MOVING 
JAPANESE
カタクナなヒト。。。。揺れ動く日本語

揺れ動く日本語に関するコラムです

 1    ヤバイ
更新日時:
2008/09/15
元々はアウトローな方々の隠語だったのが、確か1960年代に一般化したもの。
手許の広辞林(1958,三省堂)には「官憲の手配がきびしく危険である(隠語)」とあり、この頃にはまだ戦前社会の残滓が見られる。
例えば、「あのセンコーの授業は予習していかないとヤバイ」などというのは教師=官憲と見立てた用語であろう。このように一般市民用語化された後も「(規則、規範などに反して)まずい」意味で使われてきた。
 
ところが、2005年頃から若者の間で意味が転移し、むしろ肯定的な用法が目立ってきた。
 
用法1:
 (女装コンテスト出場の男性を見て)「特に 眼と脚がヤバイ」(TV.「笑っていいとも」よ り)
 ・・・・・「予想以上の高い評価」を表現す 
 る。これほどまでに女性っぽいとは意外 だ。素晴らしいということだ。
 
用法2:
 (街を探訪して、旨い店を見つけて)
 「****の串焼きがヤバイ!」
 ・・・・・一般人ブログなどでの使用例多  数。これは(今までこの店を発見できな 
 かった)自分がヤバイという意識を表し  ている。
 
用法3:
 「ヤバイ、スゴイ、こんなループ」
 (SOUND &RECORDING  
 MAGAZINE,リットーミュージックより)
 ・・・・・・ループとはハウス系音楽に使用 
 するためのリズムやフレーズの繰り返し
 である。
 これは用法2と似ているのだが、用法2が
 書き手の内省的な想いに重点を置いて 
 いるのに比べ、こちらは初めて公衆に披 露するときの先端者との先取り意識〜つ まり、「おまえらは知らんだろ意識」の立 
 脚している。
 お勧めの店、テクニック、ファッションなど の紹介に多用される。
 
 この三用法に見られるように、つまり、 
 「ヤバイ」が肯定的な意味に転化したと
 言っても、それには否定的な意味の裏打 ちがあるのだ。
 
 
 
 
 

 2    ブレイク中
更新日時:
2006/01/03
「ブレイクする」」という表現が主にJ-POPの世界で使われ始めたのは確か1990年代初頭のTVドラマ・タイアップ曲全盛時代だったと思う。
元々は英単語「break」のいくつかの意味の中の"daylight is beginning"(開拓社刊:現代英英辞典,1968)から転じて日本語化した用例であろう。
breakは"interuppt the continuity"(同辞典)という意味合いが強い。あたかも飛び魚が水面下から抜けて飛び出す感じがこの言葉によって表現される。
 
ちなみに知り合いの帰国子女に「彼はブレイクした」の英訳を聞いたところ、やはり「He has been broken」と言うわけはなく、「He has been(gotten) a stardom」と言うしかないらしい。しかしこれでは「いきなり」というニュアンスが出ていない。
帰国子女とのこのやりとりの中でハタと気づいたことがある。無理矢理英訳しようとすると自ずから受動態になるのだ。そう言えば、彼が「勝手にブレイクした」のではなく「ファンによってブレイクさせてもらった」、あるいはプロダクションやメディアによって強引に「ブレイクさせられた」のが、この言葉の本質なのである。英語、というより英文法が論理的な所以である。
決してアーティストが自らの努力だけで「ブレイク」したわけではない。ヒヨコが卵の殻を「ブレイク」するけなげさだけを表現しているわけではないのだ。
 
こうして見事に和製英語が定着してしまったわけだが、ある時期から「****(歌手やバンド)は今年になってブレイク中だ」という表現も出てきた。これには最初は違和感を覚えた。「break」というのは一瞬の出来事なのではないか?
 
飛び魚は水上に舞ってもすぐに波間に消える。。。。。ということは「ブレイクする」と言った場合、そのアーティストは花火のようにすぐに消えるという意味合いだったのだ。
なるほど。「ブレイク中だ」。。。。含蓄のある言葉ではある。
 
と、ここまで書いて気づいたことがある。
breakの名詞用法は「休息、休止」。これは音楽用語でもある。たとえば「彼は今年になってブレイクした」と言うと、芸能活動休眠中の意味にもなり、現代人が表現したい内容とは全く別の意味になってしまう。これは困った。この分析についてはもう少し時間をいただきたい。
 
 
 

 3    なにげに。。。
更新日時:
2005/10/29
この言葉、なに気に。。。が流行(はや)りはじめた頃は腹が立った。
本来の否定語を肯定表現で表してしまう。
しかし、よくよく考えてみると何の意識もなく行動することがあるだろうか?例えば、出かけるときに駅についた頃、玄関の鍵を閉め忘れたのではないかと心配になる。わざわざ家まで戻って確かめると
99%は鍵がかかっている。意識しないで鍵をかける動作をしているのだが、これは潜在的な意識、意識下の意識なのではないか?
そう考えると「なにげに。。。」は理にかなっている。つまり、「何(か意識しないうちに)気に。。。。」の略である。
 
「なにげなく振り返る」という行動をとった時でも、脳が身体に指令を出していることを本人が意識していないだけなのだから、「なにげに。。。。」の方が的確な表現という気になってくる。

 4    よろしかったですか?
更新日時:
2005/10/21
ドトールでコーヒーをオーダーすると、「Sでよろしかったですか?」と返ってくる。この日本語がバイト用語として日本語守旧派のやり玉にあがっている。曰く「どうして過去形なのだ」、曰く「Sでもよい。。。と勝手に決めつけるな」、曰く「よろしいは尊敬語か?」。
しかし、私はこれを英語の直訳日本語ととらえる。
「〜でよろしかったですか?」は英語のused to V である。そして、その前にシチュエーションが省略されている。
「(あなたはよく当店にいらっしゃってコーヒーをオーダーなさっていましたが、いつもサイズはSでしたネ。久々にいらっしゃいましたが今日も)Sでよろしかったですか?」という意味なのである。
つまり、客が昔、常連だったということを(実際、常連でなかったとしても)認識しているということをこの短いフレーズに凝縮しているのである。
 
もともと英語の慣用句は「昔はよく〜〜したものだ。今は〜〜しない」という意味だが、この日本語used to〜は少し転じて、「今も〜〜ですネ」が込められている。
これはファーストフードやコンビニでの店員の挨拶が「いらっしゃいませ」ではなく、「こんにちは」に変わってきているのと決して無縁ではない。

 5    〜からお預かりします。
更新日時:
2005/10/16
代表的なコンビニ言葉である。
しかし、私はこの言葉に関しては世間で言われるほどには違和感がない。
例えば、250円の買い物で1000円札を出した場合は「1000円から(250円を差し引いてお釣りを渡すために)お預かりします。」の略である。しかし、ちょうど250円を渡したときに「ちょうどからお預かりします。」と言われたのにはさすがに驚いた。これはいったい何だろう。
 
本コラムは若者言葉を「嘆かわしい」ですませるのではなく、時代と共に変遷する日本語を冷静に分析し、コンテンポラリーな若者言葉を追認するという使命を負うと自負している。
しかし、この表現に関してはまだ分析が進んでいないのである。
 



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