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2006/09/10    ブリューゲルの家族
曾野綾子「ブリューゲルの家族」を読んでいて、いろいろな感慨がわいてきた。まず貧富とは心の問題、幸不幸とは心の問題だということ、財産があったり、家族の健康や収入とかとは次元の違うものであるということ、こういうことがじわーっと迫ってくる。この本は著者に読者からきた手紙というかたちで展開する。著者の返事はいっさい取り上げられない。ブリューゲルの絵を材料に、読者の一人息子、障害を持つ円(まどか)くんの生き様を通して、展開されるが、読んでいて、健常者と思っている自分が心に障害をもっている、あるいはある種の偏見という心のゆがみ(心の障害)を身につけているということ、それを自分は気づかないし、周りの人たちも気づかない、いや周りの人たちも、みなその意味で「健常」とは言いにくいということ、だから自分から自分を「健やかで、それが常である」などと認識すること(つまり自分を健常者だなどということ)自体が、とんでもないうぬぼれではないか、思い上がりではないか、などと思い知らされる。この本の中の、手紙の書き手の女性とその夫の冷えた関係も、私たち夫婦のそれでもあるような感じを持つ。私は意識しないまま、いい気になっているけれど、欠陥だらけの生き物であって、それが「あなたですよ」と言われているような気がする。ブリューゲルは、障害者も健常者もなく、貧富の差もなく、運の良さも悪さもなく、みんな同じところ(死)へ向かっていく生き物、それが私たちだということを絵に描いて、静かに話しかけているのではないかと思う。
 
 
 
 
2006/09/03    本のおもしろさ
本を読んで見て、いわゆる乗れる本となかなか乗れない本とがある。乗れる本とは、その本の中にすーっと入っていける本だ。引き込まれる本と言ってもよい。乗れない本とはその逆で大事なことが書いてあると思うのだが、どうも素直にすーっと入っていけない本だ。私がここでいう本とは、小説ではない、主として論説、もっつ平たくいえばエッセーのたぐいだ。引き込まれるのは文章の力だろうが、そればかりではない。その論説、エッセーの発想そのものというのか、その考えのおもしろさである。このおもしろさという語も単純ではない。辞書にも、おもしろいには、おもしろ、おかしい、愉快だ、興味がある、趣が深い、などの説明がなされており、そのどれにも微妙な違いがある。微妙な情緒の違いを言葉で区別することが土台無理があるのではないかとも思う。

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Last updated: 2008/10/28