新潟から東京に向かう直前に人生お世話になった方の死を聞いた。
修行寺の同期の友達から久しぶりに電話があり、
友「御前様が今朝、変化しました。」
私「へんげ?って?」
友「今朝亡くなりました。今、お寺に帰ってきていますが」
私「ほんとに? そうか。。。。」
友「19日に密葬だから、顔を見るなら今のうちだよ。」
私「ありがとうね。予定を調整して行くようにするね。これから大変だろうけど、よろしく頼むね。」
急きょ予定を変えて、明日顔を見に、顔を見せに行ってこよう。
年齢が95歳だから素直に受け入れるものの。。。
移動中、夜勤のアルバイト中ずっと思い出しておりました。
緊張して面接したっけなぁ
いっぱい叱られたなぁ
よく小言を言われたっけなぁ
お経の補習をさせられたなぁ
鐘の音を褒めてくれたなぁ
動作・諸作を褒めてくれたなぁ
日和のいい日には庭を散歩したなぁ
付き人はもちろんだが、よく一緒にいたよなぁ
私を認めてくれたよなぁ
あれこれあったから、寂しいなぁ
いろいろあったけど、御前様の近くにいることができたことに感謝しに行こう!
明日は、“こんなになりました”って、未熟ながらも顔を見せに行こう!
お経を挙げに、久しぶりに大栄寺に行くか!
御前様の外出の時にはいつも廊下で正座して見送り迎えたっけ。
寒さに凍えながら合掌したなぁ
散歩の時に疑問に思っていることを聞いたっけ。
おじいちゃんに、ひ孫が“なんで〜”って聞いている感じだったよなぁ
階段や段差で手を差し伸べると、その手に体を預けて信頼してくれたっけ。
他の者が気づいて手を差し伸べても、その手を取らない時に、ちょっと優越感で嬉しかったなぁ
誕生日のお祝いをしたら、すごい喜んでよく笑っていたっけ。
贈ったさるずべりの樹で、余計な仕事が増えたよなぁ
植物のことを熟知していたから、いろいろと呼ばれたっけ。
意見を求められる時は聞いてくれるのに、意見をすると「そんなんええ!」と一喝されたよなぁ
社会についても詳しかったから、株のことでは意見を求められたっけ。
NTTドコモのことを「コドモ」って、よく間違っていたよなぁ
横文字の時は、何を言いたいのか察して先に言葉を用意していたよなぁ
食事のことで注意を受けるときは、私の当番の時だったっけ。
付き人の作る料理と私がみんなに作る料理の差があって、
御「なんでワシより、おまえさんたちがええもの食っておるんじゃ」
私「いえ、頂いたもので、御前様にもご報告いたしましたが。。」
御「そうだったかのう。それでも見てみい。これじゃぁワシのは鼻くそじゃぁ」
って言い切ったよなぁ。
この一件以来、調理師免許を持っている付き人が食事を作るようになって、私たちの食事は調理法までをも報告・連絡・相談するようになったっけ。
でも、料理で食べる食べないでなく、その日の当番で一緒の物を食べるか決めていたけどね。
30年間誰もしなかった墓地地図と管理者名簿を作成したら、すごい褒めてくれたっけ。
私「御前様、私このようにものを作ってみたのですが」
御「なんじゃ、これは」
私「墓地の地図で、位置と規模と管理者を示したものであります。日々の業務の中で私自身困っていたことなので、勝手に作成してみました」
御「よくでかした!これで墓地からお金を徴収できるなあ。ほっほっほ」
って、何を褒められたのやら。
御「それにしても、おまえさんにはそんな時間はないじゃろ」
私「はい。でも1日僅かな時間をも作れない者はいませんから。時を見計らい毎日足を運びました」
御「そうか。ご苦労じゃったな」
って、一言で報われた気がしたよなぁ。
半年間の私の休憩時間を使い、雪の日も1足を25cmで測量した墓地地図と過去帳を世代ごとに追って作ったんだもんなぁ。
愛用の眼鏡がないって、みんな大騒ぎで手分けして寺中を探し回ったっけ。
隣の部屋で付き人たちがドタバタし、廊下を行ったり来たりしているので、どうしたのかと聞くと、
付「御前様の眼鏡が見つからなくって探しているんですよ。晴正さんも探すの手伝って」
と探し手は徐々に増えてゆき、総動員で探しても見つからず、御前自ら出てきて、
御「お前さんたちは探し方が悪いんじゃ。どこかにあるはずじゃ。探せえ!」
私「御前様、失礼かと思いますが袂とかにございませんでしょうか?」
御「そんなとこ探したわ!」
私「失礼致しました?」
付き人に
私「以前もさぁ、眼鏡がないって言われた時に頭にかけていたんだよね(笑)。だから、着物のどこかにあると思うんだけど、調べるわけにいかないじゃん。これだけ探して見つからないということは、移動しているあの体のどこかにあるんだよ。きっと。」
付「でも、どうやって調べますか?」
私「そりゃぁ、そちらの仕事でしょォ」
付「俺できないよ。晴正さんやってよ」
私「何言ってんだよ。俺だってできないよ」
思案のあげく
私「裾が綻んでいるとか言って、着替えを勧めてみたらどうかな」
在籍中始まって以来の大騒ぎも、案の定御前様の袂にあったんだよなぁ。
作務の時に筋トレを兼ねて重い物をよく一人で運んでいたのですが、たまたま御前様それを見て、
御「あの小さい和尚が一人で運んでいるのに、お前さんたちは何で二人で運んでおるのじゃ!」
僧「ああ見えても、晴正さんは意外と力がありまして」
御「そんな訳ないじゃろ。おまえさんたちも一人で持たんか!!」
僧達「。。。」
なかなか丸太が運ばれて来ないから戻ってみると、
御「おまえさん、一人でこれ持ってみろ」
私「はい」
持つのはきついので、いっきに肩に担ぎ上げらた
御「おまえさん、無理じゃないのか?」
私「はい。担いでしまえば」
御「おまえさん降ろせ。ほら見ろ。この和尚にできるのだから、もう1回やってみい」
何度やっても結果は同じで、それを説明しても分ってもらえず、
御「なんでじゃ。おまえさんより大きな者が持てないのに、なんで持てるのじゃ??」
さらに体の大きさではなく、筋肉の質の違いを説明したり、アルバイトや販売の時の経験を話したりしたのですが、
御「おまえさんたちみんなで、ワシをからかって楽しんでおるんじゃろ」
ってさぁ(困)、どう説明していいのか困ったよなぁ。
大法要の時はいつも動きのある目立つ役目をさせてくれたっけ。
あるとき背が低いことで高台の上に届かないことがあって、それを補うべく私たちでは高台に乗せる役だけ他の者にしたら、
御「そんなのだめじゃ。勝手なことをするじゃねえ。おまえさんがせえ。」
私「でも私、どうしても届かないのですが」
御「背伸びしてもか?」
私「はい」
御「身長なんて一日で伸びるじゃろ。明日まで伸びんのか?」
私「いえ、いくら御前様に仰られても、これだけは。。」
御「牛乳やるから、それで大丈夫じゃろ」
私「いえ。。それでも。。無理かと。。思いますが。。」
後ろに控えている付き人に
御「そうかのう」
付「はい。」
ってこともあったなぁ。
御前様が去ってから大爆笑したっけ。
毎月ある説法する信者さんの会に指名されてよく行ったっけ。
この会ではお酒が振舞われるのですが、断りきれずに飲んでしまい、真っ赤になっていたので、どのようにして御前様に帰寺の報告をすればと思い、少し戸の影に隠れながら報告すると、
私「御免下さい。失礼致します。御前様只今戻りました」
御「そうか。おまえさん、ずいぶん日焼けしておるのお」
私「はい、日差しが強いものですから。。」
分っていて冗談で言っているのに、怒られたらどうしようとドキドキしていたから、真に受けてつい言ってしまったんだよなぁ。
玄関に巣を作って子育てしているツバメを気遣って、御前様は当番よりも早く扉を開けていたっけ。硬くて重たいのに。
それに気づいてから御前様より先に扉を開けていると、
御「わしらの都合で閉めてしまっては可哀想じゃからのう。せめて早く開けてやらねばな。」
私「これからは私が責任もって扉を開けますので、御前様は無理をなさらないように」
御「そうか。ほっほっほ」
ってことがあってから、当番でなくても早起きすることが楽しくなったよなぁ。
それから毎朝二人でツバメを見ては、無言の会話をよくしたっけ。
私は金庫や帳簿も管理していたので、毎月の帳簿締めの報告で、事細かに経費の説明を求めらたものだっけ。
あるとき電気代の説明で、
御「最近、電気代が少し高いとは思わないか?」
私「そうでしょうか。少しずつは上がっておりますが、日が沈むのも早まっていることでございますし」
御「そんなことでねぇ!おまえさんたち内緒で夜起きておるのではないか?」
私「いえ。。寝ていると思いますが」
御「思うじゃないじゃろ。一緒に禅堂で寝ておって気づかんのか?」
私「あぁ、はい」(考え中)
私「最近の境内の補修の際に大工さんが使っている電動工具のためではないでしょうか」
御「そうかのう。。」
ってことがあって、自分も起きているのだか、みんなにも注意するようにしてもらった。
ある時、御前の寝つきが悪かったらしく、夜に一人で見回ってきて、注意された者たちがいた。私はたまたま疲れて寝ていたので免れたが。
御「昨夜、衆寮で電気をつけて起きておった者たちがおって、そんなだから電気代が上がるんじゃ。」
御「おまえさんも夜起きておるんか?」
私「はい。正直申しますと、私は夜に事務作業や業務改善の思案などしておりますので一人で典座寮でしておりますし、衆寮でみんなでお茶を飲むこともありますし、電気がついているから本を読んでいることもあります」
御「仕事は仕方ないが、本は蛍を捕まえてきて読まんか」
私「蛍でございますか。捕まえてきて瓶か何かに入れてということでしょうか」
御「そうじゃ。昔は月明かりや蛍の光で書を読んだもんじゃ」
って言われたなぁ。
一緒に座禅しているときに、先輩僧侶に遠慮して叩けない当番に、
御「居眠りしている者は先輩であっても遠慮する事はねえ。叩いて直してあげることがええんじゃ。それはワシも同じじゃ」
御「それが宗門じゃぁ!!」
って言っていたよなぁ。
御前様に私の責任でなくて、理不尽なことで怒られることがあって、
付「晴正さん、大丈夫。あれはないよね」
私「そうだよ!俺は知らなかったんだから。それでも俺のせいになるの?何でも俺が悪いの?」
付「いや、おかしいよ。まったく聞く耳持たないからね」
なんてことがあると私はいつも、
私「座禅の時叩いてやる!だって、宗門だからね」って冗談にてい笑う。
でも、実際に御前様が居眠りしていても叩けなかったよなぁ。
だって、かわいいんだもん。
御前様が寝た後に、部屋の掃除を手伝いながら、付き人と『御前ごっこ』などして遊んでいたもんなぁ。
お互いに御前役になっては、理不尽なことを真似して遊んだよなぁ。
あ〜
一緒に過ごしたのは1年ちょっとなのに、長い人生を共にしたように、いっぱい、いっぱいの思い出があるなぁ。涙。
御前様は私をずっと見ていてくれた。
そして、最後に
「おまえさんは、来る前から僧侶じゃった」
って言ってくれた。
「気骨ある者は久しぶりじゃのう」
って嬉しそうだった。
あ〜涙が溢れて止まない。
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