曾野綾子「ブリューゲルの家族」を読んでいて、いろいろな感慨がわいてきた。まず貧富とは心の問題、幸不幸とは心の問題だということ、財産があったり、家族の健康や収入とかとは次元の違うものであるということ、こういうことがじわーっと迫ってくる。この本は著者に読者からきた手紙というかたちで展開する。著者の返事はいっさい取り上げられない。ブリューゲルの絵を材料に、読者の一人息子、障害を持つ円(まどか)くんの生き様を通して、展開されるが、読んでいて、健常者と思っている自分が心に障害をもっている、あるいはある種の偏見という心のゆがみ(心の障害)を身につけているということ、それを自分は気づかないし、周りの人たちも気づかない、いや周りの人たちも、みなその意味で「健常」とは言いにくいということ、だから自分から自分を「健やかで、それが常である」などと認識すること(つまり自分を健常者だなどということ)自体が、とんでもないうぬぼれではないか、思い上がりではないか、などと思い知らされる。この本の中の、手紙の書き手の女性とその夫の冷えた関係も、私たち夫婦のそれでもあるような感じを持つ。私は意識しないまま、いい気になっているけれど、欠陥だらけの生き物であって、それが「あなたですよ」と言われているような気がする。ブリューゲルは、障害者も健常者もなく、貧富の差もなく、運の良さも悪さもなく、みんな同じところ(死)へ向かっていく生き物、それが私たちだということを絵に描いて、静かに話しかけているのではないかと思う。
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