朝、目が覚めると足と手と顔中が蚊に刺され、蕁麻疹のようになっていました。
モスキートーさん達、さぞ昨夜は日本人の栄養満点の血で酒池肉林だったことでしょうね、みずたにです、こんにちは。
今日は朝目が覚めて外に出ますと、庭で何やら掃除をしている男がおりました。
僕の住んでいるこの家は僕の配属先であるキャンディ市役所所有の建物。
基本的にキャンディのコミッショナー、つまり市役所で2番目に偉い人の別荘なのであります。
まぁ、別荘などと聞くと日本の方々は立地条件のいい豪邸、なんてのを想像するかもしれませんが、実際は築40年のボロボロの建物で要するにコミッショナーも使いたがらないから僕が入れられたというわけ。
まぁちょっと高台にあって立地条件はいいんですけどね。
だからその市役所所有の建物の周りを掃除するのも市役所職員の庭師。
その庭師が庭に居たのですよ。
僕が玄関から表に出て行くと、その男はニコニコとして僕に挨拶をしたのです。
「グッドモーニング、Sir。」
Sirですよ、Sir。
スリランカって昔はイギリスの植民地だったので、目上の人には敬称としてSirをつけるらしくてですね、明らかに僕より年上な彼が、家主である僕にSirと言ったのですよ。
ふむふむ悪い気はせぬぞ、うむ、良きに計らえ。
まぁそんなことは言いませんが、まずは1人寂しくキャンディにやってきて孤独な僕はシンハラ語で会話を始めました。
彼の名はジョールソン。
タミル人。
38歳。
キャンディ市役所職員。
バツ一。
2人の子持ち。
笑顔が素敵。
僕らはすぐに仲良くなりました。
通常、スリランカでは目上の者と目下の者があまり会話するのはよろしくない。
ましてや一緒に紅茶を飲むのも、食事をするのもタブーだ。
何故かと言うと、スリランカでは階級がはっきり分かれているので下の階級のものと親しく付き合うのは自分のステータスを下げることになり、つまりそれは「低能」と見られる。
だからスリランカではこれをしない。
僕とジョールソンの関係も通常なら家主と使用人である。
ジョールソンが僕の家に入ることは許されないし、やむを得ず入るときは裸足で申し訳なさそうに遠慮がちに入るのである。
会話は全てSirを付け、僕の言った事は絶対で、反対してはならない。
ところがジョールソンは僕にとって時にはシンハラ語の先生であり、
スリランカ生活のノウハウを教えてくれる先生であり、
一緒に楽しむ友達である。
仲良くならないわけがない。
そしてついに僕らは越えてはならない一線を越えてしまったのである。
そうなることはお互いに分かっていた。
彼の目を見たときから僕らはそういう運命に落ちたのだ。
誘ったのは僕だ。
モラルに反しているのは百も承知である。
しかし僕は自分の感情を抑えることが出来なかった。
そばにいたい、ただそれだけだった。
日当たりの悪い、冷えきったこの部屋と心にぬくもりが欲しかったんだと思う。
彼の笑顔に負け、ついに僕は禁断の一言を口にしてしまったのである。
「今夜うちでご飯食べていきなよ。」
夕食を共にするという家主と使用人の越えてはならない一線を僕らは越えてしまった。
一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐにジョールソンは、
「わかりました、Sir。」と答えました。
ちなみにその晩、初めてのインスタント味噌汁をすするジョールソンに言われて気が付いたのだが、
僕はどうやら「家で食べていきなよ。」というのを「家を食べていきなよ。」と間違えて言ったらしい。
どうやらジョールソンにとっても僕は面白くて興味を惹く存在らしい。
おかしいなぁ、俺日本ではそんな「ほっとけないキャラ」じゃなかったんだけどなぁ・・・。
そんなわけで庭師ジョールソンとの楽しい晩餐は「チャーハンは日本の料理じゃなくて中華料理なんだけど、日本ではよく食べられる料理だということを説明するのに苦労した」ひと時でした。
ちなみに僕が作ったチャーハンはどうやらお口に合ったらしく好評でしたが、インスタント味噌汁は嫌いみたい。
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