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「建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払」関連(6)
「建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払」関連(6)
海野和夫
 
◎ 元請〜5次という深い重層下請構造のもとでの工事代金不払い
 次のような、深い重層下請構造のもとでの、工事代金不払い事件です。
 発注者→元請→1次下請→2次下請→3次下請→4次下請→5次下請という深い重層下請構造です。
 工事は終了しています。
 1次下請は2700万円で2次下請に請け負わせ、1500万円しか払っていません。工事の遅滞による外注費の発生を、支払わない理由にしています。発生した外注費と支払うべき工事代金を相殺したというのです。
 いま、2次下請は夜逃げ状態。(2次下請は3次下請に200万円だけ払っています)
 3次下請は4次下請に1700万円で請け負わせ、1円も払っていません。3次下請も夜逃げ状態。
 4次下請は借金をして、5次下請に全額支払い済み。
 上記の構造を前提に考えると、
 一つは、元請責任の追及、もう一つは、1次下請との交渉が考えられます。
 1次は相殺の理由を、「工事の遅滞による外注費の発生」としていますが、工事の遅滞の原因が誰にあるのか、発注者なのか、元請なのか、1次自身なのか、2次なのか、3次なのか、それとも4次なのか? 明らかにする必要があります。
 工事の遅滞の原因が発注者または元請または1次にある場合は、言うまでもなく、2次に支払うべき工事代金と相殺する正当な理由にはなりません。
 工事の遅滞の原因が2次にある場合には、相殺の正当な理由になります。
 工事の遅滞の原因が3次にある場合、2次が選定した3次の不手際ですから、2次にも責任があり、相殺の理由になります。この場合は、2次は、相殺された分について、3次に支払うべき工事代金と相殺する理由を得たことになります。
 工事の遅滞の原因が4次にある場合、1次は、2次に支払うべき工事代金と相殺する理由になるし、順次、2次は3次に支払うべき工事代金と相殺、3次は4次に支払うべき工事代金と相殺、という構造が成立していきます。
 1次の選定責任の追及が必要です。1次が選定した2次が、3次に200万円払っただけで夜逃げ状態ということについて、1次は責任を負っています。自分が選定した下請が故意または過失によって他人に損害を加えた場合には、その下請を選定した請負業者も責任を負うことになります。
 同様に、3次が4次に1円も払わないまま夜逃げ状態ということについては、その3次を選定した2次にも責任があります。
 そして、最後に浮上するのが、重層下請構造での建設工事の最終的責任者としての元請の責任です。
 建設業法が定める元請責任です。
 今回のような不払い事件の場合には、建設業法41条2項、3項が定める元請責任での下請救済、言い換えると元請の立替払による不払いの解決が、必要になるし、建設業法が元請に要請するところです。
 また、元請は、重層下請構造下で今回のようなトラブルを起こさないよう下請を指導すべき重い責務を負っています。建設業法24条6項が定める元請による下請指導の責任です。
 元請は、法律やルールを守り、不祥事を起こさないよう下請を適切に指導すべき責任を負っています。
 重層下請構造下で今回のような不祥事が起こったということは、元請による下請指導が適切に行なわれていなかった、ということになります。この点について、元請に責任があります。
 
 
◎ 建設業法41条3項に基づく立替払いでの「合意書」のモデル
 「建設業法41条3項に基づく立替払いでの合意書のモデル」を教えてほしいとの要望がありましたので、あらためて、以下に「合意書のモデル」を掲載します。実際に大手住宅企業との間で交わした「合意書」を参考にして、それを匿名化したものです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
合 意 書
 A社を甲、B社を乙として、本日、下記のとおり合意した。
第1 甲は、乙に対して、○○社の倒産に伴う工事代金未払いに関して、建設業法第41条3項の趣旨に則り、○○社の未払い代金のうち金○○円を、○○年○○月末日限り(「限り」は「までに」の意味です――海野)立替払いするものとし、これを乙の指定する銀行口座(○○)への振込入金の方法により支払う。
第2 乙は、○○社の未払いに関して、本書に記載する以外には、名目の如何を問わず、甲に対して何らの経済的要求も行わないことを確認する。
第3 甲と乙は、○○社の未払いに関する甲と乙との間での紛争については、本書に記載するところによりその全てが円満に解決したことを相互に確認し、他に何らの債権債務もないことを相互に確認する。
第4 甲と乙は、本書に記載する内容については、第三者へ口外しないことを互いに確約する。
(第4の表現については、私たちは不要と考えますが、慎重な元請の場合、諸事情からこの表現の記述を要求してくる場合があり、私たちは譲歩して受け入れています。立替払での不払い解決が火急の課題ですから、話を壊さないように最大限配慮します――海野)
 以上の成立を証するため、本書2通を作成し、各自1通所持するものとする。
○○年○○月○○日
 甲     住所
       社名
       代表者名              印
 乙     住所
       社名
       代表者名              印
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 
◎ ─── 独立行政法人発注の公共工事でのトラブルの構造 ───
(関係者に配慮して匿名化してあります)
発注者  独立行政法人○○○○
元請   A社
1次下請 B社
2次下請 C社
3次下請 D社等数社
 以上のような重層下請構造の中で発生した、元下間のトラブルです。
 工事は、○○○○外壁修繕他工事です。
 多額の工事代金不払い被害を受けていると、2次下請のC社は主張しています。
1次―2次間での多額の未払いトラブルの発生です。建設業法に基づく元請責任での解決が求められています。
 @ 着工の大幅な遅れが事実としてあり、2ヶ月の工期が1ヶ月で完成しなければならなくなり、半分の工期になってしまったわけです。工事開始の遅れが、トラブル発生のもとになっています。工期の遅れを取り戻すために、実際に建設工事を施工する下請業者は、相当な無理を強いられます。工事開始の遅れの責任は誰にあるのか? 一つのポイントです。その責任が発注者にあるのか、元請にあるのか、あるいは1次にあるのか?
 2次には、工事開始の遅れの責任はありません。
着工の大幅な遅れの責任が主として元請にある可能性が濃厚です。
元請は「遅れについては、元請の責任の可能性が強いのは認める」と回答しています。
少なくとも、2次に工事開始の遅れの責任はないことは明白ですから、工事開始の遅れに伴う負担を2次に負わせるべきではなく、元請責任での解決が求められます。
 A 人工について、延べにすると相当な数の待機が存在し、元請の所長の指示による待機だと、2次は主張しています。
 元請は、この点に回答していません。
 B 1次が2次に指示して常用の約束で2次に施工させた工事部分があり、この部分の常用人工分が未払いと2次は主張しています。事実とすれば、元請責任での解決が必要です。
 元請は「当社の職員の中に、常用の約束をした者はいない」と文書回答してきました。仮にそうだとしても、1次が2次に常用の約束をして施工させたとすれば、その未払いについては、元請が責任を負うことになります。
 C 多大な人工ロス、材料ロス、手戻り(やり直し)が存在しています。このようなロスを発生させた責任が、元請側にあるのか、2次の側にあるのか、が問題です。元請の不適切な指示がロス発生の原因だと、2次は主張しています。元請の責任で発生したとすれば、国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」にも明記されているように、(ロス発生について)元請に責任がある場合には、元請の負担で解決する必要があります。このような場合に、下請に負担を転嫁するのは、建設業法違反になります。
 元請は「不適切な指示はしていない」と文書回答してきました。
 D 「やり直し」の一部は、元請に責任がないような箇所もあるようです。「請負契約で決められた工事が適正に行われていないので、適正な工事になるよう指示しただけである」と元請は主張しています。請負契約ですから、2次の責任でロスが生じた部分は、2次の負担で解決せざるを得ないでしょう。
 E 元請の所長による指示が全て、口頭での指示であり、書面による指示が行われていないことは、主として元請の責任を問われる部分です。その上、元請として下請指導、現場管理をする上で当然必要な日報が、存在していない、日報が付けられていない、という問題があります。元請の責任が問われます。
 「口頭による指示」、「日報の不存在」については、元請も認めています。
 F 元請の所長が工期の途中で(元請企業)を退社してしまい、所長交代という事態が発生しています。元請の責任が問われます。
 所長の工期途中での退社、交代についても、元請は認めています。 
 
 
◎ 質問「建設業法と賃確法・発注者と許可行政庁の責任」へのお答え
 以下のようなご質問が、当HPに寄せられましたので、お答えしておきます。実は、相当深い質問で、直面すると、私たちも悩む問題です。一緒に考える姿勢で、お答えしたいと思います。
 なお、賃確法適用・不適用については複雑な問題もあるのですが、それは省いて、できるだけ単純にお答えします。
(質問)
2008/1/16(水) 14:50  建設業法と賃確法・発注者と許可行政庁の責任について教えてください。
 いつもコラムを見ています。大変勉強になります。
 以下の2点の質問に対する過去の事例があればコラムで紹介するか、お返事をいただければ幸いです。1点目は、例えば地方自治体の公共事業(A市)で特定建設業者の元請(B)、一次下請(C)・二次下請(D)・Dの常用労働者(E)で、Dの倒産もしくは事実上の倒産によるEへの賃金不払いとしましょう。
 一次業者との交渉で解決しない場合に元請へ「建設業法41条2項による立替払」を要請するのか、最初から賃金確保法による立替払を労働基準監督署に申請するのか、どちらが良いのでしょうか?後述の方が特定元請からすると「ありがたい話」に思えるのですが…。
 2点目は同じく公共事業の発注者がA市で特定元請Bとしましょう。二次業者Dが事業継続中の場合あるいはEへの不払いが工事代金の場合ですが、Bが建設業法による立替払の要請に対して責任を果たそうとしない時に、発注者責任(A市)と許可行政庁(都道府県知事もしくは国道交通省)への申し入れは、どちらを先にするべきなのでしょうか?
(回答)
◎ 1点目 
 1点目のご質問での構造は、
 発注者     A市(公共事業)
 元請      特定建設業者B
 1次下請    C
 2次下請    D
 Dの常用労働者 E
 という重層下請構造で、2次下請Dの倒産または事実上の倒産によるE(2次下請Dの常用労働者)への賃金不払いというものです。
 結論を言うと、建設業法に基づく元請責任をはたさせるのが大事であり、今回のように元請の特定建設業者が存在する場合は、第一には、建設業法41条2項に基づく元請責任での(不払い賃金の)立替払を求めるべきだと思います。
 同時に、注意する必要があるのは、賃確法は一定期間申請しないと適用にならなくなりますので、この点の見極めが大事です。
 実例を言うと、清水建設が元請のケースで、「常用労働者」というより「手間請労働者」だったのですが、清水建設に立替払いを求めたときは、清水建設自らが努力して労基署に申請し、賃確法の適用を実現しました。
◎ 2点目
 2点目でのご質問の構造は、
 発注者     A市(公共事業)
 元請      特定建設業者B
 1次下請    C
 2次下請    D
 この下に    E
 というもので、2次下請Dが事業継続中の場合またはEへの不払いが工事代金の場合です。
 そして、この構造のもとで、元請の特定建設業者Bは、建設業法による立替払の要請に対して責任をはたそうとしません。
 このような場合は、原則として、発注者への申し入れを先に行ないます。
 公共工事の発注者には、入契法成立時の参議院付帯決議「(公共工事の発注者は)建設労働者の賃金・労働条件の適切な確保に努めること」という発注者責任があり、また、元請を指導・誘導して、元請に建設業法41条2項、3項に基づく立替払いを立派に行なわせることで、「建設労働者の賃金・労働条件の適切な確保」という発注者責任をはたすことができるからです。
 (公共工事)発注者段階で解決しない場合にはじめて、許可行政庁に指導・誘導を求めることになります。
 実例は、多数あります。
 
 
◎ 不払い解決要請 公共工事発注者→許可行政庁 F市、F県のケース
 「不払い解決要請 公共工事発注者→許可行政庁」の実例をとの要望がありましたので、以下に発注者F市、特定建設業者の許可行政庁F県のケースを紹介しておきます。
 F市発注の公共工事の現場で発生した倒産・不払いです。
 元請はA社、1次下請のB社が倒産、それに伴い2次下請のC社が工事代金不払い被害を受けました。元請のA社はF県知事許可の特定建設業者です。
 元請のA社に対して2次C社は、建設業法41条3項に基づく立替払での救済を求めました。A社は応じません。
 C社は、特定建設業者であるA社の許可行政庁であるF県に、元請責任での立替払いを行うよう元請A社を指導するよう申し入れました。
 県は、元請A社を呼んで指導。
 A社は、建設業法41条3項に基づく立替払をしないという姿勢を変えません。
 C社が県に話すと、「一度呼んで指導したのだから、あとは民民の話し合いで解決を」と言っているとのことです。
(解決のためには)
一つは、発注者のF市への申し入れです。
「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律案に対する附帯決議」(略称 入契法附帯決議)の第6項は、公共工事の発注者の責任として「建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるよう努めること」と定めています。以下に載せておきます。
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律案に対する附帯決議
参議院国土・環境委員会
平成12年11月16日
 政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、適正化指針の策定等その運用に遺憾なきを期すべきである。
 1 国民の負担による公共工事の受注者の選定に関し、国民の疑惑を招かぬよう努め、談合、贈収賄等の不正行為の根絶に向けて、厳重な監督処分、指名停止の運用基準の見直し等を行うこと。
 2 一般競争入札における審査体制の整備、指名競争入札における指名基準の公表等公共工事の入札及び契約制度について更なる改善を推進すること。
 3 入札予定価格の公表の在り方については、今後の検討課題とし、少なくとも事後公表を行うよう努め、地方公共団体においては事前公表を行える旨を明確にすること。
 4 発注者は、入札参加者に対し、対象工事に係る入札金額と併せてその明細を提出させるよう努めること。
 5 公共工事の入札及び契約に関して監視や苦情処理等を行う第三者機関については、実効を伴った効果的な活動がなされるよう努めること。
 6 不良業者を排除する一方で、技術と経営に優れた企業の育成に努め、地域の雇用と経済を支える優良な中小・中堅建設業者の受注機会が確保されるよう配慮するとともに、建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるよう努めること。
 7 施工体制台帳の活用等により、元請企業等と下請企業の契約関係の適正化・透明化に努めること。
 8 いわゆるダンピング受注は、手抜き工事、下請へのしわ寄せにつながりやすく、また、建設業の健全な発達を阻害するので的確に排除し、公共工事の品質の確保を図ること。
 9 公共工事の入札及び契約全般について事務の簡素化・効率化及び競争性・透明性の一層の確保等を図る観点から、IT化を促進するよう努めること。
 10 公共工事の入札及び契約制度の改善を進めるに当たっては、公共工事の大宗を占める地方公共団体における改善の徹底を図るとともに、規模の小さい市町村等に関しては、その実情を勘案して、執行体制の確保を図るための必要な助言を行うなど、適切な支援措置を講ずること。
 右決議する。
 工事代金の大半は労務費であり、工事代金の不払いが発生しているということは、「建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われていない」状況の発生であり、発注者の責務としてこの解決に努める必要があります。
 解決の道筋は示されています。建設業法41条3項に基づき、元請のA社が立替払いを行い、C社を救済することです。この方向を推進するために、発注者の責務として元請に働きかけ、元請が建設業法を守るように適切な指導、助言を行うことです。
もう一つは、事実かどうかわかりませんが、事実とすれば県の対応は改善が求められます。
たとえば、埼玉県、神奈川県、東京都は、解決するまで元請の特定建設業者を呼んで、指導します。神奈川県は、文書での指導、勧告を実施しています。
国土交通省関東地方整備局は、解決するまで元請の特定建設業者を呼んで、指導します。
国土交通省関東地方整備局は、次のように言明しています。
@ 元請を呼び、建設業法の趣旨を理解させる。「建設業法の趣旨」とは、「不払いを受けた下請業者等の窮状の救済」ということである。
A 「二重払い」は立替払いをしない理由にはならない。
B 全建総連の各県連・組合を不払い交渉の窓口として認める。 
C 下請の保護はもちろんのことである。特定建設業者の許可だが、下請保護ということで特定建設業者の許可を与えている。そのように特定建設業者の元請を指導していきたい。
D (元請責任での立替払いについて)解決に当たらない特定建設業者の元請に対しては強く指導していく。
E 工事代金は、建設業法41条3項に基づく立替払いの対象に入っている。付言すると、建設資材納入代金も立替払いの対象に入っている。
 国土交通省本省は、「元請の特定建設業者が立替払いをしないと開き直れば、それですむかというと、決してそんなことはない」と言明しています。
 参議院国土交通委員会では、扇国土交通大臣(当時)が、「建設業法を守らないような特定建設業者に対しては、特定をはずすことを含めて必ず方法はある」と答弁しています。
 特定建設業者の許可行政庁として、元請による下請救済が実現されるまで元請への指導を続けることは、当然のことです。
 全国の都道府県が、当然このレベルで、元請の特定建設業者への指導にあたるべきです。 
(解決しました)
その後、F県は元請への指導を改善し、より強い指導を実施。それに応えて元請は、一定の立替払いを行ない、円満解決に到りました。
 
 
◎ ――― 「高齢者用施設」建設工事での倒産・不払い事例 ―――
1 今回の構造
 今回紹介するのは、「高齢者用施設」建設工事での倒産・不払い事例です。
 構造を見るとやはり、重層下請構造下での中間業者の倒産により下位業者が受けた工事代金不払い被害という構造です。
 発注者
 元請
 1次
 2次
 3次
 という重層下請構造です。
 2次が3次に工事代金を支払うことなく、行方不明となり、3次が約500万円という不払い被害を受けたものです。
 元請は、○○県知事許可の特定建設業者です。
 「高齢者用施設」の新築工事です。
2 問題点
 ○ 元請の指示ミス、すみだしのミスなどの可能性がある。 
 ○ 1次と2次の間の契約が、書面の契約ではなく、口頭での契約の可能性がある。
 ○ 1次と2次の間で、追加工事について書面による契約がおこなわれていない可能性がある。 
 ○ 中間業者(2次)が下位業者(3次)に工事代金を支払うことなく、行方不明となっている。このことは、建設業法24条6項が元請に責任を負わせている、元請による下請指導が適切におこなわれていなかったことを示している。法律やルールを守るよう下請を指導すべき元請の責務が適切にはたされていないことを、示している。そのような中間業者を選んだという元請の選定責任もある。
 ○ 下位業者(3次)に工事代金を支払うことなく行方不明となるような2次を選んだという点で、1次は選定責任を負っている。自分が請け負った工事を2次に請け負わせた1次は、2次が故意または過失で他人に加えた損害について損害賠償の責任を負っている。
 ○ 言うまでもなく、元請の特定建設業者は、建設業法41条3項にもとづく立替払での下請救済の責務を負っている。
3 経過と方向
 不払い被害を受けた3次は、1次に相談。1次は「うちは払えない」、「元請に相談してくれ」という回答。 
 3次は元請に相談。元請は「救済できない」と回答。理由は、「3次とは直接契約関係にない」、「1次に全額支払い済みである」、「2次への債務はない」というものです。
 3次は、特定建設業者の許可行政庁の○○県に要請。
建設業法41条3項にもとづく立替払での3次救済をおこなうよう元請の特定建設業者を指導、誘導するよう、県の担当部局に要請しました。
 (国土交通省関東地方整備局は、「二重払いを立替払拒否の理由にすることはできない」、「賃金はもとより工事代金も建設資材納入代金も立替払の対象」、「建設業法の主旨は不払いを受けた下請業者の窮状の救済である」、「下請保護ということで特定建設業者の許可は与えられている」と明言しています)
 元請が救済拒否の理由としてあげている「1次に全額支払い済みである」等を国土交通省関東地方整備局の言明と照らし合わせると、元請の言い分を正当化できる根拠が全くないことが、よくわかります。
 建設業法を守って、不払い被害を受けた下請の窮状を救済するよう、元請の特定建設業者を適切に指導、誘導することが、許可行政庁の○○県に求められているし、期待されています。
 
 
◎ 大手ゼネコンが元請  元請〜5次の深い重層下請構造下での倒産・不払い
(匿名にしてあります)
 今回の事例の構造は、
 元請 大手ゼネコンの○○社
 1次下請
 2次下請
 3次下請 倒産
 4次下請 不払い被害を受ける
 5次下請 4次から支払ってもらったので、不払い被害は受けていない。
 現場は、ビルの解体工事です。
4次が請け負ったのは、アスベスト除去工事です。
 3次が倒産したために、4次は、3次からアスベスト除去作業の代金を1円も貰っていませんが、5次には支払いました。
 倒産するような下請を選定したという元請の、下請選定の責任があります。
 下請が倒産して不払いという損害を他の業者、労働者に加えたわけですから、元請として下請指導を的確におこなっていなかった、ということになります。
 また、3次、4次の間の契約が、書面による契約ではなく、口頭による契約であり、この点でも、元請として下請指導を的確におこなっていなかった、ということになります。
 3次と4次との間の口頭による契約では、4次が請けた仕事は「アスベスト除去の労務作業」です。仮に「4次ではなく3次の指揮命令下にアスベスト除去の労務作業に従事していた」などの場合には、偽装請負・違法派遣のおそれが出てきます。この点も、元請責任が問われるところです。
 4次は、建設業法にもとづく立替払いを求めて元請と交渉。
 元請は「見舞金」を支払うと回答。 
 できるだけ「見舞金」という名目は避けたほうがいいと思います。ただ、立替払いを受ける金額、比率が問題ですから、不払い被害者が納得するような金額、比率での立替払であれば、名目にどこまでも固執するのは、どうか? と考えます。
かつての「昭和鋼業民事再生」のケースでは、今回のケースの元請である○○社との交渉の過程で、立替払の比率をゼロ→25%→40%→50%→57%と引き上げていますから、がんばって、金額、比率を高めることだと思います。工事代金などの立替払の基準は、国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)に明記されているように、「損害額を限度として、不払い被害を受けた業者の当面の窮状の救済に足りる金額」です。
なお、賃金の立替払の基準は、上記の『建設業法解説』によれば、「世間相場での全額」です。
 かつて、(当時)立替払での下請救済を拒否し続ける、この○○社に対して、全建総連関東地協として1000人規模の本社前宣伝、抗議行動を準備し、建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払を行わせた経験を、建設労働運動は持っています。
――参考資料――
(以下は、厚生労働省パンフ、東京労働局パンフからの抜粋です。「請負とは」の基準を示しています。示された基準を全て満たす場合のみ請負です――海野)
 1 自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用する者であること。
  ・ 業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
  ・ 労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
  ・ 企業での秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うこと。
 2 請負契約で請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。
 ・ 業務の処理に要する資金につき、全て自らの責任の下に調達し、かつ、支弁(金銭を支払うこと)すること。
 ・ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としての全ての責任を負うこと。
 ・ 単に肉体的な労働力を提供するものではないこと。
 ・ 業務の処理のための機械、設備、材料、資材を自らの責任と負担で準備している、又は処理すべき業務を自らの企画又は専門的技術、経験により処理していること。
 ・ 業務処理に必要な機械、資材等を相手方から借り入れ又は購入した場合には、別個の双務契約(有償)が締結されていること。
 
 
◎ ―――  解体工事と建設廃棄物処理での元請責任  ――― 
解体工事が建設業法上の「建設工事」に該当するのかどうか解体工事と建設業法との関係を調べてみましたが、当然ですが、建設業法上の「建設工事」に該当することが、わかりました。
建設業法第2条には「この法律において『建設工事』とは、土木建築に関する工事で別表第1の上欄に掲げるものをいう」と規定され、『建設業法解説』(大成出版社)では、その「別表第1の上欄に掲げるもの」についての解説で「各建設工事の内容及びその具体的な例示」を示し、次のように解体工事が出てきます。
「土木一式工事」 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。以下同じ。)
 アンダーラインのところが大事なところです。「以下同じ」というのは、「別表第1」のトップに土木一式工事が掲げられ、それに続いて以下「建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、浚渫工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事」が掲げられていますから、「建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、浚渫工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事」も「補修、改造又は解体する工事を含む」ことを意味しています。
 したがって、解体工事は建設業法上の建設工事であり、解体工事についても建設業法が定める元請責任は及び、建設業法41条2項、3項が定める元請責任での立替払の対象になる、ということになります。
 解体工事は建設工事ではないから立替払の対象ではない、という理屈は成立しません。
 ここで、もう少し複雑な問題に踏み込みます。
 解体工事から建設廃棄物が発生します。
 建設廃棄物の流れは、解体→収集・運搬→中間処理→最終処分となります。
 「解体」は解体工事であり、上記のように建設業法上の建設工事になるわけですが、「収集・運搬→中間処理→最終処分」は建設廃棄物の処理であり、それぞれ収集・運搬業者、中間処理業者、最終処分業者が存在し、「建設廃棄物の処理」は建設業法上の建設工事ではない、と行政は解釈している、と考えられます。 
 したがって、建設廃棄物の処理については、元請責任は及ばないのかというと、そんなことはありません。
 2001年の環境省通達が、「建設廃棄物処理は元請の責任」、「建設廃棄物処理費用の負担は発注者の責務」を明示しています。
 
 
◎ ──── 元請の一般建設業者の責任はどこまで及ぶのか? ────
 パワービルダーと言われる一建設は一般建設業者であり、4年位前だったと記憶していますが、一建設が元請の、重層下請構造の現場で、1次下請が倒産し2次下請が工事代金の不払い被害をうけた際、一建設は、「自分は特定建設業者ではなく一般建設業者」ということを理由として、建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払を拒否しました。
 直近の事例では、群馬県知事許可の一般建設業者が、同様の理由で、建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払を拒否しています。
 そこで、国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)をあらためて見て、一般建設業者の責任について調べてみました。
 建設業法24条6項は、下請が法律やルールを守るよう下請を適確に指導すべき元請の指導義務を定めています。
 『建設業法解説』の、建設業法24条6項についての逐条解説の中に、「下請負人に対する指導義務等を負うのは、特定建設業者のうち、『発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者』だけである。したがって、特定建設業者が下請負人である場合は、本条(建設業法24条6項)の義務を負うところではないが、これは、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者が、当該建設工事の施工に関して統一的かつ総合的な指導監督を行うものであり、その下に各下請負人が共同して工事を施工するという実態を考えて、最終的責任者たる最初の元請負人である特定建設業者に法律上の義務を限定したものである。このことは、しかし、他の元請負人が下請負人に対する指導を怠ってもいいという趣旨でないことはもちろんであり、他の元請負人においても積極的に同様の指導に努めるべきであることはいうまでもない。また、同様に一般建設業者においても、当該工事の下請負人に対し本条(建設業法24条6項)の趣旨に準じ指導を行うことが望ましいことも当然のことである」と記述されています。
 重層下請構造下で、下請が倒産し、下位下請に工事代金等の不払い被害を与えたということは、元請の責任が問われます。一つには、倒産し他人に損害を加えるような下請を選定したという元請の選定責任であり、もう一つは、下請が倒産し他人に損害を加えたということは、法律やルールを守るよう下請を適切、適確に指導すべき元請の責任を果たしていなかったということになり、元請の責任が問われるということです。
 自分は一般建設業者だから、自分が元請の現場でおこった倒産・不払いについて、「責任はない、知らない」ではすまないのであり、責任があり、責任を負っているのであり、責任にもとづいて不払い解決に努める必要があります。
 その責任を認めない元請の一般建設業者がいる場合には、許可行政庁の国土交通大臣や都道府県知事は、その責任を果たすよう元請の一般建設業者に指導、助言及び勧告を行うことができます。その根拠が、建設業法41条1項です。
○ 「建設業法41条1項」 国土交通大臣又は都道府県知事は、建設業を営む者又は(建設業法)第27条の37の届出のあった建設業者団体に対して、建設工事の適正な施工を確保し、又は建設業の健全な発達を図るために必要な指導、助言及び勧告を行うことができる。
○ 「建設業法27条の37」  建設業に関する調査、研究、指導等建設工事の適正な施工を確保するとともに、建設業の健全な発達を図ることを目的とする事業を行う社団又は財団で国土交通省令で定めるものは、国土交通省令の定めるところにより、国土交通大臣又は都道府県知事に対して、国土交通省令で定める事項を届け出なければならない。
 
 
◎ 不払い被害を受けた下請が特定建設業者の場合 立替払を受けられない?
 一部で、「下請業者が特定建設業者の場合、建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払の対象にならない、立替払いを受けられない」と言われています。
 とりあえず、国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)をあらためて見て、調べてみました。
 特定建設業者の下請代金の支払期日等を定めた建設業法24条の5についての、『建設業法解説』の逐条解説部分に、次のような箇所がありました。
 ○ 「建設業法24条の5」 特定建設業者が注文者となった下請契約(下請契約における請負人が特定建設業者又は資本金額が政令で定める金額以上の法人であるものを除く。以下この条において同じ。)における下請代金の支払期日は、前条第2項の申出の日(同項ただし書の場合にあっては、その一定の日。以下この条において同じ。)から起算して50日を経過する日以前において、かつ、できる限り短い期間内において定められなければならない。
2 特定建設業者が注文者となった下請契約において、下請代金の支払期日が定められなかったときは前条第2項の申出の日が、前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは同条第2項の申出の日から起算して50日を経過する日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす。
3 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となった下請契約に係る下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならない。
4 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となった下請契約に係る下請代金を第1項の規定により定められた支払期日又は第2項の支払期日までに支払わなければならない。当該特定建設業者がその支払をしなかったときは、当該特定建設業者は、下請負人に対して、前条第2項の申出の日から起算して50日を経過した日から当該下請代金の支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に国土交通省令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。
○ 政令
(建設業法第24条の5第1項の金額)
「第7条の2」 建設業法第24条の5第1項の政令で定める金額は、4千万円とする。
 本条の規制の対象となる「下請契約」は、「特定建設業者が注文者となった下請契約」であるが、本条の立法趣旨が、経済的弱者である下請負人に対する下請代金の支払の著しい遅延を防止し公正な取引を確保しようとするものであることから、特定建設業者と同等以上の経済的能力を有すると認められる者が下請負人になった場合にまで、その保護を図る必要はないと考えられるので、下請負人が「特定建設業者又は資本金額が政令で定める金額以上の法人」である場合には、本条は適用されないこととされている。この本条の適用を除外される「特定建設業者」は、「当該建設工事に係る特定建設業者」であり、また「資本金額が政令で定める金額以上の法人」とは、それと同等以上の資力を有すると認められる「資本金額4千万円以上の法人」である。
(以上を見る限り、建設業法そのもの(建設業法24条の5)を見ても、建設業法24条の5についての『建設業法解説』の解説を見ても、特定建設業者である下請に適用されないのは本条(建設業法24条の5)であり、建設業法41条3項ではありません。『建設業法解説』全体を見ても、特定建設業者である下請に建設業法41条3項が適用されないとの記述は見当たりません。まさに特定建設業者である下請に適用されないとの記述があるのは、本条(建設業法24条の5)だけであり、『建設業法解説』全体を見ても、本条(建設業法24条の5)以外への不適用の広がりは見られません。特定建設業者と言っても、大手ゼネコン、大手住宅企業もいれば中小規模の財務基盤が脆弱なゼネコン、住宅企業もいます。少なくとも、一律に、「特定建設業者」ということだけで、建設業法41条3項の適用から除外されると解釈するのは、差し控えるべきであり、下請保護に反すると言わざるを得ません──海野)
 
 
建設業法41条3項が言う「その他の適切な措置」に「仕事の提供」は入るのか?
海野和夫
 元請責任での立替払での労働者「救済」を定めている建設業法41条2項、元請責任での立替払での下請業者「救済」を定めている建設業法41条3項は、下記のように、労働者「救済」、下請業者「救済」の措置について「立替払することその他の適切な措置」と表現しています。
「建設業法41条2項」 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工のために使用している労働者に対する賃金の支払を遅滞した場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、支払を遅滞した賃金のうち当該建設工事における労働の対価として適正と認められる賃金相当額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。(アンダーラインは海野)
「建設業法41条3項」 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、当該他人が受けた損害につき、適正と認められる金額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。(アンダーラインは海野)
 
 あるゼネコンは、「仕事の提供」が「その他の適切な措置」になるとの、独特の見解を示しています。
 本当にそうでしょうか?
 国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)は、別の見解を示しています。
 建設業法41条2項に関する解説で『建設業法解説』は、「本項(建設業法41条2項)による特定建設業者に対する勧告は、立替払のほか、『その他の適切な措置』がある。このうち『その他の適切な措置』には、立替払と同等の効果を有する当該労働者に対する貸付(無利子、無担保で、かつ、労働者が賃金の支払を受けるまでの返済を猶予するもの)又は賃金の支払に充当することを条件とする当該賃金不払を行った下請負人に対する融資などが考えられる」
 これは、建設業法41条3項の「その他の適切な措置」にも準用されるというかあてはまるというか、そういう性質のものだと思います。
 現に国土交通省関東地方整備局は、「(下請が不払い被害を受けたとき)口が裂けても、仕事の提供で下請救済をというようなことを、元請の特定建設業者に言うわけにはいかない」と私たちに回答しています。
 
 
◎ ── 深い重層下請構造下での倒産・不払いの「構造」について ──
全建総連の佐藤正明書記長(当時)が委員として入っていた国土交通省建設産業政策研究会「建設産業政策2007」も指摘していますし、またサブコン団体も言明しているように、建設現場の重層下請構造はさらに深まってきています。深まりつつある重層下請構造の中で、建設業法違反、ルール違反、トラブル、混乱が多発しています。倒産、不払いもそうです。重層化の深まりを反映して、深い重層下請構造下での倒産、不払いが目立ちます。
 最近の事例を以下に、紹介しておきます。
 百貨店内の店の設計、内装をおこなっていた○○社が破産。
 建設現場の構造は、
 元請   財務体力が優良なゼネコン
 1次下請 破産
 2次下請 20社位 不払い被害を受けました
 3次下請
 4次下請
 5次下請
 以上のような深い重層下請構造です。
 元請と(破産した)1次下請との間に、工事代金、追加工事をめぐるトラブルが発生していた、と言われています。真偽を含めて、どちらがどうなのか、正確なことはわかりません。
 元請は、「1次に過大な金を支払っている」、「応援等を入れ、過払い状態」と主張。
 施工体系図に見当たらない下請が存在しています。言い換えると、下請の一部が施工体系図に載っていません。
 1次との協議、合意がない工事代金の「支払い差し止め」がおこなわれています。
 破産、不払いをおこすような1次を選任したという元請の責任。
 破産、不払いをおこしたことを含めて1次を適切に指導することができなかった元請の責任。言い換えると、建設業法24条6項がさだめる下請指導の責任をはたせなかった元請の責任。
 「コノヤロー」、「たかりとしか思えない」と発言するなど、元請としての品性、誠実さは、どうなのか? 建設業法は、元請の誠実性をさだめています。
 
 
◎ ── 深まる重層下請構造下での倒産、不払いの「構造」(2) ──
 以下のような重層下請構造になっています。
 元請 ゼネコン 
 1次 破産
 2次 
 3次  
 4次 
 5次 
 以上のような元請〜5次の、深い重層下請構造の中に、無許可業者が存在し、施工体系図に載っていない下請業者が存在し、破産、不払いが発生し、元請による重層下請構造の把握(建設業法24条の7)、それにもとづく下請指導(建設業法24条の6)、また元請責任での不払い解決(建設業法41条2項、3項)が課題であることが、浮上してきています。
(交渉の経過)
 工事代金の不払い被害を受けた5次業者は、4次、3次、2次、1次と働きかけましたが、4次、3次、1次の業者の回答は要するに「上から貰っていないから、払えない」というものです。また、2次の業者に連絡したのだが「つかまらない」とのことです。
 そして、1次が破産。
 5次業者は、建設業法41条3項にもとづく(工事代金不払いの)元請責任での解決を求めて、元請と交渉中。
(各当事者の文書での主張)
○ 2次 
1次は2次に対して、本工事の一部と追加工事を未払いの状態である。
○ 1次 
2次は、元請に工事支援を要請。元請との間で1次に不利益となる合意をした。このため1次は、元請から工事代金の支払を受けていない。
 2次が工事をした部分については、1次は2次に支払い済み。
 最終的に元請から支払いを受けられない場合には、2次に対し損害賠償請求をおこなう。
○ 元請 
 元請は1次と契約。
 1次は、一部工事ができないとのことで、部分解除。この部分について元請は他の業者に発注。元請がその業者に支払うことになっている。
 元請は1次に追加工事を発注。 
 1次の応援要請にもとづき元請が紹介した業者への労務費を、1次は支払わなかった。1次に通知の上、元請は立替払いした。
 上記立替払金と下請工事代金残金とを対当額で相殺した。
 その結果、元請は1次に対して過払い状況にある。
 
 
◎ ──────  「ケーシング」での倒産・不払い  ──────
 
<http://kw.allabout.co.jp/glossary/g_house/w002463.htm>
 上記サイトの「住宅用語集」によると、
ケーシングとは、「窓のまわりにつける、飾り用の枠」のことで、飾りにとどまらず「クロスのはがれや結露の浸透を防ぐ効果がある」、とのことです。
 このケーシングを、工場でつくり、建設現場に納入する、まさに建設資材納入代金で、倒産・不払いがありました。
 元請 ゼネコン
 1次業者 破産
 2次業者 「ケーシングの納入代金」の不払い被害を受ける
 もう少し複雑なのですが、簡単に言うと、上記のような構造です。
 元請と1次業者との契約は、建設工事の請負契約です。
 この1次業者が破産して、2次業者に不払い被害を与えたわけですから、建設業法41条3項が言う「下請業者が他人に与えた損害」に該当し、2次が受けた「ケーシングの納入代金」(建設資材納入代金)の不払い被害について、元請のゼネコンは、建設業法41条3項にもとづき、立替払をおこない、2次業者を「救済」しなければなりません。
 国土交通省がつくった解説書『建設業法解説』(大成出版社)も国土交通省関東地方整備局も、同様の見解、解釈を示しています。
 大手ゼネコンも、上記と同様の方向で、協力、解決しています。
 
 
建設業法41条2、3項が言う「その他の適切な措置」とは?
海野和夫
「建設業法41条2項」 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工のために使用している労働者に対する賃金の支払を遅滞した場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、支払を遅滞した賃金のうち当該建設工事における労働の対価として適正と認められる賃金相当額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。
「建設業法41条3項」 特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、当該他人か受けた損害につき、適正と認められる金額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。
上記の、建設業法41条2項、3項が言う「その他の適切な措置」とは何か?
繰り返し、蒸し返され、問題化する箇所です。
原点に戻り、国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)を読むと、以下のように書かれています。
 
「本項による特定建設業者に対する勧告は、立替払のほか、『その他の適切な措置』がある。このうち『その他の適切な措置』には、立替払と同等の効果を有する当該労働者に対する貸付(無利子、無担保で、かつ、労働者が賃金の支払を受けるまでの返済を猶予するもの)又は賃金の支払に充当することを条件とする当該賃金不払を行った下請負人に対する融資などが考えられる」
 「その他の適切な措置」は「仕事の提供」だと言う一部元請の主張は、間違いであることが、わかります。
 国土交通省関東地方整備局も、「(その他の適切な措置として)仕事の提供をとは、口が裂けても(元請に)言えない」と言明しています。
 まして建設労組が、「その他の適切な措置」として「仕事の提供」を元請に求めるなどというのは邪道であり、直ちにやめるべきです。
 
 
◎ 「現場作業ではない」、「破産会社と直接の関係がない」は立替払の対象外?
 1次下請が破産。
元請と破産会社との契約は、建設工事の請負契約です。
1次の破産により、2次以下の業者が不払い被害を受けました。そこで、元請に対して、建設業法41条3項に基づく元請責任での立替払を求めて交渉。
元請は、「現場作業ではない」、「破産会社と直接の関係(取引)がない。(不払い被害を受けた業者は5次)」ことなどを理由に、立替払を渋っています。
「現場作業ではない」、「破産会社と直接の関係(取引)がない」ことを立替払拒否の理由にすることができるのかどうか、以下に論点整理をおこないます。
1 現場作業ではない
 国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)はこの点について明確に「下請負人がさらに工事を下請施工させる場合のその下請負人(いわゆる孫請負人)に対する下請代金の支払の遅延するような場合、下請負人の建設資材納入業者との間の取引関係に基づく代金の不払等をする場合、下請負人と工事現場周辺の商店等との取引関係に基づく代金の不払等をする場合」を元請責任での立替払の対象だと規定しています。
 従って、「現場作業ではない」ことを立替払拒否の理由にすることはできません。
2 破産会社と直接の取引関係にない
 同様に国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)がこの点について明確に、次のように規定しています。「(元請責任での立替払の対象となる不払は)元請の特定建設業者と直接に下請契約を締結したいわゆる第1次下請負人(が起こした不払)に限らない。当該特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工する者である限り、当該特定建設業者と直接的な契約関係に立たないいわゆる孫請負人等第2次下請負人以下の者(の起こした不払)も含まれる」
 「破産会社と直接の取引関係にない」、「5次」、「最終下請」などを立替払拒否の理由にできないことも、明確です。
3 建設工事ではなく、その上3次の業者に対して、元請責任での立替払が実施された実例
「残土運搬」が建設業法に基づく元請責任での立替払の対象になるのかどうか、問題が発生し、最初、大手ゼネコン○○社は「残土運搬」は建設業法に基づく元請責任での立替払の対象にならないとの見解を打ち出しました。
 しかし、国土交通省関東地方整備局は逆に、「残土運搬」は建設業法に基づく元請責任での立替払の対象になるとの見解を示しました。
 そして、大手ゼネコン○○社は、国土交通省関東地方整備局の指導に従い、「残土運搬」が立替払の対象になることを認め、立替払いを実施し、円満解決に到りました。
 国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)を読むと、建設業法上の「建設工事」の例示の一つとして、「根切り工事」をあげています。
 『総合工事業者・専門工事業者間における工事見積条件の明確化について─「施工条件・範囲リスト」(標準モデル)の作成─第3版』によると、根切り工事というのは掘削工事であり、工程は、掘削→積込→残土処理(残土運搬)の流れになります。
 今回、倒産・不払いが発生した現場の元請は、前述の大手ゼネコン○○社です。1次下請が△△社。
 ディベロッパーからマンション建設工事を請け負った○○社(元請)が、根切り工事を△△社(1次下請)に請け負わせました。
 次に△△社(1次)は、根切り工事を分けて、再下請負に出しました。「残土の運搬」については、××社(2次)に行わせました。××社(2次)はさらに、この残土運搬を□□社(3次)に行なわせました。
 ××社(2次)が倒産。□□社(3次)は不払い被害を受けました。
 □□社(3次)は、建設業法41条3項に基づく元請責任での立替払いを、元請の特定建設業者の○○社(元請)に要請。
ところが、○○社(元請)は、△△社(1次)が××社(2次)に出したのは根切り工事の中の「残土運搬」の部分だったので、それを捉えて、残土運搬は建設工事ではない、従って、建設業法41条3項が定める元請責任での立替払の対象にならない、との見解を打ち出しました。言い換えると、下記の建設業法41条3項にある「特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」にあてはまらない、というわけです。ややこしい話ですが、××社(2次)は、△△社(1次)から建設工事ではない残土運搬を請けたのであり、「建設工事を施工している建設業を営む者」ではないではないか、というわけです。また、残土運搬は建設工事ではないから、「建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」にあてはまらない、というわけです。
○ 建設業法41条3項「特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、当該他人が受けた損害につき、適正と認められる金額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる」 
これに対して、以下は、国土交通省関東地方整備局の見解です。
@ 残土運搬は、建設工事ではない。
A 残土運搬は建設工事ではないが、本件は、建設業法41条3項が定める元請責任での立替払の対象になる。
(理由) 本件の場合、○○社と△△社の契約は、根切り工事という建設工事の請負契約であり、○○社は元請となる、元請の特定建設業者となる。これを言い換えると、△△社は、根切り工事という建設工事を請け負った下請業者となる。
 根切り工事という建設工事を請け負った下請業者である△△社(1次)が、残土運搬を××社(2次)に頼み、その××社(2次)が倒産して他人に損害を与えたのが本件の経過であり、これは、△△社(1次)が根切り工事という建設工事の施工に関し残土運搬の部分を××社(2次)に頼むことで他人に損害を加えたということであり、建設業法41条3項が言う「特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」に該当する。
 従って、本件の場合、建設工事ではない残土運搬であっても、建設業法41条3項が定める元請責任での立替払の対象になる。
 
 
◎ 建設業法に基づく立替払を実施しない不良不適格業者は市場から退場を
1 市場のコントロール
 国土交通省『建設業法解説』が指摘しているように、建設現場の重層下請構造の中で下請間の倒産・不払い・支払い遅延が発生した場合について元請責任で解決すべきことを定めている建設業法41条2項、3項は、一方では建設業許可行政庁からの元請への指導、誘導、他方での(行政の指導、誘導への)元請の協力、この両側面の結合によって成立する、そうした構造になっています。
 この協力を、この構造を、拒否するようなゼネコン、住宅企業、パワービルダー、等々は、「元請の特定建設業者」に値しない不良不適格業者と言わざるを得ず、市場からの退出を余儀なくされます。
 事実、経験で言うと、建設業法に基づく立替払を拒否し続けるような企業は、結局、破産に至っています。
 繰り返しになるかもしれませんが、法令遵守に反する企業、社会的責任を無視する企業、下請や建設労組との信頼関係を破壊する企業、行政からの法律に基づく指導、誘導に協力しないような企業は、市場からの信頼をも失い、市場からの退場を余儀なくされる、ということです。下請に泣き寝入りを強要するような元請は、報いとして自社もそうなる、ということでしょうか。
2 建設業法41条1〜3項の構造 
 国土交通省『建設業法解説』は、建設業法41条1〜3項の構造を、一方では行政からの元請の特定建設業者に対する非権力的な指導、誘導として描きます。これは、言い換えると、賃金不払い、工事代金不払い等が発生した場合に、不払い被害を受けた労働者、下請業者等を、元請の特定建設業者の責任で立替払い等で救済することを方向とする非権力的な指導、誘導ということです。『建設業法解説』は他方で、建設業法41条1〜3項の構造に不可欠なものとして、元請の特定建設業者の協力をあげています。
 これらを総合すると、立替払い等で下請業者等を救済することを求める行政の非権力的な指導、誘導とそれへの元請の特定建設業者の協力が結び付くことで、建設業法41条1〜3項の目的、趣旨は達成されるという構造になります。
 そして事実、ほとんどのゼネコン、住宅企業、サブコン等は、行政との信頼関係、あるいは下請業者との信頼関係、建設労組との信頼関係を大事にし、また建設業法41条1〜3項の趣旨を守り、行政からの非権力的な指導、誘導に協力して、立替払いで下請業者救済、保護を実施しています。
 行政からの非権力的な指導、誘導への協力を拒んで、立替払い等での下請救済を行わないと開き直る不良不適格業者はごく一部にとどまっています。これらの不良不適格業者からは、下請保護を趣旨とする特定建設業者の許可を剥奪する必要があります。
 『建設業法解説』は、建設業法41条2項、3項の趣旨について、賃金不払い、工事代金不払い等が発生した場合に、その解決の責任を元請の特定建設業者に「道義的に負担せしめようとするもの」と明らかにしています。 
 特定建設業者は、道義を守って下請を救済するということです。その方向で行政からの非権力的な指導、誘導が行われ、それに元請の特定建設業者が協力するということです。
 
更新日時:
2009/04/22
――――――――― 「何でも相談活動」関連(2) ―――――――――
――――――――― 「何でも相談活動」関連(2) ―――――――――
海野和夫
 
◎ 何でも相談事例二つ 「独立見送り」 「賃金不払い」
(最近受けた何でも相談事例のうち、「独立見送り」、「賃金不払い」の2例を紹介します。できるだけ匿名化、抽象化してあります)
1 「独立見送り」
 ユニットバス施工の手間請職人です。
 メーカー―元請―手間請職人という構造です。
 メーカーと手間請職人が話し合い、「独立させる」という約束をメーカーは手間請職人にしていました。その約束を前提に、約10年位、元請のところで手間請職人としてユニットバス施工に従事していました。
 ところが、メーカーから「独立を見送る」と言われました。理由として「クレームが多い」と言われました。しかし、クレームの原因は、本人のミスではなく、「仲間の、作業でのミス」、「メーカーの下見ミス」、「工場からの不良品」だとその手間請職人は主張します。
 解決の方向としては、仲間や家族、建設労組等とよく相談しながら、メーカーや元請とよく話し合い、円満な解決をはかる、そういう方向が一つ、考えられます。また、気持ちをよく整理し、気持ちを強く持つことです。
2 賃金不払い
 設計と施工の両方に従事する労働者です。
 発注者―建設会社―労働者の構造です。建設会社に直接雇用されている労働者です。その建設会社の上に上位下請や元請がいるわけではありません。その建設会社の上には発注者がいるだけです。
 要するに、建設会社が従業員に賃金を支払っていないという構造です。
 建設会社は倒産しているわけではなく、「倒産するつもりはない」と社長は従業員に言明しています。
 従業員の訴えによると、賃金不払いだけでなく、「祝日が出勤日になっている」、「祝日と日曜に休んだのが、欠勤になっていて、給料が減らされた」、「就業規則の従業員への周知がおこなわれていない」、「従来給料明細を貰っていたのだが、先月の給料明細は貰っていない」、「労働時間の上限をオーバーしている」、「残業しても残業代が出ない」、「従業員が立て替えて払っている分が返ってきていない」、「退職した人に、会社からなかなか健康保険資格喪失証が発行されないということがあった」などいくつかの問題点があるようです。
 元請がいるケースではないので、元請による立替払を求めることはできません。倒産していないので賃金支払確保法の適用による国の立替払を求めることもできません。
 解決の方向は、会社との交渉による解決、この構造で解決できないときは、労基署に行くことです。
 仲間と相談しながら、上記のように進めている、とのことです。
 
 
◎ 建設労組が「代理人」のように振る舞うのは違法行為? テープの証拠能力?
 最近の倒産・不払い事件の増大を反映して、毎日、不払い関連で相談、質問を受けています。
 昨日、不払い対策の関連で、以下のような質問を受けました。
質問は二つです。
 質問1 弁護士でも何でもない建設労組が「代理人」のように振る舞うのは違法行為だ、訴える、と言われたが、どうなのか?
 質問2 上記の関係で、「訴えるについては、証拠がある、テープにとってある」と言われたが、どうなのか? こちらに黙って相手は、テープをとっていた。
 質問1について言うと、何の心配もありません。
建設労組は、組合員が賃金や工事代金の不払い被害を受けたときに、組合員からの相談があった場合、賃金や工事代金の不払いを解決するために、組合員と一緒に運動を進めます。労働組合として当然の活動です。
逆にこのような場合、組合員を放置しておくような労組があるとすれば、それこそ労組としての資格が問われる対応です。
 さらに言いますと、この点については、国土交通省関東地方整備局が「全建総連の各組合を、不払い交渉の窓口として認める」と明言しています。
 
 質問2について言うと、法律関係の専門書を読むと、次のように書かれています。
 裁判の際、テープ(録音)には基本的に、証拠能力がない。
 理由は、テープ(録音)は簡単に加工、偽造、捏造できるからだ。
 また、数時間に及ぶようなテープ(録音)を、いまの忙しい裁判システムの中では裁判長は事実上聴くことは困難である。
 むしろメモのほうが、証拠能力がある。筋の通った、信憑性の高いメモは、特にそうだ。
 裁判、訴訟のことを考えるのであれば、きちっとしたメモをとることだ。
 
 
 
◎ ――― 外国人労働者(フィリピン人)の賃金不払い相談事例 ―――
 建設労組に外国人労働者(フィリピン人の兄弟)から賃金不払い相談が持ち込まれました。たどっていくと、元請がスーパーゼネコンです。解決に向けて努力中です。
 フィリピンから英語の文書を送ってきました。それを和訳して、以下に紹介致します。
(以下は、フィリピン人兄弟が建設労組に送ってきた英文の和訳です。兄と弟から各1通送ってきたのですが、基本的に同じ内容なので、兄の文書だけを紹介します)
要求の根拠
2006年12月6日
関係各位様
 この文書は、私○○が40歳であり、結婚しており、フィリピン国民であり、現在フィリピンの○○に住んでいることを、証明しています。
 私は、時給1、100円で、埼玉県の○○社に労働者として働いていました。  
 私は、私の仕事を2006年2月8日から始め、日本の出入国管理当局によって国外追放されるという事情のために仕事が続けられなくなるまで、即ち2006年10月10日まで仕事を続けました。
 上記の関係で私は、私の雇用主である○○社に対して、1ヶ月と7日分の(未払い賃金)を、(直接)請求することができません。
 上記の関係で私は○○社に対して、上記期間の賃金の支払を△△社を通じて請求し続け、アピールし続けています。
 私の関係への最大の配慮と理解を希望しています。
 ありがとうございます。より以上のご尽力をお願いします。
                                      あなたたちに 心から
○○        
委任状
2006年12月5日
 関係各位様
 私はこの文書によって、1ヶ月と7日間の期間の私の賃金を主張し、回収するための権限を、埼玉県○○に住んでいる私の妹の○○に委任します。
 私のドキュメントのコピーを同封します。
ありがとうございます。より以上のご尽力をお願いします。
                                      あなたたちに 心から
 
 
◎ ―――信用保証協会との交渉 債権回収の適正化を―――
 建設労組の組合員のKさんが、「元金約2800万円、損害金約2500万円のあわせて約5300万円」について、○○信用保証協会から「自宅を処分しての返済」を求められ、これでは営業も生活も成り立たなくなると、建設労組に相談に来ました。
損害金 代位弁済後の求償権残高に対して、年率10.95%の割合により発生します。求償権の範囲に属するものとして、債務者等に請求することのできる金銭。
代位弁済 信用保証付きの貸付金等が、何らかの事情により金融機関へ返済が不能となったとき、保証協会が中小企業者に代わり、金融機関に対しその金額(元本+利息)を支払うことを代位弁済といいます。(事業者が何らかの理由で返済が困難になった場合、信用保証協会は金融機関に対してその債務を肩代わりします。これを代位弁済といいます。代位弁済を行った場合、信用保証協会は代位弁済した額を事業者から回収します)
求償権 保証協会が、中小企業者に代り、金融機関に債務の支払い(代位弁済)をしたとき、その中小企業者に対して、代位弁済額の範囲で債権を持つことになります。この債権を求償権といいます。
これを受け、建設労組はKさんとともに、債権の回収の適正化を求めて、○○信用保証協会との交渉をおこないました。
私たちは、中小企業庁長官の通達「中小企業に対する円滑な資金供給の確保」、「事業の継続が見込まれる中小企業者に対しては、既往債務(すでにいまある債務)の条件変更について、個々の中小企業者の実情に即して、きめ細かく対応する」、また、信用保証協会法第1条「中小企業者等に対する金融の円滑化を図ることを目的とする」を守って、債権の回収を適正化し、○○信用保証協会が中小業者保護の機能を発揮するよう、次の点を、○○信用保証協会に求めました。
信用保証協会法第1条(目的) この法律は、中小企業者等が銀行その他の金融機関から貸付等を受けるについてその貸付金等の債務を保証することを主たる業務とする信用保証協会の制度を確立し、もって中小企業者等に対する金融の円滑化を図ることを目的とする。
1 「自宅を処分しての返済」を求めるような不適正な回収をすぐにやめ、事業を継続しながら返済を続けられるような、無理のない適正な返済条件を、話し合いによって設定すること。
2 「損害金」が約2500万円にまで至った計算の道筋を示すこと。
3 「損害金」については、全額免除し、返済金額については、元金だけにすること。
4 元金の返済については、無利子の分割返済とすること。
これに対して、○○信用保証協会は、「損害金が約2500万円にまで至った計算の明細書は出す」、「損害金の減額については、元金の返済が終わったときに検討する」、「抵当権を行使して『自宅(家・土地)』を処分するかどうかについては、答えられない」と回答。
建設労組は引き続き、なかまの営業と生活を守り抜くためのたたかいをすすめていきます。
(参考資料)
 東京信用保証協会のサイトには、以下の記述があります。保証協会への返済については、「実情に即して」と記述し、中小企業者の実情に即した返済条件を設定すべきことを明らかにしています。(なお、上記の○○信用保証協会は、東京信用保証協会のことではありません)
返済
返済条件に従って借入金を金融機関に返済していただきます。
代位弁済
万一、何らかの事情で借入金の返済ができなくなった場合には、金融機関からの請求によって保証協会が中小企業者に代わって返済します。これを代位弁済(だいいべんさい)といいます。
代位弁済は、一般に言う「保険」とは異なり、あくまでも「一時立替払い」の性質をもつものです。
回収
代位弁済したものについては、以降実情に即して中小企業者から保証協会に返済していただきます。
平成17年度の事業実績
中小企業者の返済負担の軽減を図るため、返済条件の緩和については、個々の中小企業者の実情に即したきめ細やかな対応を行いました。
保証承諾15万6千件  1兆8,413億円
保証残高55万2千件  3兆9,636億円
代位弁済 1万4千件     904億円
回収            409億円
 
 
◎ (不払い相談事例)元請不払い 少額訴訟 民事調停 裁判費用
 このサイトを通じて、以下のような不払い相談が寄せられました。
「コラムを読んで突然失礼だとはおもいましたが、メールをおくらせていただきました。私も今、元請から、仕事をやったにもかかわらず、お金をもらえないという状況で困っています。少額訴訟ということもかんがえていますが、相手も私の出方次第では弁護士を立てるといっています。今、土建組合の人に頼んで中にはいってもらって話をしているのですが・・・・どうしたらいいのでしょうか。よろしければご相談にのっていただけないでしょうか」
(回答)
 元請が不払いということですが、土建組合に間に入ってもらって元請と話し合いをするのが大事な点です。結論から言いますと、このやり方が一番いいと思います。
 元請と話し合いを続けても、どうしても解決しない場合、土建組合と相談しながら、国土交通省関東地方整備局に相談に行き、仲介、指導を頼むことです。
(「不払いをおこしている」元請業者が国土交通大臣許可の特定建設業者または一般建設業者である場合は、国土交通省関東地方整備局に相談に行って下さい。元請業者が都道府県知事許可の特定建設業者または一般建設業者である場合は、都道府県に相談に行って下さい。土建組合と相談しながら、土建組合と一緒に国土交通省関東地方整備局または都道府県に行くのがいいと思います)
 それでもダメなら、少額訴訟、民事調停なども考えられます。
 (少額訴訟とは何か?)
少額訴訟は、弁護士に頼まないで、自分で手続きできます。但し、60万円以下の金銭の支払いを目的とした事件だけに利用できます。少額訴訟を起こすことのできる簡易裁判所は、原則として「相手の住所のある地区の簡易裁判所」です。但し、相手が少額訴訟を希望しない場合は、通常の訴訟で争うことになります。
(民事調停とは何か?)
 民事調停は、原則として、相手方の住所、居所、営業所もしくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所に申し立てをおこないます。民事調停は、弁護士に頼まないで自分でできます。調停が成立すると調停調書が作成されます。これは判決と同一の効力を持ちます。ただし、民事調停を申し立てても、相手が調停期日に出席しなかったり、また、出席したとしても合意が得られなければ、調停は不調に終ります。
(裁判? 弁護士費用?)
 訴訟(裁判)は弁護士だけができる? 法律は、そんなことは決めていません。訴訟は本人でできるのです。ただ、たいていの場合、訴訟はやり方が難しいので弁護士に頼む、また勝つためにプロである弁護士に頼む、こういうことになるわけです。
 土建組合とよく相談しながら、解決の道を追求して下さい。
 
 
◎ 労組の倒産・不払い対策活動での「法人格否認の法理」
 建設労組の倒産・不払い対策活動の主要舞台となっている「建設業法41条3項に基づく元請責任の追及」でネックとなっているのが、元請自身が事実上の倒産に近い状態、ほとんど倒産状態、準倒産状態、経営危機状況に陥っていて元請責任を果たすのが困難だというようなことがあることです。
 このようなとき、困難に陥っている元請が子会社で、その上に親会社が存在する場合があります。親会社責任の追及で問題を解決できないのか、これが今回のテーマです。
 以下は、「微速前進 tsudax99 ***ある平凡な都庁職員のページ***」というネームのサイトを参考にして、それに基づいて書かせていただきました。
「微速前進 tsudax99 ***ある平凡な都庁職員のページ***」= 
<http://www7a.biglobe.ne.jp/~tsudax99/index.html>
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出典・参考:働く人のための倒産対策実践マニュアル(日本労働弁護団)
「法人格否認の法理」 法人の形式的独立を貫くことに正当性が認められない場合、あるいは法人という形態が不法不当に利用されている場合に、その法人としての存在を認めながら、具体事例の適正な解決のために、一時的、相対的に、法人格の絶対視を否定して、会社と「社員、支配株主、親会社、背景資本等」を同一視する法理。
企業倒産や子会社を巡る問題の中で、債権者保護を目的として展開されることが多い。
法人格否認の法理とは、
1 取引相手が個人なのか法人なのか判然としないとき
個人企業が会社になった場合に、これと取引する第三者にとって、その相手方が会社か個人企業か判然としないことがあります。
このような場合に、会社と個人とはあくまで別の存在であるというと、取引している相手は、予想外の損害を被ることになるため、法人格否認の法理というものが考えられました。
2 親会社や背景資本の責任を追及する場合の考え方
日本では、親会社・元請会社の下に幾重にも子会社・孫会社や下請・孫請が存在しています。
これらは形式的には独立した企業ですが、実際には親会社や元請が財務の面でも人事の面でも実質的に支配管理し、真の経営者は親会社や元請であるという場合が少なからずあります。
そこで、子会社・下請の法人としての存在を否定して、親会社に対して、未払賃金や退職金、工事代金や資材納入代金の支払い、また、企業の再建や雇用の確保などの要求をすることになりますが、この根拠となるのが、法人格否認の法理です。
3 検討のポイント
具体的には、次の要素が検討されることになります。
@ 親会社が子会社の株式をどの程度所有しているか。
100%子会社でなくても親会社の責任の追及は可能であるし、関連会社が株を持ち合う形で親会社が子会社を支配管理することも多い。
A 役員の派遣などの人事、経理、労務政策、労働条件の決定、営業、生産計画、販売先、価格の決定といった子会社の経営上の重要事項について、親会社がどの程度支配しているか。
例えば、製品はすべて親会社に納入しているとか、販売価格を親会社が決めているとか、社長をはじめ主要な役員が親会社からの天下りであるなどの事実がないかチェックする。
また、親会社が異常に高い賃料や利子を設定して、子会社の利益を吸い上げていないかなど。
B 子会社の取締役会や株主総会の不開催の事実がないか。
会社法上の手続違反となる行為についてチェックします。
 
 
◎ 「自己破産」とはどのようなものか?  「自己破産」は権利
 建設労組の何でも相談活動の一つとして位置付けることができるし、また位置付けるべきなのが「自己破産」だと思います。自己破産を犯罪視するのではなく、国民の権利として捉える必要があります。『わかりやすい自己破産』(宇都宮健児氏・著 山川直人氏・絵 自由国民社・発行)を参考にして、それに基づいて以下に少し書かせていただきました。
 自己破産は、最後の救済手段です。債務者自らが申し立てる破産のことを自己破産と呼んでいます。自己破産を申し立て、最終的に免責決定がなされれば、債務から解放されるわけです。
――――――――――――――
 自己破産の場合、次のようなことを心配する人が多いのですが、心配はいりません。以下のようになっています。
 破産宣告を受けると、不動産などの目ぼしい財産は破産管財人の手によって処分されますが、生活に必要な家財道具などは処分されません。
 破産宣告後に破産者が得た収入は、原則として全て、破算者が自由に使えます。
 破産宣告を受けても、戸籍や住民票に記載されることはありません。
 裁判所から破産者の勤務先に破産宣告の通知をすることはありません。従って、破産宣告を受けたことが会社にわかることはありませんし、万一わかったとしても会社はそれを理由に破産者を解雇することはできません。
 選挙権、被選挙権が停止されることもありません。 
――――――――――――――
 自己破産の申し立ては、債務者本人の住所地を管轄する地方裁判所に対しておこないます。自己破産申し立てをすると同時にその旨の通知書を債権者に出しておくと、債権者の督促や取立ては止まります。言い換えると、その旨の通知を受けた後は、債権者からの支払い請求は禁止されているということです。
 自己破産の申し立てだけではダメです、債務からの解放を得ることはまだできません、続いて、債務からの免責の申し立てをする必要があります。免責を得てはじめて、債務からの解放に至ります。
 免責申し立てをした破産者のほとんどが免責決定を受けていますから、自信を持って免責申請をおこないましょう。裁判所の調査の結果、破産者に免責不許可事由がなければ、免責決定がなされます。破産者に免責不許可事由があれば、免責不許可決定がなされます。(ただし、免責不許可事由があっても、裁判所の裁量により免責決定がなされる場合もあります)
――――――――――――――
 主な免責不許可事由としては、次のようなものがあります。
 自分や他人の利益を図ったり、債権者を害する目的で、破産者の財産を隠したり、その財産的価値を減少させたような場合。
 浪費やギャンブルによって、著しく財産を減少させたり、過大な借金をしたような場合。
 既に返済不能の状態であるにもかかわらず、そういう状態でないかのように債権者を信用させて、さらに金銭を借り入れたような場合。
 偽りの事実を記載した債権者名簿を裁判所に提出したり、裁判所に財産状態について偽りの陳述をしたような場合。
 免責の申し立て前10年以内に、免責を得たことがある場合。
――――――――――――――
 免責決定を得て、債務から解放されるわけですが、免責決定後も一部の債務については支払い義務がなくなりません。支払い義務がなくならない債務とは、次のようなものです。
 租税。
 破産者が悪意をもって加えた不法行為に基づく(被害者からの)損害賠償請求権。
 破産者が雇っていた人(雇人)の賃金、預かり金、身元保証金。
 破産者が知りながら故意に債権者名簿に記載しなかった(債権者の)請求権。(ただし、債権者が破産宣告を知っていた場合は除かれます) 
 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金、過料など。
 
 
◎ 最新の元請倒産事例  代理人弁護士の話
 K社が倒産。
 2006年7月11日、工事代金不払い被害を受けた下請業者、建設労組は、K社の代理人弁護士に会い、話を聞きました。
 以下に、K社の代理人弁護士の話の要点を紹介致します。
――――――――――
 破産手続きの申し立てについては、2006年7月1日にK社から受任した。
 下請に支払うお金が資金的に尽きてしまったので、破産手続きを選んだということだ。
 ほとんど赤字工事で、2006年5月〜6月に資金繰りが回らなくなって、7月に到って債務整理を弁護士に依頼せざるを得なくなった、ということだ。
 債務総額は、(施主の分を除いて)約5000万円。
 今、資産総額の調査をおこなっている。預金は30万円位しか残っていない。固定資産の評価を今後実施する。固定資産は機械・工具類のみで、不動産はない。
 2006年6月23日に、K社の社長の個人名義になっている工場や事務所兼自宅の土地、建物を約8000万円で売却した。また、同日、K社の社長の母の個人名義になっているアパートの土地、建物を、約1億1000万円で売却した。これらの土地、建物は抵当権付きだったので、売却代金から抵当権者に支払い、残り4000万円がK社の社長の個人資産として存在している。
 言い換えると、売却代金から担保権者に支払い、個人の資産として4000万円位残っている、ということだ。
 法人の資産と個人の資産を区別する。K社の債務の弁済に個人の資産を処分して充当しなければならないという法的な義務はないが、みなさんの気持ちとして不満はあると思うので、この個人資産4000万円をどうするかについては、裁判所から選任された破産管財人が破産管財業務の中で適切に措置していくことになると思う。
 これらの不動産の購入者はT社(K社の社長の義理の弟)である。購入者は、購入した不動産に抵当権を付け、1億9000万円位の融資を受けた。
 常用的に使っている職人(雇用契約と断言するつもりはないが)には支払い済みである。
 施主との関係で言うと、施工途中の物件が3件ある。1件はほとんど未施工、1件は棟上げまで、1件はほとんど完成しているがまだ引き渡ししていない。
 施主からは前渡金を貰っている。大きいところは4000万円の前渡金を貰っている。施主から損害賠償を求められる可能性がある。
 残っている資産を、施主、工事代金に公平に分配する必要がある。施主、工事代金のどちらかが優先するということはなく、平等である。
 ほとんど完成しているがまだ引き渡ししていない1件についてだけは、施主が気の毒な状況なので、(金額は不明だが)優先した対応を考えている。
 K社の社長には、個人資産4000万円を保存するように言ってある。物理的な保障措置はしていないが、ここでお話したことが保障になる。私が預かるとか保全措置を検討する。
 2006年7月20日までに債権届けをしていただき、7月末〜8月中頃に裁判所への破産申し立てをするつもりである。
 残っている資産から優先して支払うべき公租公課はない。雇用契約とはっきりしている労働債権はない。
 (K社の社長が関与している)もう一つの会社には、負債も資産もない。
 K社が元請である。K社の上に元請はいない。
 K社とJVを組んでいる企業はない。
――――――――――
 
 
◎ 鈴建工務店破産事件 若干の経過
 2006年7月6日、東京地裁で、鈴建工務店破産事件の第一回債権者集会がおこなわれました。40人を超える債権者が参加しました。この規模の破産事件では異例のことです。鈴建工務店の保有する不動産の売却によって多額の破産財団組み入れ額が形成されているのではないかとの期待から、多数の債権者の出席となったようです。
 しかし、破産管財人の提出資料によると、不動産売却による破産財団への組み入れ額は5700万円にとどまっています。「こんなに少ないのは理解できない」との疑問が数人の債権者から出されました。
 これに対して破産管財人は「不動産の全部に担保、根抵当が付いているのだから、ゼロでもいい。銀行と交渉して積み上げたのが5700万円だ」と説明。言い換えると、担保権者、抵当権者の銀行と売却代金の一部を破産財団に入れてほしいと交渉して5700万円を銀行に譲らせ、破産財団に組み入れることができたのだと、破産管財人は説明。
 不動産売却代金5700万円の他には車両売却代金560万円があるくらいで、その他にはめぼしい資産はほとんどなく、破産財団の形成は全部で6700万円にとどまっています。
 担保付き債権者の銀行は、担保付き不動産の売却から既に3億3000万円を回収しています。
 公租公課を中心とする「優先債権」が6500万円存在します。破産財団から優先して支払われる破産管財費用(破産管財人への報酬等)も、破産財団から支払われなければなりません。
 こう見ると、一般債権である工事代金への配当(支払い)はほとんど期待できません。ゼロの可能性も否定できません。
 売れ残っている不動産があり、売却のために破産管財業務が続行されます。破産管財人の説明によると、人気のある物件は全て売却済みで人気のない物件が残っているだけなので、見通しはあまりよくないのではないか、とのことです。
 こういう結果になってみると、鈴建工務店破産の前に、鈴建工務店がまだ正常に営業活動を続けていた時期に、1〜2年かけて、鈴建工務店の下請業者W社(埼玉土建一般労組の組合員)と埼玉土建一般労組が力を合わせて、鈴建工務店と粘り強く繰り返し交渉を実施し、工事代金の半分以上の支払いを受けることができたのは、一定の成果と言えるのではないかと思いました。交渉のたびに少しずつの支払いを獲得し、それが積み重なって50%以上の支払い額に到達したものです。
 
 
◎ 労働組合作りについて(労組作りを考えているあなたに)
1、労働組合作りの正当性
 職場で、いやなことがあったとき、特に会社側の人間(経営者、経営陣、会社役員、上役、上司、等々)からいじめ、セクハラ、侮辱、罵倒、等々、受けたとき、浴びせられたとき、人は、労働組合を作って対抗しようと考えます。
 職場で、不当な差別、嫌がらせ、人事異動、退職強要、人権侵害、等々、そんな目にあったときも、人は、労働組合作りを考えます。労働災害の発生、劣悪な労働安全衛生環境、低賃金、長時間労働など悪い労働条件、そんな時、人は、待遇改善を求めて労働組合作りを考えます。
 労働者が労働組合を作るのは、労働者としての正当な権利であり、憲法で保障された権利なのです。憲法第28条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と定めています。
 勤労者、労働者には、労働組合を作り団結し、団体交渉し、団体行動する権利があり、憲法で保障されているのです。ここに、確信を持つことです。職場に憲法がないような状態を克服し、人権侵害とたたかい、人権を守り、人間としての尊厳を守り抜くために、また、適正な労働条件など人間らしい生活を獲得するためには、職場に労働組合を作ることが必要です。ここに、労働組合運動、労働運動発生の根拠があり、正当性が存在します。
2、決意から行動へ
 いろいろな不安、困難、経営者側の監視、弾圧、脅迫に負けることなく、挫けることなく、また、負けたくない、挫けたくないという崇高な気持ちから、人は、労働組合作りを決意します。決意する人は、本当にたくさんいるわけです。
 決意から本当に行動に移せるかどうか、ここが問題であり、課題です。現実は、ここで挫折する人が多いのではないでしょうか。決意から行動へ、「職場の仲間に、労組作りを一緒にやろうと呼びかける」、これは相当な勇気、確信、エネルギーが必要です。人間としての尊厳をかけたたたかいとして位置付け、大胆に行動することです。私が本で読んで印象に残っていることなのですが、国際労働運動の先駆者であるエンゲルスは「大胆なれ、大胆なれ、三度大胆なれ!」と私たち労働者に呼びかけています。経営者側の監視、弾圧、脅迫を前にして、確かに普段の私たちは、本当に臆病者です。私たち労働者は「奴隷ではない、人間なのだ」の決意を胸に、労働組合作りを職場の仲間に呼びかけることです。
3、表面化する前に
 職場の規模、状況にもよりますので、組合結成に賛成する仲間が何人になったら、とまでは言えませんが、最初はこつこつと一人一人に組合作りの相談を行い、ある程度の人数になった時点で、組合結成を経営者側に通告し、表面化するということになります。表面化する前に察知され、弾圧されたら、憲法28条等々を盾に急速に表面化し、たたかいぬくことになります。  
4、労働組合の目的
 労働組合の目的を文書にして、職場の仲間に知らせる場合、難しく考えると、やっぱり労組作りは難しいということでそこで挫折することになりますから、最初は極めて簡単なものでもいいと考えます。
 職場職場の状況によりますから、一律にはなかなか書けないわけですが、あなたが労組作りを決意するに至った動機、原因、根拠となったようなことを、まず書いて明らかにすることです。
 たとえば、「上司は部下を人間として扱うこと、侮辱、罵倒をおこなわないこと、部下の人格を尊重すること」等々を掲げてもいいと思います。難しく考えないことです。難しく考えると、労組作りはできません。私も言われた経験がありますが、上司、上役、管理職、監督等々の人たちは、権力を背景に「バカヤロー」、「こんなことをする奴がいる」、「おまえ」、「そんな意見を言いやがる」、「ざまをみろ」、等々、労働者に平気であるいは報復的に暴言を吐くものです。
 私の経験では、文書など一切なしに、ともかく先行して労組を作ったことがあります。
 ただ、あとからでもいいと思いますが、労組作りの権利を保障しているのが憲法ですから、労組の目的の一つに「憲法を守る」を掲げることは必要です。
 お互い、激励しあって、労組作りに取り組みましょう。質問、相談、等々ありましたら、このサイトの email を通じて連絡して下さい。
 
 
◎ 埼玉土建一般労組不払い相談の一端(賃金不払い問題アドバイス)
 2006年5月11日、下記の人が、埼玉土建一般労組本部に直接、不払い相談で電話してきました。(建設労組の組合員から埼玉土建一般労組を紹介された、とのことです)
 Sさん
 水道工事に従事
 埼玉県比企郡
(相談のなかみ)
 K社(従業員3人)に1年以上前から、1日13,000円の日給で、労働者として働いてきた。この間ずっと、支払いを受けてきたが、最近の水道工事の分(13,000円×15,5日分=201,500円)について不払いを受けている。理由は、水道工事の施工不良による水漏れの弁償。
(アドバイス)
 @業者間の請負契約ではなく、労働者として雇用関係で働いていたのだから、仕事で失敗したからと言って、それで賃金を支払わないというのは許されることではなく、労働者が仕事で失敗した場合、経営者が責任を負わなければならないこと、従って、K社はSさんの賃金を支払わなくてはいけないこと、A建設労働組合(埼玉土建一般労組)に加入して、K社との交渉、労基署への申し入れを実施し、賃金不払いの解決をめざすことなど、アドバイスしました。
 
(参考資料)
 『民法(6)契約各論〔第4版増補版〕』(発行 有斐閣)には、「一般に、労務の結果としての『仕事の完成』を目的とする契約が請負であり……労務の利用それじたいを目的とする契約が雇用だ、と説かれている。だが、その区別は実際には困難である(たとえば、出来高払の賃金が支払われる場合を考えてみよ)」、「民法は、雇用をもって……その一方(労務者)が労務に服することを約し、相手方(使用者)がこれに報酬を与えることを約する契約と構成している(民法623条)。すなわち、雇用契約をとりむすぶことによって、労務者(労働者)は労務に服する義務を負い、使用者(資本家)は賃金支払の義務を負う……使用者は、労働契約の不履行(たとえば、期間内での退職や無断欠勤)について違約金の定めをしたり、また債務不履行にかぎらず、不法行為がなされた場合(たとえば、機械・器具の損壊)について損害賠償を予定する契約(民法420条)をなすことを禁止される(労働基準法16条)。ただ、これらの場合について、就業規則で制裁としての減給(労働基準法91条)を定めたときには、(上述の)規定にかかわらず、減給が可能であると解されている。ただし、減給額は一定限度にとどめられる」、「請負とは、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約する契約である(民法632条)……請負とは、第一に、仕事の完成を目的とする契約である……仕事の「完成」とは、労務によってまとまった結果を発生させることをいう。請負は、仕事の完成そのものを目的とし、労務そのものを目的とするものではない。すなわち、労務の供給は、ただ仕事完成の手段にすぎず、この点において雇用と異なる。したがって、請負人がいくら労務に従事しても、約束した結果が発生しなければ、請負人は債務を履行したことにはならない……第二に、請負は、完成した仕事に対して報酬を支払うことを約束する契約である……なお、報酬は仕事の完成に対して支払うのであるから、請負人が仕事を完成しなければ、注文者に報酬を請求することはできない」と説明されています。
 上記の解説書自体が、請負と雇用について「その区別は実際には困難である」と言っている位ですから、実際にこの種の事案にぶつかった人にはわかると思いますが、請負なのか雇用なのか、労働者なのか請負人なのか、実際の(紛争)現場ではいつも問題になります。
 建設労働組合、建設労働運動としては、上記解説書に説明されているような民法上の規定を考慮に入れながら、賃金、労働者を守り抜くという立場で、紛争の解決に努力し、力を尽くすことになります。
 
 
◎ 埼玉土建一般労組の何でも相談活動(具体事例 宝石売買契約)
(以下は、埼玉土建一般労組さいたま北支部書記の田中悌二さんから提供していただいた資料に基づいて、まとめたものです―――海野和夫)
 2006年4月25日夜8時頃、Kさんから「子供の契約のことで相談したい」との電話が埼玉土建一般労組さいたま北支部書記の田中悌二さんにありました。緊急に対処が必要な様子なので、「すぐに(埼玉土建一般労組さいたま北支部)事務所に来てください。相談に乗ります」と田中悌二さんは答えました。すぐにKさん夫妻と娘さんが相談に来ました。
Kさんの娘さんが5年前にネックレスを月賦で購入しました。この時カードを2枚渡されました。ネックレスの支払いがもうすぐ終るというときに、5年前の契約のときの業者とは別の業者からKさんの娘さんに「あの時渡されたカードの利用料は、月3,000円である。受け取ってから一度も払っていないので、請求が加算され、自己破産に追い込まれるほど請求されるかもしれない。新たな契約を自分のところと結べば請求しないよう交渉してあげる。契約は宝石の購入という形にしている」との趣旨の話がされました。
 Kさんの娘さんは業者に会い、言われるままに2006年4月6日、ジュエリーの売買契約を交わしました。
 契約書には、赤いインクで以下のように印刷されていました。
―――クーリングオフのお知らせ―――
1、『業務提供誘引販売』方法でお申し込みされた場合、本書面を受領した日を含む20日間は書面を発した時に効力を生じ、無条件にこれを解除できます。
2、この場合お申込者は、
@損害賠償や違約金を支払う必要はなく、また商品の引き取りや権利の返還に要する費用は販売店が負担します。
A役務の提供を受けた場合でも当該契約に基づく対価の支払いの義務はありませんし、既に商品代金や対価の一部を支払われている場合は、速やかに販売店よりその全額の返還を受けることができます。
 84万円の契約で、14万円はKさんの娘さんが自分の預金から、70万円はサラ金2社から借りて支払いました。
 両親は、@契約を解約したい、Aサラ金の借り入れは両親が立て替えて返したい、ということでした。
 「カードの利用料について契約していないのだから、支払い義務があるはずはない」、「5年前と別の業者となっているが、同じグループではないか」と田中悌二さんはKさんの娘さんに話しました。
 2006年4月6日の契約だと2006年4月25日が解約の(クーリングオフの)期限です。契約を解除することにし、田中悌二さんが文書を作り、(埼玉土建一般労組さいたま北支部)事務所から相手にFAXしました。
 内容証明郵便については、さいたま新都心局が24時間体制なので、2006年4月25日の証明を貰うため2006年4月25日23時頃親子で出しに行きました。(前述のように、相談の電話があったのは、2006年4月25日夜8時頃です。まさに急速な対応、ギリギリの対応だったわけです)
 サラ金については、交渉し、サラ金業者の了解を得て、返金しました。
 田中悌二さんがKさんに電話をすると、2006年5月8日現在、(販売業者からの返金の)振込はないということです。 
経緯から販売業者が素直に返金してくるとは考えられないと田中悌二さんは判断し、「さいたま市消費生活総合センター」に申し入れ、業者への指導をしてもらう予定です。
(追記)その後、Kさんは「さいたま市消費生活総合センター」への申し入れを行い、「さいたま市消費生活総合センター」から販売業者への指導が行われ、その結果、返金するとの回答が販売業者から届いたとのことです。解決までもう少しです。あとは実際に返金させ、振り込ませることです。
(再追記)そして、2006年5月16日、84万円の全額が振り込まれてきました。全面解決です。
 
 
◎ S社不払い事件の経過
(以下は、2001年〜2002年にかけて問題になった、S社による不払い事件について経過をまとめたものです。困難な事例として、参考にしていただければと考え、載せておきます―――海野和夫)
1、S社不払い問題で県交渉
 川越市に本社があるS社(リフォーム請負業)による不払い問題が、埼玉土建一般労組の、川越、入間、朝霞、志木、富士見三芳、東松山の各支部へ広がりを見せると同時に、「その筋の介入」、「暴力の問題」、「(埼玉土建一般労組の)組合員が警察に頼む」など、複雑で困難な側面が強い事例になっています。
 この問題を、リモテックス債権者対策会議の運動を教訓として、S社債権者対策会議を作って、労働組合の共同の運動として進め、共通の認識を作りながら、正しい対応をおこなうために、2001年7月8日に、S社債権者対策会議をおこないました。
 この会議には、埼玉土建一般労組志木支部(当時)5人など7人が参加し、当面、@埼玉土建一般労組の全支部へのファックスにより、S社の被害が広がらないように、徹底をはかる、A埼玉県の不払い相談窓口に申し入れ、相談する、の2点を確認しました。
 S社債権者対策会議での確認にもとづき、県への要請行動をおこない、2001年8月2日、埼玉県土木部建設管理課の副参事、埼玉県県土整備部建設業課の専門調査員と話し合いをおこないました。
 埼玉土建一般労組からは、志木、東松山、富士見三芳の各支部と本部から7人が参加。@賃金・工事代金の不払いをくりかえすS社に対して、県として指導をおこない、支払をおこなわせること、A埼玉土建一般労組東松山支部の組合員の場合、S社から請け負って屋根工事をおこない、その支払が2001年8月末であり、新しい不払いが発生することのないよう県として強く指導すること、BS社を「不良不適格業者」として排除するために、同社に対して、建設業法にもとづく営業許可の取り消し、営業停止などの処分を県としておこなうこと、の3点を中心に県に要請しました。
 県の回答は、@民民の問題(民間業者の間の取引の問題)なので、県の指導での不払い解決は困難、A埼玉土建一般労組からの要請をS社に伝えながら、同社から事情を聞く、B同社への処分については検討する、というものでした。
 建設業法は、28条(営業の停止)、29条(許可の取消し)で、請負契約で不誠実な行為をくりかえす「不良不適格業者」に対して、国土交通省や県が、営業停止、建設業許可の取消しのなどの処分をおこなうことができることをさだめています。
 県との再交渉、国土交通省や(S社の本社がある)川越市との交渉を含めて、不払い被害業者の困難をやわらげるために、埼玉土建一般労組として可能性を追求していきます。
2、S社未払い問題 川越労基署交渉
 2002年1月17日に埼玉土建一般労組として川越労働基準監督署と交渉をおこない、S社(住宅リフォーム会社)が多数の業者・労働者に対しておこなっている労務費の未払いについて、労基署として調査・確認し、未払いの労務費をS社が支払うよう指導することを要請。
川越労基署の見解として、@業者間の問題に労基署は「介入」できない、Aリモテックス社倒産のときの「請負職人」のように、表面上・形式上は「請負」であっても、実態が労働者であれば労基署は「介入」でき、実態が労働者かどうかケースバイケースで判断し、労働者ということであれば、労基署として「介入」する、を引き出すことができました。
 そこで、埼玉土建一般労組富士見三芳支部のAさん(看板取り付け工事)といっしょに、2002年1月30日に2回目の労基署交渉をおこない、Aさんは屋号を使っているが、(リモテックス社倒産のとき労働基準法上の労働者として認められ、未払い賃金の立替払い制度が適用された「請負職人」約220人と同じように)、株式会社、有限会社のような法人ではなく個人で、そして日常的に人を使って仕事をしているわけではなく1人で施工に従事しており、実態としては労働者であることを労基署に説明し、労基署の「介入」を求めました。
 労働基準監督官の対応は、Aさんの労働者性に否定的で、上局(埼玉労働局)の判断がなければ動けない、との回答。
 今後、埼玉土建一般労組は、埼玉労働局、そして厚生労働省と交渉をおこなっていきます。
 なお、S社については、「代金を払ったのに、工事をしてくれない」との訴えが、すでに3人の消費者から埼玉土建一般労組に寄せられています。
3、(2002年2月5日に)埼玉労働局に提出した要請書
(1)要請のなかみ
 S社がAさんなど多数の業者・労働者に対しておこなっている労務費(賃金)の未払いについて、調査し、確認して下さい。
 そして、これらの業者・労働者に対してS社が未払いの賃金(労務費)を至急支払うよう適切な指導をおこなって下さい。
(2)要請の根拠
@S社が、Aさんに対して交付した「債権確定書」のコピーを、証拠資料として添付しておきます。
AAさんは、屋号を使っていますが、(リモテックス社倒産のとき労働基準法上の労働者として認められ、未払い賃金の立替払い制度が適用された「請負職人」約220人と同じように)、株式会社、有限会社のような法人ではなく個人で、そして日常的に人を使って仕事をしているわけではなく1人で施工に従事しており、実態としては労働者です。
4、埼玉労働局の対応
(2002年2月5日の)上記要請に対して、埼玉労働局は「Aさんは労働者ではない」との判断を示し、埼玉土建一般労組としては、今後、厚生労働省交渉等々、あくまでもAさんの「労働者性」認定を追求したかったのですが、Aさん本人の「これ以上は、もういいです」との意思表明を受け、断念しました。
 
 
◎ (9店舗併設)新築工事現場での未払いについて
(2002年に発生した、「その筋」が深く関係していたと見られる不払い事件について、報告しておきます。未解決に終った事例です。この種の事件の未然防止に少しでも役立てることができればと考え、不十分ですがまとめてみました)
1、不払い事件の連絡
 東京土建一般労組多摩西部支部の書記と組合員のE氏から、「発注者がA社事業主の「○○」(9店舗併設)新築工事現場で工事代金未払いが発生している、そしてその現場には6人の埼玉土建一般労組組合員がいる」との情報が入りました。当事者の一方だけからの話なので、事実関係を断定することはできませんが、話を2時間にわたり聞いた範囲では、「その筋」が深く関係している可能性もあります。
2002年11月12日に埼玉土建一般労組会館に関係業者等を集めて、対策会議をおこないました。
2、「○○」(9店舗併設)新築工事現場関係未払い対策会議
(下記は、2002年11月12日におこなわれた「○○」(9店舗併設)新築工事現場関係未払い対策会議で配布した資料等にもとづいてまとめたものです)
(1)経過
 現場 「○○」(9店舗併設)新築工事現場 
 施主 (A社)事業主
 元請 B社→B社元従業員のC氏→D社と元請が2回交代していると言われています。
@(最初の元請の)B社の元従業員C氏の話によると、下記のような経過だとのことです。
2002年6月2日の夜、施主の(A社)事業主と元請のB社の間で、当時B社の営業兼現場担当のC氏も同席して、仮契約(税込み1380万円)をおこなう。 
 このときの「施主の(A社)事業主」の話「着手金(契約金額の三分の一)の400万円を用意できない。180万円は借りてきたので支払う。残り220万円を2002年6月24日頃に支払う」
 2002年6月24日、当時B社の営業兼現場担当のC氏が「残り220万円をいつ貰えるのか」と施主の(A社)事業主に電話。施主の(A社)事業主の回答「まだ用意できていない」
 2002年6月25日 「言った言わない」の話になる。
 2002年6月30日 元請のB社が「その筋」に頼んで、仕事をおりることを「施主の(A社)事業主」に通告させる。このとき、着手金の一部として貰っていた180万円を「その筋」を通して「施主の(A社)事業主」に返した。しかし、施主の(A社)事業主は「50万円しか返して貰っていない」と言っているという話が伝わってきている。
 
 着工予定は2002年6月7日。当時B社の営業兼現場担当のC氏が2002年6月7日から工事を始めていた。
 2002年6月30日の夜、(最初の元請の)B社事業主から(当時B社の営業兼現場担当の)C氏は「いったんB社をやめて一個人として活動してくれ」と言われる。
 2002年7月2日に、C氏は(最初の元請の)B社をやめる。その件を含めて、C氏は「施主の(A社)事業主」とも相談。C氏「ゼネコンをさがす間、工事を中断せざるを得ない。2002年7月10日までに工事再開のめどを立てる(2002年7月一杯に終ればいい工事だった)」と「施主の(A社)事業主」に話す。
 ところが、いわくつきの工事なので、ゼネコンが引き受けない。
 (二番目の元請になった)C氏、○○氏、(三番目の元請になることになる)D社事業主の3人で「施主の(A社)事業主」のところに行き、どうしたらいいのか相談。このとき既に、500万円位工事出来ていた。C氏「1380万円の負債を引き継ぐのは無理」。施主の(A社)事業主「1380万円のうち500万円は(最初の元請の)B社に請求すればいい」
結果として、C氏は800万円の工事を引き受けることになる。
(その後)
施主の(A社)事業主「着手金(800万円の三分の一)を用意できない。業者名簿一覧表と工程のおおまかなもの(いつどれくらいお金が必要か)を出してほしい」
2002年7月16日、工事再開。C氏は業者名簿一覧表を施主の(A社)事業主に渡す。
2002年7月21日 C氏は施主の(A社)事業主に、大工手間賃21万円用意してください、というようなものを書いて渡した。施主の(A社)事業主「これならいい」。
2002年7月22日 施主の(A社)事業主がC氏に15万円持ってくる。1週間分の手間賃としては足りなかった。
職人に日払い、週払いで来てくれとは言えないので、C氏1人で工事を続ける。
2002年7月末 C氏「400万円必要だと書いて渡してあるのだから、実際どれ位なら出せるか言ってほしい」。施主の(A社)事業主「100万円なら出せる」。
C氏はE氏(東京土建一般労組多摩西部支部組合員)と協議。C氏「いくらならやってもらえるのか」。今回の事件で埼玉土建一般労組や東京土建一般労組に不払い相談に来ているのが、このE氏(東京土建一般労組多摩西部支部組合員)です。
2002年8月1日朝7時 施主の(A社)事業主「70万円しか渡せない」この後、2日間工事中断。
2002年8月3日 C氏とE氏(東京土建一般労組多摩西部支部組合員)で材料の仕入先とか話をしていた。施主の(A社)事業主から電話「どうなっているんだ」。
(その後)
 施主の(A社)事業主「テナントが入ったら払ってやる」。C氏は、支払一覧表の明細を提出。施主の(A社)事業主「日払いの職人を雇ったのは、おまえが悪い」とC氏をなぐる。ケガはしなかった。
 2002年8月23日 話し合い(それまで、C氏は多少仕事をおこなっていた。この間、106万5000円を貰う)。(三番目の元請になった)D社事業主に工事の引き継ぎをおこなう。施主の(A社)事業主から言われてC氏は「契約不履行及び賠償金について、C氏と家族・親族は責任を負う」との念書を書く。(この1週間前に電話で施主の(A社)事業主から、「24時までに『○○』に来ないと殺す」とC氏は言われる。また、たびたび『殺す』と言われる。なぐるけるをされる。電動ドライバーを胸に突きつけられる)
 工事は90%位まで終っている。
 C氏「当面、静観していたい。弁護士を立てて、テナント料から示談金をとりたい」
(以下は、「施工不良」等の件)
 (2002年8月23日頃)C氏が元請となり、工事を進めたが、内装工事に入る直前に「施主の(A社)事業主」からクレームがあり、取り壊させた(カウンターの高さ、床上げが気に入らないということで、厨房内と通路の床完全撤去)。
 施主の(A社)事業主が言う損害賠償の根拠=お盆前にはオープンしたかった。年末オープンになると、その間のテナント料を見込めなくなる。
A不払い相談に来たE氏(東京土建一般労組多摩西部支部組合員)の話
 C氏は「施主の(A社)事業主」から支払を受けていないという話だったので、直接「施主の(A社)事業主」に支払を求めたが、施主の(A社)事業主から「C氏に仕事を頼んだのだから自分は関係ない。金も払ってある」と言われた。
 2002年9月26日 再度「施主の(A社)事業主」に支払を求めたが、話にならない。
 2002年9月29日 施主の(A社)事業主からE氏に「かげでチョロチョロするとぶっ殺すぞ」の電話。E氏「東京土建一般労組に相談している」。施主の(A社)事業主「いつでも来い」
(2)対応
 前記のように、@施主自体が「その筋」と思われる、A元請が2回も代り、それぞれの元請が「その筋」、「ぐるになっている」可能性、B施主と元請が「ぐるになっている」可能性、C彼らの上に全国組織の「その筋」がいる可能性、等々、複雑な事例でしたが、建設労組として交渉申し入れ等々、努力しました。結果として、未解決に終りました。
 
 
◎ ─── 国民の譲れない権利としての生活保護の受給のために ───
(以下の記述については、『絶対にあきらめない 生活保護 受給マニュアル』(著者 田村宏氏 発行 同文舘出版)を参考にさせていただきました──海野)
 生活保護を受けることは、国民が生きるための権利です。日本国憲法25条で保障された国民の権利です。
○ 憲法25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 生活保護は申請主義です。行政がしてくれるのを待っていてもダメです。申請しなければダメです。本人や同居家族が申し立てる必要があります。「頼るべき親族等がいない」、「活用できる資産や他施策がない」ことを申し立て、証明することが大事です。病弱を証明するのは、医師です。
 生活保護の受給の前提は、資産の処分です。行政から資産の処分を指導されます。車の保有は困難とされています。しかし、移動に車が欠かせない障害者や仕事に不可欠というような場合には、例外的に保有が認められる可能性があるとのことです。居住中の不動産の処分を指導されるかどうかについては、微妙なようです。自宅の不動産については、2300万円以下の資産価値であれば売却の必要はないとのことです。
 生活保護としての支給のなかみは、金銭だけでなく、医療や介護などのサービス提供もあります。
 個人ではなく世帯を単位として認定するのが、生活保護の仕組みです。
 生活保護受給中の借金は、絶対に認められないとのことです。
 生活保護を受けようとする人を支援する、協力する第三者(労働組合を含めて)の同席については、本人が同席を求めているわけですから、(個人情報の保護などと言って)行政が拒否できる根拠はありません。
 生活保護の認定の上で、住民登録をしているかどうかや住民税を支払っているかどうかは、関係がないとのことです。
 ホームレスの人たちが生活保護を受けられないのは、住民登録をしていないからだと、よく言われますが、そうではなく、公共の場所を「不法占拠」しているから、行政としてそれを認めることはできないというのが、受けられない理由のようです。言い換えると、「不法占拠」ではない状態に、ホームレスの人たちを説得して移行させることができれば、受給の可能性が出てくる、ということでしょう。
 日本人以外でも、在留資格があって外国人登録をしていれば可能だとのことです。
 言うまでもないことですが、虚偽や不正受給は、犯罪です。厳しい返還請求が来ます。刑事罰を科せられる場合もあります。
 
 
◎ ──────── 多重債務問題の解決のために ────────
(以下の記述は、『借金整理 過払金請求と自己破産』(著者 島弘毅弁護士 発行 あさ出版)を参考にさせていただきました──海野)
1 多重債務に負けないために
 多重債務を解決するには、正確に漏れなく、借金総額を知ることです。
 債務の利息を規制する法律=出資法(高い金利を認めている)、利息制限法(出資法に比べて金利がより低く規制されている)
 2006年の最高裁判決によって、業者が出資法に基づく高い金利を要求することはできなくなりました。従って、本当に返さなければいけない金額を、利息制限法に基づいて計算することになります。これを行なうことで、債務額は減少しますし、過払いも明らかになります。
 返さなければいけない金額を、利息制限法に基づいて計算するには、取引履歴が必要です。業者には取引履歴の開示義務があるとする最高裁判決が出ています。業者に対して「取引履歴の開示請求」を行ないます。取引履歴を開示しないことは、法律違反です。開示された取引履歴だけでは足りない場合は、本人の記憶で補強します。
 利息制限法1条1項は(10万円未満の貸付の場合に年利20%、100万円未満の貸付の場合には年利18%、100万円以上の貸付の場合には年利15%)までの利息をとることを認めています。
 2007年の法改正によって、利息制限法違反の利息をとることは禁止されました。無効だということです。また、同改正によって年利20%を超える利息をとると刑罰の対象になることも決まりました。(この改正法は、2010年6月20日までには施行されます)
 ヤミ金とは?
出資法の定める上限金利(現行は年29.2%、新法では年20%)違反で貸付を行なう業者はすべてヤミ金です。ヤミ金の、年利29.2%を超える貸付は、出資法違反で刑罰が科せられるだけでなく、民事上も無効です。一切返す必要はありません。
2 特定調停(根拠となっているのは特定調停法)
 債権者の営業所(本店・支店)を管轄する簡易裁判所に申立を行ないます。自分で申し立てることができます。費用負担が少なくてすみます。特定調停を申し立てれば、取立は禁止されます。また、強制執行を止めることができます。但し、特定調停によって過払金を取り戻すことはできません。別途、努力する必要があります。
 分割の返済計画案は3年〜5年です。
 調停委員が間に入ります。
 特定調停では、借金の原因が問われる自己破産とは違って、借金の原因が問われません。
3 自己破産
 「免責が認められない債務」 税金、不法行為に基づく損害賠償、養育費、罰金
 債権者に配当すべき財産がないことが明らかである場合には、配当する必要がないので、破産手続開始と同時に配当手続を終了します。これを同時廃止手続と呼びます。
 配当すべき資産があれば、破産管財人(弁護士)が裁判所によって選任され、管財手続を行ないます。資産をお金に換え、破産財団を形成し、そこから債権者への配当を実施します。管財手続の場合、破産者は、破産管財人の手続費用として最低20万円を納める必要があります。
 99万円までの現金は、自由財産として認められ、破産者が自由に管理・処分できます。
「免責不許可事由」には、以下のようなものがあります。
@ 資産を故意に隠す、不当に安く処分する。
A 借金の原因が、ギャンブル、投機行為(株式、先物も)、過大な飲食費、遊興費。
B ローンで買った商品を完済前に売却して換金してしまった場合。
C 債権者を故意に隠す。
D 破産管財人に協力しない。
 但し、上記のような場合であっても、反省し、二度とこのような行為を行なわないとの意思表示の誠実さが認められれば、免責が認められる可能性はある、とのことです。
 免責(借金の返済を免れること)が認められなければ、自己破産の意味はありません。この場合も、誠実が大事ということです。
 
更新日時:
2008/12/16
「建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払」関連(5)
「建設業法41条3項にもとづく元請責任での立替払」関連(5)
海野和夫
 
◎ 重層下請構造下の未払い事例の解決の構造 大手ゼネコンとの一定の信頼関係
(以下に紹介するのは、最近相談があり、割合早く解決に到った事例です。匿名で紹介します)
1 相談のなかみ
 元請―1次―2次―3次の重層下請構造です。3次が多額の未払いを受けている、との3次からの相談です。
 店舗関連の工事です。
○ 現場の都合で着工の時期が2週間遅れる。(着工の遅れの責任が誰にあるのかが一つのポイントです)
○ やり直し工事が多いが、上位下請が変更工事、追加工事を認めない。(やり直しの原因、責任が誰にあるのかが問題です。責任が元請または上位下請にある場合は、元請の責任での不払い解決が求められます)
○ 病気になってしまい、現場を続けられないと上位下請に説明して現場から抜けるようにしたが、材料はそのまま続けて納入してくれと言われ、対応してきた。この時点で契約金額を超えていた。しかし、上位下請からの支払いはない。(上位下請との合意の下に、「現場への材料納入」だけにしたということであれば、3次に問題はない、ということができます)
○ 工事が終ってからも、支払いがない。
○ 材料を支給し、人の手配をおこなった。病気になって途中で工事ができなくなったのだが、途中までの分と材料代の請求はできるのではないか?
 
2 解決
 関係者への配慮から、経過については省きますが、解決に到りました。
 解決の構造の基礎にあるのは、24年47回にわたる全建総連関東地協大手企業交渉の蓄積の中から大手ゼネコンと全建総連関東地協との間に形成された一定の信頼関係です。 
 一言で言うと、上記のように判断することができます。
 もちろん、上記構造を前提に、その上に、関係者の大変な努力、誠意、熱意が解決をもたらしたと言うことができます。
 
 
◎ 設計業務の委託料の不払いは元請による立替払の対象になるのか?
(匿名にしてあります)
 最近の倒産・不払いの増加、多発の中で、設計屋さんからの不払い相談がありました。相談を受けた人がまた、私に相談をしてきた事例であり、くわしい中味の聞き取りはこれからだということですから、知り得た情報からは結論的なことは書けませんが、「設計屋さんからの不払い相談」事例という新しい種類の事例なので、今後このような種類の不払い相談が増える可能性もあり、検討してみました。
1 「設計、調査、測量」は「建設工事」か?
建設工事は建設業法第2条に規定されている28業種となります。
 「土木一式工事、建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、浚渫工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事」の28業種です。
「設計、調査、測量」について言うと、建設工事に係る設計、調査及び測量業務の委託がこの業種です。
「測量、建築関連コンサルタント、地質調査、補償コンサルタント、建設コンサルタント、その他の6業種となる」とのことです。
 したがって、「設計、調査、測量」は、建設工事の前段を形成するものですが、建設業法上の建設工事にはならない、ということになるようです。
2 「設計、調査、測量」は立替払の対象になるのか?
 今回相談のケースに即して言うと、上に大手の土木会社がいます。(仮に○○土木としておきます)
 わかっている範囲で書くと、次のような構造のようです。
 発注者─(元請)○○土木…(不明)…設計事務所─設計屋さん、という構造です。
設計事務所が設計業務を(1人で設計の仕事をやっている)設計屋さんに委託し、その委託料を支払わない、ということです。
○○土木がその設計事務所(今回不払いを起こしている設計事務所)と直接契約したのか、それとも○○土木とその設計事務所(今回不払いを起こしている設計事務所)との間にさらに他社が介在しているのか、不明です、まだわかりません。
 あくまでも仮にの話ですが、仮に○○土木が発注者から請け負った建設工事を他の建設業者に下請負させ、その下請負業者(1次下請)が今回の設計事務所(今回不払いを起こしている設計事務所)に設計業務を委託しているとすれば、結論を言いますと、(国土交通省関東地方整備局の解釈、見解に従えば)今回の設計業務委託料不払いは、元請の○○土木の責任での立替払の対象になり得る、ということができます。一言で言うと、建設業法41条3項に言う「下請が他人に損害を加えた場合」に該当するからです。
 逆に、○○土木がその設計事務所(今回不払いを起こしている設計事務所)と直接契約している場合は、相当たたかわないと、立替払を認めさせることは困難です。下請が存在せず、建設業法41条3項に言う「下請が他人に損害を加えた場合」に該当しないからです。ややこしい話ですが、国土交通省関東地方整備局の解釈、見解に従えば、そうなのです。
 これを乗り越え、突破するたたかいが必要です。
 
 
◎ NTT発注の耐火被覆改修工事での破産・不払い 廃石綿処理費用
(基本的に匿名にしてあります)
 今回、相談を受けた事例は、NTT発注の耐火被覆改修工事での破産・不払いで、特別管理産業廃棄物である廃石綿の処理費用を貰えなくなったというものです。
 次のような構造になっています。
 発注者(NTT)―元請―1次―2次―3次という重層下請構造です。
 発注者(NTT)と元請との契約は、耐火被覆改修工事の請負契約です。
 元請と1次との契約も、耐火被覆改修工事の請負契約です。
 1次と2次との契約は、「特別管理産業廃棄物である廃石綿の処理」の契約です。
 1次が破産し、2次が、特別管理産業廃棄物である廃石綿の処理費用を貰えなくなったというものです。
 相談に来た2次が心配しているのは、特別管理産業廃棄物の処理は建設工事ではないのではないか? 建設工事ではないとすれば、元請による立替払いの対象にならないのではないか? ということです。
 論点整理@ 特別管理産業廃棄物処理は建設工事か?
 産業廃棄物処理を行なうには、産業廃棄物処理許可を取得する必要がありますし、また廃石綿の処理など特別管理産業廃棄物処理を行なうには、特別管理産業廃棄物処理許可を取得する必要があります。建設工事の施工には、建設業許可の取得(一般建設業許可または特定建設業許可)が必要です。
 建設業法第2条は「この法律において『建設工事』とは、土木建築に関する工事で別表第1の上欄に掲げるものをいう」と規定しています。
 そして、その「別表第1の上欄」には以下の工事が掲げられています。
 「土木一式工事、建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、浚渫工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事」
 したがって、特別管理産業廃棄物処理は「建設業法上の建設工事」ではないと解釈されていると考えることができます。
 論点A 建設業法上の建設工事に該当しない「特別管理産業廃棄物である廃石綿の処理」の代金は、建設業法41条3項が規定する元請責任での立替払の対象になるのか?
 結論から先に言いますと、建設業法上の建設工事に該当しない「特別管理産業廃棄物である廃石綿の処理」の代金は、建設業法41条3項が規定する元請責任での立替払の対象になります。
 『建設業法解説』(大成出版社)は、元請責任での立替払の対象になるものとして「賃金、工事代金、建設資材納入代金、(下請負人と工事現場周辺の商店等との取引関係に基づく)代金など」をあげています。
要するに、元請による立替払の対象になるのは、建設業法41条3項に記述されているように「(不払いを含めて)下請負人が他人に加えた損害」ということです。「特別管理産業廃棄物である廃石綿の処理」の代金の不払いが、元請による立替払の対象になることは、明白です。
論点B 立替払の対象になるには二つの壁を越えることが必要です。
「第1の壁」 「元請」が、建設業法上の「元請」に該当する必要があります。
今回のケースでは、発注者と「元請」との契約は、耐火被覆改修工事の請負契約です。言い換えると、建設工事の請負契約です。したがって、間違いなく、建設業法上の「元請」になります。第1の壁を越えることができました。
「第2の壁」 ややこしい話になりますが、国土交通省関東地方整備局の解釈によれば、「1次」が1次下請であることが必要です。
根拠は、建設業法41条3項の記述の中にあります。41条3項には「(元請による立替払の対象になるのは)下請が建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」と記述されています。
今回のケースでは、元請と1次との契約は、耐火被覆改修工事の請負契約です。「1次」は1次下請ということになります。したがって、今回のケースは、「下請が建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」に該当します。第2の壁も越えることができました。
 
 
◎ 「生協が工事を受注した場合、元請ではないのか?」について
 (匿名にしてあります)
 同様の構造での倒産・不払い多発の可能性もあり、以下に少し検討してみました。
1 今回検討するのはどのような構造か?
 生協が工事を受注。
 施主(生協会員)―生協(建設業許可を取得)―1次施工業者(生協会員)―2次施工業者(生協非会員)の構造です。 
 1次施工業者が破産し、2次施工業者が工事代金をもらえません。
2 生協の主張
 ○ 生協が生協会員の施工業者と「直接契約」し、施工業者が「責任施工」する。生協の「直接施工」とは言っていない。 
 ○ 生協と生協会員の施工業者との契約は、「請負契約」ではなく「業務委託契約」なので、生協は元請ではない。
3 検討
 『建設業法解説』(大成出版社)を読むと、次のような記述があります。
 「建設工事の完成と直接関係のない請負行為等を目的とする契約は、本法(建設業法)にいう下請契約に該当しない。たとえば、建設業者と資材メーカーとの間におけるブロック等の建設資材の製造委託契約は、下請契約ではない」
 上記の記述に照らせば、「建設工事の完成と直接関係のない請負行為等を目的とする契約」だとすれば、「製造委託契約」または「業務委託契約」などと称して、生協は元請ではない、と言い得るかもしれませんが、今回の生協と生協会員の施工業者との契約は「建設工事の完成と直接関係のある請負行為を目的とする契約」であり、言い換えると「建設工事の請負契約」であり、生協は元請という立場から逃れられないと、考えることができます。
『建設業法解説』には、次のような記述もあります。
 「許可を受けた事業協同組合は、組合として請け負った工事を、組合員はもちろん組合員以外の者にも下請させることができる」
 上記の記述に従えば、「建設業許可を受けた生協は、生協として請け負った工事を、生協会員はもちろん生協会員以外の者にも下請させることができる」ということであり、今回も単にこのとおりにしたと解するのが自然だと思います。
 なお、生協が主張する「業務委託契約」というのは相当あいまいな括りのようです。「業務委託契約」と称するもののなかみを精査し、どのような法的性質を持つものなのか(雇用、請負、等々)精査する必要があります。
 今回のケースでは、生協が施工業者に建設工事を行なわせているわけですから、生協が「業務委託契約」と称するもののなかみは「建設工事の請負契約」に他ならないと考えることができます。
 
 
◎ ―――(元請)代理人弁護士の文書回答 それへの国土交通省の評価―――
(関係者に配慮し、匿名にしてあります)
(この件では、国土交通省関東地方整備局に申し入れをおこないました。その際、同省が弁護士文書への評価、見方をかなり明確に示しましたので、以下にできるだけ客観的に紹介しておきます)
1 弁護士文書の論点とそれへの(建設労組側)の反論
 (元請)代理人弁護士が、以下のような文書を送ってきました。同弁護士の論点を一つ一つ検討し、解決への道筋を明らかにしたいと考えます。
 論点1「本件工事に関して、(不払い被害を受けた)3次下請業者は、建設労組に加入している業者だけではなく、材料納入業者等を含めると多数に上ることになりますが、仮に救済を検討する場合には、全社を対象にする必要があると考えます」
 元請として上記のように本気で考えているのなら、従来のように(不払い被害を受けた)3次下請業者を放置するのではなく、大至急、全社から個々に窮状を聞き取り、調査し、把握した上で、『建設業法解説』(大成出版社)が明らかにしているように「元請責任で、業者の窮状の救済に足りる金額での立替払」を実施すべきです。
 論点2「現在までに2次下請が、倒産の法的手続きを取ったとの情報はなく、かえって、1次下請に対して、代金支払いを求めて訴訟を起こし、現在裁判中であり、(3次下請は)2次下請に対する債権回収の可能性が相当程度認められるとも考えられる」
 建設業法41条3項に基づく「元請責任での不払い解決、立替払」は、倒産による不払いに限って適用されるのではなく、当然、倒産以外の原因(たとえば、倒産にまでは至らない経営不振とか上から払ってもらえないとか)による不払いの場合にも及びます。この点は、国土交通省の解説書『建設業法解説』に明示されています。したがって、今回のケースのように2次が倒産していないからといって、元請は、元請責任での不払い解決、立替払から逃れることはできません。
 そして、「2次が1次を相手に訴訟を起こしたのだから、債権の回収可能性がある」という主張について言えば、仮に「債権の回収可能性がある」としてもそれは可能性に過ぎず、現実は、3次には代金が支払われておらず、そのために3次は窮状に陥っています。したがって、「元請責任での不払い解決、立替払」を元請は実施し、3次を「救済」しなければなりません。
 この点については、前記の国土交通省の解説書『建設業法解説』が、立替払の基準として「損害額を限度として下請業者等の当面の窮状を救済するに足りる金額を基本とする」と明示しています。 
 2次が1次を相手に訴訟を起こしたからといって、元請責任が免除されることはあり得ません。国土交通省関東地方整備局が言明しているように「建設業法の主旨は、下請の保護、救済にある」のです。
 論点3「3次下請業者に対する立替払いを検討する際に、その原資として考えられていた、元請が1次下請に対して支払いを留保している金額については、1次下請と元請との間で訴訟に発展する可能性が相当程度高いと考えざるを得ません」
 上位下請に対して元請がまだ支払っていない工事代金(未払い工事代金)がある場合には、元請が(不払い被害を受けている)下位下請に立替払いをおこなった金額と上位下請への元請の未払い工事代金を、対当額(同じ金額)で相殺できることについては、有効と認められてきています。(東京地裁1998年11月9日和解、東京高裁2001年7月18日判決、さいたま地裁2002年6月25日和解)
 従って、上位下請への未払い工事代金がある場合には、元請は二重払いを避けることができます。元請はただちに、この金員を(不払い被害を受けた)3次下請業者に直接支払うべきです。
 論点4「以上からしますと、元請としましては、2次下請に関して倒産の法的措置が取られる、あるいは2次下請と1次下請との間の訴訟につき一定の方向性が明らかになる等の、事態の進展を待って対応を判断せざるを得ないのが現状です」
 上記反論から明らかなように、論点4は全く成立しません。論点4の論理は、元請責任を放棄し、(不払い被害を受けた)3次下請業者を冬の寒風の中に放置し続け、深刻な窮状へとさらに追い詰めるものです。
2 弁護士文書の論点への国土交通省関東地方整備局の評価
 (論点1に対して)「不払い被害を受けた全社が(元請責任での)救済の対象であるというのは当然のことであり、全社が明らかになるまで待つというのではなく、元請は、相談に来た1社1社について、窮状を聞き、救済に努めることが必要である」
 (論点2に対して)「1次と2次が裁判中というのは、(元請責任での)下請救済とは、全く関係のないことである。(元請責任での)下請救済をおこなわない理由とはならない」
 (論点3に対して)「元請ゼネコンが(上位下請への未払い代金がある場合)下位下請に直接払うことで解決している事例があるし、裁判でも問題ないとされている事例もあり、元請として下請の窮状の救済ということで適切な措置を考え、実施すべきである」
 (論点4に対して)「裁判が終るまで待つとかそういうことではなく、元請としてただちに対応することが必要である。『元請として下請の窮状の救済をどう考えているのか』と強く指導する」
 
 
◎ 「元請責任での立替払を拒否し続ける元請は倒産する」の一定の法則性
 2007/12/14 神奈川県の担当者のかたから「高山建設が倒産した」という情報が寄せられました。同社は神奈川県知事許可の特定建設業者ですが、建設業法41条3項に基づく元請責任での立替払を拒否し続けてきました。
 かつて共栄冷機工業会社更生事件のとき、元請が多数存在し、他の元請は建設業法41条3項に基づく元請責任での立替払を実施した中で環境建設だけが立替払を拒否し続け、環境建設は、今回の高山建設と同様に立替払を行わないまま破産に至りました。
 建設業法41条3項に基づく元請責任での立替払を行わないような元請企業は倒産する、ということなのでしょうか? そこには確かに、一定の法則性、必然性のようなものが存在すると感じています。
 倒産した企業に追い討ちをかけるような酷な言い方で申し訳ないとは思いますが、不払い被害を受けた下請業者の苦しみを考慮し、以下に少し書かせていただきます。
特定建設業者の許可行政庁の国土交通省や県の言うことも全く聞かないで行政からの信用を失う、また、下請業者が不払いを受けて苦しんでいるのを全く放置して元請としての(建設業法が定める)「下請保護の特に重い責務」を全然果たさないで、結果として下請業者からも信用されなくなる、こういう企業ではやはり業績はよくならないわけです。財務体質に弱さがあっても、それはそれで、自分ができる範囲で下請業者を「救済」する、そういう姿勢を示すことが、やはり元請として世間の評価を受けるためには欠かせない大事なことだと思います。
 財務体力と誠実さの点です。
不払いを受けた下請業者を「立替払い」で救済する財務体力のないような企業に特定建設業者の許可を与えるようなことは、最初からやるべきではないと思います。一定の財務体力があるのかどうかよく見極めることです。不払いを受けた下請業者の「泣き寝入り」を防ぐためには、この点は大事なところだと思います。
 誠実さの問題です。弱い財務体力であっても、体力に応じて誠実に下請救済に努めるのであれば、元請としての下請保護、救済の責任をはたしたと評価できますが、「下請との約束を守らない」、「許可行政庁の指導を無視し続ける」、「下請との交渉のとき『コノヤロー』など暴言を吐く」等々不誠実極まりない企業についても、「特定建設業者の許可をはずす」、「特定建設業者の許可を与えない」ことが必要です。
 なお、法改正として決定的なことを言いますと、工事代金の中の労務費の部分を賃金として認め、社員の賃金と同様に「労働債権」として保護すること、こういう方向に法改正できれば、下請業者の苦しみは大きく減少し、軽減されます。
 
 
◎ 残土運搬は元請責任での立替払の対象 国交省も大手ゼネコンも認める
 今回、少し複雑な話になるのですが、「残土運搬」が建設業法に基づく元請責任での立替払の対象になるのかどうか、問題が発生し、最初、大手ゼネコン○○社は「残土運搬」は建設業法に基づく元請責任での立替払の対象にならないとの見解を打ち出しました。
 しかし、国土交通省関東地方整備局は逆に、「残土運搬」は建設業法に基づく元請責任での立替払の対象になるとの見解を示しました。
 そして、大手ゼネコン○○社は、国土交通省関東地方整備局の指導に従い、「残土運搬」が立替払の対象になることを認め、一定の立替払いを実施し、円満解決に到りました。
 国土交通省『建設業法解説』(大成出版社)を読むと、建設業法上の「建設工事」の例示の一つとして、「根切り工事」をあげています。
 『総合工事業者・専門工事業者間における工事見積条件の明確化について─「施工条件・範囲リスト」(標準モデル)の作成─第3版』によると、根切り工事というのは掘削工事であり、工程は、掘削→積込→残土処理(残土運搬)の流れになります。
 今回、倒産・不払いが発生した現場の元請は、前述の大手ゼネコン○○社です。1次下請が△△社。
 ディベロッパーからマンション建設工事を請け負った○○社が、根切り工事を△△社に請け負わせました。
 次に△△社は、根切り工事を分けて、再下請負に出しました。「残土の運搬」については、××社に行わせました。××社はさらに、この残土運搬を□□社に行なわせました。
 ××社が倒産。□□社は不払い被害を受けました。
 □□社は、建設業法41条3項に基づく元請責任での立替払いを、元請の特定建設業者の○○社に要請。
ところが、○○社は、△△社が××社に出したのは根切り工事の中の「残土運搬」の部分だったので、それを捉えて、残土運搬は建設工事ではない、従って、建設業法41条3項が定める元請責任での立替払の対象にならない、との見解を打ち出しました。言い換えると、下記の建設業法41条3項にある「特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」にあてはまらない、というわけです。ややこしい話ですが、××社は、△△社から建設工事ではない残土運搬を請けたのであり、「建設工事を施工している建設業を営む者」ではないではないか、というわけです。また、残土運搬は建設工事ではないから、「建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」にあてはまらない、というわけです。
◎ 建設業法41条3項「特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、当該他人が受けた損害につき、適正と認められる金額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる」(アンダーラインは海野)
 
これに対して、以下は、国土交通省関東地方整備局の見解です。
@ 残土運搬は、建設工事ではない。
A 残土運搬は建設工事ではないが、今回の場合は、建設業法41条3項が定める元請責任での立替払の対象になる。
(理由) 今回の場合、○○社と△△社の契約は、根切り工事という建設工事の請負契約であり、○○社は元請となる、元請の特定建設業者となる。これを言い換えると、△△社は、根切り工事という建設工事を請け負った下請業者となる。
 根切り工事という建設工事を請け負った下請業者である△△社が、残土運搬を××社に頼み、その××社が倒産して他人に損害を与えたのが本件の経過であり、これは、△△社が根切り工事という建設工事の施工に関し残土運搬の部分を××社に頼むことで他人に損害を加えたということであり、建設業法41条3項が言う「特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合」に該当する。
 従って、本件の場合、建設工事ではない残土運搬であっても、建設業法41条3項が定める元請責任での立替払の対象になる。
(インタネットでの公表になじまないと判断し、○○社等、全て匿名にしました)
 
 
◎ 建設業法41条3項に基づく立替払と債権譲渡との関係 どちらが優先?(1)
 今回、相談を受けた事例は、
 元請の特定建設業者  A社
 1次下請(事実上の倒産状態)  B社
 2次下請      C社  工事代金150万円の不払い被害を受ける
 
 B社が事実上の倒産状態となり、工事代金150万円をC社に支払いません。実際に建設工事を施工したのはC社です。
 C社は元請のA社に、建設業法41条3項に基づく立替払いを求めました。交渉の過程で、この建設工事現場の分でA社がB社に未払いの工事代金が600万円存在することがわかりました。
 A社がB社に支払うべき分から150万円を直接C社に支払えば、建設業法41条3項に基づく立替払としてC社に支払えば、C社に支払った150万円については、A社は、B社に支払う必要はありません。
 ところがB社は、A社への工事代金債権600万円を、銀行に譲渡してしまいました。この債権譲渡を理由、根拠として元請のA社は、B社に支払うべき工事代金債務は存在せず、従ってC社に直接支払うこともできない、とC社に回答してきました。
 一つにはもちろん、元請A社はC社に対して、結果として二重払いになる立替払いを実施しなければなりません。
もう一つは、銀行への債権譲渡への対抗です。
 B社による銀行への債権譲渡に対抗するために、私たちは、債権者取消権、債権の同一性、信義誠実の原則、下請業者の工事代金の工賃としての性質などに注目し、主張する必要があります。
@債権者取消権
 債権者は、債務者がその債権者を害することを知ってした法律行為の取消を裁判所に請求できます。
 今回の事例にあてはめて言うと、B社への債権者である2次下請C社は、債務者であるB社がおこなった「A社に対してB社が持っている工事代金債権の、銀行への譲渡」という法律行為の取消を裁判所に請求できる、と解することができます。
A債権の同一性
 「債権は譲渡契約によってもその同一性は変わらない。すなわち、その債権に付随している利息債権・違約金債権・保証債権・担保権などの権利や、債権に付着している同時履行・期限猶予などの各種の抗弁権は、当然に譲受人に移転することになる」(有斐閣発行『民法(4)債権総論【第4版増補版】』206頁)
 今回の事例にあてはめて言うと、元請のA社が再下請業者におこなう建設業法にもとづく立替払いの金額と対当額(同じ額)で相殺されるという、その債権の性質は変わらないと解せます。したがって、債権が銀行に移転していても、移転する前と同じように元請のA社に対して建設業法にもとづく立替払いを要求できると解することができます。
B民法の「信義誠実の原則」
(民法)
(基本原則)
民法第1条  私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2  権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3  権利の濫用は、これを許さない。
(解釈の基準)
民法第2条  この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。
 「債権法では信義則(信義誠実の原則)の支配が強い。債権・債務関係は信頼関係の上に成り立つものであるからである。信義則は、民法の冒頭に一般原則として掲げてあるが、債権法について強く働く原理である」(有斐閣発行『民法(4)債権総論【第4版増補版】』7頁)
 今回の事例にあてはめて言うと、再下請業者に支払うべき債権を銀行に譲渡してしまうような行為は、明らかに信義誠実の原則に反し、無効だと、主張することができます。
C下請業者の工事代金の工賃としての性質
下請業者の工事代金は工賃(従って労働債権)としての性質を持ち、金融債権より優先すると主張することができます。
「下請業者の債権のように、実質的には工賃たる性質を持つ債権」(有斐閣発行『破産法概説【新版増補2版】110ページ』
 結論を言えば、工事代金債権の場合、債権譲渡より建設業法41条3項に基づく立替払のほうが優先すると、建設業法に基づく立替払の優位性を、私たちは主張すべきです。
◎ 建設業法41条3項に基づく立替払と債権譲渡との関係 どちらが優先? (2)
1 債権譲渡通知書
(今回送られてきた債権譲渡通知書は以下のとおりです。匿名にしてあります)
 債権譲渡通知書
 譲渡人兼通知人(1次下請B社)は、貴社(元請A社)に対して有する下記債権を2007年3月1日付債権譲渡契約書に基づいて譲受人へ譲渡いたしましたので、民法467条によりご通知いたします。
2007年8月8日
債権の表示
 売掛金及び請負代金債権のうち、本書面送達時に発生している債権及び今後6ヶ月以内に発生する債権の全て。
譲受人 ○○銀行
譲渡人兼通知人 B社
被通知人 A社
2 元請A社からの通知書
(以下は、B社による銀行への債権譲渡を理由、根拠として、建設業法に基づく立替払いを拒否する元請A社の通知書です)
 通知書
 B社の下請業者への工事代金不払いに対する支払い要請を受け、首件への回答を致します。
 B社が当社(A社)に対して有していた売掛金債権は、平成19年8月8日付け確定日付のある内容証明郵便にて、○○銀行へ債権譲渡する旨の債権譲渡通知書が届いております。従いまして、B社の当社(A社)に対する債権は存在しておりませんので、お申し出には応じられません。
3 対策
 元請A社は、建設業法41条3項に基づく立替払いを2次下請C社にする必要があります。「二重払いであることを、立替払をしない理由にすることはできない」と国土交通省関東地方整備局が明言しているとおりです。
 B社について言えば、銀行に債権譲渡したのは、簡単に言えば銀行から借金しているためでしょう。タダで債権を譲渡するわけがありません。返済の代わりとして債権譲渡をした、ということでしょう。
 2次下請C社に支払うべき工事代金債権を、自分の債務の返済のために銀行に譲渡してしまうなど、許されることではありません。この辺の徹底追及が必要です。
 あとは、「建設業法41条3項に基づく立替払と債権譲渡との関係 どちらが優先?(1)」で述べたとおりです。
 
 
◎ 2007/7/13「建設業法に基づく元請責任での下請保護」国土交通省回答
 2007/7/13国土交通省関東地方整備局への建設首都圏共闘の申し入れ行動、交渉が行われました。その際、「建設業法に基づく元請責任での下請保護、立替払い」の関係で以下のような質問、回答が行われました。今後の企業交渉のとき参考になると思いますので、紹介しておきます。
(質問)
@ 国土交通省関東地方整備局の該当部門による指導のなかみについてですが、建設業法に基づく指導、建設業法の範囲内での指導というのはもちろんあるわけですが、同時に国土交通省関東地方整備局の該当部門の役割、仕事の中には下請保護が入っているのだと思います。下請保護を貫徹するためには、建設業法に基づく指導があるわけですが、建設業法の範囲内での指導だけでなく、その他の法律、法令も使う、存在している諸事情、諸条件も使う、このことも必要だと思うのですが、どうでしょうか?
A 建設業法に基づく元請責任での立替払いについてですが、元請が立替払いなどしない、不払いを受けて下請が窮状に陥っていてもそんなことは知らない、と元請が開き直った場合、それですんでしまうのでしょうか? それではすまないということであれば、それですませないために、具体的にどのような指導を行うのでしょうか?
B 建設業法には、「元請に対する立替払いを勧告することができる」と規定されていますが、その勧告の基準は、勧告を発動する際の基準ですね、どのような諸事情、諸条件が存在すれば勧告は発動されるのか、教えて下さい。
C 元請によっては、いまだに「立替払いは賃金だけで、工事代金は立替払いの対象ではない」と言っているところが存在しますが、建設業法が定める元請責任での立替払いというとき、工事代金は立替払いの対象だと、再度明言して下さい。
(国土交通省関東地方整備局の回答)
@ 下請の保護はもちろんのことである。特定建設業者の許可だが、下請保護ということで特定建設業者の許可を与えている。そのように特定建設業者の元請を指導していきたい。
A (元請責任での立替払いについて)解決に当たらない特定建設業者の元請に対しては強く指導していく。
B (立替払いの勧告発動の基準)勧告となると、事実認定が許可行政庁としてむずかしいし、民事不介入ということもあるし、むずかしいので、あくまでも指導で下請業者を救済する。
C 工事代金は、建設業法41条3項に基づく立替払いの対象に入っている。付言すると、建設資材納入代金も立替払いの対象に入っている。
 
更新日時:
2008/01/24
―――――――――  政治問題等での発言など  ―――――――――
―――――――――  政治問題等での発言など  ―――――――――
海野和夫
◎ 憲法9条を守り続け守り抜くために改憲勢力による悪法の濁流を知っておこう
(1977年〜2007年  9条を守るために改憲勢力の動きを知ろう)
● 改憲へ向けての悪法成立等の流れ
1977年 横浜市緑区に米ファントム墜落(住民2人死亡、7人重軽傷)
1978年 靖国神社が東条英機らA級戦犯14人を合祀、(福田首相)防衛庁に有事立法の研究を指示、(米軍への)「思いやり予算」始まる
1979年 (元号についての法的根拠を明示する)元号法が成立
1980年 社会・公明両党が政権構想で合意(社公合意)、(米日両軍の)リムパック80(環太平洋合同演習)開始、鈴木首相ら18閣僚大挙して靖国神社参拝、(政府)行政改革大綱決定
1981年 (行政改革推進のための)第2次臨時行政調査会会長に土光前経団連会長
1982年 老人保健法公布(70歳以上の医療費無料化廃止)
1983年 中曽根首相訪米「(米国のための)日本列島不沈空母」発言
1984年 中曽根首相が現職首相として戦後初の靖国神社に年頭参拝、健康保険法改悪成立(本人1割負担等)、電電公社民営化法成立
1985年 労働者派遣法の成立、年金改悪法成立(年金の給付水準の3割以上切り下げ、保険料を2倍に引き上げ)、中曽根首相靖国神社戦後初公式参拝、1986年 軍事費が「GNP1%枠」を突破、東京高裁「教科書検定は合憲」と判決、国鉄分割・民営化法成立、老人保健法改悪成立
1987年 朝日新聞社阪神支局を赤報隊が銃撃し記者が死亡、国鉄分割・民営化法に基づきJR発足
1988年 消費税導入法が成立
1989年 消費税が実施に(税率3%)
1990年 「天皇に戦争責任」と発言した本島長崎市長が右翼に短銃で撃たれ重態に
1991年 湾岸戦争始まる、(政府)避難民輸送のためとして自衛隊機派遣を決定、(政府)海上自衛隊掃海部隊のペルシャ湾派遣を決定
1992年 (自衛隊海外派遣の根拠となる)PKO法成立、PKO参加の自衛隊施設大隊がカンボジア入り
1993年 (政府)モザンビークPKOへの参加を決定
1994年 (革新野党の排除を狙う)衆議院選挙での小選挙区比例代表並立制(小選挙区300、比例代表200)の導入、(村山富市首相)衆院本会議で「自衛隊は合憲」と答弁。
1995年 沖縄米兵少女暴行事件発生(抗議の県民集会に8万5千人)
1996年 住宅金融専門会社(住専)に6850億円の公的資金投入
1997年 消費税率3%から5%に引き上げ、(本人2割負担等)健康保険法改悪成立、介護保険法成立
1998年 大手銀行に公的資金投入(17行に1兆4200億円)、米英軍イラク空爆 
1999年 新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法成立、日の丸・君が代法成立、盗聴法成立、改定住民基本台帳法成立 
2000年 森首相「日本は神の国」発言
2001年 (米国のアフガン攻撃に追随する自衛隊参戦法である)テロ対策特別措置法成立、小泉首相「聖域なき構造改革」断行を表明
2002年 (本人3割負担等)健康保険法改悪成立
2003年 日本経団連「奥田ビジョン」公表(消費税を2004年から1%ずつ上げ16%に)、米英軍イラク侵攻、武力攻撃事態対処関連3法成立
2004年 有事関連7法成立、陸上自衛隊のイラク派遣
2005年 (障害者に過酷な負担を強いる)障害者自立支援法成立、郵政民営化法成立
2006年 教育基本法改悪成立、(海外派遣を自衛隊の本来任務に位置付ける)防衛省昇格法成立、(後期高齢者医療制度の導入等)医療改悪法成立、行政改革推進法成立
2007年 (改憲手続法である)国民投票法成立
(改憲へ向けての悪法の濁流を見ると気分が悪くなりますが、しかし同時に、このような執拗な改憲勢力の策動にもかかわらず、憲法を擁護し、9条を守り続けている日本国民の力に、大きく確信を持つ必要がありますし、油断なく今後も9条を守り抜いていくことに、お互い力を尽くしましょう)
 
 
◎ そう簡単ではないDNA鑑定  北朝鮮問題の理性的、平和的解決のために
 テレビなどマスメディアも報じるようになっていますが、拉致被害者の横田めぐみさんのDNA鑑定が、問題化しています。
 当初、日本のマスメディアはいっせいに、DNA鑑定の結果、北朝鮮から提供された横田めぐみさんの遺骨は、実は横田めぐみさんの遺骨ではないことが判明した、と報じました。これを受け、北朝鮮への偏見、敵意を煽る報道が繰り広げられ、繰り返されました。
 ところが、「横田めぐみさんの遺骨ではないことが判明した」というのが、どうも相当疑わしく、事実ではないらしい、という可能性が急速に浮上してきました。「世界で最も権威のある総合学術雑誌の一つ」と言われている『ネイチャー』(イギリス発行)に、横田めぐみさんの遺骨のDNA鑑定を行なった吉井富夫氏自身が「自分が出したDNA鑑定結果が汚染によるものである可能性を否定できないということを認めた」という記事が掲載されたからです。
 くわしいなかみは省略しますが、私も分子生物学には相当興味を持っていて、そんな好奇心から数冊専門書的なものを読みましたが、DNA鑑定というのは、世間で思われているほど簡単なものでも、また絶対的なものでもないことを読んだ記憶があります。純粋な状態にする必要があるし、もちろん汚染されてはいけないということです。
 田原総一朗氏が先日、テレビで言っていましたが、横田めぐみさんの遺骨は他人の汗等によって汚染されていた可能性があるということです。汗にはDNAが含まれています。また横田めぐみさんの遺骨のように、火葬された遺骨のDNA鑑定は相当難しいとのことです。
 ヒトラーは『わが闘争』の中で、「戦争をやる場合、宣伝で、相手を悪魔として描く必要がある。なぜなら、相手が『人間』だと殺すことがなかなかできないが、相手が『悪魔』であれば平気で殺すことができるようになるからだ」という趣旨のことを述べています。
 かつて、北朝鮮を「悪魔」のように描いていた日本のテレビ等マスメディアも、最近は、米朝関係の「緊張緩和」の反映という側面が相当強いのでしょうが、前述のテレビでの田原総一朗氏の発言のように、北朝鮮に対する理性的、平和的対応が目立ちます。
 アジア外交重視、北朝鮮問題での「圧力より対話」重視と言われる福田首相にも、期待するものです。
 戦争をやる場合の宣伝(戦争宣伝、戦時宣伝)のようなことはやめ、北朝鮮問題の理性的、平和的解決のためにたたかうことを呼びかけるものです。
 
 
◎ 「国連軍」への日本軍の参加と武力行使を当然視する小沢氏の憲法観への疑問
 『世界』2007年11月号に民主党代表の小沢一郎氏が「今こそ国際安全保障の原則確立を」というタイトルの論文を載せています。
 なかみは、一言で言うと、「国連軍」への日本軍(自衛隊)の参加とそこでの武力行使を当然視するもので、憲法9条と完全に矛盾していると、感じました。
 以下に、小沢氏の主張を抜粋しておきます。
 「私は、日本国憲法の考え方からいって、米国であれどの国であれ、その国の自衛権の行使に日本が軍を派遣して協力することは許されないと解釈しています。同時に、国連の活動に積極的に参加することは、たとえそれが結果的に武力の行使を含むものであっても、何ら憲法に抵触しない、むしろ憲法の理念に合致するという考え方に立っています」(アンダーラインは海野。自民党の町村氏の表現を借りればまさに「驚天動地」の考え方です――海野)
 「国連の平和活動は、たとえそれが武力の行使を含むものであっても、日本国憲法に抵触しない、というのが私の憲法解釈です」
 「今日のアフガンについては、私が政権を取って外交・安保政策を決定する立場になれば、ISAFへの参加を実現したいと思っています」
 「PKOは完全な形での国連活動ですから、当然、それにも参加すべきだと考えています」
 これにはさすがに、タカ派と言われている前原氏も反発し、「それは違う。民主党内には異なる意見が存在している」と小沢氏の考え方に異論を述べています。
 ところが小沢氏は、これに対して、「党の決定したことに従わないというのであれば、出ていけばいいんです」と言っています。
「黄門様」と言われている渡部恒三氏が、この小沢発言に怒り、「決定に従わない人は出ていけばいいというのは、民主主義じゃない、民主党は民主主義の党ですから」と某テレビ番組で反論しています。
共産党の志位委員長は次のように述べています。
「一つは、国連決議があれば、(自衛隊が)どんな活動をおこなおうと、日本が国家として武力行使をおこなったことにならないから、憲法違反にならないという議論は、およそ通用しない議論です。たとえ(正規の)国連軍が作られたとしても、そこへの兵力の提供がされるなら、それは日本の国家意思としておこなわれることになるわけですから、憲法違反であることは明らかです。ましてやアフガンに展開している国際治安支援部隊(ISAF)は、もとより国連軍ではなく、(国連の指揮でなく)派兵した国々の指揮で活動し、その活動は戦争行為そのものですから、(小沢氏が主張するように)これに参加するなら憲法違反となることは、あまりにも明瞭です。もう一つは、国連決議にもとづく活動ならば、すべてが正しいか。そこは自主的な吟味が必要です。ISAFといわれる部隊が、いまどんな活動をおこなっているのか。この部隊は、アフガンにカルザイ政権ができたときに、暫定政権と国連要員の安全確保を目的としてつくられた部隊でした。しかし最近の実態をみますと、一方で、米軍による報復戦争が継続し、それに並行してISAFがNATO軍中心におこなわれ、この両者の活動の区別がつかなくなっているといわれています。たとえばISAFの部隊も、空爆や武力掃討作戦などをおこなっています。本来の「治安支援」「安定化」から離れた活動(戦争活動)になっている。その活動が、軍事力行使とテロ拡大の悪循環に加担することになっている。ドイツなどのISAFに参加している国でも、撤兵が世論となっています。そこに日本が参加することは、憲法違反という大問題にくわえて、アフガン問題の解決のうえでも有害ということになります」
 
 
◎ 経済同友会終身幹事 品川正治さんが語る これからの日本の座標軸
 先日、経済同友会終身幹事の品川正治さんの講演を聞く機会を得ることができました。
 財界の良心、保守の理性派、日本軍の理性派を結集する綱領的発言ともなり得るものと感じましたので、以下に同氏の講演の要旨を紹介しておきます。
(同氏のプロフィール)
 1924年生まれ。83歳。現在、経済同友会終身幹事。
 日本興亜損保(旧日本火災)の社長・会長を経て、93年〜97年 経済同友会副代表幹事・専務理事。
(講演の要旨)
 中国での戦争体験、戦闘体験を持っています。
 戦争体験は同じだと思っているかたが多いと思いますが、これは全く違います。
 南方での戦争体験、これは一番悲惨な戦争体験だと思います。戦闘で死ぬのではなく、大半は飢えて死んだのです。
 参謀本部にいたとか軍司令部にいたという人と、兵隊という立場の人、これもまた全然戦争体験は違います。北京の日本の支那派遣軍総司令部にいた人などは空襲さえ知りません。食の不足なんていうこともまったく知りません。
 私の場合は兵隊として戦闘に参加したわけなのですけれども、そのかわり逆に、野間宏の「真空地帯」だとか五味川純平の「人間の条件」に書かれているような軍隊の中のイジメを私はまったく受けていません、経験していません。
 本当に戦闘する部隊は兵隊が完全武装しているからです。
 戦争が終わると、武装解除され、俘虜収容所に入れられました。そこで激しい論争がおこりました。敗戦と呼ぶのか、終戦と呼ぶのかという問題です。
 主に将校を中心として、敗戦とはっきり呼んで、国力を回復して日本はもう一度たたかうのだ、という声がおこりました。
 私たち兵隊のほうは、二度と戦争はしないという意味で終戦と呼ぶのは正しいと論陣をはりました。俘虜収容所の中では、終戦派が大部分でした。
 内地に復員し、二度と戦争をしないということを明白に書いている日本国憲法を見て、感激しました。
 いま、憲法9条の旗はズタズタに破れています。しかし国民はまだこの旗を放さないのです。放せ、放さない、のせめぎあいになっています。
 今回の参院選の結果は、改憲を、戦後レジームからの脱却を、国民が主権を発動して止めたものです。
 日本の憲法9条2項は、近い将来には、必ず普遍性を持つものに発展すると思います。
 憲法9条があるために、先進国のなかでは非常に珍しいのですが、日本は軍産複合体が経済の中心になっていないのです。
 戦争は三点であらわすことができます。
 一つは、勝つためにという価値観が一番になるのです。
 二つは、すべてを動員します。学問を動員します。
 三つは、戦争を指導する部門が権力の中心に座ります。
 その戦争を、いま、アメリカがしているのです。
 日本の支配階級は、アメリカと価値観を共有しているのです。戦争の価値観まで共有しようとしています。平和憲法を持っている国と、戦争をしている国の価値観が一緒だというのです。
 原爆を日本に落とした国と原爆を落とされた日本が、価値観を共有できるでしょうか。
 市場原理主義には反対です。教育、福祉、環境問題は、市場に委ねるべきではなく、人間の努力が基本です。
 「規制緩和」といっていますが、結局、資本家のための規制緩和、改革をやろうということなのです。
 憲法の国民投票で国民がノーと答えたらどうなるのか。日本の政治の文脈は大きく変わります。アメリカに、価値観が違いますよと、はっきり言うことができるようになります。
 戦争を起こすのも人間なら、それを止めるのも人間なのです。
(講演のなかでの、福田氏、小沢氏への評価の部分)
 ○ (小沢氏の軍をつくって国連軍に参加する構想について)国連軍も爆撃をするし、殺傷する。憲法9条との関係で問題だ。  
 ○ 福田氏、小沢氏について、国民は様子を見ている。価値観が違うとアメリカに言えるかどうかだ。
(福田氏を「靖国派」と断定する人、「羊の皮を被った狼」と酷評する人、また早々と「福田内閣を退陣、解散・総選挙に追い込んでいく」と意気込む政党が存在する中で、品川正治さんは慎重な姿勢を示しました。財界のトップとして歩んできた人は、将来を慎重に冷徹に見通す目を持っている、と感じました――海野)
 
 
◎ 夏休み雑感 「核兵器と人類」理論上整理整頓しておきたいこと等々
1 核兵器と人類
 ソ連が崩壊してから、だいぶ経ちました。ソ連の崩壊を「歓迎」するのではなく、ソ連について全面にわたって捉え直し、スターリン型の最悪の部分を反省すると同時に、ソ連の最良の部分は継承する必要があると感じています。
 「核兵器と人類の問題」に絞って言うと、ソ連から継承すべき最良の部分は、思想は、以下のように整理整頓できると思います。
 @ 異なる社会体制間の平和共存の思想
 A 「核戦争か平和共存か」 平和共存しか選択肢はないという思想
 B 核兵器拡散防止条約(核兵器不拡散条約)への肯定的評価
 C 「核兵器の出現によって国際舞台での階級闘争には客観的限界が生じた」という考え方
 D 「核兵器と人類は共存できない」として核兵器の廃絶をめざす思想
 E 核兵器の先制使用の放棄
 F 「アメリカ帝国主義がソ連を核兵器で攻撃してくるなら、ソ連の強大な核戦力によって反撃し、アメリカ帝国主義に壊滅的打撃を与える」との核戦略の放棄  (憲法9条を守る思想と同一の考え方だと思います)
 G アメリカを一面的に見るのではなく、アメリカ支配層の中に「好戦派」と「理性派」が存在することを、冷徹に見ること
 H 1963年8月 部分的核実験禁止条約(地下を除く大気圏内、宇宙空間及び水中での核実験の禁止を内容とする)
 部分的核実験禁止条約については、否定的見方が強力に存在するが、しかし、この条約が成立していなければ、大気圏内、宇宙空間及び水中での核実験が継続され、人類は放射能汚染の全人類的脅威に直面することとなり、それを阻止したのがこの条約の成立だったわけです。
(日本の原水爆禁止運動は、上記思想を「核兵器の緊急廃絶」へと純化しています。まさにそのとおりです。政党で言うと日本共産党が「全人類的課題としての核兵器の緊急廃絶」を掲げています)
2 レーニンとプレハーノフ
 レーニンはボリシェヴィキの指導者。
 プレハーノフはメンシェヴィキの指導者。
 ソ連崩壊後、レーニンについて、その「暴力革命路線」を含めていろいろ言われているし、党の組織原則の厳格さ(民主主義的中央集権制)についても各種言われている中で、メンシェヴィキのより「民主主義的路線」、「議会主義的路線」、「緩やかな組織形態、組織原則」のほうがもしかしたら正しかったのではないかと思ったりするのですが、しかし、第一次世界大戦の際、プレハーノフを含めてメンシェヴィキは「祖国防衛」を唱えて帝国主義戦争に自国の労働者階級を動員するというまさに致命的な誤りを犯しているのです。誤りというより反階級的、反革命的犯罪と言ったほうがいいでしょう。
 一方、レーニンは「帝国主義戦争の内乱への転化」、「自国の敗北」を主張しました。
 日露戦争の際には、「祖国防衛」ではなく正しく「自国敗北」の立場に立っていたプレハーノフがなぜ、第一次大戦の際「祖国防衛」に転落したのか、理解できません。
 『史的一元論』等プレハーノフの著作は、日本語訳されているものは全て読みましたが、素晴らしいなかみです。これらの著作からは、「祖国防衛」を唱えて帝国主義戦争に自国の労働者階級を動員するというような裏切りは、絶対に導き出すことはできません。謎です。
 
 
◎ 夏休み雑感 「核兵器と人類」理論上整理整頓しておきたいこと等々(2)
 「核兵器と人類の問題」に絞って言うと、旧ソ連から継承すべき肯定し得るテーゼは、以下のように整理整頓できると思います。
 @ 異なる社会体制間の平和共存の思想
 A 「核戦争か平和共存か」 平和共存しか選択肢はないという思想
 これを言うと必ず、「平和共存万能論」だという批判がアタックしてきます。
 そうではないのです。異なる社会体制間の平和共存の中で、そういう条件の下で、国際労働者階級の、民主主義、社会主義のための闘争、そして核兵器廃絶のための闘争は当然続くし、続けるのです。核戦争による人類の滅亡ではなく平和共存こそが、国際労働者階級の、民主主義、社会主義のための闘争、そして核兵器廃絶のための闘争の継続を可能にするのです。
 B 核兵器拡散防止条約(核兵器不拡散条約)への肯定的評価
 この条約が、条約に基づく核不拡散体制が、成立し、存在していなかったとすれば、核兵器の拡散はより急速に進み、人類はより急速に核破局に直面したでしょう。当然、この条約、不拡散体制だけでいいわけはありません。それに核兵器緊急廃絶のたたかいを結び付けることがどうしても必要です。核兵器廃絶のたたかいを結び付けることではじめて真に、核不拡散条約は生きてきます。
 C 「核兵器の出現によって国際舞台での階級闘争には客観的限界が生じた」というテーゼ
 核戦争を起こしてはいけない、してはいけない、核兵器を使用してはならない、核戦争は人類を滅ぼすという意味で、「核兵器の出現によって国際舞台での階級闘争には客観的限界が生じた」のです。当然のテーゼというより当然過ぎるテーゼだと思います。「国際舞台での階級闘争には客観的限界が生じた」ということであり、国内での階級闘争に客観的限界が生じたわけではありません。
 D 「核兵器と人類は共存できない」として核兵器の廃絶をめざす思想
 E 核兵器の先制使用の放棄
 F 「アメリカ帝国主義がソ連を核兵器で攻撃してくるなら、ソ連の強大な核戦力によって反撃し、アメリカ帝国主義に壊滅的打撃を与える」との核戦略の放棄  (憲法9条を守る思想と同一の考え方だと思います)
 G アメリカを一面的に見るのではなく、アメリカ支配層の中に「好戦派」と「理性派」が存在することを、冷徹に見ること
 H 1963年8月 部分的核実験禁止条約(地下を除く大気圏内、宇宙空間及び水中での核実験の禁止を内容とする)
 部分的核実験禁止条約については、否定的見方が強力に存在するが、しかし、この条約が成立していなければ、大気圏内、宇宙空間及び水中での核実験が継続され、人類は放射能汚染の全人類的脅威に直面することとなり、それを阻止したのがこの条約の成立だったわけです。
 部分措置で人類への放射能汚染の惨害の波及を弱めながら、このような部分措置にとどまることなく、核実験の地下を含む全面禁止、さらに核兵器の完全廃絶のためにたたかうのは、当然のことです。
(日本の原水爆禁止運動は、上記思想を「核兵器の緊急廃絶」へと純化しています。まさにそのとおりです。政党で言うと日本共産党が「全人類的課題、人類の根本課題としての核兵器の緊急廃絶」を掲げています)
 I 平和革命の可能性の肯定
 このテーゼを純化して、日本共産党は、「人民的議会主義」、言い換えると議会を通じての平和革命を綱領化しました。暴力革命路線を完全に否定した「議会を通じての革命」を人類史的到達、憲法遵守として歓迎し、支持するものです。
 
 
◎ 選挙政策(公約、マニフェスト)への建設労働者、中小、下請業者の要求反映へ
1 はじめに
 選挙政策、公約、マニフェストなど言い方、呼び方は何でもいいのですが、選挙政策、特に間近に迫る参院選挙政策に建設労働者、建設中小業者、下請業者の諸要求、切実な要求を反映させたいと思い、以下に試論的に書かせていただきました。
 建設労働者、建設中小業者、下請業者の諸要求を考えるとき、最近(2007年4月17日、18日、19日、26日に)行われた全建総連関東地協の第46回大手企業交渉が掲げた諸要求とそれへの大手住宅企業11社、大手ゼネコン28社、大手サブコン5社の、合わせて44社の回答が、大きく参考になると思います。
2 要求、回答、選挙政策
 全建総連関東地協の要求@ 「低入札による下請へのしわ寄せをやめること等最近の現場事態への見解」
要求@に対する大手企業の回答の特徴
 回答の特徴は、各社とも「低入札による下請へのしわ寄せはしていない」としていることです。
 「低入札は沈静化、収束」(大成建設、清水建設、西松建設)との回答もあります。
 大林組、積水ハウス、大和ハウス工業、大東建託等から「現場の下請業者、労働者はステークホルダーに入っている」との回答を引き出しました。
 駐車場代については、ゼネコンが「下請に負担させている」傾向であるのに対して、住宅企業は「下請に負担させていない」との回答が主流です。
 産廃処理については、ゼネコンの場合、「処理は元請が行うが、処理費の一部は下請に負担してもらう」という傾向の回答でした。
 「エレベータ使用料は取らない」(フジタ)との回答の一方、「取らないという約束はできない。話はしてみるが、社内全体のコンセンサスを得にくい」(大林組)との回答が存在します。
 要求@に関連しての選挙政策(参院選挙政策)
 大手企業に建設業法を遵守させ、中小業者、下請業者への低単価の押し付けを許さない。
 産廃処理費、駐車場代、エレベータ使用料等の中小業者、下請業者への負担押し付けを許さない。
 
全建総連関東地協の要求A 「『生活に必要な賃金』として月額50万円以上の確保。現場労働者の賃金を1日2,000円以上引き上げること」(1日8時間で25,000円以上、月額50万円以上の賃金を確保してください。また、8時間を超える作業には残業代(法で定められた割増し賃金)を支払ってください。いま、技能工不足が深刻となっています。根底には低賃金による入職者不足と技能後継者の離職があります。このままでは一人前の技術をもった職人がいなくなり、建設業界の発展が損なわれます。現場労働者の賃金を2,000円以上引き上げてください)
 要求Aに対する大手企業の回答の特徴
 1次への発注単価(契約単価)を「上げた、上がった、上げざるを得なかった」との回答が目立ちました。
 同時に、「1次への発注単価を上げたのだが、それが必ずしも下請の労働者の賃金に反映されているわけではない」(大林組)という趣旨の発言、そしてそういう実態であることも、特徴です。
 大東建託は「1次への発注単価を上げた」とは回答しませんでしたが、「この1年間で(現場労働者の)賃金が日額1,000円上がった」と答えました。
 「現場従事者から搾取して大きな利益を上げているのだから、利益の一部(ほんの一部)を現場に還元して、現場労働者の賃金を少なくとも1日2,000円引き上げてほしい」との本格的追及に対して、「上げる」との回答には至りませんでしたが、「社内の会合で検討する」(大林組)、「真摯に受け止めて検討する」(大和ハウス工業)、「(この場では決められないので)持ち帰って検討する」(積水ハウス)、「検討するのは、やぶさかではない」(大東建託)など多くの企業から「検討」との回答までは引き出しました。
 要求Aに関連しての選挙政策(参院選挙政策)
 建設労働者の賃金を、1日2,000円以上引き上げ、月額50万円以上にするとの建設労組の要求を支持し、その実現に努める。(建設労働者の賃金・単価引き上げ要求を支持し、その実現に努める)
 全建総連関東地協の要求B 「労働安全衛生法の遵守。労災隠しの根絶。現場従事者への元請労災適用の徹底」(安全経費の確保と適正な工期設定をおこない、労災事故を減らしてください。下請が元請に労災事故を申告しやすい環境を作り、あらゆる「労災隠し」の根絶をはかってください。現場には安全衛生法で定められたトイレ(大・小)や手洗い場などを適切に確保し、下請業者・職人のための衛生設備を元請の負担で完備してください。元請として、責任ある安全衛生管理業務を行うために、予算と人員を十分に確保してください。手間請労働者ならびに一人親方は、新規入場時に確認し、労働者として元請労災を適用してください。元請の責任で、暖房、ロッカー、分煙(喫煙スペースと禁煙スペースを分けること)などの設備をはじめ、労働安全衛生法に定められたトイレ・手洗い場や給水機・休憩所を適切に確保し、適切に配置してください)
 要求Bに対する大手企業の回答の特徴
 鹿島建設が「田町キャピタルマンタワーの現場は、5階ごとに水洗の(大)トイレがある。これが理想」と回答しました。
 元請労災適用の際の「労働者性」のところでは、建設労組側の説明不足の反映と思われるのですが、「(労働者性は)行政、監督署が判断することである」との回答がほとんどでした。
 「『労基研報告』には、『グループ手間請について、グループ内が平等であれば労働者として認めることはあり得る』という趣旨の記述があります。衆参法務委員会での政府答弁が『法人といえども、実態によっては労働者として認められることは、十分にあり得る』としています。新興産業(パットさいでりあ)倒産事件では、東京労働局の裁決が、材料持ちの一人親方を労働者として認めています。朝日ハウス産業破産事件(本社 大阪)では、破産管財人が『従業員』2人までの『事業主』を、実態は労働者と同視できるとして、労働者として認めています」ときちっと説明したところでは、「労働者として認めさせるために労基署に働きかけている」(積水ハウス)、「全建総連が『労働者性』の問題で運動していることは、いいことだ。本当は、現場での災害の場合、全て労働者として認められるのが一番いいのだが、そうなっていない」(大和ハウス工業)との回答を得ることができました。
 要求Bに関連しての選挙政策(参院選挙政策)
 労働安全衛生法等の遵守。建設現場での労働安全衛生の徹底。
 建設現場での災害発生の場合、従事者の全てを労働者として認め、元請労災を適用できるよう法整備する。また、倒産・不払い発生の場合、従事者の全てを労働者として認め、「工事代金」の中の労務費部分を労働債権として認めることができるよう法整備する。
 
 全建総連関東地協の要求C 「技能労働者不足の解消。後継者の育成」(技能者の後継者育成をどのように考えていますか。全建総連が国に要求する「後継者養成のための基金制度の創設」に対する賛同をお願いします。全国の認定職業訓練校への助成をはじめ、後継者育成事業への助成をお願いします。外国人研修生の受け入れをどの程度実施していますか、お聞かせください)
 要求Cに対する大手企業の回答の特徴
 「業界全体で取り組むべき課題」という趣旨の回答が、ほとんどでした。
 「外国人研修生の受け入れ状況」については、「把握していない」、「協力会社の一部が少し受け入れている」という趣旨の回答が大半です。
 要求Cに関連しての選挙政策(参院選挙政策)
 全建総連が国に要求する「後継者養成のための基金制度の創設」を支持し、その実現に努めます。
 全建総連関東地協の要求D 「不払い発生の場合の元請責任での解決」(不払い問題が発生した場合は、下請業者、現場労働者、建設資材納入業者を救済すべく建設業法第41条第2項および第3項にもとづき、「賃金」、「工事代金」、「建設資材納入代金」の『立替払い』を厳正にかつ速やかにおこなってください。2006年12月の私たちと国土交通省関東地方整備局との話し合いの中でも、「二重払い(既に支払い済み)を立替払い拒否の理由にすることはできない」との国土交通省関東地方整備局の見解に変わりはないと回答していますので、この点も踏まえてご回答ください)
 要求Dに対する大手企業の回答の特徴
 回答もそうですが、現実の事例、案件で、各社とも、23年46回に及ぶ全建総連関東地協との信頼関係を土台として元請責任での解決を一定はかっていますので、それを徹底していくことだと思います。
 要求Dに関連しての選挙政策(参院選挙政策)
 元請に建設業法41条2項、3項を遵守させ、賃金、工事代金、建設資材納入代金について立替払いを行わせ、元請責任で不払いを解決させます。また、その徹底をはかるための法整備を行う。
 全建総連関東地協の要求E 「アスベスト対策の徹底」(アスベスト対策の完全な徹底をお願いします。アスベスト含有製品を一切使用しないこと。今後の解体・改修工事では、元請として石綿障害予防規則に定められた対策を完全に実施してください。特に、アスベストを吸うことが生命に関わるわけですから、貴社の現場労働者が、現場で出たアスベスト廃材をどのように処理するのか、書面でご回答いただくとともに、お手数ですが当日の(企業交渉の)参加者にご説明をお願いします。悪性中皮腫や石綿肺などにり患した場合、アスベスト関連の労災認定に使用するため、過去の工事について、現場施工証明書を元請から直接交付してください。貴社のアスベスト関連での労災認定件数は何件ありましたか。また、申請中のものは何件ありますか、教えてください)
 要求Eに対する大手企業の回答の特徴
 全社が「法令、規則を遵守」、「アスベスト含有製品の使用禁止」という趣旨の回答。
 一方、「アスベスト労災認定のための現場施工証明書の元請からの直接交付」に対しては、引き続き大半の企業が「交付する」、「協力する」と答えていますが、「直接、証明書は出さない」(鹿島建設)など「出さない」との回答が前々回→前回→今回と少しずつ増加傾向にあります。
 説明不足、誤解、またはアスベストの元請責任への恐怖(元請への損害賠償の要求、責任追及への恐怖)などが原因なのでしょうか?
 要求Eに関連しての選挙政策(参院選挙政策)
 石綿障害予防規則の遵守など元請責任でのアスベスト対策の徹底。
 「アスベスト労災認定のための現場施工証明書の元請からの直接交付」の義務化へ向け法整備する。 
 
 
◎ ――― ヒトラー『わが闘争』を読む  政治のマジック ―――
 人間は割合簡単にマジックに騙されます。騙されるのを楽しんでいるのかもしれません。私もカードマジックをやりますが、見た人は本当に不思議がります。人間は本当に簡単に騙されるなと実感します。
 小泉マジックにも、石原マジックにも、多くの人たちがだまされたし、だまされています。政治のマジックを見抜く目を養う上では、冷徹に政治のマジックを見抜く上では、政治上の最高のマジシャンの一人であるヒトラーの『わが闘争』を読むのもいいかもしれません。
 そのつもりで読んでいたら、逆にすっかりヒトラー・マジックに洗脳されてしまったということになりかねませんので、この本は本当に冷徹な心で読む必要があります。
 この本には、以下のようなことが書かれています。
──────────────────────
 ヒトラーはネズミにエサをあげるような優しい心の持ち主である。
 敵は一つである。敵が何種類もたくさん存在すると大衆は恐れるので、敵は一つだけで簡単に粉砕できると大衆に思わせる必要がある。敵は一つである。ユダヤ人=ボルシェビキ=大資本家であり、この一つの敵を、ナチス(国民社会主義ドイツ労働者党)は打倒する。
 敵を複雑なものとして描いてはならない。複雑なものを大衆は理解できないし、複雑なものには敵対心が湧きにくいからだ。敵を黒一色に描くことだ。敵が100%悪く、ナチスは100%正しいのだ。
 戦争をするときは、相手を悪魔として描き、宣伝する必要がある。相手が人間ではなく悪魔であれば、平気で殺すことができるからだ。
(日本のマスメディアは、かつて旧ソ連を悪魔のように描き、宣伝し、今は、北朝鮮を悪魔のように描き、宣伝しています。マジックかもしれません。冷徹に見ることです―――海野)
 共闘を求めるのは、弱者である。強者は、自分だけで闘う。
 大衆は女性のようなものであり、理論、理性ではなく、感情で動くものである。
 大衆は、文字によって、文字の集積である論文によって動くのではなく、人間の口から発せられる生きた言葉によって、言い換えると演説によって動かされるのだ。
 ボルシェビキの扇動者、その指導者レーニン、あるいは労働組合の指導者を見ればわかるように、彼らは、集会での、職場での、街頭での、その時々の無数の演説によって大衆を動かしているのだ。その意味で彼らは、天空に輝く無数の星なのだ。
(ここは、敵であるはずのボルシェビキへの一種の畏怖、憧憬をヒトラーが示している箇所だと、私は感じました───海野)
 敵はナチス・ドイツには民主主義がないと言う。そんなことはない。ゲルマン民主主義がある。ゲルマン民主主義とは何か? 命令と服従である。
 民族間の闘争によって、強い民族が勝ち、弱い民族は滅びていく。これが自然の摂理であり、この生存闘争を通じて、より強い、より優れた民族が創造されるのだ。
(ヒトラーはニーチェ哲学から影響を受けたと言われていますが、ニーチェの超人思想は「動物から超人へ至る中間の橋」として人間を捉えています───海野)
(弱肉強食の生存闘争を賛美する点で、ナチズムと新自由主義のイデオロギーは一致しています───海野)
 
 
◎ ―――  ソ連とは何だったのか?  雑考  ―――
 ソ連とは何だったのか? なぜ簡単に敗退し、崩壊したのか? 多少冷静に冷徹に振り返ってみたいと思います。「雑考」ということで、ごく簡単に短い文書にします。
 かつてソ連は「国際労働者階級の祖国」、「国際労働者階級が瞳のように大切にすべき存在」、「国際共産主義運動の一般に認められた前衛」と言われ、「ソ連を先頭とする社会主義陣営」と表現されるような「偉大」な「社会主義国」であり、ヒトラーのナチス・ドイツを粉砕する上で主要な役割を果たした存在でした。
 直接には、ソ連共産党の一部指導者によるクーデタの失敗を転機として、ゴルバチョフ大統領を擁するソ連は、ロシア大統領のエリツィンによって覆されました。
 今は夢と消えましたが、ゴルバチョフの唱えたペレストロイカが本当に正常な軌道に乗り、民主主義に基づく社会主義、核兵器の緊急廃絶を求める社会主義ソ連が実現していたら、一番よかったのではないかと感じています。
 しかし、現実の軌道は、エリツィンによる権力の奪取であり、資本主義化でした。
 アレクサンドル・ソルジェニーツィンは、ソ連を悪魔の国のように描きました。ソ連を「収容所群島」として描き出しました。私も全部読みました。ショックを受けました。直感で言うと、彼は真面目な人間だと感じていますから、ウソを書いたわけではなく、ソ連の現実の一面を、その暗部を体験し、体験に基づいて『収容所群島』を書いたのだと感じています。
 トロツキーはスターリンを、「スターリン・ギャング」と表現しています。いわゆる「血の大粛清」を明らかにしています。直感で言うと、これも事実のような気がしています。
 スターリンの個人独裁を結果したのは、どのような機構を通じてなのか?
 党綱領の組織原則である「民主主義的中央集権制」にその根があると、感じています。「下級は上級に従う」という組織原則に、悪の根源はあったのではないか。これは、本質的には、ヒトラー『わが闘争』が明らかにしているナチスの組織原則「ゲルマン民主主義とは、命令と服従である」と同一だと、私は思います。
 なお、日本共産党は、党綱領の改正で既に「下級は上級に従う」を削除しました。また、『自由と民主主義の宣言』で、近代民主主義の到達である三権分立制の将来にわたる堅持を明らかにしています。
 三つの侵略、即ちハンガリー、チェコスロバキア、アフガニスタンへの侵略。因果応報であり、ソ連の没落を準備するものでした。
 自由と民主主義に基づく社会主義、核兵器の緊急廃絶をめざす社会主義政府、これは、労働者階級と人類の課題の一つです。
 
 
◎ 県議会議員選挙に向けての建設産業関連の政策、要求について
 日本共産党埼玉県委員会が2006年12月、「大増税を許さず、県民の暮らしをまもるために 県議会議員選挙にむけての日本共産党の訴え」を出しました。
 この中から、建設産業に直接関係があると思われる部分を抜粋して、以下に紹介いたします。 
(以下は、「大増税を許さず、県民の暮らしをまもるために 県議会議員選挙にむけての日本共産党の訴え」からの抜粋です)
 「養護学校の過密解消についても、高等部の独立などを求めた日本共産党の提案などを受けて、高等養護学校2校の整備や知的障害高等養護学校の基本構想の策定が始まりました。さらに乳幼児医療費助成の就学前までの拡充(入院分)、特別養護老人ホームの建設にたいする県費助成制度の創設など、県民の世論と運動を力にした日本共産党の奮闘によって貴重な成果をかちとっています」
 「防犯対策の強化」
 「(上田県政は)必要のないダム建設に700億円もつぎ込むことや、さいたま市内に大企業を誘致するために1社に10億円も補助を出すことを約束するなど、逆立ちした政治をすすめています。財政が厳しいときだからこそ、県民が納めた税金は1円もムダにすることなく、県民のために使うべきです。日本共産党は、そのために全力をつくします」
 「少子化の背景には、結婚もできない低賃金や出産後も安心して働き続けられない職場環境、長時間労働、保育所の不足といった様々な社会的要因が横たわっています……保育所の増設をはかり、待機児童の解消に努めます……児童相談所を増設し、児童福祉司や児童心理士などの専門職員を大幅に増やします」
 「特別養護老人ホームを中学校区ごとに整備できるようにします」
 「身体障害者療護施設や重症心身障害者施設、知的障害者入所更生施設などの障害者施設の整備を推進します」
 「公務労働での正規雇用の拡大や公契約時に適正な雇用や労働条件の確保を民間に義務づけるなど、若者をはじめ雇用の確保と正規雇用の拡大に努めます」
 「財界・大企業が3期連続で史上最高の利益をあげるなど、バブル期を上回る空前の富を得ながら、中小の製造業や建設業では生活費も捻出できない水準に単価を抑えられた上、資材高騰による『原料高・製品安』で収益悪化に拍車がかかっています……日本共産党は、豊富な人材と首都圏に位置する地理的条件、多彩な製造業などの集積を生かして、産学官連携のもと中小企業・地場産業の振興と地域商業の活性化をはかり、地元雇用の拡大につながるような地域循環型の社会を実現します……中小企業振興条例に基づく県の中小企業施策に関する施策を立案する官民共同の中小企業振興会議(仮称)を設置します。県の委託業務や工事請負での契約に際して、適正な労働条件や賃金が確保されるよう県独自の基準を定めた『公契約条例』を制定します。総合評価型入札制度の導入を拡充し、談合とダンピング受注の防止をはかります」
 「県内産木材の利用を促進するため、県公共施設などでの利用を義務づけるとともに、(県内産木材の利用との関連で)公共建築物や住宅建設に対する助成制度を設けます」
 「本県でも、八ッ場ダム建設や、圏央道沿線開発など右肩上がりの経済成長を前提にした大型プロジェクトが進行しています。日本共産党は公共事業の重点を、低家賃の公共住宅の供給や公園、生活道路の整備、交通安全施設の整備、特養ホームや学校の増改築・耐震化といった県民の暮らしを支える生活密着型の公共事業に切り替え、あわせて中小業者の仕事確保につなげていきます。八ッ場ダムについては、中止を含めて見直します……高齢者世帯の住宅リフォームに対する助成制度を設けます。県営住宅や高齢者優良賃貸住宅の増設をはかり、住宅難を解消します。住宅の耐震補強を図るため、簡易補強工法による補強工事に対する助成制度を創設します」
 「養護学校の過密を解消するため、高等部の独立と養護学校の増設を進めます……校舎の大規模改修や耐震補強などに対する助成を強化します」
 「学校や保育所、公共施設の耐震補強、個人の住宅の耐震補強工事への助成など災害に強い街づくりをすすめます。信号機の大幅増設と改良、歩道の整備などの予算を大幅に増額し、交通安全対策を推進します。スクランブル交差点など歩車分離式の信号機の増設で交差点事故の防止をはかります」
(なお、県議会議員選挙に向けての政策は、より正確にあるいは追加、補強、補正される可能性があります。そのときは、ここに掲載した文書もそのようにします)
 
 
◎ 憲法9条を守る意義 「防衛省」昇格法案と憲法9条との関係
1 憲法9条の意義は衰えない
 防衛庁自身が、防衛庁のサイトで、「防衛省」昇格法案が単に庁から省への移行を意味するだけでなく、海外派兵を自衛隊の本来任務化するものであることを事実上認めています。
 しかし同時に、防衛庁のサイトは、「防衛省」昇格法案が成立したとしても、(憲法9条が存在しているために)「海外派兵」と言っても、武力行使の目的をもって「海外派兵」することは禁止されているとの説明を行い、憲法9条のもとでは自衛隊が海外での武力行使をおこなうことができないことを認めています。
 また、防衛庁のサイトは、「防衛省」昇格法案が成立したとしても、「専守防衛」、「非核3原則」などが変わらないとの説明をおこなっています。
 平和を守る守護の壁としての憲法9条の大事さが衰えていないことは明らかです。
2 武力行使の目的をもって「海外派兵」することは禁止されている
 防衛庁のホームページには、次のように記載されています。(抜粋)
Q4 (「防衛省」昇格法案は)わが国の軍事大国化につながりませんか?
 省にすることで、シビリアン・コントロール、専守防衛、軍事大国とならないことなど、わが国の防衛政策の基本が変わることはありません。
専守防衛
 相手から武力攻撃を受けてはじめて防衛力を行使する受動的な防衛戦略
海外派兵の禁止
 武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土などに派遣することの禁止
非核3原則
 核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず
軍事大国とならない
 自衛のための必要最小限の防衛力
3 海外派兵の本来任務化を事実上認める防衛庁
 防衛庁のホームページには、次のように記載されています。(抜粋)
Q6 省にする法律案はどのような内容になるのですか?
 自衛隊の任務にPKO(国際連合平和維持活動)や国際緊急援助活動などの国際平和協力活動を加えます。
省移行法案の概要
法案全体について
@庁から省への移行、A国際平和協力活動などの本来任務化。
法案により変わること
@内閣府の長である「内閣総理大臣」の権限は「省の主任の大臣」の権限になります。 
A自衛隊法第8章の「雑則」にある国際平和協力業務などを第6章の「自衛隊の行動」に規定します。
(国際緊急援助活動等、国際平和協力業務等、テロ特措法に基づく活動、イラク人道復興支援特措法に基づく活動、機雷等の除去、在外邦人等の輸送、周辺事態における後方地域支援など)
法案により変わらないこと
 内閣の首長である「内閣総理大臣」の自衛隊の最高指揮官としての権限は全く変わりません。
4 ポイント
 「防衛省」昇格法案が成立し、自衛隊の海外派兵が本来任務化したとしても、「自衛隊の海外派兵」と「海外派兵された自衛隊の海外での武力行使」との間には、大きな距離、大きな違いがあります。
 憲法9条が自衛隊の海外での武力行使を阻む壁になっています。
憲法第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 
 
◎ 「防衛省」昇格法案 自衛隊の「海外派兵」を本来任務に
1 「防衛省」昇格法案の本質
自衛隊の創設以来初めて、自衛隊の本務(本来任務)に海外派兵を位置付ける「防衛省」昇格法案が2006年11月30日の衆院本会議で、自民、公明、民主、国民新の各党の賛成多数で可決されました。日本共産党と社民党は反対しました。
 「防衛省」昇格法案は、防衛庁を省に昇格させるだけでなく、自衛隊の「海外派兵」を本務(本来任務)と位置付けるものです。
 
2 防衛庁は「防衛省」昇格法案をどう捉えているのか
 防衛庁自身は「防衛省」昇格法案をどう捉えているのか、調べるために、防衛庁のホームページを訪問しました。その「率直さ」に正直驚きましたが、防衛庁自身が「防衛省」昇格法案を、単に庁から省への移行とは捉えず、自衛隊の「海外派兵」を本来任務と位置付けるものとして捉え、ホームページでそのように説明していることです。
3 防衛庁のホームページからの抜粋
 防衛庁のホームページには、次のように記載されています。(抜粋)
Q6 省にする法律案はどのような内容になるのですか?
 自衛隊の任務にPKO(国際連合平和維持活動)や国際緊急援助活動などの国際平和協力活動を加えます。
省移行法案の概要
法案全体について
@庁から省への移行、A国際平和協力活動などの本来任務化。
法案により変わること
@内閣府の長である「内閣総理大臣」の権限は「省の主任の大臣」の権限になります。 
A自衛隊法第8章の「雑則」にある国際平和協力業務などを第6章の「自衛隊の行動」に規定します。
(国際緊急援助活動等、国際平和協力業務等、テロ特措法に基づく活動、イラク人道復興支援特措法に基づく活動、機雷等の除去、在外邦人等の輸送、周辺事態における後方地域支援など)
法案により変わらないこと
 内閣の首長である「内閣総理大臣」の自衛隊の最高指揮官としての権限は全く変わりません。
 
 
◎ ───── あらためて核兵器のことを考えてみました ─────
このごろ、人類の未来に不安を感じます。
 日本を見ても、猫や犬の殺処分が1年間で数十万匹。余りにも人間本位過ぎます。
 フランスのサルコジ大統領は、「核兵器による警告」という危険な軍事ドクトリンを打ち出しました。
 フランスのドゴール大統領(当時)の「全方位外交」にもとづく「独自核武装」路線から始まった仏の核兵器戦略が、サルコジ大統領の「核兵器による警告」という軍事ドクトリンへと「進化」したわけです。
 2008年3月22日の朝日新聞夕刊によると、サルコジ大統領は「核兵器による警告」に踏み切る可能性に言及した、とのことです。同記事によると、「核兵器による警告」とは「威嚇のための核兵器使用を意味したとみられる」とのことです。
 警官がピストルを威嚇発砲するのとはわけがちがいます。サルコジ氏を疑いたくなります。 
 アメリカはもともと、核兵器先制使用戦略だと言われています。
 かつてソ連共産党のゴルバチョフ書記長(当時)が言ったように「核兵器で攻撃されたら核兵器で反撃するというテーゼを放棄する」勇気が、必要なのではないでしょうか?
 旧ソ連の核兵器戦略は、「平和共存は階級闘争の一形態である。平和共存をアメリカに押し付ける。もしもアメリカがソ連に核兵器攻撃を仕掛けてきたときは、ソ連の強大な核戦力によって反撃し、アメリカ帝国主義に壊滅的打撃を与える」(フルシチョフ、ブレジネフの時代)→「核兵器の時代にあっては、国際舞台での階級闘争に客観的限界が生じた。核戦争にまで進むことはできない、それが客観的限界である。『もしもアメリカがソ連に核兵器攻撃を仕掛けてきたときは、ソ連の強大な核戦力によって反撃し、アメリカ帝国主義に壊滅的打撃を与える』というテーゼを放棄する。『平和共存は階級闘争の一形態である』というテーゼを放棄する。平和共存は戦術でもないし、選択肢の一つでもないし、絶対的なものである」(ゴルバチョフ氏)へと正しい方向に大きく変化しました。
 しかし、残念ですが、ロシアになってから、「核兵器には核兵器で対抗する」というテーゼが復活し、現在のロシアの軍事ドクトリンになっています。プーチン氏は危険な道を選び、歩いている、といわざるを得ません。
 13億人を擁する「社会主義中国」は、核兵器の先制使用を否定し、あくまでも自衛のための核兵器保持であることを言明しています。期待したいのは、旧ソ連のように、もっと積極的に核兵器ゼロをめざして国際舞台で運動してほしい、ということです。
 人間の都合で核戦争をおこして、他の動物まで死滅させるのは、最悪の人間本位といえるのではないでしょうか?
 
 
◎ 小沢戦略とマスメディアによる国土交通省攻撃の狙い 直感ですが
 かつて、16,7年位前でしょうか、小沢さん(現在、民主党代表)の書いた本(確か)『日本改造論』を読んだことがあります。
 タイトルのとおり、そこには、日本改造への小沢戦略が書かれていました。
 記憶で書くと、保守二大政党制、規制緩和・撤廃、集団的自衛権の確立、(どこかで聞いた言葉ですが)民主主義的中央集権制、などだったと思います。
 保守二大政党制と規制緩和・撤廃は、かなりの程度、既に実現されています。
最近の小沢発言にも、集団的自衛権の確立へ向けての「熱意」は、はっきり見えます。
 残るは、民主主義的中央集権制という名の独裁政治の実現、ということなのでしょうか?
 マスメディアの連日の国土交通省攻撃の狙いは、何か?
 率直に書きますが、国土交通省は、建設業法や建設業法令遵守ガイドラインなどにもとづく元請指導という点で、重要な役割を果たしていますし、国土交通省の労働組合である全建労は、とてもまともな労働組合です。
 かつて、マスメディアによる国鉄攻撃の真の狙いが国労つぶしにあったように、今日のマスメディアによる猛烈な国土交通省攻撃の狙いが全建労つぶしにあるのではないか? あくまでも直感ですが、どうでしょうか?
 
 
◎ ── チベット問題の中の「チベットは中国の一部」問題について ──
1 胡錦濤主席に書簡
 日本共産党が、「志位委員長が胡錦濤主席に書簡を送る」という形で、チベット問題についての見解を表明しました。
 以下は、日本共産党の志位和夫委員長が2008年4月3日、チベット問題について中国の胡錦濤国家主席に送った書簡の全文です。
 中華人民共和国国家主席 胡錦濤 殿
 チベット問題をめぐって、騒乱・暴動の拡大と、それへの制圧行動によって、犠牲者が拡大することを、憂慮しています。
 事態悪化のエスカレーションを防ぐために、わが党は、中国政府と、ダライ・ラマ側の代表との対話による平和的解決を求めるものです。
 そのさい、双方が認めている、チベットは中国の一部であるという立場で対話をはかることが、道理ある解決にとって重要であると考えます。
 だれであれ、オリンピックをこの問題に関連づけ、政治的に利用することは、「スポーツの祭典」であるオリンピックの精神とは相いれないものであり、賛成できないということが、わが党の立場であることも、お伝えするものです。
 2008年4月3日
 日本共産党中央委員会幹部会委員長 志位和夫
2 「チベットは中国の一部」問題
 上記の書簡の中にある「双方が認めている、チベットは中国の一部であるという立場」が引っかかったので、調べてみました。
2007年10月17日の、米議会黄金勲章授賞式でのダライ・ラマ法王のスピーチ(英語)の中に、次のような箇所がありました。
On the future of Tibet, let me take this opportunity to restate categorically that I am not seeking independence. I am seeking a meaningful autonomy for the Tibetan people within the People's Republic of China.
 出典は以下のサイトです。
<http://www.tibethouse.jp/dalai_lama/message/071017_us.html>
 
和訳すると、「チベットの将来について、もう一度断言する機会を私に与えて下さい。私は、チベットの独立を求めていません。中華人民共和国の中での、チベットの人々のための意味のある自治を求めているのです」というような意味だと思います。確かに、チベットを中華人民共和国の中に位置付けており、「チベットは中国の一部」という立場だと受け取ることは可能です。
 
3 レーニンの民族政策
 かつてチベットは独立国を形成していたと言われていますし、チベットの人々の中には独立への熱望もあるようですから、レーニンの民族政策「強い民族が譲る」にもとづきチベット問題は解決されるべきだと思います。
 
 
◎ ペレストロイカの衝撃 人は敗れても思想は敗れるとは限らない
 ゴルバチョフ氏の掲げたペレストロイカとは何だったのか?
 ペレストロイカの中で、衝撃と刺激を受け、なるほどと肯いたのは、主に次の四つでした。
 @ 党員の平等
 A 「平和共存は階級闘争の一形態である」というテーゼの放棄(言い換えると、ペレストロイカは、平和共存を、階級闘争の一形態ではなく、絶対的なものとして位置付けました)
 B 「アメリカが核兵器で攻撃してきたら、ソ連の強大な核兵器で反撃してアメリカ帝国主義に壊滅的打撃を与える」というテーゼの放棄
 C 人々の前に真実を示す
 本当に、日本国憲法9条の思想と同じ思想です。人類の最高の到達だと思います。
 人は敗れても思想は敗れるとは限らない。そのことを信じて、人類をはじめとする全生命の生存のために、がんばりたい。
 
 
◎ レーニンは革命の平和的形態の可能性を否定していた?
 「レーニンは革命の平和的形態の可能性を否定していた?」と一部で言われていますが、本当にそう割り切った見方をレーニンに対してして、いいのでしょうか?
 第一次世界大戦のときの、レーニンの有名なテーゼ「帝国主義戦争を内乱に転化せよ」がありますし、レーニンの著作『国家と革命』がありますし、確かにその二つを合わせると、レーニンは革命の平和的形態の可能性を否定していた、と理解することも可能です。
 同時に見ておく必要があると感じているのは、テーゼ「帝国主義戦争を内乱に転化せよ」が出されたときの状況、背景です。第一次世界大戦の際、プレハーノフなどを指導者とするメンシェビキや第二インタナショナルは、「祖国防衛」の立場に陥り、転落し、帝国主義戦争に自国の労働者階級を動員するという犯罪的誤りを犯していました。そのとき、「祖国防衛主義」に対置してレーニンは、「帝国主義戦争を内乱に転化せよ」を打ち出したのです。労働者階級を戦争に動員する祖国防衛、祖国勝利、自国勝利を拒否して、「自国敗北」の「帝国主義戦争を内乱に転化せよ」を打ち出したのです。
 レーニンの思想は、テーゼは、『共産党宣言』の言う「労働者階級は祖国を持たない」というプロレタリア国際主義にもとづいています。
 国際労働者階級の立場に立てば、世界の労働者を戦争に動員する「祖国防衛」ではなく、「帝国主義戦争を内乱に転化せよ」による自国敗北とそれにもとづく戦争終結こそ、正しい道だったのです。
 この道を選ぶのは至難であり、本当に「労働者階級は祖国を持たない」というプロレタリア国際主義の立場の貫徹が必要です。かつてレーニンがロシア・マルクス主義の宝庫と呼んだプレハーノフでさえ、祖国防衛主義に陥ってしまったくらいですから、「祖国」という幻想から労働者階級を解放することは容易なことではないのでしょう。
 私の記憶によればなのですが、トロツキー『ロシア革命史』などいくつかの論文で読んだ記憶があるのですが、レーニンはロシア革命を遂行する際、革命の平和的道の可能性を最後まで追求した、とのことです。どんなにわずかな可能性であっても、革命の平和的遂行の可能性を追求した、とのことです。
 したがって、レーニンを単純に、「暴力革命論者」として描くことには、賛成できません。違和感を感じます。
 
 
◎ フォイエルバッハ『キリスト教の本質』 エンゲルス『フォイエルバッハ論』
 沼のある公園に行き、沼の周囲(約2キロか?)を10周ジョギングしながら考えていたのですが、エンゲルスの論文は、『イギリスでの労働者階級の状態』、『家族、私有財産及び国家の起源』、『革命と反革命』、『ドイツ農民戦争』、『共産党宣言』(マルクスとの共著)、『反デューリング論』など魅力ある作品が多いのですが、『フォイエルバッハ論』だけは嫌いな作品、論文です。
 フォイエルバッハ『キリスト教の本質』は、大好きな作品、論文です。いろいろな問題で苦しんでいるとき、この本を読むことで、また読み返すことで、生きる上での勇気を与えられた論文です。3回以上は、そんなことがありました。
 「神の本質は、人間の本質の対象化に他ならない」というこの本のテーゼは、衝撃でした。
 エンゲルス『フォイエルバッハ論』は、この『キリスト教の本質』を含めてフォイエルバッハを罵倒しています。愛だ、愛だ、愛だと舞い上がっている(階級闘争を忘れた)「愛の哲学」として切り捨てています。
 マルクス、エンゲルスを創始者とする運動が、スターリン主義という非人間的方向へ大きく歪んでしまったことの原因の一つが、エンゲルス『フォイエルバッハ論』によってフォイエルバッハの「愛の哲学」が蹂躙されたその上に、運動が進められていったことの中にあるような気がします。
 フォイエルバッハ『キリスト教の本質』の正当な再評価の上に、国際労働運動は進んでいくべきだと感じています。
 
 
◎ 2008/5/21 宇宙基本法成立 宇宙開発の目的に「我が国の安全保障」明記
2008年5月21日に成立した宇宙基本法について、宇宙軍拡の危険性を衆院内閣委員会で追及した日本共産党の吉井英勝衆院議員は、要旨次のように話しています。
 日本の宇宙開発は、1969年の国会決議で平和利用に限ると決められていました。平和利用とは「非軍事」だと国会答弁で明確にされてきました。推進側の狙いは、「安全保障に資する宇宙開発利用」を口実に、軍事利用に道を開くことです。
 自民党防衛族と防衛省幹部、宇宙産業による勉強会で、日米共同で進めるミサイル防衛システムでの宇宙利用が検討されていたことを、国会質問のなかで明らかにし、危険性を追及しました。答弁は「専守防衛の範囲内で防衛目的の利用は可能となる」などというものでした。他国の衛星を攻撃・破壊するキラー衛星の保有も否定しませんでした。
 これだけ重大な方向転換を、衆議院、参議院ともわずか2時間の国会審議で通したのは大問題です。
 国会質問で、日本共産党の修正意見として「安全保障」の目的を削除することなどを強く要求しましたが、残念ながら自公民の法案が強行されました。
 今回成立した宇宙基本法をもとに、今後、宇宙関連機関の業務内容の見直し、軍事機密の保護を口実にした管理強化・罰則強化など、具体的な法整備が進められます。軍事衛星の開発にかかわらざるを得ない人が増えたり、「情報管理」の名目で技術者や科学者が制約をうける可能性もあります。
 今後、こうした危険な動きを監視し、宇宙の軍事利用の拡大を防ぐたたかいが必要です。また、小惑星探査機「はやぶさ」の活躍など、日本が誇る宇宙科学を発展させるためにも、「平和目的に限る」の原則を守らなければなりません。
 日本の宇宙開発は、憲法の平和主義に徹して進めるべきです。今後とも、そのために力を尽くす決意です。
宇宙基本法2条 宇宙開発は、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約等の宇宙開発に関する条約その他の国際約束の定めるところに従い、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、行われるものとする。
宇宙基本法3条 宇宙開発は、国民生活の向上、安全で安心して暮らせる社会の形成、災害、貧困その他の人間の生存及び生活に対する様々な脅威の除去、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資するよう行われなければならない。
宇宙基本法14条 国は、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資する宇宙開発を推進するため、必要な施策を講ずるものとする。
(上記のように、成立した宇宙基本法は、宇宙開発の目的に「我が国の安全保障」を明記していますが、同時に「宇宙開発は……日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、行われるものとする」と同法2条に規定しています。宇宙基本法が成立したいま、同法2条を根拠にして、また憲法9条にもとづき、宇宙軍拡を阻止するたたかいが、日本国民には求められています──海野)
 
 
◎ ── 憲法で保障された政治活動の自由に介入し妨害するJR ──
 2008年5月26日、JR○○駅が、JRの敷地内であることを唯一の理由に、JR○○駅前での政治活動の自由に介入し妨害しました。同駅前では、消費税率引き上げ反対と後期高齢者医療制度廃止を求める宣伝行動がおこなわれていました。JRの敷地内であることを唯一の理由に、この宣伝行動の中止を要求してきたものです。
 次の4点を主張し、同駅前での宣伝行動の中止には応じず、行動を続行しました。
 @ 憲法で保障された政治活動の自由への介入、妨害、侵害は認められない。
 A JRの敷地内を唯一の理由として政治活動の中止を求めることは、駅前という広場での広範な市民、国民を対象とする政治活動を妨害するものであり、憲法が保障する政治活動の自由への侵害である。
 B 従来、長年にわたって、同駅前での政治活動はおこなわれており、それは伝統、慣習となっており、こうした伝統、慣習を一方的に覆すことはできない。
 C 右であれ左であれ、警察でさえ、駅前等での政治活動に対しては介入しないし、中止を求めたりはしない。
 
 
◎ ─── オバマ氏への評価 行動を見る必要があるでしょうネ ───
(オバマ氏の大統領就任演説の中に、次のような箇所があります。彼の今後の行動を注視していく必要を感じます。オバマ氏と言えば、「イスラエルへの全面・完全支持」を表明していますし、「アフガニスタン戦争の開始」をやるつもりだとも言われていますし、黒人の大統領だからということだけで幻想を持つのは、危うい、と感じます──海野)
Recall that earlier generations faced down fascism and communism not just with missiles and tanks, but with sturdy alliances and enduring convictions.
私たちの前の世代がファシズムとコミュニズムに対して、ミサイルとタンクだけでなく、不屈の同盟と忍耐強い信念で対峙したことを、思い起こそう。(海野 和訳)
 上記の中の「faced down」をどのように和訳するか、それにより、読み手の受ける印象はある意味180度違ってきます。私は「対峙した」としました。
 ちなみに、
 朝日は「屈服させた」
 読売は「対峙した」
 日経は「立ち向かった」
 毎日は「勇敢に立ち向かった」
 朝日は「ファシズムと共産主義を屈服させた」と訳していますが、これだとオバマ氏が反共の闘士みたいになってしまい、違うような気がして私は「対峙した」としました。
 
 
◎ 歴史上はじめてとも言われる日本経団連と日本共産党の会談
 主観的、情緒的にものを言わせてもらうと、日本の経済界(財界)は、金を与えて自民党、民主党という子供を育ててきたが、立派な大人に成長することなく、安心して任せておけないので、自分の子供ではない共産党に頼らざるを得ない、現下の恐慌的状況下、そのような状況が近づいている、一部発生している、などというあり得ない状況が、現にいま、ある状況へと現実化しつつあるということなのだろうか?
 2008/12/18歴史上はじめてとも言われる日本経団連と日本共産党の会談が実施された。
 同会談での共産党から日本経団連への『要求書』の中には、次のような箇所があり、優秀な子供が親を諭すような内容を含んでいる。
「年の瀬に突然契約を打ち切られ、寮から追い出され、寒空のもとでホームレス生活に追い込まれている労働者が、すでに全国各地で生まれています。解雇される非正規社員の多くは、正社員と同じように働き、残業にも、休日出勤にも応じ、高熱があっても、身内に不幸があっても仕事を休まずにがんばってきた人々です。こうした労働者を、真冬の冷たい巷(ちまた)に放り出すようなことが許されるでしょうか。それは、まず何よりも、人道にてらして、けっして社会的に許容されるものではありません」
「いますすめられている非正規社員の大量解雇が、現行の労働法制でも違法か、あるいは違法性がきわめて高いものであることも重大です……法令順守が、企業の社会的責任の最低限の土台であることは、立場の違いをこえた共通の認識であると考えます。日本経団連の会員企業が、法令違反の謗(そし)りを受けるようなことはあってはならないことです」
「日本経済を立て直す道は、外需依存から脱却し、内需に軸足を移す以外にないという認識は、立場の違いを超えて広がっています。内需を活発にすることが景気悪化をくいとめ、景気回復に向かう唯一の道であるときに、大企業が競い合って大量解雇をすすめるならば、どうなるでしょうか。それは家計消費の落ち込みをもたらし、さらに生産の減退や設備投資の減少をもたらし、日本経済を雇用破壊と景気悪化の悪循環に突き落とすことになるでしょう。個々の企業にとっては、人員削減は、瞬間的には、その財務状況を良くしたとしても、それがいっせいに行われるならば、経済と社会の前途を危うくすることになります。それは、企業の存立・発展を展望しても、自殺行為ではないでしょうか」
 「日本経団連の初代会長である奥田碩氏は、かつて『不景気だからといって、簡単に解雇に踏み切る企業は、働く人の信頼をなくすに違いない。そして、いずれ人手が足りなくなったときには、優秀な人材を引き止めておけず、競争力を失うことになる』、『仮に現在、人が余っているというのなら、その人材を使って新しいビジネスに生かす努力をしてこそ、経営者というものです。それもできないようでは、経営者の名に値しません』(『経営者よ、クビ切りするなら切腹せよ』)とのべています」
「1、会員企業等にたいし、大量解雇計画の中止・撤回を働きかけられたい。
2、違法な解雇、解雇権の濫用をおこなわないよう労働法制の順守を求められたい。3、不当な内定取り消しなど、社会的責任を放棄した行動をやめるよう働きかけられたい。4、労働者が解雇によって住まいまで奪われ、路頭に迷うような事態を引き起こさせないために万全の対策を講じるよう働きかけられたい」
 
 
◎ 中国の国会にあたる第11期全国人民代表大会(全人代)開幕に関連して
2009/3/6『赤旗』の「全人代開幕」関連記事を読み、感じるところがあった。
1 同紙掲載の記事によると
「中国全人代開幕 温家宝首相が方針」
「景気対策 8%成長めざす」
「危機克服へ内需拡大」
 温家宝首相「国際金融危機の影響で成長率が低下し続け、全局に響く主要な矛盾になっている」
「過剰生産」
「雇用情勢の悪化」
「財政収入の減少」
(温家宝首相)「内需拡大を第一に掲げ、2年間で約57兆円の景気対策を実行すると表明」
「財源確保のため、中央政府の財政赤字が大幅に増える」
「都市部で9百万人以上の新規雇用を確保し、失業率を抑える」
「消費者物価上昇率を4%程度に抑えることを目標」
「低所得者と農民への補助金を増額」
「公共住宅、鉄道、道路、農村インフラの建設を促進」
「多くの人たちが集結する事件を予防する」
(温家宝首相)「無駄で現実離れした実績づくりを行ってはならない。私利をはかってはならない」
「2009年度予算案7兆円の減税」
「雇用が悪化すれば、社会の不安定化も助長される」
「農村部で相次いでいる暴動」
2 感じること
 崩壊したソ連「社会主義」には、「民主主義的中央集権制」という問題があった。
 中国共産党の「綱領」には、組織原則として「民主主義的中央集権制」が存在するのだろうか?
 「国営企業」と「資本主義企業」が併存、混在、競争していると言われる中国「社会主義」経済の構造は、「社会主義のメルトダウン」なのか? 「市場経済を通じての社会主義への道」なのか?
 核兵器で武装し、軍事予算を急速に増強している中国が、政治的な意味で社会主義と言い得るのか?
 少なくとも憲法9条的思考が必要なのではないか?
 
 
◎ 英国国際戦略研究所のMilitary Balance 2009 - Press Statementから(補強)
(以下は、英国国際戦略研究所のMilitary Balance 2009 - Press Statementからの抜粋です──海野)
In Afghanistan, we are entering what is probably the most critical period since 2001. The Afghanistan Compact of 2006 is in its final two years and presidential elections are due to take place this year amid rising violence and with a government that is unable to exert its authority in the provinces. Against this background there is a risk that it will not be possible to hold elections; or voter turnout may be below the minimum necessary for the ballot to be valid. The integrity of the whole international mission in Afghanistan is therefore very substantially at stake.
 アフガニスタンで、我々は多分、2001年以降最も危機的な時期に入りつつある。2006年のアフガニスタン協定は、その最後の2年の中にある。そして、地方に権威を及ぼすことができない政府という状況の下、巻き起こる暴力の真っ只中にある今年、場所を占めるのは、大統領選挙である。このような背景の下、大統領選挙が実施不能または法的有効性の限度を下回るような投票率になるリスクが存在する。アフガニスタンでの全体的な国際的ミッションの誠実さは、それ故、とても大きな危機の中にある。(和訳 海野)
Compact 協定
presidential elections 大統領選挙
due することになっている
amid 真っ只中で
exert 及ぼす
province 地方
election 選挙
voter 有権者
turnout 投票率
ballot 投票
valid 法的に有効な
integrity 誠実
substantially 大いに 実質的に
stake 火刑
 オバマ氏は大統領選での公約に「アフガニスタンへの増派」を掲げている、とのことです。どうするつもりなのか?(海野)
 
更新日時:
2009/04/07
物理学、分子生物学等々科学関係の書評、感想、意見など
物理学、分子生物学等々科学関係の書評、感想、意見など
海野和夫
◎ 「真空」の不思議さ、力、エネルギーに迫っている本を読んでみました
1 仮説としての「真空」論
 あくまでも仮説に過ぎないとは思うのですが、「『無』から宇宙は生まれた」、「『真空』の揺らぎから宇宙は生まれた」というような宇宙論が提唱されたり、また量子論によると、「真空では絶えず、物質が生まれ、また消えていく」ということのようで、どうも真空は、本当の無、ゼロではなくて、真空には巨大な力、エネルギーが含まれているようだ、と感じていたのですが、本屋さんで『真空とはなんだろう 無限に豊かなその素顔』(著者 広瀬立成氏 発行 講談社)を見つけて、一気に読んでみました。
 この本を読んで感じたのですが、量子論、宇宙論、相対性理論、分子生物学、物理学全般、何でもそうですが、科学と言っても、相当仮説が存在しているのだな、ということです。信じるのではなく、冷めた目で見る必要があるということです。
2 本によると
 この本を参考にすると、以下のような具合になります。
 ミクロの世界を記述する量子力学(大雑把に考えれば、量子論と呼んでもいいでしょう――海野)は、真空とは、空虚であるどころか、あらゆる素粒子を内包した豊かな世界であることを明らかにしました。
 真空とは、空間の三次元に時間の一次元を加えた四次元の「時空」に他ならない。
 重力は真空を歪める。質量が重力を発生させるのだから、真空を歪ませる原因は結局、質量にある。質量のない真空に、質量を持ち込むと、そのまわりに重力場が発生し、真空は変形する。このように、真空は一定不変ではなく、伸縮可能な柔軟性を持っている。真空は物質と相互作用をする。 
 真空と物質の不思議な関係は、以下のように記述できます。完全な真空であっても、そこには空間があり時間が流れている。このように「時空のかたまり」ともいうべき完全な真空が、物質の存在により、重力が発生するために、歪められてしまう。これを言い換えると、歪んだ真空は、重力場の発生、即ち物質の存在を予測している。物質を排除したはずの真空が、実は物質を包み込んでいる。
 重力は真空中を伝わっていく。これは、真空の歪みが伝わることに他ならない。重力とは、真空のさざ波なのだ。
 量子力学は、電子・陽電子対が生成と消滅を繰り返すという、ダイナミックな真空像を描き出します。
(以前にも書いたことがありますが、「宇宙は無から生まれた」とか「無の揺らぎの中から宇宙は生まれ、膨張し、そして収縮に転じ、無となって光の中へ消えていく」といった宇宙論、仮説が、その根拠としているのが、上記の考え方のようです。真空の揺らぎの中から、物質は生まれ、膨張し、やがて収縮に転じ、再び無となって真空の揺らぎの中に消えていく。それが宇宙の一生だ、というわけなのでしょう、この仮説は──海野)
 仮説といえば、真空は高い次元を持つ多次元世界であり、10次元だという予測、仮説が提唱されています。
 また仮説として、宇宙論として、真空が超高速で一気に膨張したというインフレーション理論が提案されています。
 宇宙のはじまりとその後の進化で、真空は決定的な役割を果たしたのかもしれません。
 (インフレーション理論、ビッグバン理論、パラレルワールド論、真空10次元論、等々、仮説に仮説を積み上げているような気がして、にわかには信じがたいと感じています──海野)
 
 
◎ 量子論が描く世界観のおもしろさ わけのわからなさ 不完全さ
 前から関心を持っていた「量子論」について、その描く世界観について、専門書を見てもわからないので、わかりやすい解説書、わかりやすいけれど体系的な解説書と思われる『「量子論」を楽しむ本』(監修 佐藤勝彦氏 発行 PHP研究所)を本屋さんで見つけて、早速すぐに全部、読んでみました。
 読んでみて、量子論の到達と不完全さが、わかりました。量子論もまた、完成途上にある「理論」なのです。
 この本を参考にすると、以下のような具合です。
 電子は「重ね合わせ」の状態にある。「重ね合わせ」とは、「1個の電子がA点にいる」状態と「同じ1個の電子がB点にいる」状態が、同一の電子の中で重なり合って(共存して)いる、ということです。言い換えると、同一の電子が同時にA点とB点の両方に存在するということであり、量子論の描く世界の不思議さ、おもしろさが、よく出ています。
 そして、電子に限らずあらゆる物質が上記のような性質を持っていることを、量子論は明らかにしました。
 量子論は、物質や自然がただ一つの状態に決まらずに非常にあいまいであることを、そしてあいまいさこそが自然の本質であることを、示しました。
 但し、アインシュタインや(思考実験「シュレーディンガーの猫」で有名な)シュレーディンガーは、量子論の描く世界観に反対し続け、「自然現象を表す物理学は決定論でなければならない」という物理学の大前提を擁護し続けました。
 量子論が言う「同一の物質が同時に複数の違うところに存在している」が正しいとすれば、世界自体が複数存在することになるという「多世界解釈」、「パラレルワールド論」、「平行宇宙論」が、主張されています。量子論の描く世界観を矛盾なく説明できる考え方のようなのですが、「自分という人間が、別の世界に、複数、存在する」という余りにも常識からかけ離れた「理論」のため、支持する人は少数派にとどまっている、とのことです。
 真空は何も存在しない「無」の空間ではなくて、そこでは粒子と反粒子がセットになって生まれたり消えたりすることを絶えず繰り返していると、量子論は主張します。これを、「真空のゆらぎ」と呼びます。真空は完全な「無」ではなくて、粒子や反粒子が存在する「有」との間をゆらいでいる、というわけです。
 「宇宙は無から生まれた」とか「無の揺らぎの中から宇宙は生まれ、膨張し、そして収縮に転じ、無となって光の中へ消えていく」といった宇宙観が、その根拠としているのが、上記の「真空のゆらぎ」理論です。
 ただ、量子論も完成途上にある「理論」です。いまは、わけがわからないけれど、わけがわかる「大統一理論」として完成されるかもしれません。
 
 
◎ ────  「時間」はやはり実在しない  ──── 
 前に、「『時間』は存在しない。存在しているのは、物質であり、その運動です。存在しているのは、物質の運動だけです。時間は? 物質の運動、変化の過程が、経過が、時間なのです。それ以外に『時間』は存在しません。秒、分、時間などと名付けて、時間が存在しているかのようにしているのは、人間の生活の都合からです。従って time travel も幻想に過ぎません」と書いたことがありますが、『時間はどこで生まれるのか』(著者 橋元淳一郎氏 発行 集英社)を読み、「時間は実在しない」という考えが、かなり広く存在していることを知りました。
 上記『時間はどこで生まれるのか』によると、「20世紀には、マクタガートという哲学者が、『時間は実在しない』という『証明』をした」とのことです。
 同著によるとまた、「時間が実在しない」は詭弁に聞こえるかもしれないが、現代の物理学者の中には、そういう考え方の人が結構いる(たとえば、ジョン・ホイーラー)、とのことです。同著で橋元淳一郎氏は、現代物理学が明らかにした宇宙の仕組みを突き詰めていくと、どうしてもそのような結論にならざるを得ない、と述べています。
 同氏は、「量子力学での時間の非実在性」を明らかにし、ミクロの世界では時間は実在しない、と述べています。
 私などが直感的に考えても、ミクロの世界に実在するのは原子のあるいは電子の運動だけであり、時間は実在しないと思うのですが、同氏はそれを量子力学から解明していきます。
 同氏によると、ミクロの世界では、因果律が存在せず、過去・現在・未来という時間の流れ、方向が存在するはずもない、ということになります。
 それでは、「時間」はどこで生まれるのか? 同氏は結論を述べます。「われわれ生命が、主観的時間を創造した」
(参考)
○ マクタガート(1866-1925)
『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、マクタガートは、イギリスの哲学者。ヘーゲル哲学の研究や時間論などで功績がある。
○ ジョン・ホイーラー(1911-)
『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、ジョン・ホイーラーは、アメリカ合衆国の物理学者。第二次世界大戦の間、マンハッタン計画に参加。水爆計画推進に貢献。ワームホールやブラックホールの命名者。
 
 
◎ ウイルスって何?  無生物から生物へ向かう橋なのか 
 ウイルスって何者か? 生物と無生物の間に位置する存在と言われています。中間物。
 ウイルスは、食事も排泄もしない、とのことです。 
ウイルスは、自分では、独力では、自己増殖することができません。生物の細胞に侵入し、その細胞にニセの情報を与えて、細胞は自分自身を増殖しているつもりなのですが、実はウイルスを増殖している、そのような言わば「狡猾な」やり方でウイルスは自己増殖していく、とのことです。
 上記のような実態のウイルスですから、生物と無生物の間にあるものとして位置付けられ、生物なのか無生物なのか論争が続いている、とのことです。
 この論争に対して岡田吉美氏は、自著『ウイルスってなんだろう』(発行 岩波書店)の中で、こういう論争にはあまり意味はない、ウイルスが単独で存在し自己増殖していないときは無生物なのであり、細胞に侵入して自己増殖しているときは生物の状態にあると見るべきだ、という趣旨のことを述べています。
 岡田吉美氏の同著によると、ウイルスは核酸とタンパク質だけからできた単純な化学物質です。自己増殖という生物だけが持っている神秘的な性質を、こんな単純な化学物質が持っているのです。まさに岡田吉美氏が述べているように、ウイルスは不思議な超微生物です。生命と物質の境がはっきりしなくなったのです。
 岡田吉美氏によると、RNAという核酸こそが生命の遺伝情報の担い手です。
岡田吉美氏「ウイルスにはDNAでなく、RNAを遺伝子としてもっているものがたくさんあります。インフルエンザやエイズウイルスの遺伝子はRNAです。RNAこそがウイルスの感染力の本体であり、タンパク質の役割はただそのRNAを保護しているだけです」
くりかえしになりますが、どのウイルスもすべて、核酸とタンパク質の複合体です。同著に写真が載っていた各種ウイルスの形に、私は感動し、驚きました。ジャガイモXウイルスはひも状の形。水泡性口内炎ウイルスは指サック状。パピローマウイルスは20面体。インフルエンザウイルスは無数の突起物で囲まれた円球のような形。大腸菌ファージT4はまさに蜘蛛のような形。
同著で述べられているように、動物や植物、そして細菌は生きており、金属や石などの鉱物は生きていないという違いは、あまりにもはっきりしています。ウイルスも「生きている」ものと、ずっと考えられてきた、とのことです。
岡田吉美氏は言います。「ところが、ウイルスの成分が明らかにされて、事情は一変。ウイルスはRNAとタンパク質という分子が規則正しく並んだ化学物質だったのです」
 細胞を利用して自己増殖する化学物質としてのウイルス。こんなものが本当に、自然界に自然にできたのでしょうか? 私は? と立ち止まってしまいました。
 なお、同氏によると、エイズウイルスは、人の細胞の中にウイルスとして存在するだけでなく、人の遺伝子の中にエイズウイルスの遺伝子が組み込まれている、とのことです。ですから、人の体の中のエイズウイルスを全滅させたとしても、絶えずまたエイズウイルスが発生する可能性があるということです。そして、この可能性を除去することはまだできないのです。
 
 
◎ テーゼ「人格はDNAの自己表現である」へのアンチテーゼのために
 「人格はDNAの自己表現である」、「生物はDNAの乗り物に過ぎない」に示されるような、DNAの絶対視、DNAの神的存在化、DNA至上主義、DNA神話へのアンチテーゼとして登場した『脱DNA宣言 新しい生命観へ向けて』(著者 武村政春氏 発行 新潮社)を読んだ感想のようなものを、以下に書かせていただきます。
 DNAに代わって著者はRNAの存在、役割に特に注目し、DNAという一つの要素だけでは到底説明できないし、解明できない生命の「総合性」のようなものを明らかにしていると、私は感じました。
 確かに、二本鎖のDNAの集積だけで生命を説明できるはずがないし、まして生命をつくりだすことなどできるわけがないと、納得です。
 DNAに代わってRNAが急速に浮上してきているとすれば、将来、さらに別のものが深部から表面化してくるでしょう。生命は、DNAなどよりもっともっと奥深いものに違いありません。
 著者は、次のように同書に書いています。
 DNAには「遺伝子」と呼ばれる部分があって、そこに、私たちの体を作り上げるための「たんぱく質」の設計図が書き込まれている。
 DNAの最大の特徴は複製することである。
 DNAと非常によく似た物質、RNAが存在する。RNAの最大の特徴は、DNAのように二本鎖ではなく、一本鎖のままで存在していることが多いという点である。
 一本鎖であるために、RNAはDNAと違い、とてもフレキシブルだ。
 RNAは、途方もないことをやっている可能性がある。
 DNAを中心とするものの見方は、あくまでも偏った見方でしかない。
 実はRNAが遺伝子で、DNAはRNAのバックアップコピーに過ぎない。
 DNAの存在状態をRNAが決めているようだというような事例も明らかとなっている。
 遺伝するのはDNAだけというDNA至上主義から脱却する必要がある。
 生命現象をつかさどる物質としてのRNAの重要性は、科学者の間では完全に理解されている。
 分子生物学の世界でのRNA研究は勢いを増し、「RNAルネッサンス」とも呼ばれる。
 
 
◎ 「時間」とは何か? その実体は? 時間は本当に存在するのか?
(以下を書くに際して http://www.crc-japan.com/ を参考にさせていただきました)
1 「時間」への疑問
「時間」に疑問を持っています。
時間とは何か? その実体は?
本当は「時間」は存在しないのではないか? 
存在するのは、物質の運動だけではないのか?
人間が生きていくために都合がいいので、「時間」が存在するということにして、「時間」を使っているだけではないのか?
2 回答
上記の疑問に対して、上記サイト http://www.crc-japan.com/ の柳澤氏から次のような回答が寄せられました。
1秒、1分、1時間、1日、1月、1年という時間計測の共通単位があり、通常、人は、時間の感覚というか存在を感得できます。
過去、現在、将来という時系列も整然として乱れること(過去と未来が客観的事実として入り乱れること)はありません。
「本当は『時間』は存在しないのではないか?」とはいかなる意味でしょうか。
3 再び「時間」への疑問 
「時間」については、前と同じようなことしか書けませんが、以下のように考えています。
 存在しているのは、物質であり、その運動です。存在しているのは、それだけです。
 時間は?
 物質の運動、変化の過程が、経過が、時間なのです。それ以外に「時間」は存在しません。
 秒、分、時間などと名付けて、時間が独立して存在するかのようにしているのは、人間の生活の都合からです。
 従って time travel も幻想に過ぎません。
4 柳澤氏の再回答の要旨
時間があるからこそ、「変化」し「経過」するのではないでしょうか。
時間が存在しなければ物質は空間内に、「静止的」に、「変化」もせず「経過」もせず、したがって「運動」もせず存在することになります。
「瞬間」も時間と考えると、時間が存在しないのなら、「物質が存在」することもなくなります。
5 時間が先か物質が先か
柳澤さん
 疑問に真面目に、真摯に答えていただき、ありがとうございます。感謝します。
 柳澤さんのように「時間」を捉えるのが正しいのかもしれないと、心の一部では感じています。
しかし、もう一度だけ、心の別の一部が感じている疑問を、以下に書かせていただきます。
 「時間が先か物質が先か」ということになるのでしょうか? 
 時間が先にあると考えれば、柳澤さんの言われるとおりなのかもしれません。
 しかし、時間が独立した実体だとは到底思えません。時間がある(存在する)から、物質の運動、変化があるということではないと思います。
 最初から物質とその運動は存在しています。物質は自立的、自律的に、内在する力によって、運動し、変化していきます。物質の運動の過程、経過を、人が時間と名付けているだけです。物質の運動とは別に「時間」が存在する姿を、思い描くことはできません。
 
 
◎ 生命とは何か? 生物と無生物の境界は? 人間も死ねば無生物ですから 
 子供だと思っていたら青年に、そして中年に、さらに定年が近い年齢に、自分がそうなってみるとやはり、眼前に死を感じるようになり、人間も死ねば無生物になるわけですから、最近は、生命とは何か? 生物と無生物の境界は? 考えるようになりました。
 以前、分子生物学の本を読んだとき、「人格はDNAの自己表現である」と書かれていて、そう言われてみるとそうなのかもしれないと感心したことがあります。
 たまたま本屋さんで、『生物と無生物のあいだ』(著者 福岡伸一氏 発行 講談社)を見つけ、問題意識にぴったりでしたので、買いました。読むと、DNAについていっぱい書かれています。
 以下の、ウイルスについての記述に関心を引かれました。
 ウイルスは、生物ではなく限りなく物質に近い存在。
 ウイルスは、栄養を摂取することがない。呼吸をしない。老廃物を排泄することもない。つまり一切の代謝を行っていない。
 しかし、ウイルスは自らを増やせる。ウイルスは自己複製能力を持つ。
 ウイルスは生物と無生物のあいだをたゆたう何者かである。
 著者は、DNAについて、その自己複製機構を教えてくれます。
 DNAは、互いに他を写した対構造をしている。この相補性は、自らを複製する機構を担保している。
 「生命とは、自己複製を行うシステムである」との定義が生まれる。そしてこのことは、DNAが持つ二重ラセン構造に担保されている。
 著者は、上記のように私たちに教えてくれます。
 「生物と無生物のあいだをたゆたう何者かである」ウイルスは、何のために存在するのか? どのように発生、形成されたのか? 誰かが作ったのか? 地球外から来たのか? 不思議です。
 生命の自己複製システムを担保しているDNAの二重ラセン構造は、どのように発生、形成されたのか? 誰かが作ったのか? 地球外から来たのか? 無生物からの進化の結果として発生、形成されたのか? 
 福岡伸一氏の本をいろいろ読んで、勉強したいと思います。
 
 
◎ 生命とは何か?生物と無生物の境界は?人間も死ねば無生物ですから(2) 
 『生物と無生物のあいだ』(著者 福岡伸一氏 発行 講談社)を全部、読んでみました。
 著者によると、量子力学の「シュレーディンガーの猫」で有名な物理学者シュレーディンガーも『生命とは何か』という本を書いているそうです。
 本の中でシュレーディンガーは「原子はなぜそんなに小さいのか?」という問いを発しています。
 福岡伸一氏によると、原子は確かに全く小さなもので、原子の直径は1〜2オングストロームだそうです。オングストロームとは、1メートルの100億分の1です。
 シュレーディンガーは続けます。「独立的な存在として原子のほうが文句なしに先であることを考えると……われわれの身体は原子に比べて、なぜ、こんなに大きくなければならないのか?」
 福岡伸一氏は、進化論の「突然変異」にも疑問を提出します。
 私も以前、「突然変異は何も説明していない」と書いている本を読んだことがあり、確かに突然変異によって進化が起こると説明されてもそれは何も説明していないに等しい、と感じていました。
 福岡伸一氏は、進化の原動力を突然変異とする進化論を「俗流進化論」と呼び、「むしろ、生物の形態形成には、一定の物理的な枠組み、物理的な制約があり、それにしたがって構築された必然の結果と考えたほうがよい局面がたくさんある」と主張する。
 氏は、生命とは何か? に答えて、「すべての物理現象に押し寄せるエントロピー(乱雑さ)増大の法則に抗して、秩序を維持しうることが生命の特質である」、「生命とは動的平衡にある流れである」と主張する。
 そして、「時間」という要素が加わってくる。氏は言う。「生命は、時間軸に沿って流れる、後戻りのできない一方向のプロセスである」
 また氏は言う。「(生命の)動的な平衡がもつ、やわらかな適応力となめらかな復元力の大きさにこそ感嘆すべきなのだ」
 私は、前に本で読んだ「生命は、自らの道を切り開く」という言葉を思い出しました。
 福岡伸一氏は自著の最後の部分で、「結局、私たちが明らかにできたことは、生命を機械的に、操作的に扱うことの不可能性だったのである」に到達しています。
 
 
◎ 無限に数を足していき有限の数にする? ゼータ関数?
 先日見たビートたけしさんのテレビ番組で、「無限に数を足していき有限の数にする? ゼータ関数?」がテーマの一つになっていて、現代数学はマジックよりはるかにマジック的で、「超能力」も「超魔術」も顔負けだと感じました。
 現代数学の到達点は、無限に数を足していくと有限になる、ゼータ関数を使うとそうなる、数学の計算上の話だけでなく一部は既に実証されている、というのです。信じ難い話ですし、理解不能です。インタネット上を検索し、少し調べてみました。
 同じような疑問を持つ人がいました。下記のサイトが参考になります。
http://d.hatena.ne.jp/abyssal-fish/20060927
 たとえば、ゼータ関数を使うと、以下のような計算が成立するのだそうです。
1 + 1 + 1 + 1 + …… = −1/2
1 + 2 + 3 + 4 + …… = −1/12
 信じ難い計算結果です。無限にもいろんな種類の無限が存在するということになるようです。
1 + 1 + 1 + 1 + …… = ∞
1 + 2 + 3 + 4 + …… = ∞
 上記の計算結果が当り前だと信じ切っていた私には、まさに不意打ちです。 
「1を無限に足せば無限だけれど繰り込むと−1/2になる」ということのようです。インタネット上の説明を読むと、そうなっています。
ゼータ関数の説明がインタネット上に載っていますが、難解過ぎます。ここでの説明はできません。
繰り込む? どういう意味なのだろうか? わかりません。無理矢理理解してみると、「有限化する」ということのようです。無限を有限の数で表現する、ということのようです。
以下のサイトでは、繰り込みを「基本的には『細かいことには目をつぶる』という戦略だといえる」と解説しています。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/
「繰り込み理論」(三省堂「大辞林 第二版」から) 電子と電磁場の相互作用を量子電磁力学によって扱うとき、理論上は無限大となる電子の質量と電荷を有限な観測値に置き換え、矛盾のない理論体系を確立しようとする理論。朝永振一郎、アメリカのシュウインガー、ファインマンがそれぞれ独立に提唱し、これによって量子電磁力学は一応の完成をみた。
それにしても、ずっと足し続けると、「1 + 1 + 1 + 1 + …… = −1/2」、「1 + 2 + 3 + 4 + …… = −1/12」、つまりマイナスになる。言い換えると、プラスの集積の結果はマイナスである。理解不能です。
相対性理論は「時間を未来に向かって無限に進んでいくと過去に戻る可能性がある」としていますが、これに似ています。
また、一頃流行った弁証法の法則の中に「量の蓄積が質的変換を結果する」、「否定の否定」というようなものがありましたが、これにも少し似ています。「プラスの蓄積が質的変換を結果してマイナスになる」、「プラスは否定されてマイナスになり、また否定されてプラスになる」というわけです。
???
 
 
◎ ―――  フロイトの精神分析について 雑考  ―――
ジグムント・フロイト(Sigmund Freud)(三省堂「大辞林 第二版」から) (1856〜1939年)オーストリアの精神医学者。精神分析の創始者。自由連想法を主にした独自の神経症治療を創始し、無意識の過程と性的衝動を重視した精神分析学を確立。文学や芸術の領域にわたり大きな影響を与えた。1938年、ナチスの迫害を逃れ、ロンドンに亡命。著「夢判断」「精神分析入門」など。
 一頃相当流行ったフロイトの精神分析には私も(同世代の人たちの一定部分もそうだったと思うのですが)惹かれ、フロイトの『精神分析入門』は繰り返し読んだ本です。
 フロイトの精神分析という手法は、人間の意識を「顕在意識」と「潜在意識」にわけ、「顕在意識」は建前の意識、言い換えると意識の外皮であり、本質的な意識、言い換えると本音の意識は「潜在意識」だとするものです。
 そして、本音の意識としての「潜在意識」を大きく規定しているのがリピドー(性的衝動、性的エネルギー)だとフロイトは主張します。従って、人間の行動をコントロールしているのはリピドーだとジグムント・フロイトは主張するわけです。
 この精神分析という手法によって神経症治療に成功している、従って精神分析理論の正しさは実践によって証明されているとフロイトは言うのです。
 マルクス、エンゲルスにも大きな影響を与えたと言われている『キリスト教の本質』を書いたフォイエルバッハも「愛の中で最高の愛は、性愛である」と述べていますし、生物学も人間を含む動物の三大本能として「摂食本能(食欲)」、「生殖本能(性欲)」、「防衛本能」をあげています。
 「無意識の過程と性的衝動を重視した」精神分析学は、人間の本能を「侮蔑」から解放し、それに正当な地位を与えようとし、個人としての人間を最高の存在へと浮上させようとしたところに、その意義があるのかもしれません。
 精神分析学がどの程度正しくどの程度正しくないのか、心理学に素人の私には自信がありませんが、そうは言っても、人間の本能を「侮蔑」から解放し、個人の尊厳を大事にする姿勢には共感するものです。
 「国を愛する気持ち」、「郷土を愛する気持ち」を法律によって強制する改悪「教育基本法」の成立は、突き詰めれば再び「国のために死ぬ」ことを美化し、強制することに通じています。この道は、個人の尊厳への蔑視であり、「生きたい」という人間の本能への敵視に他ならないと思います。
 全体主義は、もうたくさんです。 
 
 
◎ ─── 進化論についての若干の疑問 ―――
1 進化論
「進化論」(三省堂「大辞林 第2版」から) 生物は造物主によって現在の形のまま創造されたとする種の不変説に対して、原初の単純な形態から次第に現在の形に変化したとする自然観。19世紀後半ダーウィンらによって体系づけられ諸科学に甚大な影響を与えた。
2 若干の疑問
物が生命に、生物に、そして人間の精神に進化する、飛躍するというような「マジック」を、私は簡単には信じられません。
 地球以外で生命が見つかっていないのはなぜか?
 現代の科学も、物から生命をつくりだすことに成功していないわけですし、物から生命への、精神への飛躍の「マジック」を、そう簡単に安易に信じるのはどうなのだろうかと感じています。
3 IMPROBABLE by ADAM FAWER
 いま IMPROBABLE を読んでいます。ADAM FAWER が書いた小説です。その中に、次のような箇所があり、進化論に疑問を持っている人はいるのだと思いました。
Darwin's postulate that evolution and natural selection result from random mutations is completely unproven. 
 和訳すると、以下のような文書になると思います。
 進化と自然淘汰はランダムな突然変異の結果だとするダーウィンの原理は、完全に未証明である。
4 突然変異と言われても
 突然変異で進化すると言われても、それは何も証明していないのと同じだと私も感じます。
 物→生命→精神の飛躍の「マジック」について、突然変異でそうなるのだと説明されても、理解不能です。物から生物の原初の単純な形態をつくり出すことを、人類は、現代の科学は、まだできません。進化論について、若干の疑問を持たざるを得ません。
 DNAの自己進化というようなことも言われていますが、これも、物→生命への飛躍を説明することはできないような気がします。
 
 
◎ タイムマシン? タイムトラベル? 佐藤勝彦東大教授監修の本
 『タイムマシンがみるみるわかる本』(監修者 佐藤勝彦東京大学大学院理学系研究科教授 発行所 PHP研究所)を読んでみました。
 この本に書かれているのは、結論から言うと、未来に向かっても、過去に向かっても、タイムトラベルは理論の上では可能だ、との見解です。困難さで言うと、過去へのトラベルのほうが困難で、未来へのトラベルは困難でないどころか既に現実に起こっている、としています。
 この本によると、高速で移動する乗り物に乗ると止まっている時に比べて時間の進み方が遅くなる→従って、東京から新幹線に乗って博多駅で降りれば、そこはもう未来の世界である(但し、10億分の1秒ほどという、ほんのわずかだけの未来)、ということになります。
 アインシュタインの相対性理論だと、そうなっているとのことです。
アインシュタインの相対性理論は「時間は絶対的ではなく、相対的である」と主張します。
この本『タイムマシンがみるみるわかる本』によると、「光の速さの90%で飛行する亜光速宇宙船に乗れば、その中では時間の進む速さが約半分になる」とのことです。
「亜」は、より小さいことを表していますから、「亜光速」は光速に近いけれど光速より小さい(遅い)速度を意味しています。
 縦、横、高さの三次元に時間という四番目の次元を加えて、時間と空間をまとめて時空(四次元)として取り扱われることになっている、とのことです。
 ただ、私の記憶だと、比較的最近読んだ別の本は、この「四次元」説を否定し、「時間は存在しない。存在するのは、物質の運動だけだ。時間は、あったほうが人間にとって都合がいいから、人間が頭の中で作り出したもので、存在するのは物質だけであり、物質の運動だけだ」と主張しています。わかりやすい理論です。存在するのが、物質であり、物質の運動だけだとすれば、タイムトラベルなどできるわけがありません。不可能です。タイムトラベルというマジックは、敗北します。
この本『タイムマシンがみるみるわかる本』は、「重力によって時間の遅れが生じる」と言います。そして、巨大な重力を及ぼす天体(たとえば中性子星)を使ってのタイムトラベルの可能性に言及しています。
 相対性理論によれば未来へのタイムトラベルは可能、というのがこの本の結論です。
 しかし、この本も、過去へのタイムトラベルの困難さを認めています。過去への旅が実現すると、「原因は過去にあり、結果は未来にある」という因果律が破綻するからです。因果律を破る過去への旅は不可能なのです。
 しかし、この本は、過去へのタイムトラベルの可能性として、次のような可能性をあげています。
 1 相対性理論の方程式を解くと、ある場合には時間がループしているような答えが存在する。この場合、未来へどんどん進むと、過去に来てしまう。
「ループ」 輪。輪の形をしたもの
 ニーチェが唱えた「永劫回帰(永遠回帰)」が現代によみがえってきた、そんな感じです。
 2 光の速さを超えれば過去への旅ができる。光より速く飛ぶミクロの粒子が存在するのではないかと考える科学者が一部に存在する。その超光速粒子はタキオンと呼ばれている。
しかし、実際にタキオンの存在が確認されたことはありません。
 3 過去へ行けるタイムトンネル(ワームホール)を作る(あるいは利用する)。
「ワームホール」は、宇宙空間にあいた穴のことです。宇宙空間にあいたワームホールを通って移動できれば、移動速度が光の速さを超えることも可能になる、とのことです。
 しかし、宇宙に実際に存在することがわかっているブラックホールと違って、ワームホールは理論上の存在にすぎません。
 4 宇宙ひもを使ったタイムトラベルというアイデア
 この本によると、宇宙ひもは、超巨大な質量を持つひも状の天体。生まれて間もない宇宙の中で宇宙ひもができた可能性が指摘されている、とのことです。本当に宇宙ひもができたのかどうか、まだ確認されていません。宇宙ひもは超巨大な質量を持つために、周囲の時空を大きく歪めます。
 5 多世界解釈という考え方。パラレルワールド(並行世界)。
 一人の自分、一つの世界、一つの宇宙だとすれば、因果律を破る過去への旅は不可能です。それを解決するために、複数の並行世界の存在という多世界解釈があります。量子論からこのような解釈が発生し、多世界解釈を支持する科学者がごく少数ですが存在します。
(『Newton』2006年7月号「量子論」特集は、次のように解説しています)
量子論のある考え方によれば、私たちが住む世界とは様子の違う「パラレルワールド(並行世界)」が無数に存在するとのことです。この考えに否定的な物理学者も多くいますが、支持者も増えつつあると言われています。
 量子論の不思議な基本原理として「電子のようなミクロな世界では、一つの物体は同じ時刻に複数の場所に存在できる」があります。「状態の共存」と量子論はよんでいます。従来の常識である「一つの物体は、同じ時刻に複数の場所には存在できない」をまさに根本から覆すものです。
 一つの電子が、同じ時刻に複数の場所に存在しています。ところが、それを観測すると、電子は一つに「収縮」してしまいます。言い換えると、一つの電子が同じ時刻に複数の場所に存在しているにもかかわらず、観測すると、電子は複数の場所に存在しておらず、一つに「収縮」しているのです。観測すること自体が電子の状態に影響を及ぼしてしまうのです。
 なぜ「観測すると一つに『収縮』してしまうのか」、量子論でもまだ解決していない、とのことです。「観測すると一つに『収縮』してしまう」この事実から出発して、「パラレルワールド(並行世界)」が無数に存在するとの考え方に結び付くようです。
 同じ時刻に複数存在していたものが、観測すると「収縮し、一つだけ残り、他は消えてしまう」のは、観測すること自体が影響を及ぼしたのではなく、また観測すること自体が影響を及ぼすことができるわけはないのだから、もともと「パラレルワールド(並行世界)」が無数に存在するのだ、存在する複数世界の中の一つの世界だけを観測は捉えたのだ、というような主張になるようです。
 
 
◎ 量子論について
 『Newton』創刊300号記念ということで『Newton』2006年7月号に、「量子論」が特集・掲載されていましたので、早速買って読んでみました。私としては特に「量子力学の不確定性原理」には、従来一般に信じられ続けてきた(私も信じてきた)「決定論」を覆すなかみを含んでおり、注目してきました。それを含めて、わかりやすく解説されていることを期待して購入しました。
 私が驚異的な理論、考え方、事実として感じているものの中に、たとえば、@「人格はDNAの自己表現である」、A「生命は自分で自分の道を切り開く」(たとえば、ある種のカエルは、同性どうしを、大量に同性だけを異性のいない場所に閉じ込めると、一方が異性へと変化して、子孫を残すとのことです)、B「量子力学の不確定性原理」の三つがあります。
 今回は、雑誌『Newton』の力を借りて、量子論について感想的なことを書かせていただきます。
(以下の記述は、『Newton』の記述に基づいて、記述したものです)
 私たちの世界観を覆した理論が二つあります。「相対性理論」と「量子論(量子力学)」です。量子論がなければ、パソコンや携帯電話も生まれなかったとのことです。
 量子論によると、電子のようなミクロな粒子は、何もないはずの空間から突然生まれたり消えたりします。宇宙誕生の謎も量子論が解き明かしてくれると期待されているとのことです。
 また、ある解釈によれば、私たちが住む世界と様子が違う「パラレルワールド(並行世界)」が無数に存在すると言われています。
 量子論は、「決定論」を否定し、「未来は決まっていない」と主張します。量子論が誕生する以前は、フランスの科学者ピエール・ラプラスのような考え方「仮に、宇宙のすべての物質の現在の状態を厳密に知っている生物がいたら、その生物は宇宙の未来のすべてを完全に予言することができるだろう。つまり未来は決まっていることになる」、このような考え方、「決定論」が、物理学者の間では一般的だったようです。
 私(海野)もそうでした、量子力学の不確定性原理を知るまでは、「決定論者」でした。原因、結果、原因、結果……の必然の連鎖を信じていました。しかし、電子のようなミクロな粒子の世界では、こんな考え方は通用しない、と量子論は主張し、明らかにします。
 量子論は「真空では物質が生まれたり消えたりしている」という事実を明らかにしました。「無」から「有」が生まれるというのです。この事実から、量子論は宇宙誕生の謎に接近し、「『無』から宇宙が生まれた」という仮説が考えられているとのことです。
 また、前にも述べましたように、量子論のある考え方によれば、私たちが住む世界とは様子の違う「パラレルワールド(並行世界)」が無数に存在するとのことです。この考えに否定的な物理学者も多くいますが、支持者も増えつつあると言われています。
 量子論の不思議な基本原理として「電子のようなミクロな世界では、一つの物体は同じ時刻に複数の場所に存在できる」があります。「状態の共存」と量子論はよんでいます。従来の常識である「一つの物体は、同じ時刻に複数の場所には存在できない」をまさに根本から覆すものです。
 一つの電子が、同じ時刻に複数の場所に存在しています。ところが、それを観測すると、電子は一つに「収縮」してしまいます。言い換えると、一つの電子が同じ時刻に複数の場所に存在しているにもかかわらず、観測すると、電子は複数の場所に存在しておらず、一つに「収縮」しているのです。観測すること自体が電子の状態に影響を及ぼしてしまうのです。
 なぜ「観測すると一つに『収縮』してしまうのか」、量子論でもまだ解決していない、とのことです。「観測すると一つに『収縮』してしまう」この事実から出発して、「パラレルワールド(並行世界)」が無数に存在するとの考え方に結び付くようです。
 同じ時刻に複数存在していたものが、観測すると「収縮し、一つだけ残り、他は消えてしまう」のは、観測すること自体が影響を及ぼしたのではなく、また観測すること自体が影響を及ぼすことができるわけはないのだから、もともと「パラレルワールド(並行世界)」が無数に存在するのだ、存在する複数世界の中の一つの世界だけを観測は捉えたのだ、というような主張になるようです。まさに、宗教論争、神学の世界を彷徨っているような気分になります。
 さきほどの「無」から「有」が生まれるという、まさに「神学的な現象」の解明に向かいましょう。量子論の説明を、誤りを恐れず単純化すると、「『無』=真空でさえエネルギーが完全にゼロの状態はありえない」、「真空の持つエネルギーの揺らぎによって、素粒子があちらこちらで生まれては消えている」ということになるようです。 
 宇宙は膨張を続けていることがわかっているとのことです。これを突き詰めて考えていくと、時間をさかのぼればさかのぼるほど宇宙は小さくなり、宇宙は大昔には、原子よりもさらに小さかったことになります。ここから、宇宙は「無」から誕生したという有力な仮説が生まれた、ということになるようです。「無」と言っても、さきほど説明したようにエネルギーは持っているわけですから、完全な「無」ではありませんが。
 そして、「無」から生まれたミクロな宇宙が、何らかの原因で急膨張をおこし、私たちの宇宙へと成長したと考えるのが、「無からの宇宙創成」のシナリオであり、まさにシナリオであり、まだ仮説の段階だとのことです。
 繰り返しますが、宗教論争、神学の世界を彷徨っているような気分になります。
 
 
◎ 『ホーキング 虚時間の宇宙 宇宙の特異点をめぐって』を読んで
 『ホーキング 虚時間の宇宙 宇宙の特異点をめぐって』(著者 竹内薫 発行 講談社)を、「虚時間」に興味を惹かれて、読んでみました。
 あらためて、宇宙論、宇宙物理学は、仮説、シナリオから成り立っているのを、感じました。
 この本で竹内薫氏が紹介している宇宙論の仮説、シナリオ等を、以下に羅列してみます。
○ 宇宙は(原因不明であるが)ビッグバンという大爆発から始まって現在でも膨張し続けている。ビッグバンは特異点だった。
○ 特異点とは、大きさがゼロで、物理量が定義できないような空間の点である。
○ 超ひも理論は、特異点を回避するために「点」ではなく、長さを持った「ひも」から物理理論を構築しよう、というアイディアがもとになっている。
○ 超ひも理論では、「ひも」のほかに、「面」も登場し、さらに、ブレーン(膜)も出てくる。
○ ブラックホールの周囲には、光でさえ脱出できないような時空の境界線が存在する。 
○ ブラックホールは量子効果により「放射」し、しまいには蒸発する。
○ 量子論では、いろいろな物理量が不確定になる。
○ 時間にはじまりはない。時間に始まりがないということは、境界が無になったのである。ビッグバンも特異点もなくなったのである。このような特異点のなくなった宇宙のことを、「宇宙の境界条件は境界が無いことだ」と言い、それは「無境界仮説」と名付けられている。
○ インフレーション宇宙というシナリオが考案されている。
○ 「なぜ宇宙の時間は一方通行なのか」という哲学的問題が存在する。
○ ホーキングは、ブラックホールが「別の宇宙」への入り口なのではないかと考えている。
○ 初期宇宙は虚時間だった。(ホーキングの仮説)
○ 「宇宙がどうやって始まったかについて、宇宙の外の何者かの助けを借りる必要はない。宇宙は完全に自己完結した系」(ホーキング)
○ 超ひも理論は、宇宙のあらゆる素粒子もさらに小さい「ひも」からできていると主張する。そのひものさまざまな振動状態が素粒子に見えるというのである。「ひも」というのは「ひも状になったエネルギー」という意味である。
○ 「ひも」は余りにも小さいので、数学的にはブラックホールと同等であることが判明した。
 
 
◎ 「余剰次元」 私たちには見えない「隠れた次元」が存在する? 
 2008/1/3 『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』(リサ・ランドール著 向山信治監訳 塩原通緒訳 NHK出版)を読み終わりました。600頁超です。
 現代物理学の到達が、実は未到達の部分が多く、仮説、シナリオで成り立っているのが、よくわかりました。
 著者リサ・ランドールが主張している「余剰次元」の存在、私たちには見えない「隠れた次元」の存在、言い換えると「5次元時空」の存在、あるいは5次元を超えるような時空の存在も、仮説であり、シナリオの一つであることを、著者自身が認めています。
 私たちに見える、わかる空間は、前後、左右、上下の3次元です。3次元空間です。これに時間を加えて4次元時空と言っています。時間を、私たちは見ることはできませんが、その存在を感じているし、わかっています。
 著者リサ・ランドールは、この私たちに把握されている(少なくとも把握していると感じている)4次元時空以外に、もう一つの次元あるいは多数の次元が存在している可能性を、仮説として、シナリオとして、提示しているのです。それを彼女は、「余剰次元」と呼びます。
 余剰次元は、隠れていて、私たちには見ることも、感じることもできないと、彼女は説明します。逆に言うと、見ることも感じることもできないのは、隠れているからだ、ということになります。
 一言で言うと、余剰次元の理論が有力な仮説として注目されてきているのは、余剰次元の導入によって、物理学上のいろいろな謎が解明できるからだ、ということのようです。
 仮説の有力さを強めるには、実験による確認が必要ですが、ジュネーブ近郊に建設された超高エネルギーの粒子衝突型加速器、大型ハドロン加速器(LHC)での実験によって、余剰次元の存在がある程度確認できる可能性がある、とのことです。
 というのは、5次元時空には「KK粒子」が存在し、KK粒子は5次元から4次元に移動することができる粒子なので、そのKK粒子の存在を大型ハドロン加速器(LHC)での実験によって確認できれば、5次元時空の存在を裏付ける有力な証拠となる、というわけです。
 この本の最後のところで、現代物理学の到達として、空間とは何か、時間とは何か、その解明があらためて問題となっていること、「空間と時間は消える運命にあるのかもしれない」、「空間と時間は幻想に過ぎないかもしれない」、「空間と時間はもっと根本的なものから派生した二つのものかもしれない」という考えが紹介されています。
 いずれも仮説です。
 ひも理論、ブレーン(膜)理論、宇宙論、等々、仮説です。シナリオです。冷徹に見ることです。
 
◎ 『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』から学ぶ(1)
 『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』(リサ・ランドール著 向山信治監訳 塩原通緒訳 NHK出版)を読み、「余剰次元(私たちには見えない隠れた次元)の存在」だけでなく、物理学上の仮説、理論をいろいろ学ぶことができました。
 以下に紹介します。
○ ひも理論
 自然界の最も基本的な単位は粒子ではなく、万物のもととなるのは振動するひもであるという考え。「ひもの振動から粒子は生まれる」というようなことを主張しているようです。
「ひものさまざまな振動の仕方に応じて、さまざまな粒子が現れてくる」(リサ・ランドール)
○ 「歪曲した幾何」という概念
 アインシュタインの一般相対性理論から派生する概念だとのことです。一般相対性理論によれば、空間と時間は単一の時空構造に統合される。時空構造は、物質とエネルギーによってねじれ、歪められる。時空の歪曲です。これは仮説というより、実験によってある程度確認されているようです。
○ ブレーンワールド
 4次元時空を超える高次元時空が存在するとすれば、高次元時空の重要な要素としてブレーン(膜)が存在するという考え。私たちの宇宙を構成する物質がブレーンに閉じ込められていると考える理論。
○ 「重力は時空の幾何構造の歪み」 
 アインシュタインの考えでは、重力は物体に直接作用する力ではなく、時空の幾何構造の歪みであり、その歪み(曲率)はそこに存在する物質とエネルギーによって決まる、とのことです。
 ニュートンが重力→物体と考えたのに対してアインシュタインは、物質とエネルギー→時空の歪み→重力と考えたわけです。
 「質量とエネルギーは時空を曲げ、その曲がった時空が重力場の原因と考えられる」(リサ・ランドール)
○ 量子力学による粒子の記述
 実験によると、各電子また各光子(光子=光を伝える粒子)は、二つのスリットを同時に通り抜ける。不思議です。量子力学は、粒子は出発点から到達点までどの経路でもとることができる、粒子はその存在を特定できるものではなく確率の観点でしか記述できない、粒子は波でしか記述できない、と主張する。
○ 反粒子
 反粒子はフィクションではなく、素粒子物理学から見た世界の一部をなしている、とのことです。
 「粒子と反粒子は出会い、お互いを滅ぼし、その結果としてエネルギーの爆発を生む。そのエネルギーから、新しい一対の粒子と反粒子が現れてくる」(リサ・ランドール)
○ 質量を持たない粒子
 光子(光を伝える粒子)とグラビトン(重力を伝える粒子)はともに質量がゼロである。
○ 「仮想粒子」
 「量子力学と不確定性原理の帰結として存在する短命の粒子」(リサ・ランドール)のことです。
 「真空はエネルギーの貯蔵所と考えることができ、仮想粒子は、その真空から生まれ、エネルギーの一部を一時的に借りている。仮想粒子はほんの一瞬しか存在せず、借りたエネルギーをもったまま、すぐにまた真空に消失する。そのエネルギーはもとの場所に還ることもあるが、どこか別の位置にいる粒子に伝えられることもある」(リサ・ランドール)
○ 陽子の寿命
 陽子の崩壊速度は極めて遅く、その寿命は宇宙の年齢をはるかに超える、とのことです。
(続く)
 
◎ 『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』から学ぶ(2)
(『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』(リサ・ランドール著 向山信治監訳 塩原通緒訳 NHK出版)を読み、「余剰次元(私たちには見えない隠れた次元)の存在」だけでなく、物理学上の仮説、理論をいろいろ学ぶことができました。以下に紹介します)
○ ダークマター 
 ダークマターは、宇宙全体に広がっている光を発しない物質で、その重力の影響を通じて存在が発見された、とのことです。宇宙のエネルギーの約25%がダークマターに蓄えられている可能性があるのですが、それが何であるかはいまだにわかっていない、とのことです。
○ ひも理論の基礎
 物質の基本的な性質についてのひも理論の見方は、「物質の根本をなす最も基本的で分割不可能な物体は、ひもである」、「電子もクォークも、すべてがこのひもの振動からできている」というものです。
○ 宇宙論
 宇宙の膨張は加速している、とのことです。何が宇宙の膨張を加速しているのかという宇宙論的な謎が生じています。
○ KK粒子
 カルツァークライン(KK)粒子は高次元粒子の4次元での表れである、とのことです。
 「高次元」 4次元を超える次元
 「高次元粒子」 高次元に存在するとされる粒子
 高次元に存在する粒子が4次元に移動してきたとすると、KK粒子として4次元に表れる、ということです。逆に言うと、実験によってKK粒子の存在が確認できれば、高次元の存在を確認する有力な証拠となるわけです。
 「KK粒子は、この4次元世界で最もつかまえやすい余剰次元からの密入国者だ」(リサ・ランドール)
○ 重力の認識の限界
 0.1ミリメートルより短い距離にある二つの物体の間で重力がどう働くかはいまだにわからない、とのことです。
○ ブラックホールの蒸発
 ブラックホールは永遠には存在しない。「ホーキング放射」という現象を通じて放射を発することにより、蒸発してしまう、とのことです。
(なお、ブラックホールの地平線の近くでは、時間が歪曲する、とされています)
○ 粒子
 おなじみの粒子ですが、実は、粒子の質量や性質の起源はまだわかっていない、とのことです。
○ 次元、空間、時間
 そもそも次元とは何か? 空間とは何か? 時間とは何か? それらは消える運命にあるのかもしれない。幻想に過ぎないのではないか。空間も時間ももっと根本的な何かから創発した性質と考えてもおかしくない。等々。
現代物理学の到達として、あらためて問い直されている、とのことです。
 
 
◎ 突然変異とは何か? を説明しているシュレーディンガー『生命とは何か』
 遺伝上の進化で役割を果たしていると言われている「突然変異」とは何か?
 「突然変異」と言うだけでは、何も説明していないのではないか? という疑問に、量子論の立場から回答を与えようとしているのが、シュレーディンガー『生命とは何か』(岩波文庫)です。
 シュレーディンガーと言えば、「シュレーディンガーの猫」で有名な、量子力学の創始者と言われている人です。
 彼の説明は、以下のようなものです。
 「ダーウィンは小さな連続的な偶然変異がもとになって自然淘汰が行われると考えたが、これは誤りである。小さい連続的な変異は遺伝しない」
 「オランダ人ド・フリースは、飛び離れた変化をしたものがごく少数、たとえば何万に二つとか三つの割合で出現する、ということを発見した。『飛び離れた』という言葉は、変化の起こっていないものとごく少数の変化の起こったものとの中間の形のものがまったくない、という意味で不連続性があることを意味する。ド・フリースはそれを、突然変異と名付けた。不連続性ということが重要である」
 「突然変異は、遺伝子という分子の中で起こる量子飛躍によるのである」
 「突然変異は完全に遺伝する」
 「突然変異は、一個の染色体の中の一定の部分に起こるある変化によりひき起こされる」
 「突然変異には有害なものと有利なものがある」
 「突然変異は稀にしか起こらない出来事である」
 「突然変異が起きる率は、X線またはガンマー線を照射することによって、何十倍にも増大する」
 「人類の種が(X線による)望ましくない突然変異により害を受けるという可能性に、関心を払うべきである」
 
更新日時:
2008/08/20

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Last updated: 2010/3/18