cat's story
*我が家の猫たちの物語*
1    ミケとの出会い
ミケは、これまで飼ったネコの中で一番バカだった。
しかし、人を疑う事を知らない、一番純粋なネコだったと思う。
 
ミケと出会った場所は、道のゴミ捨て場だった。
その日、父親と家から15分程離れた小学校まで自転車を押して散歩をしていた。
ちょうど小学校の前を通りかかった時、道端のゴミ捨て場を漁ってる三毛猫を見つけた。
それが、ミケだった。
 
その三毛猫は、一生懸命ゴミを漁ってはいるけれども何も見つからない・・・という様子。
父親となんとなくその姿を見ていると、ふいに三毛猫が振り向いた。
その顔は真っ黒に汚れていて、思わず父親と笑ってしまった。
一生懸命ゴミを漁っている後姿と、真っ黒な顔。
でも収穫は全くナシ!
という状況がなんとなく面白かったから。
三毛猫はつぶらな瞳で2、3秒私たちの顔を見ると、突然トテトテトテ・・・と近づいてきた。
そして、何を思ったのか自転車の荷台に飛び乗り、そのまま父親の肩へ飛び乗ったのだ。
私は驚いた。
野良猫がこんなに警戒心がなくていいのだろうか。
父親も面食らっていたが、「ヤバイ」という顔をして苦笑いしながら三毛猫を下ろした。
三毛猫は私たちの足元から動かない。
確かに、ヤバイ。
 
私たちはそのままやり過ごそうと、回れ右してそーっと家に帰ろうとした。
しかし、三毛猫は当然のようについて来る。
困った。
仕方がないので、説得してみる。
「うちでは飼えないからね、またね。ハイ、バイバイ!」
本当は、当時家にはネコが1匹もいなかったので飼える状態ではあったのだが、
こんな散歩のついでに突然ついて来たネコを飼うつもりはなかった。
しかし、三毛猫は私たちが止まれば止まり、歩き出せば歩き出した。
人の話を全然聞いていない。
そればかりか、突然空き地に入り込むと、私たちの目の前で深く深く穴を掘り始めた。
トイレだ。
野良猫のクセにホントに警戒心のかけらもない。
腕を思いっきり伸ばして掘れる限り深く掘った三毛猫は、くるっと回ってお尻を穴に向けた。
その時、つるりと滑って後ろ足が片方穴に落ちてしまった。
「あ!」
と二人が思った瞬間、三毛猫はそのままオシッコをした。
それを見つめながら、二人は確信した。
「ああ・・・こいつはバカなんだ・・・」と。
 
こんなバカなネコはやっぱり飼う気にならない。
三毛猫が丁寧にトイレを埋めている間に、私たちはその場を去ることにした。
しかしその時!である。
 
「このネコ、おじちゃんたちの?」
 
振り向くと、小さな女の子が立っていた。
「違うよ。野良猫みたいだよ」
と即座に私たちは答えた。
そのわずかな間に三毛猫はトイレを埋め終わり、足早に私たちの方へ追いついてきた。
突然現れた女の子のせいで逃げるチャンスがなくなった。
そうとも知らず女の子は
「でもこのネコ、おじちゃんたちが好きみたいだね」
と三毛猫を撫でながら可愛らしい声で言った。
父親は苦笑いをしながら「うーん」と答えていた。
もうその女の子に任せちゃえ!と私は勝手に思い、ソロリソロリとその場から離れようとした。
しかし、今度は三毛猫と女の子がついて来るようになってしまった。
小さな女の子を追い払うわけにも行かず、
かといって女の子と話しながら歩いてたら三毛猫に追いつかれる。
それでも家に向かって少しずつ逃げる二人。
どこまでもついて来る女の子と三毛猫。
途中、父親が何度も「おうちに帰らなくてもいいの?」とか
「こんな遠くまで来ちゃ危ないよ」とか何とか女の子を家に帰そうと試みるが、
「大丈夫だよ!」
という元気な女の子の一言で全て片付いた。
こっちは大丈夫じゃないんだよ全然・・・。
 
とうとう、ここを越えれば家はもう間もなく、というバス通りに出てしまった。
 
私たちが渡ったら、絶対三毛猫もついて来るだろう。
そしたら、このバカネコの事だから、車に轢かれて死ぬのは確実だろう。
そしてこの女の子も絶対ついて来るだろう。
何故か分らないけどついて来るだろう。
女の子はバス通りに出ると、私の心を見透かしたかのように言った。
「ここは危ないねぇ。抱っこした方がいいかもね」
オイオイ、余計な事を思いつかなくてもいいんだよ。
と内心思ったが、そのまま渡って三毛猫が車に轢かれても困るのは確か。
私たちは「私たちのネコじゃない」という気持ちから抱っこするのをためらったが、
代わりに女の子が両手でしっかり三毛猫を抱えた。
・・・やっぱりもう逃れられないらしい。
 
結局、その子と三毛猫は我が家の庭にまでついて来た。
女の子が庭に三毛猫を置いてやると、三毛猫は大人しくその場にいた。
女の子は「いい子いい子」と三毛猫を何度か撫でると、
「じゃあ帰るー。バイバーイ」
と元気に言うと、あっさり去っていった。
 
一体あの子は何者?
そしてこのネコはどうすればいいの?
いろんな思いが私と父親の心を駆け巡った。
 
その謎の女の子のおかげで、ミケは我が家に来たのだった。
更新日時:
2004/07/05
2    ミケ、母親になる
ミケが家にいついてしばらくして、「デブだな」と家族の誰もが思った。
非常食になるくらい、肉付きがよくなった。
そんなに贅沢をさせてるわけじゃないんだけど。
「運動しないとブタネコになる」と思ったので毎日遊んであげた。
ブブは塀の上が好きで、よく登って一人で興奮していた。
でもバランス感覚が悪いので、よく落ちていた。
さすが馬鹿ネコ。
 
運動させても相変わらずデブなので、
ある時ふと「赤ちゃんがいたりして」という話になった。
でも誰もが「まさか」と思っていたため、真剣には考えていなかった。
それでも時々ミケにこう話しかけるようになった。
「もし産むなら2匹までじゃないと飼えないからね」
ミケはそれを黙って聞いていた。
今思うと、ミケにはかなりのプレッシャーだったに違いない。
 
私は朝が弱い。
その為、父親は私を起こすためにしょっちゅう嘘をついた。
「ミケに赤ちゃんが生まれたよ!」と。
最初は寝ぼけ頭で騙されて布団から飛び起きたりもしたけど、そのうち慣れてしまった。
ある朝、またいつものように父親が言った。
「ミケに赤ちゃんが生まれた!」
私は布団の中で「ふーん」と答えた。
それだけ。
でも、その朝は本当だった。「これがよく言う狼少年か」と思った。
 
最初見た時はなんだかよくわからなかった。
ミケのお腹が妙な具合にポコポコ膨れてる様にしか見えなかったのだ。
よく見ると、そのポコポコは白黒の子猫と全身トースト色の虎模様の子猫だとわかった。
ミケは白と黒とトースト色の虎模様の三色。
まるでミケがそのまま分裂したかのような2匹だった。
2匹を丸めてこねれば、ミケが出来そうだった。
2匹はミケのお腹にぴったりとはりついて、お乳を飲んでいた。
そう、そこにいたのは2匹だった。
ミケは、ボーっとした顔をしながらもわたしたちの話を聞いていたらしい。
「捨てられたらヤバイ」と思って、お腹の中と相談してくれたんだろうか。
 
さて。
我が家でネコが子猫を産んだのは後にも先にもこれがはじめて。
だから、家族は皆動揺した。
@お乳はちゃんとでているだろうか
Aミケがノイローゼになって子猫を食べちゃうんじゃないか
B野良猫が子猫を攫っていったらどうしよう
(ミケは庭の空き箱で生んだため)
などなど・・・心配は尽きない。
@は、毎日子猫が弱ってないか様子をみる
Aは、ミケの様子を見ると出産前とあまり態度がかわらないので大丈夫だろう
Bは、子猫が大きくなって動かせるようになるまで、番をしよう
という事になった。
父親は毎晩庭に面した部屋に布団を持って行って木の棒を枕元において寝ていた。
・・・ミケ、愛されてるぅ。
 
ミケが母親になって変わったことと言えば、顔つきが優しくなったこと。
出産前はボーっとして馬鹿丸出しの顔だったけど、穏やかな顔になった。
ただし、顔だけ。
馬鹿なのは変わりない。
 
ある時、私が窓辺に座って本を読んでいると、
ミケが箱の中で横たわったまま自分の毛づくろいをしているのが見えた。
子猫はミケのまわりをウゴウゴ元気に動いている。
すごく平和な情景だった。
ミケが体勢をもどすと、丁度ミケの胸の下に黒白ネコの顔がもぐりこんでいた。
しばらくウゴウゴ手足を動かしていた黒白。
その手足が突然バタバタ激しくなったかと思うと、「ブギーーッ!」と悲鳴をあげだした。
ミケはその悲鳴に驚いてキョロキョロあたりを見回していたが、
「なーんだなんでもないや」
とのん気に居眠りをしようとするではないか。
私は慌ててミケを放り出し、下敷きになっていた黒白を救い出した。
黒白はハァハァ息をきらして「???」という顔をしていた。
ミケは私の手の中の黒白を見つけると、「あ、そこにいたのね」と言う様に目を細めていた。
あぶない母親だな、オイ・・・。
 
まあそんなこんなでミケは完璧な母親じゃなかった。
でも、ミケはご飯を食べる時やトイレをする時、必ず何度も箱を振り返って気にしていた。
面倒を見るのはあまり上手じゃないけど、ミケなりに一生懸命母親を頑張っていたみたい。
ミケ、子猫はまだまだ手がかかるぞ。
がんばれ!
更新日時:
2004/09/29
3    子猫誘拐事件
ミケの子猫は、黒白をブブ、トースト色をチャチャと名付けられてスクスク育った。
ミケのまわりを離れ過ぎない程度に一人で歩き始め、
落ちている葉っぱや飛んできた羽虫や木の枝のスズメに興味津々で、
匂いを嗅いだり飛びつこうとしたりして遊ぶようになった。
ネコの人生の中で、たぶん一番活発で好奇心旺盛な時期に突入したわけ。
こんなちっさいカワイイ毛玉が庭をうろちょろしてるんだから、みんな夢中になるのは当然。
家族はもちろん、通りがかりの人まで。
大体の人は垣根ごしに声かけたり触ろうとする程度なんだけど、一組困ったカップルがいた。
それは、小学3年生くらいのカップルだった。
庭に無断で入ってくるのだ。
それも、家に誰もいない時を見計らって。
交代で門の外で見張りをし、交代で子猫と遊んでいたらしい。
私が学校から帰ってくると、「来た」と言ってふたりで逃げて行くのをよく見かけた。
ある日、家の前を気にしながら通るところを見つけたので、
「家の人がいない時に勝手に入って来ちゃダメでしょ?」
と言うと、
「いない時に入ったらダメなんですか?」
とかすっとぼけた事を言ってきた。
どうやら人がいる時はダメだけど、いなければいいと思ったらしい。
オイ、その考えは泥棒みたいだぞ・・・。
一応注意したし、大丈夫かと思ってあとはそのままにしておいた。
 
ある日、学校から帰ったら子猫がいなかった。
ミケも。
まだ子猫だけで庭から出るのは無理だ。
私はビックリして、あわてて家のまわりを捜した。
すると、どこからかミケも飛んで来て、わたしの足に何度も体をこすりつけた。
そしてじっと私の顔を見る。
これは、途方にくれている顔だ。
少し行ったところには以前ミケを抱っこして渡った大きな通りがある。
ミケのような大人のネコでさえ渡れない大きな道路だ。
私は胸がドキドキして、そこは絶対に渡っていないと信じた。
結局捜すしかないと思い、名前を呼びながら家のまわりを必死で歩いた。
ミケも私のあとについて歩いて、叫ぶような、いつもとは違う声で鳴いた。
時々私が立ち止まって名前を呼ぶと、ミケも止まってあたりを見回し、鳴いた。
結局、その日は見つからなかった。
この突然の出来事に、家族は皆ショックを受けた。
 
次の日、私が学校から帰るとミケの姿は庭にはなかった。
私もすぐに外へ飛び足し、また昨日と同じように捜し歩いた。
すると、途中からミケが合流してきた。
見ると、ミケは口にアジのひらきを丸々とくわえていた。
一体どこから盗んだのか、立派なアジのひらきだった。
狩りやゴミあさりが物凄く下手なネコなのに、
よくそんな大物を盗って来たと不謹慎にも感心してしまった。
ミケはそれをくわえながら何歩か歩くと、一旦足元に置き、鳴くのだ。
まるで、「ご馳走だよ!帰っておいで」と呼んでいるようだった。
ミケも、必死だったのだ。
そんなミケを見ると、もうかわいそうで仕方なかった。
結局その日も、子猫は見つからなかった。
 
もうダメじゃないかと言う気がした。
子猫だからご飯も探せないだろうし、車に轢かれているかもしれないし、
死んでいる可能性の方が考えやすかったのだ。
でも、捜さないではいられない。
その日も、学校から帰るとすぐに外へ出た。
「最近、子猫いないわね」
突然、お向かいのおばさんが声をかけてきた。
「・・・いなくなっちゃったんです」
私がそう答えると、おばさんは言った。
「あの、小学生たちじゃないの?」
どうやら、あの後も私たちがいない間、ずっと庭に遊びに来ていたようだった。
確かに、子猫がいなくなってからサッパリと姿を見せなくなった。
「あの子の名前覚えてるわ。名札の名前がうちと同じ苗字だったから」
天使の声だった。
私は名前を聞くと、すぐに104で電話番号を調べた。
小学校の学区内で該当する名前に片っ端からかけるつもりだった。
運のいいことに、3件目ほどでその子は見つかった。
私は、すぐに呼び出した。
 
その子は、いつも一緒の女の子を連れてきた。
絶対に何か知ってる、とその時確信した。
お向かいのおばさんもやってきて、
「あの日も来てたわよね?名前一緒だから間違えるはずないわ」
と念をおしてくれたので、「知らない」とは言わせなかった。
丁度兄上も学校から帰ってきたので、一緒に話を聞くことにした。
最初は誤魔化したりするかと思ったけど、おばさんの一言で知らん振りも出来ず、
意外にもスラスラ話し始めた。
話によると、小学校高学年のお兄さんたちが連れていったと言う。
「僕たちはやめなよって言ったんだよ」
「そう!何度も言ったの。でも連れてっちゃったの」
二人は声をそろえて言う。
兄上は、その高学年のお兄さんたちが歩いていったと言うルートを案内してもらった。
しばらくすると、首を傾げながら帰ってきた。
すごく細かく覚えていて、ここで襟首を捕まれたとか、こう言ったとか説明してくれたらしい。
そして、どうやら船着場からボートでどっかへ行ってしまったと言う。
・・・小学校高学年がボートで??
と思ったけど、その日はもう暗くなったので家に帰した。
親にその話をすると、激怒した。
口裏を合わせた嘘に決まってると。
兄上も「そう思う」と言った。
母親は、すぐにその子の家へ電話をした。
 
次の日また呼び出された小学生は、ようやく白状した。
やっぱり二人が子猫を連れて行ったと言う。
でも途中で子猫が暴れ、手を放してしまったのだ。
手を放してしまったと言うところを案内してもらうと、眩暈がした。
大通りの横にある駐車場だったのだ。
駐車場から出ていたら死んでる。
でも、念のため通りの向こうへ行って呼んでみた。
すると、突然ある親子が話しかけてきた。
「なにかお探しですか?」
「猫を探してるんです」
すると、その親子は答えた。
「最近よく見る子猫がいるんです。危ないから、うちで保護しようと私たちも捜してたんですよ」
と。
一気に希望の光が見えた。
その親子だけでなく、その周囲の家で餌を外に置いてあげていたという家もあった。
もしその子猫がブブかチャチャなら、そのご飯を食べて生きているかもしれない。
生きてると信じつつ、あるマンションの前で子猫名前を呼んだ。
すると、奥のコンクリートの下から何かがヒョコッと顔を出したのだ。
そして、すぐにもう一度ひっこんだ。
あれ?と思い、もう一度呼ぶと、もう一度何かが顔を出した。
そして、顔を出すと同時に飛び出てきた。
走って走って走って、私の腕の中へガシッと何かが飛びついてきた。
見ると、ブブだった。
「ブブだ!!」
もう、どんなに嬉しかったか!
 
ブブは、体をブルブル震わせて私にしがみついてきた。
見ると、首には先のちぎれたタコ糸が結び付けられていた。
タコ糸を引きちぎって逃げたのだろうか。
母親がそれを丁寧にほどくと、ブブを連れてさっきの親子のところへ報告し行った。
その親子はとても喜んでくれ、「そうそう、この子」と言った。
親子の家には既に猫がいて、お皿に用意したミルクを出してくれた。
ブブは震えながらも私の腕の中から首をのばし、ピチャピチャと少し飲むと、
「オワアオワア」と鳴きながらまたしがみついてきた。
私たちはお礼を言うと、家へ向かった。
ミケの待っている家へ。
 
その後も、小学生の告白通り別の場所でチャチャが見つかった。
そこは、工事の廃材置き場だった。
私は頭にきていたが、二匹無事だったので本当に安心した。
たぶんこれで死んでたなら、絶対に許すことは出来なかっただろう。
 
久しぶりに親子三匹そろった。
その夜、小学生とその親がお詫びに来た。
その親子に、いつもは大人しい兄上が言い放った。
「もう二度と家に来ないでください」
私はビックリした。
その時、子猫がいなくなって一番心配していたのは兄上だったんじゃないかと思った。
いつもは静かに子猫を見ているだけだけど、
本当は誰よりも怒り、心配していたのは兄上だったのかもしれない。
 
ミケはただ黙って、何度もブブとチャチャの体を舐めてやっていた。
更新日時:
2005/03/26
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Last updated: 2005/9/5

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