2002年9月4日。前回のロンカーターからはや3ヶ月。あっという間に季節は秋めいてきました。はじめて小曽根真(61年3月生まれ)の生に接するのはとても楽しみでしたが、その期待通りにナイスなセッションで、ますます彼が好きになりました。さて、その印象をご報告します。
(メンバー)
小曽根 真(ピアノ)リーダー
ジェームス・ジナス(ベース)
クラレンス・ペン(ドラムス)
クラウディア・アクーニャ(ヴォーカル)
アダム・ロジャース(ギター)
(ライブ報告)
19:00からの1STステージに、友人H氏が1時間前に席取り(シーティング)してくれたのですが、えらく早くから並んでたようでベストポジションは無く、場所は、ステージ最前列、クラレンス・ペン(68年生まれ)のドラムスのドまん前、バスドラから80CMほどのところに座る。(たまにはいいか)
ステージの右側から、ギター、ドラムス、ベース、ヴォーカル、そして左端がピアノという構成。やはり場所がら、クラレンス・ペンの強烈なドラミングにのっけから圧倒される。体に伝わるヴァイブレーションは相当なもの。しかし、決して不快ではない。
彼はとても高い音楽性と繊細さを持ち合わせたドラマーであることが容易にわかった。表情やたたきっぷりは、ある面ではリトルエルビン・ジョーンズという感じがしないでもない。なにしろ小柄ながらパワフルな黒人ドラマーだ。演奏中の必死の形相と笑顔がたまらなく絵になる。小曽根トリオとして6年近く一緒にやっているだけあって、とても息が合っていた。湯水のごとくあふれる多彩なリズムで堪能させてくれた。
小曽根のオリジナルから始まったが、一曲目はギターのアダム・ロジャース(36歳、初めて知りました)がとても上手なことに驚く。白人ギタリストだが、哲学者のような知的な顔だちで、無表情にすごいフレーズを連発する。早いパッセージのアドリブも悪い指癖もなく、なんなくこなし、そしてとても歌っている。さすが小曽根が気に入っただけあるな、と感心。
ベースのジェームス・ジナス(66年生まれ)は、これが、黒人の大男だが、なかなかのテクニシャンでビックリした。やはりベーシスト崩れの私としては、その指使いがとても気になった。なにしろ手がでかく指は太くて長い。身長はらくに190CMは超えているだろうか、指の長さ太さはウッドベースのネックが小さく見えたほどだ。ロン・カーターの指を太くしたような感じだった。ウッドベースの高音部の音程のよさ、アップテンポで見せる、のりのいいランニング。さらにエレキベースも得意で、5本弦を自在に奏で、これもまた調子がいい。新世代ベーシストであることに違いない。
ヴォーカルのクラウディア・アクーニャは、チリ人のようだが、今はニューヨークで活躍中の、美人歌手だ。ほんとんどが、ラテン系の歌をスペイン語で歌っていたが、とても感じがいい。赤いタイシルク風のパンツと赤いボディコンのノースリーブといういでたちも素敵。(^^) 強烈なバックのリズムに惑わされることなく、悠々と歌うところは、リズム感の良さを感じさせた。なにかメッセージ性のある歌を歌っていたようだが、意味はさっぱりわからないが、何か伝わるものがあった。顔形は、小曽根と仲の良い日本人ジャズヴォーカリストの伊藤君子に少し似ているなぁ・・・と思ったのは私だけだろうか?とてもチャーミングな方だった。オーソドックスなジャズも一曲ぐらい聴いてみたいなと思った。
そして、リーダーの小曽根真は、わたしが思っていた以上にジャズィーな超ナイスガイだった。以前よりそのピアノテクニックや作曲家としての才能は知っていたが、生を初めて聴いて、この人の真骨頂は、アドリブだな、と実感した。おそらくクラシックピアノでも食っていけるほどのその技術をもっているにもかかわらず、徹底的に事前練習しているのだろう、アンサンブルもぴたりあっているし、ミスタッチもない。演奏中、目を閉じて聴いていると、どんどんアドリブ世界に引き込まれていく。ベースとドラムスは対等なインタープレイでがんがん迫って来るにもかかわらず(相対的に音が弱めのピアノだが)全然存在感を忘れさせないリアクションと迫力ある音量でがっぷり対応する。その凄さは、溢れ出んばかりのアイデア、フレーズ、ハーモニーとあいまって独特の小曽根ワールドを作っていく。ところが決して、ワンマンリーダーではない。共演者をすごく大切にしている気持ちも伝わってきて、共演者同士の相互モチベーションの高さも感じた。これはひとえに彼の人徳の致すところだろう。曲の合間の彼の説明も、とてもホットで面白い。二階席の人に「元気?いいですねぇ、審査委員席のようで・・・」などと、口からのアドリブも相当なもの。これは関西人?ならではか・・・。しかし、一曲一曲丁寧な演奏、楽しく飽きない組み合わせ。 愛情あふれる説明。何をとっても、一級品であることに違いがない。
ラテン風のラウンド・アバウト・ミッドナイトはピアノトリオで演奏されたが、これがまたなかなかお洒落だ。ニューヨーク仕込のセンスだろうか。賑やかなラテン系とオーソドックスなジャズ、バラード。本ステージの最後は、小曽根オリジナルのバラード「WHERE DO WE GO FROM HERE」で締めくくった。心にしみわたる美しい曲だ。イントロのピアノソロで見せるその美しいハーモニーは小気味良いテンションが適度に効いている。この曲名からして、彼はニューヨークに住んでいるから、2001年9月11日の思いが色々とあるのだろう。また世界中を演奏旅行で回りながら、その繊細な感性で何か世の中の危ない変化に気づいているのだろうか。これからいったい人類はどこへ行くのだろうか? どうすればいいのだろう? 素晴らしい音楽だけではなく、そんなメッセージまでもらったような気がした。そのうちジャズマンの枠だけでは収まりそうに無い人物だと直感した。WHERE DO WE GO FROM HERE〜そのバラード演奏のあまりの美しさに、満員の聴衆は二度のアンコールを求めるが、疲れているだろうに、快く応じてくれた。
素晴らしい演奏に加え、共演者に対する心配りや、聴衆へ頭を下げる姿と腰の低い言葉の数々、そして笑顔に、「礼」をわきまえた、ナイスガイ日本人であることに同じ日本人として、そしてほぼ同世代人として、誇りを覚えた。サンキュー小曽根!!
書きたいことはたくさんあるのだが、TO BE CONTINUED TO THE NEXT SESSIONとしたい。
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