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| [50] 価値あるもの。 (投書から) | ||
「ビンゴ!」。子どもが地蔵盆のビンゴ大会で真っ先にビンゴした。4歳なのでまだ欲がないのか、数ある商品の中から選んだのは「ゴム風船」だった。一瞬、百円均一の店頭に並ぶ姿が目に浮かび、「どうしてもっと良いものを選ばないの」と言ってしまった。
ゼリーの詰め合わせ、お鍋、食器。たくさんの中から、一番に選ぶ権利があるというのに、よりによって、こんな物を取ってくるなんて。周囲の人も「賞品係の人に言って取り換えてもらったら」とおっしゃる。本当にそうしようかと思って、子どもの方を見ると、「これがいい」と小さく呟いた。
「でも……」と言いかけると、兄たちが「ちーちゃん、よかったなあ。自分の好きなもの、一番にもらえて。ぼくが後でふくらませて上げるな」とか、「ほんとラッキーやな」などと言ってニコニコ笑っている。その瞬間、自分がものすごく恥ずかしく思えた。
ふだん、お金だけで判断してはいけないとか、欲張りすぎてはダメと言っているくせに、まさしく私自身は金銭的な価値判断をしてしまっている。子どもの価値判断を無視して、自分の価値判断を押し付けようとしてしまった。お地蔵さん、ごめんなさい。子どもから教えられた小さな出来事でした。(毎日新聞「女の気持ち」京都市上京区 河嶋智子さん)
久し振りに心優しい投書を一つ。母親に何と言われようと、「これがいい」とゴム風船を選んだ4歳児。そして、そんな妹と喜びを共にする兄たち。いい情景ですねえ。
予期せぬ我が子たちの純粋さに、ふと我に返って恥ずかしくなり、お地蔵さんごめんなさいと、わざわざ投書する気になった、お母さんも素晴らしい。
荒れすさんだ世の中に、まだこんな人たちが少しでもいた、と思うだけでホッとします。有り難う、河嶋さん。次の投書を期待します。 (げんや)
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| [51] 昔、大坂の町角にあった公衆トイレ。(連載記事から) | ||
文政八年(1825年)四月、大坂・難波新地でちょっと面白い見世物が行われた。「けし細工 大坂詠(なにわのながめ)」と題し、周囲六里の大坂市街を周囲六十間(108b)に縮小し、橋の上からミニチュア模型にして見せるという、まことに斬新な計画であった。
今に残るその宣伝用チラシの中に、家のかず九万三一一三軒、橋のかず二五七、猫のかず二万一〇六匹…などとあり、そこに何と「四つ辻小便担桶(たんご) 三五〇三つ」という、妙なものまで数え上げられている。つまり江戸時代の大坂では、町の角々に決まったように、小便用の桶が置かれていたのだった。
人々はそこで小用を足し、桶に溜まった尿は、大切な肥料として近郊の農村に売られていった。尿の販売を専門に取り扱う業者の組合「小便仲間」も存在したのである。とはいえここで、町の角々に置かれた桶に小用を足すといっても、男はともかく女はどうしたのか、と素朴な疑問がわいてくる。
これに答えるかのように、享和二年(1802年)七月、上方を訪れた戯作者、曲亭馬琴がその時の作「(き)旅漫録」の中で、「女児の立小便」について以下のように書いている。
「京の家々厠の前に小便担桶ありて、女もそれに小便する故に、富家の女房も小便は悉く立て居てするなり。……或いは供二、三人つれたる女、道ばたの小便たごへ立ちながら尻の方をむけて小便するに、恥じるいろなく笑う人なし」
馬琴にとって、憧れの京女の立ち小便姿はかなり衝撃的なものだったろう。しかし京・大坂ではありふれた日常的光景であったから、本人も恥ずかしがらず、笑う人も当然いなかったわけである。
狂歌師、大田蜀山人も「半日閑話」の<京風いろは短歌稿>の中で、「ゐなかにまさるきたなさは のきをならぶる町中で おいへ(家)さんでもいとさんでも くるりとまくって立小便」と詠んでいる。(産経新聞「歴史ドラマランド」<公衆トイレ>から抜粋)
まだ、この立小便の時代から200年も経っていないのに、何という違いでしょうか。今じゃ外出中の女性達はその節、つとめてホテルやデパートの清潔なトイレをご利用になり、しかもその間は流しっぱなしにして、音をお消しになるというではないですか。
とはいえ、そんな風俗もここ二、三十年のことで、戦前はもちろんそれ以後でも、田舎を旅すると時たま、懐かしいお婆ちゃんの立小便姿を見かけたものです。トイレ事情の悪い中国の農村地帯などでは、今も堂々とやっているのじゃないでしょうか。
いえいえ、事情はヨーロッパの中心、花のパリでも同じことで、下水や水洗トイレが完備するまでは、貴婦人達でも宮殿の中庭で、堂々と立小便をしていたと、物の本に書いてあります。彼女たちがいつも、大きく膨らんで不便な、あの変なスカートを穿いていたのは、単なるファッションではなく、その時に便利だったからなのです。
しかしまだ、町の角々に小便桶があった時代はいい方で、それさえなかった頃は、皆さん一体どうしていたのでしょう。そういう方面から、有名な古典文学など、もう一度読み直してみるのも一興かも知れません。(げんや)
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