≪ワタシ「ももちゃん」になる≫
ワタシが「ももちゃん」になるまでのお話・・・
ワタシはミニチュアダックス・ロングヘアード・レッドの女の子。
まだワタシが赤ちゃんだったころ、お母さんとお別れしてきょうだいたちと遠いところへ連れていかれました。ついたところは大きな窓と箱ばっかりあるおうち。
ワタシたちは、その日からひとつの箱のお部屋で暮すことになりました。きょうだいがいたから安心でしたけど、お母さんがいないから淋くてみんなで鳴きました。
おうちの中には、いくつも箱があって、その中にワタシたちによく似た小さなお友だちがたくさんいました。このおうちには人間のおねえさんが何人もいて、ワタシたちのご飯を持ってきてくれたり、お掃除をしてくれたりしていました。
毎日、どこかからいろいろな人間が入れ替わり来ては、にこにこした顔でワタシたちを見ていました。
ある日、ワタシの妹がおねえさんにだっこされて連れていかれたきり、戻ってきませんでした。妹も弟も次々にいなくなり、ワタシはひとりぼっちになりました。
よその箱にいたお友達もだんだんいなくなりました。そして、お部屋には代わりに新しい小さなお友達が入ってきました。
このおうちに来てからだいぶたち、ワタシは新しく来た子たちよりも少し大きくなっていました。だから、ここのことがだんだんわかってきました。
どうやら、ここはワタシたちの新しいお母さんを捜す場所みたいです。ワタシも早く新しいお母さんにもらわれて行きたい! 早くこの狭い箱から私を出して連れてって!
たくさんの人間がおうちに入り、ワタシを見にそばまで来たとき、一生懸命に愛嬌を振りまきました。「ここから連れて行って。新しいお母さんになって。」来る日も来る日も一生懸命に訴えました。
大きな窓が明るくなって誰か人間が来て、暗くなってオヤスミナサイをして、また明るくなって… それをずっとずっと繰り返して、ワタシはまだ新しいお母さんがワタシを迎えに来てくれるのを待っていました。
そのうち、ワタシは小さなお友達から離されて、ちょっと大きくなったお友達とおうちの窓に近い方に移されました。ここは外から来る人間がすぐにわかる特等席。きょうもここで新しいお母さんを待つことにしました。
ある日のことでした。楽しみな夕ご飯までまだだいぶ時間があるとき、ふたりの人間がワタシのそばまで来ました。
「ねえ、ねえ、ここから出して、連れてって。ワタシを子供にして!」
必死で頼んでみました。そのふたりはにこにこしていたけど、別の小さなお友達のほうへ行ってしまいました。
「ああ、きょうもダメか…」
あきらめかけていると、ふたりはまたワタシのほうへ近づいてきました。喜んでいるとまた他の子のところへ行っちゃう… 待って待って、ワタシはここよ。来て、来て!
そうやってワタシはふたりを呼んでいました。ワタシの願いが通じて、ふたりはワタシのところにきました。「今度こそ…」ワタシはぴょンぴょン跳んでみせて精一杯の愛嬌で自分自身をアピールしました。
そのとき、このおうちにいつもいるエライ人がワタシをだっこして、そのふたりに会わせてくれました。箱の外に出たのは久しぶりでした。エライ人とそのふたりは何か話をして、おうちのおねえさんがワタシの耳をお掃除して爪を切り、ワタシは小さな箱に入れられました。さっきのふたりの声がしてきて、ワタシは箱ごとだっこされふたりの匂いに包まれておうちの外へ出られたんです。
コトコト揺れる何かに乗せられて、ついたところはふたりのおうちでした。お友達もいない静か過ぎるところ。
「これからワタシはどうなるの?」 せっかくあのおうちから連れ出してもらったけど、ワタシはちょっと不安になりました。
しばらくして夕ご飯をもらいました。お腹がいっぱいになったけど、まだ気持ちが落ち着かなくて、鳴いてしまいました。「ワン、ワン、ワン」
ふたりはワタシを「ももちゃん」「ももちゃん」と呼びました。ご飯をくれた毛の長い人がきっと新しいお母さんだ。短い毛の人はきっとお父さんかな。
きょうからワタシはこの家の子なんだ。そしてきょうからワタシは「ももちゃん」になったんだ。