思ふ




平成15年7月14日(月)  出国
前略 母さん、スリランカにはコンビニがありません。
 
 
 
 
<はじめに>
 
ついにやってきてしまった。
南国の島、スリランカ。
あぁ、そうそうご紹介遅れました。
私この度、スリランカのお子達に日本からはるばるサッカーを教えに来ました、みずたにです。
自慢じゃありませんが、海外なぞ旅行でも一度も行ったことがありません。
ちなみに飛行機も過去国内を2回しか乗った事がありません。
ですから今回パスポートなんてものを初めて持ちましたよ。
そういうわけでビザの意味が未だに分かりませんけど、以後宜しくおねがいします。
後でビザって10回言ってみようと思います。
 
さて、そんな海外初心者丸だしの僕なんですけどもね、まぁ聞いたことある人もいるかもしれませんが、青年海外協力隊ってのでスリランカに2年間サッカーコーチとして派遣されちゃったわけ。
言ってみれば国際ボランティアです。
まぁ難しい話は置いておいて、これから始まる2年間の生活を僕の日記でご紹介しますね。
 
2年間僕を取り巻いた「とんでもない」奴ら、是非あなたに知って欲しい。
 
だって、僕1人の想い出に留めとくのはもったいないじゃない、一緒に「スリラン化」してください。
 
さみしいから。
 
平成15年7月15日(火)  首都
スリランカ人が全員泥棒に見えます、みずたにですこんにちは。
あのー、最初にお聞きしたいんですが、皆さんスリランカって言われてどのくらいの知識があります?
知りませんよね。
僕だって知らない。
そりゃ一応日本に居る時に多少なりとも勉強はしたけど、初めての海外でいきなり「スリランカ」って言われても「あ〜、あの首都名の長い国か」ぐらいのもんですよ。
 
そう、「スリジャヤワルダナプラコーテ」。
学生時代一生懸命暗記して覚えました。
 
 
現地に来たら「コーテ」で通じます。
 
ぼ、僕の一生懸命を返せっ!
誰もあんな長い首都名いちいち言ってないぞ!
 
もうそれでいきなり出鼻をくじかれたわけなんですけども、他にもほら、セイロンティって聞いたことないです?
スリランカってば、北海道の3分の2くらいの面積なのに世界でも紅茶の生産量が高いお国なんでございますよ。
砂糖をスプーン3,4杯ドバドバ入れた甘すぎる紅茶をとにかく飲む。
 
朝起きたら紅茶。
昼食前に紅茶。
昼食後に紅茶。
寝る前に紅茶。
 
んで死ぬ前に糖尿、みたいな。
 
後はほらカレーの国ですね。
スリランカが王国だったら、即行「カレーの王子様」を探そうと思ったんですけど、随分前に滅びました。
そういうわけで僕が今日から「カレーの王子様(海外国籍)」として君臨するわけなんですけども、いかんせんスリランカのカレーってめちゃくちゃ辛い。
しかも米はパッサパサだしね。
ウジにクリソツです。
まぁクリソツって言い方も平成の世ではどうかと思いますけど。
 
んでそんな辛いカレーをこんな灼熱の国でクーラーもないのに汗だくになりながら毎日食べ続けるのかと思うと、それに僕の五臓六腑は耐えれるのかと不安になってきました。
 
さて、今日もそんなカレーと格闘しながらぎゅうぎゅう詰めのバスに揺られてオフィスに行ったりしなきゃいかんのです。
 
完全に乗車率200%くらいのバス。
汗だくの乗客。
 
バスの中は異臭がします。
隣のおじさんの脇が僕の顔のすぐ前にあるの・・・・。
 
加齢臭?カレー臭?
 
実は、僕が2年間一緒にサッカーをするお子たちと会うのはまだ1ヶ月程先です。
それまで、コロンボという街でまずはホームステイなどをして、体調、言語、文化等に慣れる訓練。
だからこのぎゅうぎゅうバスにも臭いにも慣れなきゃいけない。
 
そんなホームステイで僕がお世話になるのはジャガット夫妻。
奥さんはプシュパさんという、これまた押しの強い人なので、名前を「プッシュパ」さんにした方がいいと思うのだけど、この人が会うなり、
 
「ハ〜イ!マッサさ〜ん(僕の名前)。ワタシハ、ニホンゴ ノ ベンキョウ シタイデース!」
 
なんでそんなハイテンションなのよ・・・。
僕もつられて、
 
「ハ〜イ!プシュパさ〜ん。ワタシハ、シンハラ語(スリランカ語)ノ ベンキョウ シタイデース!」
 
 
僕の語学練習なのに、いきなり日本語で挨拶だもんな。
 
そんなプシュパさんの得意料理は「自称天ぷら」。
ただ、何でもかんでもココナッツオイルで揚げるだけ。
 
「いや、それは天ぷらとは言わないよ・・・。」って言えませんでした。
 
だって、彼女、押しが強いから。
 
 
 
平成15年7月30日(水)  混浴
ただでさえ暑い上にプシュパさんのテンションが高いので熱帯夜です、みずたにですこんにちは。
 
こんな暑い夜はシャワーを浴びるのが一番なんです。
スリランカって、お湯シャワーなんて観光客用の高級ホテルしかない。
だから専ら水シャワーが当たり前なんですけども、幸いホームステイ先のジャガット家にはちょっと広めのシャワー室がちゃんとある。
 
南の方では河なんかで水浴びしたりするらしいけど、ステイ先は一応室内です。
 
そのシャワー室、一つは僕の部屋と直通になってる。
んで反対側からは、プシュパさんたちの寝室とも直通になってる。
つまりシャワー室へはどちらの部屋からも行けるので、自分が入る時には相手側のドアをロックしないと、中で鉢合わせということにも成りかねないわけなんですよ。
 
シャワー室の使用方法について、当初プシュパさんからきちんと説明がありました。
 
「自分が入る時は、反対側のドアをロックしておいてね。そしたら中で鉢合わせしないから。」と。
 
今までそんな家族の決め事を忠実に守ってきた僕。
今日もシャワーを浴びようと、シャワー室へ足を踏み入れると・・・、(ガチャ)
 
そこには一生懸命脇の下を洗うプシュパさん(推定50歳)の姿がありました。
 
プシュパ「NOォォォォ!!!!!」
 
「NOォォォォォ!!!!!」
 
自分がシャワーを浴びる時には反対側のドアをロックする約束だったでしょプシュパさん!
ちゃんとロックしといてくれよ!
僕の心の叫びも虚しくしばらくプシュパさんの残像と格闘しておりました。
 
するとシャワー室を出てきたプシュパさんがニコニコしながら僕に一言言いました。
 
「マサさんもまだ若いですからねぇ。ノープロブレムですよ。あははは!」
 
なんか・・・・
 
僕がわざと覗いたみたいになってんですけど・・・。
 
この事件以来、僕が「シャワー浴びますね。」と言うと、プシュパさんは必ず、
「反対側のドア、開けといてもいいわよ。」と言います。
 
そして僕はシャワーを浴びる時、反対側だけでなく自室の方のドアもロックし、恐怖におののきながら泣きながらシャワーを浴びるのです。
 


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