平日の仕事帰りにジャズライブを聴くというのは最高の贅沢の一つである。それも忙中閑に行けるのは最高である。昨日でもだめだし、翌日でもだめ、どんぴしゃのスケジューリングという幸運も手伝ってうれしさ倍増であった。
さらにうれしいことが2つ。Mさんというジャズ好きな素敵な方とご一緒できたということと、初めてライブを聴いた増原巌さんというベーシストのWhat's up?というクィンテットの演奏が最高にごきげんだったこと。これで御茶ノ水のNARUの夜が超最高!Very very Fantastic!な極上のひと時になった。
もう今月はどうでもいい、たくさん悪いことがあっても大丈夫だ。美輪某さんが言うところの正負の法則にしたがうと、たっぷりと正を一日で味わった。
さて、バンドメンバーだが、
<<What's up?パーソネル>>
増原巌(B)・・リーダー
河村英樹(TS)
田中洋一(TP)
堀秀彰(P)
安藤正則(DS)
1)会社脱出
18時の待ち合わせなので、遅くても17:40には出たい。午後から仕事のピッチが3倍テンポになる。だんだんとキーボードを打つ手のスピードがあがっていくのが分かった。中学1年の時に、今は亡きオヤジがタイプライター(ブラザーヤングエリート)を買ってくれたことに、本当に感謝する次第だ。
気分はオスカーピーターソンのように、いくつかのメールや文書を一心不乱にブラインドタッチでキーボードを打っていく。毎日こんな風に仕事をすればもっと早く帰れるなぁと思いつつ17:40に会社を無事脱出。
2)NARU到着〜BEFORE HOURS
18時過ぎにお茶の水のNARUに到着。店は夜の部開店したばかりというゆったりした感じであったが、一人目の客が来たので、店長風の女性は気合が入ってきたのが感じ取れた。早速メニューを見せられながら「8月はマッカラムが16,000円のところ8,000円になっております・・・」客単価あげるぞぉーという心意気が伝わってきた。勢いに負けたのかついついオーダーしてしまった。
しばらくすると、増原さんがコントラバスをもって地下の店に入ってきた。本番前1時間ちょっとある。モルツを飲みながら、増原さんがチューニングするのを拝見させていただいた。弓は使わず、ピッチカートでピアノにあわせて、あっという間に音を合わせるやいなや、いくつかのランニングで指ならしをしていく。
セーフコフィールドに入ったICHIROが試合開始までにやることがいつも決まっているということを聞いたことがある。増原さんもきっときちんとした人なのだろうか。一通りのプロトコルを終えたようだ。さぁ本番に備えるぞといったかのような笑顔がよかった。
そうこうするうちに、Mさんが到着した。やはり笑顔が素敵だ。私の勝手な持論であるが、ジャズ好きに悪人なしというのがある。増原さんも、Mさんも、善人オーラが溢れている。
3)オンステージ〜AFTER HOURS
19:30に開演、なかなか素敵なサウンドである。期待値よりも実際のほうがずっと良い、いわゆるカスタマーサティスファクション(顧客満足度)が高い。1ステージの約50分、ステージに吸い込まれるようにあっという間に過ぎた。終わるやいなやのマッカラムがまたうまい。Mさんの顔を見ると、ここに来て今日は良かった!こりゃ最後まで聴きたいな、という感じであったので、目で同じですと意を返した。休憩の合間、Mさんと色々とお話しながら、頭の中で、このバンドの演奏の良さはどこから来るのだろうか、と考えてみた。
まずドラムの安藤さんだが、引くところは引く、出るところは出る、とても分をわきまえた方だ。ここというところのパンチもある。バースで見せる存在感もなかなかのものだ。全体のサウンドも新鮮だ。恍惚とした表情から、演奏にしっかりと入り込んでいるのがわかる。ジャズが好きなんだなぁというのが伝わってきた。
ピアノの堀さんは、27歳ぐらいで一番若そうだ。なにしろ楽しそうにピアノを弾いている。色白の甘いマスクに赤いメガネがよく似合う。アドリブの時、フレーズを口ずさむのが特徴的だ。多彩なフレージングをしっかりと口ずさんでいるあたり、スポンテイニアスな才能の持ち主であることは間違いない。
トランペットの田中さんも30過ぎくらいの若さだ。オープントランペットでばりばり吹きまくるテクニックはブラウニーばりだが、ソリチュードのようなバラードで見せる繊細な歌心は相当の音楽センスを感じさせる。ガレスピーばりの頬の膨らみも、かなり練習をしている証左だろう。目を閉じて聴いていると、ブルーミッチェルに通じるような、透明感、明るさも感じた。関西をベースに活躍しているようだ。どうやら、ピアノ以外は皆関西出身のようだ。増原さんがメンバー紹介する時、トランペット「タナカ ヨーイチ」と、ナにアクセントつけるところが関西人の特徴である。
テナーの河村さんは一見表情が怖い。笑顔が少なめで、スティーブンキングの怖い小説にでも出てきそうな危うさ(失礼)または、総合格闘技のリングが似合いそうな怖さ(失礼)を感じさせていたが、音を聴くと、ただただ凄いの一言。予見できないフレージングの連発である。恐らくロリンズが進化したらこのようになるのではと思わせる。湯水のようにアイデアがあふれ、引き出しにないものが次から次へとあふれ出ているかのようだ。かつての日本人サックス奏者にはない、ワールドスケールのリズム感を持っている。このバンドの凄さの震源地はどうやらここにありそうだ。トランペットの田中さんがごきげんなアドリブを展開しているときにうっすらと笑みが出る。きっと心は優しくて相当明るい方なんだろう。
ベースの増原さんは、実に堅実なランニングで安心して聴いていられた。知性と人柄が演奏や表情に表れている。また、作曲の才能がすごい。聴いていたらスタンダードと間違うほどの完成度の高さを感じた。きっと4人からの信頼も厚いのだろう。相当のリーダーシップというものを感じた。オリジナルの「終わらない」という曲名のように、ずっと聴き続けていたい気になった。あっという間に23時過ぎ、3ステージが終わった。余韻がまだ覚めやらぬ、最高の一夜でした。
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