解決をはかる、そういう方向が一つ、考えられます。また、気持ちをよく整理し、気持ちを強く持つことです。
2 賃金不払い
 設計と施工の両方に従事する労働者です。
 発注者―建設会社―労働者の構造です。建設会社に直接雇用されている労働者です。その建設会社の上に上位下請や元請がいるわけではありません。その建設会社の上には発注者がいるだけです。
 要するに、建設会社が従業員に賃金を支払っていないという構造です。
 建設会社は倒産しているわけではなく、「倒産するつもりはない」と社長は従業員に言明しています。
 従業員の訴えによると、賃金不払いだけでなく、「祝日が出勤日になっている」、「祝日と日曜に休んだのが、欠勤になっていて、給料が減らされた」、「就業規則の従業員への周知がおこなわれていない」、「従来給料明細を貰っていたのだが、先月の給料明細は貰っていない」、「労働時間の上限をオーバーしている」、「残業しても残業代が出ない」、「従業員が立て替えて払っている分が返ってきていない」、「退職した人に、会社からなかなか健康保険資格喪失証が発行されないということがあった」などいくつかの問題点があるようです。
 元請がいるケースではないので、元請による立替払を求めることはできません。倒産していないので賃金支払確保法の適用による国の立替払を求めることもできません。
 解決の方向は、会社との交渉による解決、この構造で解決できないときは、労基署に行くことです。
 仲間と相談しながら、上記のように進めている、とのことです。
 
 
◎ 建設労組が「代理人」のように振る舞うのは違法行為? テープの証拠能力?
 最近の倒産・不払い事件の増大を反映して、毎日、不払い関連で相談、質問を受けています。
 昨日、不払い対策の関連で、以下のような質問を受けました。
質問は二つです。
 質問1 弁護士でも何でもない建設労組が「代理人」のように振る舞うのは違法行為だ、訴える、と言われたが、どうなのか?
 質問2 上記の関係で、「訴えるについては、証拠がある、テープにとってある」と言われたが、どうなのか? こちらに黙って相手は、テープをとっていた。
 質問1について言うと、何の心配もありません。
建設労組は、組合員が賃金や工事代金の不払い被害を受けたときに、組合員からの相談があった場合、賃金や工事代金の不払いを解決するために、組合員と一緒に運動を進めます。労働組合として当然の活動です。
逆にこのような場合、組合員を放置しておくような労組があるとすれば、それこそ労組としての資格が問われる対応です。
 さらに言いますと、この点については、国土交通省関東地方整備局が「全建総連の各組合を、不払い交渉の窓口として認める」と明言しています。
 
 質問2について言うと、法律関係の専門書を読むと、次のように書かれています。
 裁判の際、テープ(録音)には基本的に、証拠能力がない。
 理由は、テープ(録音)は簡単に加工、偽造、捏造できるからだ。
 また、数時間に及ぶようなテープ(録音)を、いまの忙しい裁判システムの中では裁判長は事実上聴くことは困難である。
 むしろメモのほうが、証拠能力がある。筋の通った、信憑性の高いメモは、特にそうだ。
 裁判、訴訟のことを考えるのであれば、きちっとしたメモをとることだ。
 
 
 
◎ ――― 外国人労働者(フィリピン人)の賃金不払い相談事例 ―――
 建設労組に外国人労働者(フィリピン人の兄弟)から賃金不払い相談が持ち込まれました。たどっていくと、元請がスーパーゼネコンです。解決に向けて努力中です。
 フィリピンから英語の文書を送ってきました。それを和訳して、以下に紹介致します。
(以下は、フィリピン人兄弟が建設労組に送ってきた英文の和訳です。兄と弟から各1通送ってきたのですが、基本的に同じ内容なので、兄の文書だけを紹介します)
要求の根拠
2006年12月6日
関係各位様
 この文書は、私○○が40歳であり、結婚しており、フィリピン国民であり、現在フィリピンの○○に住んでいることを、証明しています。
 私は、時給1、100円で、埼玉県の○○社に労働者として働いていました。  
 私は、私の仕事を2006年2月8日から始め、日本の出入国管理当局によって国外追放されるという事情のために仕事が続けられなくなるまで、即ち2006年10月10日まで仕事を続けました。
 上記の関係で私は、私の雇用主である○○社に対して、1ヶ月と7日分の(未払い賃金)を、(直接)請求することができません。
 上記の関係で私は○○社に対して、上記期間の賃金の支払を△△社を通じて請求し続け、アピールし続けています。
 私の関係への最大の配慮と理解を希望しています。
 ありがとうございます。より以上のご尽力をお願いします。
                                      あなたたちに 心から
○○        
委任状
2006年12月5日
 関係各位様
 私はこの文書によって、1ヶ月と7日間の期間の私の賃金を主張し、回収するための権限を、埼玉県○○に住んでいる私の妹の○○に委任します。
 私のドキュメントのコピーを同封します。
ありがとうございます。より以上のご尽力をお願いします。
                                      あなたたちに 心から
 
 
◎ ―――信用保証協会との交渉 債権回収の適正化を―――
 建設労組の組合員のKさんが、「元金約2800万円、損害金約2500万円のあわせて約5300万円」について、○○信用保証協会から「自宅を処分しての返済」を求められ、これでは営業も生活も成り立たなくなると、建設労組に相談に来ました。
損害金 代位弁済後の求償権残高に対して、年率10.95%の割合により発生します。求償権の範囲に属するものとして、債務者等に請求することのできる金銭。
代位弁済 信用保証付きの貸付金等が、何らかの事情により金融機関へ返済が不能となったとき、保証協会が中小企業者に代わり、金融機関に対しその金額(元本+利息)を支払うことを代位弁済といいます。(事業者が何らかの理由で返済が困難になった場合、信用保証協会は金融機関に対してその債務を肩代わりします。これを代位弁済といいます。代位弁済を行った場合、信用保証協会は代位弁済した額を事業者から回収します)
求償権 保証協会が、中小企業者に代り、金融機関に債務の支払い(代位弁済)をしたとき、その中小企業者に対して、代位弁済額の範囲で債権を持つことになります。この債権を求償権といいます。
これを受け、建設労組はKさんとともに、債権の回収の適正化を求めて、○○信用保証協会との交渉をおこないました。
私たちは、中小企業庁長官の通達「中小企業に対する円滑な資金供給の確保」、「事業の継続が見込まれる中小企業者に対しては、既往債務(すでにいまある債務)の条件変更について、個々の中小企業者の実情に即して、きめ細かく対応する」、また、信用保証協会法第1条「中小企業者等に対する金融の円滑化を図ることを目的とする」を守って、債権の回収を適正化し、○○信用保証協会が中小業者保護の機能を発揮するよう、次の点を、○○信用保証協会に求めました。
信用保証協会法第1条(目的) この法律は、中小企業者等が銀行その他の金融機関から貸付等を受けるについてその貸付金等の債務を保証することを主たる業務とする信用保証協会の制度を確立し、もって中小企業者等に対する金融の円滑化を図ることを目的とする。
1 「自宅を処分しての返済」を求めるような不適正な回収をすぐにやめ、事業を継続しながら返済を続けられるような、無理のない適正な返済条件を、話し合いによって設定すること。
2 「損害金」が約2500万円にまで至った計算の道筋を示すこと。
3 「損害金」については、全額免除し、返済金額については、元金だけにすること。
4 元金の返済については、無利子の分割返済とすること。
これに対して、○○信用保証協会は、「損害金が約2500万円にまで至った計算の明細書は出す」、「損害金の減額については、元金の返済が終わったときに検討する」、「抵当権を行使して『自宅(家・土地)』を処分するかどうかについては、答えられない」と回答。
建設労組は引き続き、なかまの営業と生活を守り抜くためのたたかいをすすめていきます。
(参考資料)
 東京信用保証協会のサイトには、以下の記述があります。保証協会への返済については、「実情に即して」と記述し、中小企業者の実情に即した返済条件を設定すべきことを明らかにしています。(なお、上記の○○信用保証協会は、東京信用保証協会のことではありません)
返済
返済条件に従って借入金を金融機関に返済していただきます。
代位弁済
万一、何らかの事情で借入金の返済ができなくなった場合には、金融機関からの請求によって保証協会が中小企業者に代わって返済します。これを代位弁済(だいいべんさい)といいます。
代位弁済は、一般に言う「保険」とは異なり、あくまでも「一時立替払い」の性質をもつものです。
回収
代位弁済したものについては、以降実情に即して中小企業者から保証協会に返済していただきます。
平成17年度の事業実績
中小企業者の返済負担の軽減を図るため、返済条件の緩和については、個々の中小企業者の実情に即したきめ細やかな対応を行いました。
保証承諾15万6千件  1兆8,413億円
保証残高55万2千件  3兆9,636億円
代位弁済 1万4千件     904億円
回収            409億円
 
 
◎ (不払い相談事例)元請不払い 少額訴訟 民事調停 裁判費用
 このサイトを通じて、以下のような不払い相談が寄せられました。
「コラムを読んで突然失礼だとはおもいましたが、メールをおくらせていただきました。私も今、元請から、仕事をやったにもかかわらず、お金をもらえないという状況で困っています。少額訴訟ということもかんがえていますが、相手も私の出方次第では弁護士を立てるといっています。今、土建組合の人に頼んで中にはいってもらって話をしているのですが・・・・どうしたらいいのでしょうか。よろしければご相談にのっていただけないでしょうか」
(回答)
 元請が不払いということですが、土建組合に間に入ってもらって元請と話し合いをするのが大事な点です。結論から言いますと、このやり方が一番いいと思います。
 元請と話し合いを続けても、どうしても解決しない場合、土建組合と相談しながら、国土交通省関東地方整備局に相談に行き、仲介、指導を頼むことです。
(「不払いをおこしている」元請業者が国土交通大臣許可の特定建設業者または一般建設業者である場合は、国土交通省関東地方整備局に相談に行って下さい。元請業者が都道府県知事許可の特定建設業者または一般建設業者である場合は、都道府県に相談に行って下さい。土建組合と相談しながら、土建組合と一緒に国土交通省関東地方整備局または都道府県に行くのがいいと思います)
 それでもダメなら、少額訴訟、民事調停なども考えられます。
 (少額訴訟とは何か?)
少額訴訟は、弁護士に頼まないで、自分で手続きできます。但し、60万円以下の金銭の支払いを目的とした事件だけに利用できます。少額訴訟を起こすことのできる簡易裁判所は、原則として「相手の住所のある地区の簡易裁判所」です。但し、相手が少額訴訟を希望しない場合は、通常の訴訟で争うことになります。
(民事調停とは何か?)
 民事調停は、原則として、相手方の住所、居所、営業所もしくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所に申し立てをおこないます。民事調停は、弁護士に頼まないで自分でできます。調停が成立すると調停調書が作成されます。これは判決と同一の効力を持ちます。ただし、民事調停を申し立てても、相手が調停期日に出席しなかったり、また、出席したとしても合意が得られなければ、調停は不調に終ります。
(裁判? 弁護士費用?)
 訴訟(裁判)は弁護士だけができる? 法律は、そんなことは決めていません。訴訟は本人でできるのです。ただ、たいていの場合、訴訟はやり方が難しいので弁護士に頼む、また勝つためにプロである弁護士に頼む、こういうことになるわけです。
 土建組合とよく相談しながら、解決の道を追求して下さい。
 
 
◎ 労組の倒産・不払い対策活動での「法人格否認の法理」
 建設労組の倒産・不払い対策活動の主要舞台となっている「建設業法41条3項に基づく元請責任の追及」でネックとなっているのが、元請自身が事実上の倒産に近い状態、ほとんど倒産状態、準倒産状態、経営危機状況に陥っていて元請責任を果たすのが困難だというようなことがあることです。
 このようなとき、困難に陥っている元請が子会社で、その上に親会社が存在する場合があります。親会社責任の追及で問題を解決できないのか、これが今回のテーマです。
 以下は、「微速前進 tsudax99 ***ある平凡な都庁職員のページ***」というネームのサイトを参考にして、それに基づいて書かせていただきました。
「微速前進 tsudax99 ***ある平凡な都庁職員のページ***」= 
<http://www7a.biglobe.ne.jp/~tsudax99/index.html>
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出典・参考:働く人のための倒産対策実践マニュアル(日本労働弁護団)
「法人格否認の法理」 法人の形式的独立を貫くことに正当性が認められない場合、あるいは法人という形態が不法不当に利用されている場合に、その法人としての存在を認めながら、具体事例の適正な解決のために、一時的、相対的に、法人格の絶対視を否定して、会社と「社員、支配株主、親会社、背景資本等」を同一視する法理。
企業倒産や子会社を巡る問題の中で、債権者保護を目的として展開されることが多い。
法人格否認の法理とは、
1 取引相手が個人なのか法人なのか判然としないとき
個人企業が会社になった場合に、これと取引する第三者にとって、その相手方が会社か個人企業か判然としないことがあります。
このような場合に、会社と個人とはあくまで別の存在であるというと、取引している相手は、予想外の損害を被ることになるため、法人格否認の法理というものが考えられました。
2 親会社や背景資本の責任を追及する場合の考え方
日本では、親会社・元請会社の下に幾重にも子会社・孫会社や下請・孫請が存在しています。
これらは形式的には独立した企業ですが、実際には親会社や元請が財務の面でも人事の面でも実質的に支配管理し、真の経営者は親会社や元請であるという場合が少なからずあります。
そこで、子会社・下請の法人としての存在を否定して、親会社に対して、未払賃金や退職金、工事代金や資材納入代金の支払い、また、企業の再建や雇用の確保などの要求をすることになりますが、この根拠となるのが、法人格否認の法理です。
3 検討のポイント
具体的には、次の要素が検討されることになります。
@ 親会社が子会社の株式をどの程度所有しているか。
100%子会社でなくても親会社の責任の追及は可能であるし、関連会社が株を持ち合う形で親会社が子会社を支配管理することも多い。
A 役員の派遣などの人事、経理、労務政策、労働条件の決定、営業、生産計画、販売先、価格の決定といった子会社の経営上の重要事項について、親会社がどの程度支配しているか。
例えば、製品はすべて親会社に納入しているとか、販売価格を親会社が決めているとか、社長をはじめ主要な役員が親会社からの天下りであるなどの事実がないかチェックする。
また、親会社が異常に高い賃料や利子を設定して、子会社の利益を吸い上げていないかなど。
B 子会社の取締役会や株主総会の不開催の事実がないか。
会社法上の手続違反となる行為についてチェックします。
 
 
◎ 「自己破産」とはどのようなものか?  「自己破産」は権利
 建設労組の何でも相談活動の一つとして位置付けることができるし、また位置付けるべきなのが「自己破産」だと思います。自己破産を犯罪視するのではなく、国民の権利として捉える必要があります。『わかりやすい自己破産』(宇都宮健児氏・著 山川直人氏・絵 自由国民社・発行)を参考にして、それに基づいて以下に少し書かせていただきました。
 自己破産は、最後の救済手段です。債務者自らが申し立てる破産のことを自己破産と呼んでいます。自己破産を申し立て、最終的に免責決定がなされれば、債務から解放されるわけです。
――――――――――――――
 自己破産の場合、次のようなことを心配する人が多いのですが、心配はいりません。以下のようになっています。
 破産宣告を受けると、不動産などの目ぼしい財産は破産管財人の手によって処分されますが、生活に必要な家財道具などは処分されません。
 破産宣告後に破産者が得た収入は、原則として全て、破算者が自由に使えます。
 破産宣告を受けても、戸籍や住民票に記載されることはありません。
 裁判所から破産者の勤務先に破産宣告の通知をすることはありません。従って、破産宣告を受けたことが会社にわかることはありませんし、万一わかったとしても会社はそれを理由に破産者を解雇することはできません。
 選挙権、被選挙権が停止されることもありません。 
――――――――――――――
 自己破産の申し立ては、債務者本人の住所地を管轄する地方裁判所に対しておこないます。自己破産申し立てをすると同時にその旨の通知書を債権者に出しておくと、債権者の督促や取立ては止まります。言い換えると、その旨の通知を受けた後は、債権者からの支払い請求は禁止されているということです。
 自己破産の申し立てだけではダメです、債務からの解放を得ることはまだできません、続いて、債務からの免責の申し立てをする必要があります。免責を得てはじめて、債務からの解放に至ります。
 免責申し立てをした破産者のほとんどが免責決定を受けていますから、自信を持って免責申請をおこないましょう。裁判所の調査の結果、破産者に免責不許可事由がなければ、免責決定がなされます。破産者に免責不許可事由があれば、免責不許可決定がなされます。(ただし、免責不許可事由があっても、裁判所の裁量により免責決定がなされる場合もあります)
――――――――――――――
 主な免責不許可事由としては、次のようなものがあります。
 自分や他人の利益を図ったり、債権者を害する目的で、破産者の財産を隠したり、その財産的価値を減少させたような場合。
 浪費やギャンブルによって、著しく財産を減少させたり、過大な借金をしたような場合。
 既に返済不能の状態であるにもかかわらず、そういう状態でないかのように債権者を信用させて、さらに金銭を借り入れたような場合。
 偽りの事実を記載した債権者名簿を裁判所に提出したり、裁判所に財産状態について偽りの陳述をしたような場合。
 免責の申し立て前10年以内に、免責を得たことがある場合。
――――――――――――――
 免責決定を得て、債務から解放されるわけですが、免責決定後も一部の債務については支払い義務がなくなりません。支払い義務がなくならない債務とは、次のようなものです。
 租税。
 破産者が悪意をもって加えた不法行為に基づく(被害者からの)損害賠償請求権。
 破産者が雇っていた人(雇人)の賃金、預かり金、身元保証金。
 破産者が知りながら故意に債権者名簿に記載しなかった(債権者の)請求権。(ただし、債権者が破産宣告を知っていた場合は除かれます) 
 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金、過料など。
 
 
◎ 最新の元請倒産事例  代理人弁護士の話
 K社が倒産。
 2006年7月11日、工事代金不払い被害を受けた下請業者、建設労組は、K社の代理人弁護士に会い、話を聞きました。
 以下に、K社の代理人弁護士の話の要点を紹介致します。
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 破産手続きの申し立てについては、2006年7月1日にK社から受任した。
 下請に支払うお金が資金的に尽きてしまったので、破産手続きを選んだということだ。
 ほとんど赤字工事で、2006年5月〜6月に資金繰りが回らなくなって、7月に到って債務整理を弁護士に依頼せざるを得なくなった、ということだ。
 債務総額は、(施主の分を除いて)約5000万円。
 今、資産総額の調査をおこなっている。預金は30万円位しか残っていない。固定資産の評価を今後実施する。固定資産は機械・工具類のみで、不動産はない。
 2006年6月23日に、K社の社長の個人名義になっている工場や事務所兼自宅の土地、建物を約8000万円で売却した。また、同日、K社の社長の母の個人名義になっているアパートの土地、建物を、約1億1000万円で売却した。これらの土地、建物は抵当権付きだったので、売却代金から抵当権者に支払い、残り4000万円がK社の社長の個人資産として存在している。
 言い換えると、売却代金から担保権者に支払い、個人の資産として4000万円位残っている、ということだ。
 法人の資産と個人の資産を区別する。K社の債務の弁済に個人の資産を処分して充当しなければならないという法的な義務はないが、みなさんの気持ちとして不満はあると思うので、この個人資産4000万円をどうするかについては、裁判所から選任された破産管財人が破産管財業務の中で適切に措置していくことになると思う。
 これらの不動産の購入者はT社(K社の社長の義理の弟)である。購入者は、購入した不動産に抵当権を付け、1億9000万円位の融資を受けた。
 常用的に使っている職人(雇用契約と断言するつもりはないが)には支払い済みである。
 施主との関係で言うと、施工途中の物件が3件ある。1件はほとんど未施工、1件は棟上げまで、1件はほとんど完成しているがまだ引き渡ししていない。
 施主からは前渡金を貰っている。大きいところは4000万円の前渡金を貰っている。施主から損害賠償を求められる可能性がある。
 残っている資産を、施主、工事代金に公平に分配する必要がある。施主、工事代金のどちらかが優先するということはなく、平等である。
 ほとんど完成しているがまだ引き渡ししていない1件についてだけは、施主が気の毒な状況なので、(金額は不明だが)優先した対応を考えている。
 K社の社長には、個人資産4000万円を保存するように言ってある。物理的な保障措置はしていないが、ここでお話したことが保障になる。私が預かるとか保全措置を検討する。
 2006年7月20日までに債権届けをしていただき、7月末〜8月中頃に裁判所への破産申し立てをするつもりである。
 残っている資産から優先して支払うべき公租公課はない。雇用契約とはっきりしている労働債権はない。
 (K社の社長が関与している)もう一つの会社には、負債も資産もない。
 K社が元請である。K社の上に元請はいない。
 K社とJVを組んでいる企業はない。
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◎ 鈴建工務店破産事件 若干の経過
 2006年7月6日、東京地裁で、鈴建工務店破産事件の第一回債権者集会がおこなわれました。40人を超える債権者が参加しました。この規模の破産事件では異例のことです。鈴建工務店の保有する不動産の売却によって多額の破産財団組み入れ額が形成されているのではないかとの期待から、多数の債権者の出席となったようです。
 しかし、破産管財人の提出資料によると、不動産売却による破産財団への組み入れ額は5700万円にとどまっています。「こんなに少ないのは理解できない」との疑問が数人の債権者から出されました。
 これに対して破産管財人は「不動産の全部に担保、根抵当が付いているのだから、ゼロでもいい。銀行と交渉して積み上げたのが5700万円だ」と説明。言い換えると、担保権者、抵当権者の銀行と売却代金の一部を破産財団に入れてほしいと交渉して5700万円を銀行に譲らせ、破産財団に組み入れることができたのだと、破産管財人は説明。
 不動産売却代金5700万円の他には車両売却代金560万円があるくらいで、その他にはめぼしい資産はほとんどなく、破産財団の形成は全部で6700万円にとどまっています。
 担保付き債権者の銀行は、担保付き不動産の売却から既に3億3000万円を回収しています。
 公租公課を中心とする「優先債権」が6500万円存在します。破産財団から優先して支払われる破産管財費用(破産管財人への報酬等)も、破産財団から支払われなければなりません。
 こう見ると、一般債権である工事代金への配当(支払い)はほとんど期待できません。ゼロの可能性も否定できません。
 売れ残っている不動産があり、売却のために破産管財業務が続行されます。破産管財人の説明によると、人気のある物件は全て売却済みで人気のない物件が残っているだけなので、見通しはあまりよくないのではないか、とのことです。
 こういう結果になってみると、鈴建工務店破産の前に、鈴建工務店がまだ正常に営業活動を続けていた時期に、1〜2年かけて、鈴建工務店の下請業者W社(埼玉土建一般労組の組合員)と埼玉土建一般労組が力を合わせて、鈴建工務店と粘り強く繰り返し交渉を実施し、工事代金の半分以上の支払いを受けることができたのは、一定の成果と言えるのではないかと思いました。交渉のたびに少しずつの支払いを獲得し、それが積み重なって50%以上の支払い額に到達したものです。
 
 
◎ 労働組合作りについて(労組作りを考えているあなたに)
1、労働組合作りの正当性
 職場で、いやなことがあったとき、特に会社側の人間(経営者、経営陣、会社役員、上役、上司、等々)からいじめ、セクハラ、侮辱、罵倒、等々、受けたとき、浴びせられたとき、人は、労働組合を作って対抗しようと考えます。
 職場で、不当な差別、嫌がらせ、人事異動、退職強要、人権侵害、等々、そんな目にあったときも、人は、労働組合作りを考えます。労働災害の発生、劣悪な労働安全衛生環境、低賃金、長時間労働など悪い労働条件、そんな時、人は、待遇改善を求めて労働組合作りを考えます。
 労働者が労働組合を作るのは、労働者としての正当な権利であり、憲法で保障された権利なのです。憲法第28条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と定めています。
 勤労者、労働者には、労働組合を作り団結し、団体交渉し、団体行動する権利があり、憲法で保障されているのです。ここに、確信を持つことです。職場に憲法がないような状態を克服し、人権侵害とたたかい、人権を守り、人間としての尊厳を守り抜くために、また、適正な労働条件など人間らしい生活を獲得するためには、職場に労働組合を作ることが必要です。ここに、労働組合運動、労働運動発生の根拠があり、正当性が存在します。
2、決意から行動へ
 いろいろな不安、困難、経営者側の監視、弾圧、脅迫に負けることなく、挫けることなく、また、負けたくない、挫けたくないという崇高な気持ちから、人は、労働組合作りを決意します。決意する人は、本当にたくさんいるわけです。
 決意から本当に行動に移せるかどうか、ここが問題であり、課題です。現実は、ここで挫折する人が多いのではないでしょうか。決意から行動へ、「職場の仲間に、労組作りを一緒にやろうと呼びかける」、これは相当な勇気、確信、エネルギーが必要です。人間としての尊厳をかけたたたかいとして位置付け、大胆に行動することです。私が本で読んで印象に残っていることなのですが、国際労働運動の先駆者であるエンゲルスは「大胆なれ、大胆なれ、三度大胆なれ!」と私たち労働者に呼びかけています。経営者側の監視、弾圧、脅迫を前にして、確かに普段の私たちは、本当に臆病者です。私たち労働者は「奴隷ではない、人間なのだ」の決意を胸に、労働組合作りを職場の仲間に呼びかけることです。
3、表面化する前に
 職場の規模、状況にもよりますので、組合結成に賛成する仲間が何人になったら、とまでは言えませんが、最初はこつこつと一人一人に組合作りの相談を行い、ある程度の人数になった時点で、組合結成を経営者側に通告し、表面化するということになります。表面化する前に察知され、弾圧されたら、憲法28条等々を盾に急速に表面化し、たたかいぬくことになります。  
4、労働組合の目的
 労働組合の目的を文書にして、職場の仲間に知らせる場合、難しく考えると、やっぱり労組作りは難しいということでそこで挫折することになりますから、最初は極めて簡単なものでもいいと考えます。
 職場職場の状況によりますから、一律にはなかなか書けないわけですが、あなたが労組作りを決意するに至った動機、原因、根拠となったようなことを、まず書いて明らかにすることです。
 たとえば、「上司は部下を人間として扱うこと、侮辱、罵倒をおこなわないこと、部下の人格を尊重すること」等々を掲げてもいいと思います。難しく考えないことです。難しく考えると、労組作りはできません。私も言われた経験がありますが、上司、上役、管理職、監督等々の人たちは、権力を背景に「バカヤロー」、「こんなことをする奴がいる」、「おまえ」、「そんな意見を言いやがる」、「ざまをみろ」、等々、労働者に平気であるいは報復的に暴言を吐くものです。
 私の経験では、文書など一切なしに、ともかく先行して労組を作ったことがあります。
 ただ、あとからでもいいと思いますが、労組作りの権利を保障しているのが憲法ですから、労組の目的の一つに「憲法を守る」を掲げることは必要です。
 お互い、激励しあって、労組作りに取り組みましょう。質問、相談、等々ありましたら、このサイトの email を通じて連絡して下さい。
 
 
◎ 埼玉土建一般労組不払い相談の一端(賃金不払い問題アドバイス)
 2006年5月11日、下記の人が、埼玉土建一般労組本部に直接、不払い相談で電話してきました。(建設労組の組合員から埼玉土建一般労組を紹介された、とのことです)
 Sさん
 水道工事に従事
 埼玉県比企郡
(相談のなかみ)
 K社(従業員3人)に1年以上前から、1日13,000円の日給で、労働者として働いてきた。この間ずっと、支払いを受けてきたが、最近の水道工事の分(13,000円×15,5日分=201,500円)について不払いを受けている。理由は、水道工事の施工不良による水漏れの弁償。
(アドバイス)
 @業者間の請負契約ではなく、労働者として雇用関係で働いていたのだから、仕事で失敗したからと言って、それで賃金を支払わないというのは許されることではなく、労働者が仕事で失敗した場合、経営者が責任を負わなければならないこと、従って、K社はSさんの賃金を支払わなくてはいけないこと、A建設労働組合(埼玉土建一般労組)に加入して、K社との交渉、労基署への申し入れを実施し、賃金不払いの解決をめざすことなど、アドバイスしました。
 
(参考資料)
 『民法(6)契約各論〔第4版増補版〕』(発行 有斐閣)には、「一般に、労務の結果としての『仕事の完成』を目的とする契約が請負であり……労務の利用それじたいを目的とする契約が雇用だ、と説かれている。だが、その区別は実際には困難である(たとえば、出来高払の賃金が支払われる場合を考えてみよ)」、「民法は、雇用をもって……その一方(労務者)が労務に服することを約し、相手方(使用者)がこれに報酬を与えることを約する契約と構成している(民法623条)。すなわち、雇用契約をとりむすぶことによって、労務者(労働者)は労務に服する義務を負い、使用者(資本家)は賃金支払の義務を負う……使用者は、労働契約の不履行(たとえば、期間内での退職や無断欠勤)について違約金の定めをしたり、また債務不履行にかぎらず、不法行為がなされた場合(たとえば、機械・器具の損壊)について損害賠償を予定する契約(民法420条)をなすことを禁止される(労働基準法16条)。ただ、これらの場合について、就業規則で制裁としての減給(労働基準法91条)を定めたときには、(上述の)規定にかかわらず、減給が可能であると解されている。ただし、減給額は一定限度にとどめられる」、「請負とは、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約する契約である(民法632条)……請負とは、第一に、仕事の完成を目的とする契約である……仕事の「完成」とは、労務によってまとまった結果を発生させることをいう。請負は、仕事の完成そのものを目的とし、労務そのものを目的とするものではない。すなわち、労務の供給は、ただ仕事完成の手段にすぎず、この点において雇用と異なる。したがって、請負人がいくら労務に従事しても、約束した結果が発生しなければ、請負人は債務を履行したことにはならない……第二に、請負は、完成した仕事に対して報酬を支払うことを約束する契約である……なお、報酬は仕事の完成に対して支払うのであるから、請負人が仕事を完成しなければ、注文者に報酬を請求することはできない」と説明されています。
 上記の解説書自体が、請負と雇用について「その区別は実際には困難である」と言っている位ですから、実際にこの種の事案にぶつかった人にはわかると思いますが、請負なのか雇用なのか、労働者なのか請負人なのか、実際の(紛争)現場ではいつも問題になります。
 建設労働組合、建設労働運動としては、上記解説書に説明されているような民法上の規定を考慮に入れながら、賃金、労働者を守り抜くという立場で、紛争の解決に努力し、力を尽くすことになります。
 
 
◎ 埼玉土建一般労組の何でも相談活動(具体事例 宝石売買契約)
(以下は、埼玉土建一般労組さいたま北支部書記の田中悌二さんから提供していただいた資料に基づいて、まとめたものです―――海野和夫)
 2006年4月25日夜8時頃、Kさんから「子供の契約のことで相談したい」との電話が埼玉土建一般労組さいたま北支部書記の田中悌二さんにありました。緊急に対処が必要な様子なので、「すぐに(埼玉土建一般労組さいたま北支部)事務所に来てください。相談に乗ります」と田中悌二さんは答えました。すぐにKさん夫妻と娘さんが相談に来ました。
Kさんの娘さんが5年前にネックレスを月賦で購入しました。この時カードを2枚渡されました。ネックレスの支払いがもうすぐ終るというときに、5年前の契約のときの業者とは別の業者からKさんの娘さんに「あの時渡されたカードの利用料は、月3,000円である。受け取ってから一度も払っていないので、請求が加算され、自己破産に追い込まれるほど請求されるかもしれない。新たな契約を自分のところと結べば請求しないよう交渉してあげる。契約は宝石の購入という形にしている」との趣旨の話がされました。
 Kさんの娘さんは業者に会い、言われるままに2006年4月6日、ジュエリーの売買契約を交わしました。
 契約書には、赤いインクで以下のように印刷されていました。
―――クーリングオフのお知らせ―――
1、『業務提供誘引販売』方法でお申し込みされた場合、本書面を受領した日を含む20日間は書面を発した時に効力を生じ、無条件にこれを解除できます。
2、この場合お申込者は、
@損害賠償や違約金を支払う必要はなく、また商品の引き取りや権利の返還に要する費用は販売店が負担します。
A役務の提供を受けた場合でも当該契約に基づく対価の支払いの義務はありませんし、既に商品代金や対価の一部を支払われている場合は、速やかに販売店よりその全額の返還を受けることができます。
 84万円の契約で、14万円はKさんの娘さんが自分の預金から、70万円はサラ金2社から借りて支払いました。
 両親は、@契約を解約したい、Aサラ金の借り入れは両親が立て替えて返したい、ということでした。
 「カードの利用料について契約していないのだから、支払い義務があるはずはない」、「5年前と別の業者となっているが、同じグループではないか」と田中悌二さんはKさんの娘さんに話しました。
 2006年4月6日の契約だと2006年4月25日が解約の(クーリングオフの)期限です。契約を解除することにし、田中悌二さんが文書を作り、(埼玉土建一般労組さいたま北支部)事務所から相手にFAXしました。
 内容証明郵便については、さいたま新都心局が24時間体制なので、2006年4月25日の証明を貰うため2006年4月25日23時頃親子で出しに行きました。(前述のように、相談の電話があったのは、2006年4月25日夜8時頃です。まさに急速な対応、ギリギリの対応だったわけです)
 サラ金については、交渉し、サラ金業者の了解を得て、返金しました。
 田中悌二さんがKさんに電話をすると、2006年5月8日現在、(販売業者からの返金の)振込はないということです。 
経緯から販売業者が素直に返金してくるとは考えられないと田中悌二さんは判断し、「さいたま市消費生活総合センター」に申し入れ、業者への指導をしてもらう予定です。
(追記)その後、Kさんは「さいたま市消費生活総合センター」への申し入れを行い、「さいたま市消費生活総合センター」から販売業者への指導が行われ、その結果、返金するとの回答が販売業者から届いたとのことです。解決までもう少しです。あとは実際に返金させ、振り込ませることです。
(再追記)そして、2006年5月16日、84万円の全額が振り込まれてきました。全面解決です。
 
 
◎ S社不払い事件の経過
(以下は、2001年〜2002年にかけて問題になった、S社による不払い事件について経過をまとめたものです。困難な事例として、参考にしていただければと考え、載せておきます―――海野和夫)
1、S社不払い問題で県交渉
 川越市に本社があるS社(リフォーム請負業)による不払い問題が、埼玉土建一般労組の、川越、入間、朝霞、志木、富士見三芳、東松山の各支部へ広がりを見せると同時に、「その筋の介入」、「暴力の問題」、「(埼玉土建一般労組の)組合員が警察に頼む」など、複雑で困難な側面が強い事例になっています。
 この問題を、リモテックス債権者対策会議の運動を教訓として、S社債権者対策会議を作って、労働組合の共同の運動として進め、共通の認識を作りながら、正しい対応をおこなうために、2001年7月8日に、S社債権者対策会議をおこないました。
 この会議には、埼玉土建一般労組志木支部(当時)5人など7人が参加し、当面、@埼玉土建一般労組の全支部へのファックスにより、S社の被害が広がらないように、徹底をはかる、A埼玉県の不払い相談窓口に申し入れ、相談する、の2点を確認しました。
 S社債権者対策会議での確認にもとづき、県への要請行動をおこない、2001年8月2日、埼玉県土木部建設管理課の副参事、埼玉県県土整備部建設業課の専門調査員と話し合いをおこないました。
 埼玉土建一般労組からは、志木、東松山、富士見三芳の各支部と本部から7人が参加。@賃金・工事代金の不払いをくりかえすS社に対して、県として指導をおこない、支払をおこなわせること、A埼玉土建一般労組東松山支部の組合員の場合、S社から請け負って屋根工事をおこない、その支払が2001年8月末であり、新しい不払いが発生することのないよう県として強く指導すること、BS社を「不良不適格業者」として排除するために、同社に対して、建設業法にもとづく営業許可の取り消し、営業停止などの処分を県としておこなうこと、の3点を中心に県に要請しました。
 県の回答は、@民民の問題(民間業者の間の取引の問題)なので、県の指導での不払い解決は困難、A埼玉土建一般労組からの要請をS社に伝えながら、同社から事情を聞く、B同社への処分については検討する、というものでした。
 建設業法は、28条(営業の停止)、29条(許可の取消し)で、請負契約で不誠実な行為をくりかえす「不良不適格業者」に対して、国土交通省や県が、営業停止、建設業許可の取消しのなどの処分をおこなうことができることをさだめています。
 県との再交渉、国土交通省や(S社の本社がある)川越市との交渉を含めて、不払い被害業者の困難をやわらげるために、埼玉土建一般労組として可能性を追求していきます。
2、S社未払い問題 川越労基署交渉
 2002年1月17日に埼玉土建一般労組として川越労働基準監督署と交渉をおこない、S社(住宅リフォーム会社)が多数の業者・労働者に対しておこなっている労務費の未払いについて、労基署として調査・確認し、未払いの労務費をS社が支払うよう指導することを要請。
川越労基署の見解として、@業者間の問題に労基署は「介入」できない、Aリモテックス社倒産のときの「請負職人」のように、表面上・形式上は「請負」であっても、実態が労働者であれば労基署は「介入」でき、実態が労働者かどうかケースバイケースで判断し、労働者ということであれば、労基署として「介入」する、を引き出すことができました。
 そこで、埼玉土建一般労組富士見三芳支部のAさん(看板取り付け工事)といっしょに、2002年1月30日に2回目の労基署交渉をおこない、Aさんは屋号を使っているが、(リモテックス社倒産のとき労働基準法上の労働者として認められ、未払い賃金の立替払い制度が適用された「請負職人」約220人と同じように)、株式会社、有限会社のような法人ではなく個人で、そして日常的に人を使って仕事をしているわけではなく1人で施工に従事しており、実態としては労働者であることを労基署に説明し、労基署の「介入」を求めました。
 労働基準監督官の対応は、Aさんの労働者性に否定的で、上局(埼玉労働局)の判断がなければ動けない、との回答。
 今後、埼玉土建一般労組は、埼玉労働局、そして厚生労働省と交渉をおこなっていきます。
 なお、S社については、「代金を払ったのに、工事をしてくれない」との訴えが、すでに3人の消費者から埼玉土建一般労組に寄せられています。
3、(2002年2月5日に)埼玉労働局に提出した要請書
(1)要請のなかみ
 S社がAさんなど多数の業者・労働者に対しておこなっている労務費(賃金)の未払いについて、調査し、確認して下さい。
 そして、これらの業者・労働者に対してS社が未払いの賃金(労務費)を至急支払うよう適切な指導をおこなって下さい。
(2)要請の根拠
@S社が、Aさんに対して交付した「債権確定書」のコピーを、証拠資料として添付しておきます。
AAさんは、屋号を使っていますが、(リモテックス社倒産のとき労働基準法上の労働者として認められ、未払い賃金の立替払い制度が適用された「請負職人」約220人と同じように)、株式会社、有限会社のような法人ではなく個人で、そして日常的に人を使って仕事をしているわけではなく1人で施工に従事しており、実態としては労働者です。
4、埼玉労働局の対応
(2002年2月5日の)上記要請に対して、埼玉労働局は「Aさんは労働者ではない」との判断を示し、埼玉土建一般労組としては、今後、厚生労働省交渉等々、あくまでもAさんの「労働者性」認定を追求したかったのですが、Aさん本人の「これ以上は、もういいです」との意思表明を受け、断念しました。
 
 
◎ (9店舗併設)新築工事現場での未払いについて
(2002年に発生した、「その筋」が深く関係していたと見られる不払い事件について、報告しておきます。未解決に終った事例です。この種の事件の未然防止に少しでも役立てることができればと考え、不十分ですがまとめてみました)
1、不払い事件の連絡
 東京土建一般労組多摩西部支部の書記と組合員のE氏から、「発注者がA社事業主の「○○」(9店舗併設)新築工事現場で工事代金未払いが発生している、そしてその現場には6人の埼玉土建一般労組組合員がいる」との情報が入りました。当事者の一方だけからの話なので、事実関係を断定することはできませんが、話を2時間にわたり聞いた範囲では、「その筋」が深く関係している可能性もあります。
2002年11月12日に埼玉土建一般労組会館に関係業者等を集めて、対策会議をおこないました。
2、「○○」(9店舗併設)新築工事現場関係未払い対策会議
(下記は、2002年11月12日におこなわれた「○○」(9店舗併設)新築工事現場関係未払い対策会議で配布した資料等にもとづいてまとめたものです)
(1)経過
 現場 「○○」(9店舗併設)新築工事現場 
 施主 (A社)事業主
 元請 B社→B社元従業員のC氏→D社と元請が2回交代していると言われています。
@(最初の元請の)B社の元従業員C氏の話によると、下記のような経過だとのことです。
2002年6月2日の夜、施主の(A社)事業主と元請のB社の間で、当時B社の営業兼現場担当のC氏も同席して、仮契約(税込み1380万円)をおこなう。 
 このときの「施主の(A社)事業主」の話「着手金(契約金額の三分の一)の400万円を用意できない。180万円は借りてきたので支払う。残り220万円を2002年6月24日頃に支払う」
 2002年6月24日、当時B社の営業兼現場担当のC氏が「残り220万円をいつ貰えるのか」と施主の(A社)事業主に電話。施主の(A社)事業主の回答「まだ用意できていない」
 2002年6月25日 「言った言わない」の話になる。
 2002年6月30日 元請のB社が「その筋」に頼んで、仕事をおりることを「施主の(A社)事業主」に通告させる。このとき、着手金の一部として貰っていた180万円を「その筋」を通して「施主の(A社)事業主」に返した。しかし、施主の(A社)事業主は「50万円しか返して貰っていない」と言っているという話が伝わってきている。
 
 着工予定は2002年6月7日。当時B社の営業兼現場担当のC氏が2002年6月7日から工事を始めていた。
 2002年6月30日の夜、(最初の元請の)B社事業主から(当時B社の営業兼現場担当の)C氏は「いったんB社をやめて一個人として活動してくれ」と言われる。
 2002年7月2日に、C氏は(最初の元請の)B社をやめる。その件を含めて、C氏は「施主の(A社)事業主」とも相談。C氏「ゼネコンをさがす間、工事を中断せざるを得ない。2002年7月10日までに工事再開のめどを立てる(2002年7月一杯に終ればいい工事だった)」と「施主の(A社)事業主」に話す。
 ところが、いわくつきの工事なので、ゼネコンが引き受けない。
 (二番目の元請になった)C氏、○○氏、(三番目の元請になることになる)D社事業主の3人で「施主の(A社)事業主」のところに行き、どうしたらいいのか相談。このとき既に、500万円位工事出来ていた。C氏「1380万円の負債を引き継ぐのは無理」。施主の(A社)事業主「1380万円のうち500万円は(最初の元請の)B社に請求すればいい」
結果として、C氏は800万円の工事を引き受けることになる。
(その後)
施主の(A社)事業主「着手金(800万円の三分の一)を用意できない。業者名簿一覧表と工程のおおまかなもの(いつどれくらいお金が必要か)を出してほしい」
2002年7月16日、工事再開。C氏は業者名簿一覧表を施主の(A社)事業主に渡す。
2002年7月21日 C氏は施主の(A社)事業主に、大工手間賃21万円用意してください、というようなものを書いて渡した。施主の(A社)事業主「これならいい」。
2002年7月22日 施主の(A社)事業主がC氏に15万円持ってくる。1週間分の手間賃としては足りなかった。
職人に日払い、週払いで来てくれとは言えないので、C氏1人で工事を続ける。
2002年7月末 C氏「400万円必要だと書いて渡してあるのだから、実際どれ位なら出せるか言ってほしい」。施主の(A社)事業主「100万円なら出せる」。
C氏はE氏(東京土建一般労組多摩西部支部組合員)と協議。C氏「いくらならやってもらえるのか」。今回の事件で埼玉土建一般労組や東京土建一般労組に不払い相談に来ているのが、このE氏(東京土建一般労組多摩西部支部組合員)です。
2002年8月1日朝7時 施主の(A社)事業主「70万円しか渡せない」この後、2日間工事中断。
2002年8月3日 C氏とE氏(東京土建一般労組多摩西部支部組合員)で材料の仕入先とか話をしていた。施主の(A社)事業主から電話「どうなっているんだ」。
(その後)
 施主の(A社)事業主「テナントが入ったら払ってやる」。C氏は、支払一覧表の明細を提出。施主の(A社)事業主「日払いの職人を雇ったのは、おまえが悪い」とC氏をなぐる。ケガはしなかった。
 2002年8月23日 話し合い(それまで、C氏は多少仕事をおこなっていた。この間、106万5000円を貰う)。(三番目の元請になった)D社事業主に工事の引き継ぎをおこなう。施主の(A社)事業主から言われてC氏は「契約不履行及び賠償金について、C氏と家族・親族は責任を負う」との念書を書く。(この1週間前に電話で施主の(A社)事業主から、「24時までに『○○』に来ないと殺す」とC氏は言われる。また、たびたび『殺す』と言われる。なぐるけるをされる。電動ドライバーを胸に突きつけられる)
 工事は90%位まで終っている。
 C氏「当面、静観していたい。弁護士を立てて、テナント料から示談金をとりたい」
(以下は、「施工不良」等の件)
 (2002年8月23日頃)C氏が元請となり、工事を進めたが、内装工事に入る直前に「施主の(A社)事業主」からクレームがあり、取り壊させた(カウンターの高さ、床上げが気に入らないということで、厨房内と通路の床完全撤去)。
 施主の(A社)事業主が言う損害賠償の根拠=お盆前にはオープンしたかった。年末オープンになると、その間のテナント料を見込めなくなる。
A不払い相談に来たE氏(東京土建一般労組多摩西部支部組合員)の話
 C氏は「施主の(A社)事業主」から支払を受けていないという話だったので、直接「施主の(A社)事業主」に支払を求めたが、施主の(A社)事業主から「C氏に仕事を頼んだのだから自分は関係ない。金も払ってある」と言われた。
 2002年9月26日 再度「施主の(A社)事業主」に支払を求めたが、話にならない。
 2002年9月29日 施主の(A社)事業主からE氏に「かげでチョロチョロするとぶっ殺すぞ」の電話。E氏「東京土建一般労組に相談している」。施主の(A社)事業主「いつでも来い」
(2)対応
 前記のように、@施主自体が「その筋」と思われる、A元請が2回も代り、それぞれの元請が「その筋」、「ぐるになっている」可能性、B施主と元請が「ぐるになっている」可能性、C彼らの上に全国組織の「その筋」がいる可能性、等々、複雑な事例でしたが、建設労組として交渉申し入れ等々、努力しました。結果として、未解決に終りました。
 
 
◎ ─── 国民の譲れない権利としての生活保護の受給のために ───
(以下の記述については、『絶対にあきらめない 生活保護 受給マニュアル』(著者 田村宏氏 発行 同文舘出版)を参考にさせていただきました──海野)
 生活保護を受けることは、国民が生きるための権利です。日本国憲法25条で保障された国民の権利です。
○ 憲法25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 生活保護は申請主義です。行政がしてくれるのを待っていてもダメです。申請しなければダメです。本人や同居家族が申し立てる必要があります。「頼るべき親族等がいない」、「活用できる資産や他施策がない」ことを申し立て、証明することが大事です。病弱を証明するのは、医師です。
 生活保護の受給の前提は、資産の処分です。行政から資産の処分を指導されます。車の保有は困難とされています。しかし、移動に車が欠かせない障害者や仕事に不可欠というような場合には、例外的に保有が認められる可能性があるとのことです。居住中の不動産の処分を指導されるかどうかについては、微妙なようです。自宅の不動産については、2300万円以下の資産価値であれば売却の必要はないとのことです。
 生活保護としての支給のなかみは、金銭だけでなく、医療や介護などのサービス提供もあります。
 個人ではなく世帯を単位として認定するのが、生活保護の仕組みです。
 生活保護受給中の借金は、絶対に認められないとのことです。
 生活保護を受けようとする人を支援する、協力する第三者(労働組合を含めて)の同席については、本人が同席を求めているわけですから、(個人情報の保護などと言って)行政が拒否できる根拠はありません。
 生活保護の認定の上で、住民登録をしているかどうかや住民税を支払っているかどうかは、関係がないとのことです。
 ホームレスの人たちが生活保護を受けられないのは、住民登録をしていないからだと、よく言われますが、そうではなく、公共の場所を「不法占拠」しているから、行政としてそれを認めることはできないというのが、受けられない理由のようです。言い換えると、「不法占拠」ではない状態に、ホームレスの人たちを説得して移行させることができれば、受給の可能性が出てくる、ということでしょう。
 日本人以外でも、在留資格があって外国人登録をしていれば可能だとのことです。
 言うまでもないことですが、虚偽や不正受給は、犯罪です。厳しい返還請求が来ます。刑事罰を科せられる場合もあります。
 
 
◎ ──────── 多重債務問題の解決のために ────────
(以下の記述は、『借金整理 過払金請求と自己破産』(著者 島弘毅弁護士 発行 あさ出版)を参考にさせていただきました──海野)
1 多重債務に負けないために
 多重債務を解決するには、正確に漏れなく、借金総額を知ることです。
 債務の利息を規制する法律=出資法(高い金利を認めている)、利息制限法(出資法に比べて金利がより低く規制されている)
 2006年の最高裁判決によって、業者が出資法に基づく高い金利を要求することはできなくなりました。従って、本当に返さなければいけない金額を、利息制限法に基づいて計算することになります。これを行なうことで、債務額は減少しますし、過払いも明らかになります。
 返さなければいけない金額を、利息制限法に基づいて計算するには、取引履歴が必要です。業者には取引履歴の開示義務があるとする最高裁判決が出ています。業者に対して「取引履歴の開示請求」を行ないます。取引履歴を開示しないことは、法律違反です。開示された取引履歴だけでは足りない場合は、本人の記憶で補強します。
 利息制限法1条1項は(10万円未満の貸付の場合に年利20%、100万円未満の貸付の場合には年利18%、100万円以上の貸付の場合には年利15%)までの利息をとることを認めています。
 2007年の法改正によって、利息制限法違反の利息をとることは禁止されました。無効だということです。また、同改正によって年利20%を超える利息をとると刑罰の対象になることも決まりました。(この改正法は、2010年6月20日までには施行されます)
 ヤミ金とは?
出資法の定める上限金利(現行は年29.2%、新法では年20%)違反で貸付を行なう業者はすべてヤミ金です。ヤミ金の、年利29.2%を超える貸付は、出資法違反で刑罰が科せられるだけでなく、民事上も無効です。一切返す必要はありません。
2 特定調停(根拠となっているのは特定調停法)
 債権者の営業所(本店・支店)を管轄する簡易裁判所に申立を行ないます。自分で申し立てることができます。費用負担が少なくてすみます。特定調停を申し立てれば、取立は禁止されます。また、強制執行を止めることができます。但し、特定調停によって過払金を取り戻すことはできません。別途、努力する必要があります。
 分割の返済計画案は3年〜5年です。
 調停委員が間に入ります。
 特定調停では、借金の原因が問われる自己破産とは違って、借金の原因が問われません。
3 自己破産
 「免責が認められない債務」 税金、不法行為に基づく損害賠償、養育費、罰金
 債権者に配当すべき財産がないことが明らかである場合には、配当する必要がないので、破産手続開始と同時に配当手続を終了します。これを同時廃止手続と呼びます。
 配当すべき資産があれば、破産管財人(弁護士)が裁判所によって選任され、管財手続を行ないます。資産をお金に換え、破産財団を形成し、そこから債権者への配当を実施します。管財手続の場合、破産者は、破産管財人の手続費用として最低20万円を納める必要があります。
 99万円までの現金は、自由財産として認められ、破産者が自由に管理・処分できます。
「免責不許可事由」には、以下のようなものがあります。
@ 資産を故意に隠す、不当に安く処分する。
A 借金の原因が、ギャンブル、投機行為(株式、先物も)、過大な飲食費、遊興費。
B ローンで買った商品を完済前に売却して換金してしまった場合。
C 債権者を故意に隠す。
D 破産管財人に協力しない。
 但し、上記のような場合であっても、反省し、二度とこのような行為を行なわないとの意思表示の誠実さが認められれば、免責が認められる可能性はある、とのことです。
 免責(借金の返済を免れること)が認められなければ、自己破産の意味はありません。この場合も、誠実が大事ということです。
 
更新日時:
2008/12/16

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Last updated: 2009/7/5